ダンボール戦機 禁忌の箱を守りし幻影 作:砂岩改(やや復活)
「元々君には興味があってね」
「興味ですか?」
「うん、オリジナルのLBXを持っているからどこかのテストプレイヤーかと思ったらどこの会社のリストにも載っていないしそんな気配はなかった。他社に類似の製品もなかったからね」
「なるほど」
結城に連れられ立派なリムジンの席で座っていたカイトは対面する人物に敵意を感じなかった。
「君は優れたプレイヤーに加えてビルダーでもある。それを見てぜひ話を聞いて欲しいと思ったのさ。急なのは申し訳なかったけど君の正体が露見した以上、早めにと思ってね」
つまるところヘッドハンティング。
LBX製造メーカーでは最大手のタイニーオービットにスカウトされるとは思ってなかったカイトは期待に胸を膨らませているとタイニーオービット本社に到着。
するとそこには社長である宇崎悠介の姿があった。
「君が山茶花カイト君だね」
「はい、社長自らとは光栄です」
「突然呼び出したのはこちらだ。礼を尽くさなければならないのはこちらだよ」
そして応接間に通されたカイトは悠介と持っていたゼフィランサスを使って構造と開発経緯大まかなスペック等を手持ちの端末なので説明すると納得したように頷く。
「まさかアキレスレベルのLBXを個人が開発しているとは驚いた。しかもVモードに類似した機能まで再現するとは」
アルテミスを見ていても思ったが改めて説明を聞かされると悠介もその異常さをさらに実感する。
LBXに関してなら山野博士すら上回る逸材になるかもしれないと思えるほどに。
「中学卒業後の進路は決まっているかね?」
「いえ、まだ」
「ならタイニーオービットの専門学校を受験してはどうだろうか?」
「え?」
「君の実力なら難なく合格できるだろう。だがその試験次第では所属は専門学校と言うことになるが。本社の開発チームに加わってこのタイニーオービットを盛り上げて欲しい。勿論、それまでここの研究室を自由に使ってくれて構わない。ここは世界でもトップクラスの機材が揃っている、君の助けになるだろう」
「良いのですか?」
ただの中学生にしていい待遇ではない。
「あぁ、ただし高校からはしっかりと働いてもらう。それだけ約束してもらえれば私は君に全力で投資しよう」
正直なところ、家の機材では限界が来ていたのは事実上。だがここでなら時間短縮どころか眠っていた計画さえも現実に移すことができる。
「こちらこそ、ぜひよろしくお願いいたします!」
こうしてカイトと悠介は誓約書を交わし、悠介は最高の人材をカイトは最高の環境を手に入れたのだった。
ーー
「良いのですか?」
カイトが結城に案内され去った後、秘書の霧野の言葉に悠介は頷く。
「優秀な人材に金は惜しむ必要はない。彼の頭脳は世界を救うかもしれないのだから」
ーー
タイニーオービットの施設を自由に使えるようになったカイトはテンション爆上がりで早速、結城と話し合い作り上げるのだった。
「なるほど軽量による高起動化と多彩な武装か」
「ゼフィランサスをベースにしたストライダーフレームと考えたら楽ですかね」
「設計データを見させてもらったけどこれだと従来のクノイチやウチのパンドラに見劣りするかなぁ」
「だからこその多武装化です」
新型機は近接戦闘において圧倒的なアドバンテージを得るために近接戦闘の中でもさらに分割した考えを見せる。
機体同士が触れ合うような距離を超近距離、通常の剣で
などの間合いを中近距離、槍などの間合いを遠近距離としてこの三つの間合いに対応でき、かつ機動力を損なわないようにするのが目標である。
「でも装備させるのは武装ラックを使うとして機動力の低下は回避できないと思うけど」
「それをスラスターの増設で補います」
「力業だけどそれしかないか」
こうしてアルテミス終了直後からカイトはタイニーオービットに籠り、新機体の開発に注力していくのだった。
ーー
《エグザムシステムスタンバイ!》
キタジマ模型店にて二号機と強襲型ガンタンクによるタイマンは二号機の圧勝に終わり、悔しがるリュウはミカに再戦を申し込む。
そんな光景を見つめながらアミはまた行方をくらましたカイトのことに頭を悩ますのだった。
「カイト、まだ帰ってきてないのか?」
「そうなのよ、アルテミスから3日。一度も帰ってきてないみたい」
「それってヤバイんじゃないか?」
「でもカイトがイノベイターに狙われる理由がないのよねぇ」
