「なんとか家には帰ってこれたな」
夜も遅くなり、日付が変わる頃になんとか家にたどり着いた衛宮士郎。溜め息を吐き、力も抜け床に倒れこんでしまう。
帰る途中にまたあの連中に会ってしまわないかと注意深く行動したため仕方ない事だろう。
しかし、帰り道はいつもと変わらず危険な事は無く、強いて言うとすればいつもよりカラスが沢山いると思った事位だろうか。
そして、士郎は今までのことについて考えていく。
学校で目を覚ました時は、グラウンドで見たことやその後の事も全て夢だろうと思ったが、体には傷痕も何も無いが服には槍に刺された後と血がべったりと付いていた事から、信じられないが現実にあったことなんだろう。
そう考えると不思議に思うことがある。それは、どうして自分は生きているのかということだ。
自分があの槍に刺されたとして普通ならば死んでも可笑しくは無いと思う。運良く生き残ったとしても大怪我であったはずだ。
そう考えると自分はあの場で誰かに治療をしてもらった事になる。しかも、致命傷を跡形も無くだ。常識で考えるのであるならば、そんな事は絶対にあり得ないと断言できるであろう。
しかし、自分はこれを不可能とは思わない。これに説明をすることができる。それは、魔術というものだ。
詳しく知らないが、自分は少し魔術というものを使うことができる。それは、「強化」と呼ばれる物である。これは物を魔術的に構造解析して行う物で、これによって例え紙であっても鉄の強度を持たせるのが可能である。
素人当然の自分でもこういったものが使えるのである。となれば、瀕死の状態でも治すことができる魔術があるのかもしれない。
しかし、そう考えると誰が治してくれたんだろう。起きた所には誰も居なかったからな、手掛かりとしてはこの赤い宝石のペンダント位か。
「一体誰なんだろうか、礼位は言わせて欲しい所だけど」
そんな事を横になりながら考えていた時である、突然天井から鈴の音が鳴り響き、そこから何処からともなく学校で襲われた青タイツの男が槍を自分に向け飛びかかってくる。
士郎はそれを間一髪の所でかわすことができ、その場にあったポスターを丸めたものを手に持ち青タイツの男と向かい合う。
「はぁ、見えていれば痛かろうと、俺なりに配慮したつもりだったんだが。同じ人間を1日に二回殺す羽目になろうとはねぇ、何時のなろうとも人の世は血生臭いということか」
そんな事を言いつつ男は紅い槍を構える。
「――――
「――――構成材質、解明」
「――――構成材質、補強」
「――――
今度は先程の様には行くまいと、手に持ったポスターを自分が覚えている魔術で鉄並の強度まで上げ抵抗しようとする。
青タイツの男は士郎が魔術を使うとは思っていなかったのか、少し驚いた表情を作り槍を突き出してくる。
それに対して士郎は、ポスターでかすりはしたが槍を何とか反らす。
「ほう、少しは魔術を使えるようだな。道理で生きていた訳だ。少しは楽しめそうじゃねえか」
そう言って青タイツは攻撃を仕掛け、それに対して士郎は
「チッ、男ならしゃんとしやがれって」
青タイツは士郎に対して助走をつけて刺しにかかる。これは殺ったかと思われたが、士郎が機転を効かせ持っていたポスターを広げ盾の様にしてその攻撃を何とかやりすごす。
「これでお仕舞いだ。今のは割りと驚かせられたぞ坊主」
そう言いながら今の攻撃の余波で倒れ込んでいる士郎に止めをさそうと近づいてくる。
「もしやお前が七人目だったのかもな。だとしてもこれで終わりなんだが」
「ふざけるな、助けてもらったんだ。助けて貰ったからには簡単には死ねない。俺は生きて義務を果たさないといけないのに、死んでは義務が果たせない。こんな所で意味もなく」
喋っている士郎に対して興味はもう無いのか、男は槍で止めを指すために突き出してくる。
「平気で人を殺すお前みたいな奴に!!」
士郎がそう叫んだ時、呼応したように土蔵の床の魔方陣が浮かび上がり光輝く。薄暗い土蔵が昼間の様に明るくなり、魔方陣の中心から人が飛び出し青タイツに斬りかかる。
「七人目のサーヴァントだと!?」
突然の攻撃に対応仕切れなかった青タイツは土蔵の外へと弾き飛ばされる。
突然の出来事に士郎はただ呆然とする。すると、今青タイツに斬りかかった者が振り返りこちらに視線を向ける。
良く見ると、驚く事にその人物は金髪の少女だったのである。
目の前の事についていけない士郎に対して少女は問い掛ける。
「貴方が、私の
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「どうやら、七騎が揃って早速サーヴァント同士で戦いが始まったようね」
「わかりました。私は直ぐにその現場へと向かうとしましょう」
「私もその場に向かった方が良いかね?」
「いえ、そこには私だけが向かいます。あなた方はこの場に待機で他に動きがあれば対処をお願いします」
「うちの主がその場の事を知れば恐らく何としてでも向かいたがると思うのだが」
「……ふむ、分かりました。では一緒に向かうとしましょう」