ダンボール戦機 禁忌の箱を守りし幻影 作:砂岩改(やや復活)
「なんて強さだ」
「カズが手も足も出ないなんて…」
一方的な試合に思わず唖然としてしまったバンとアミ。しかし次はアミとジンの試合。次の試合に向けて気持ちをつくっておかなければならない。
(カイトも次の次を考えて頑張ってる。私も頑張ってみせる!)
気合いを入れ直したアミは次の試合相手であるジンを見つめるのだった。
(次はジンとアミか…)
海道ジン。始めてみたときから気になっていた男だ、以前にどこかで会っているような。そんな不思議な感覚に陥るような人物だった。
そしてLBXの操作技術はカイトより上、おそらく機体スペックも上。中々、厳しい相手だろう。
「奴がイノベーターからの刺客…」
転校してきたタイミングといいどこか周りを拒絶している節がある。その時、ふと昔の自分を思い出した。両親を亡くし、全てに絶望したときの自分。アミが居なければ自分は恐らく壊れていただろう。
まぁ、どちらが勝つにしろ。決勝に上がればイノベーターの刺客に勝ったことになる。次の準決勝が大きな山場になるだろう。
ーー
続く第2試合、ジンとアミの戦いは一瞬で着いた。クノイチの先制攻撃をなんなく交わしてジ・エンペラーのハンマー《ティターニア》の重い一撃をかまされブレイクオーバー。まさに一瞬の出来事であった。
(アミがこんなに簡単にやられるのか…)
これを見ていたカイトも流石に驚きを隠せずに立ち上がる。次の試合、思った以上に厳しそうだ。
ーー
その後に行われた準決勝第一試合。山野バンと《箱の中の魔術師》仙道ダイキによる戦いは熾烈を極めながらもなんとかバンの勝利に収まった。
その際にアキレスの隠された機能。《Vモード》の制御に成功し更なるパワーアップを成し遂げたのだ。
(あれは俺が操られていたときに現れたモードか…)
ついこの前の話だが最近は出来事が濃すぎて大分前の事に感じる。そんな事を思いながらもカイトは準決勝第2試合のステージへと上がる。
「君とのバトル。楽しみであった、ここで戦えて嬉しいよ」
「僕も…今までとは違う相手だと分かっている」
特に返事の期待はしていなかったがジンは言葉を返してこちらを見てくる。
「ジ・エンペラー」
「陸戦型ガンダム」
ステージは遮蔽物の少ない草原。脇には泥の沼があるぐらいで特に変わったものはないステージだった。
《では、バトルスタート》
開始と同時に仕掛けたのはカイト。カイトはマシンガンを乱射しつつゆっくりと後退する。
対するジンは素早い動きで弾を全弾避けきると一気に間合いを詰めてくる。
(やっぱり早いか…)
シールドでティターニアを防ぐと目の前にいるエンペラーにマシンガンを撃ち放つが既に奴はもういない。背後に回ったジンはティターニアで背部をぶん殴り懸架してあったコンテナを吹き飛ばす。
「……」
体勢の崩れたガンダムに蹴りを入れるととどめにティターニアを振り上げる。やるかと思っていたがその程度、期待しすぎたか…。そんな思考がジンの頭によぎった瞬間。
陸戦型ガンダムがあり得ない機動をしてジ・エンペラーにラリアットをかましていた。
「なに!?」
背部スラスター噴射による強引な機体の立て直し、こんな芸当が出来るのはカイトのLBXだけだ。
「うおぉぉぉ!」
試合で初めて倒れたジ・エンペラーを見て湧く観衆。そのスキをカイトは見逃さない。マシンガンを構えるガンダム、後方宙返りをしながら立ち上がるエンペラー、その立ち上がりと同時にマシンガンを蹴り飛ばしていた。
だが彼は止まらない太股のサーベルラックからサーベルを取り出し逆手でエンペラーを狙うがティターニアで迎撃されてしまう。
「ふ…」
「っ!」
だがカイトの本命はそこではない左腕のシールドを突き立てんと振るうカイト。だがそれもエンペラーの右肘に阻まれる。
そして陸戦型ガンダムの左手にはもう一本のビームサーベル、サーベルを出力させビーム刃が伸びジ・エンペラーの胴体に直撃する。
「二刀流か…」
「場合によるがね…」
相変わらず高速で移動するジ・エンペラーのハンマー攻撃を二刀で受け止めると胸部バルカンでダメージを負わせる。多少、ひるんでいたがジンは構わずティターニアを振るい陸戦型ガンダムの胸部に直撃、飛ばされる。
「くっ!」
大きなダメージを負いながらスラスターを吹かしエンペラーにタックルをかますカイト。そしてビームサーベルでの追撃も忘れない。
正に一進一退の攻防を続ける。二人、それを見ていた観客たちも興奮し雄叫びを上げる。
(ここまでやるプレーヤーだとは…)
(装甲の分厚さが売りの陸戦型ガンダムの胸部装甲が一撃で歪むとはな。それにジンも強い)
(仕方がない。ここで手こずるわけにはいかない)
ジンはそう思うと目を見開く。するとCCMの入力を極限まで早める。突如、超高速で移動するジ・エンペラーにカイトは驚きながらも迎撃する。
(なんだこの速度は!?)
その光景に見ていたバンたちも驚く。
四方から絶え間なく続く攻撃、重いティターニアの一撃が陸戦型ガンダムを襲いボコボコにする。
(単純な速度。反応速度の差か!)
エンペラーの渾身の一撃を防げずにそのまま転がるガンダムはスパークを上げながらなんとか立ち上がる。目の前に迫るティターニア、それをシールドで受け流すとサーベルを捨ててエンペラーを投げる。
(くっ…。反応しただと)
軸手である右手で投げられたエンペラーは地面に倒れるが逃げられない、カイトが手を離していないからだ。
(速度差で突き放されたのならそれ以外で勝負だ!)
ハンマーは接近戦において最強の攻撃力を誇る打撃武器だ。だがその弱点は力のタメが必要なことだ。腕を押さえればハンマーの威力は格段に下がる。
エンペラーの頭部を膝で蹴り、ありったけのバルカンを浴びせる。ジンも黙っておらず固定された右腕を乞わさないように体を反転、陸戦型ガンダムにかかと落としを喰らわせた。
(くそが!)
大きなダメージを負ったガンダムはエンペラーの右腕を離してしまうとすかさず強力なティターニアの一撃が迫る。
「貰った!」
「させない!」
カイトはシールドでエンペラーの右手を攻撃、ティターニアを飛ばされたエンペラーは高速の回し蹴り。カイトの陸戦型ガンダムも同じく回し蹴り。両者の回し蹴りが炸裂し沈黙が訪れる。
「流石だ。海道ジン…」
倒れたのは陸戦型ガンダム。機体から青い光が発せられブレイクオーバーする。
《勝者、海道ジン》
「うおぉぉぉ!」
沈黙からの大歓声。観客たちが湧く中、カイトは手袋を外してジンに手を差し出す。
「完敗だよ。もしアルテミスに出るのであれば再戦願う」
「こちらこそ、実りある戦いだった」
学校では鉄仮面だったジンの口がほんの少しだけ笑っている。それを見たカイトは思わず仮面の中で笑みを溢す。
(こいつもLBXバカか…)
二人は握手を交わすと互いにステージを降りる。実に楽しい戦いだった。これこそLBXバトルというものだ。
個人的にかなり満足したカイトは椅子に座ると決勝戦であるバン対ジンの戦いを観戦するのだった。