カイトはイノベイターからしてみれば少し腕のたつプレイヤーなだけでそんなに重要人物じゃない。最初は人質にとられたのかと思ったがそれなら向こうから何かしらの接触がある筈だがそれもない。
「はぁ…」
「カイトがいないとお前も脱け殻みたいだな」
「そう?」
ーーーー
そして翌日、レックスがプラチナカプセルをイノベイターから奪還しバンに渡すとアミとカズも合流、拓也とも合流し解析を行うためにタイニーオービット本社に向かうことになった。
だがその移動中、拓也の車がトラックに囲まれデクーエースが姿を表すと車の制御を乗っ取られ連れ去られそうになる。
「この車ごと捕まえるつもりか!」
車のボンネットにのるデクーエースを排除しなければ反撃もままならない。全員が息を飲んでいると上空から一機のLBXが車のボンネットに着地した。
「あれは?」
「見たことないLBX」
ストライダーフレームと思われるその赤いLBXは背中からツインビームスピアを取り出しデクーエースに突然、機体を真っ二つにする。
制御を取り戻した車は難を逃れアミとカズも窓を開けてトラックにいるデクーエースたちにLBXを突撃させる。
その間にも赤いLBXはビームスピアでデクーエースを切り刻み、遠くにいたデクーエースを槍の投擲で貫く。
得物を失った赤いLBXを潰そうと接近するデクーエースだがバックパックに装備されていた二本のビームサーベルを抜刀、切り刻む。
「す、すげぇ」
「なんて機動性なの…?」
すると急に動きが悪くなる赤いLBXにアミの目が止まる。数秒するうちに元に戻り周囲を見渡すと次の敵を次々と破壊していく。
そして再び動きが鈍くなり、復帰すると先頭のトラックに辿り着くとハッキングし包囲網を解除する。
「よし!」
脱出した車を見届けたLBXはどこかに姿を消すのだった。
その赤いLBXの違和感をアミは黙って探るのだった。
ーー
「どうだい、ピクシーの調子は?」
「問題なしです。新型ビームサーベルも予定値をクリア、完成と言っても良いでしょう」
結城の言葉に満足そうに頷くカイトを見て内心、舌を巻いていた。
タイニーオービットの設備を自由に使わせたとはいえ、たった3日でパンドラに匹敵、いやそれ以上の新型機の製造まで漕ぎ着けた彼の技量にだ。
構想が固まっていたとはいえ、この速さでこの完成度は異常だ。
「もうすぐ主任たちも到着するから顔合わせするかい?」
「はい」
ーー
タイニーオービットに到着したバン達は悠介の案内のもとプラチナカプセルの解析を行っているとオーディーンと呼ばれるフレームとその専用機コアスケルトンのデータを見つける。
「そこに居るんでしょ?カイト」
「え、バレた…」
そんな時にアミが突然、声を出すと隠れていたカイトが姿を表す。
「カイト!」
「何でこんなところに?」
「あの赤いLBXはカイトが作ったものでしょ?」
あの赤いLBXが空中で敵を迎撃していた時、体を動かしてないのに姿勢を修正していた。あれはカイトのLBXによく見られる姿勢制御バーニアの恩恵だ。
それに基本的に一つのLBXに一つの武器と言う考えが主流なのに対してあの赤いLBXは多数の武器を柔軟に使い分けていた。
「でも何で俺がここにいると?」
「コントロールポッドを使ったスパークブロード通信で助けてくれたのよね。証拠もある」
「証拠?」
「スパークブロード通信は超高電圧の電磁波には弱い性質を持つ。あのLBXは2分40秒間隔で5秒間、動きが鈍っていた。それはこのタイニーオービットを走るリニアモーターカーと同じ間隔。最新の車両であるデルタ700系車両は高出力のプラズマ地場を発生させて走行する。だからあのノイズはここからコントロールされてないと発生しないはずなのよ」
「参ったなぁ」
サプライズで渡すつもりだったのに完全に看破されてしまったカイトは照れくさそうにピクシーを出す。
「ガンダムピクシー。あのゼフィランサスを基礎として高起動格闘特化仕様に改造した新たなガンダム。大まかな調整はアミ専用にカスタマイズしてある。後は本人による細かい調整がいるけど」
「え?」
突然の言葉に驚くアミはピクシーを見つめる。
「私の?」
「ずっと前から約束してた最高のLBXだ。本当は1ヶ月ほどかかると思ってたんだけどここの設備を使ったら3日でできた」
なぜ自分がタイニーオービットで好き勝手やってるのかはおいおい説明するとして、ピクシーをアミに手渡す。
「よし、この機体を説明するからシュミレーションルームに行くぞ!」
「ちょ!カイト!?」