THE IDOLM@STER  二つの星   作:IMBEL

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一応、この話の時期はアニマス1話のプロデューサーが入社して、まだ数日後という設定です。そのため、まだ伊織たちは竜宮小町には入っていません。
それとお気に入りが異様に伸びていることにびっくりしました。ついこの間まで2ケタだったのに…。



第4話 候補生と仲間たち

4月。既に新学期も数日後まで迫り、始まりを感じさせるこの季節。どんなことでも笑い飛ばせる、そんな気分に自然にさせてくれる、そんな気がする。

そして今日、ついに朱里と美希は765プロのアイドル候補生としてデビューすることになった。

だが…。

「…」

「どうしたの朱里?すっごい似合っているのに」

鏡に映っている自分の姿を見ながら、朱里は顔を引き攣らせている。

(流石にこれは…笑えない)

鏡には美希が普段、愛用しているスカートを履いた朱里の姿があった。

「私服までスカートってのは…ちょっとなぁ。ジーンズじゃダメか?」

「絶対ダメ!まったく、朱里はすぐズボン履きたがるんだから」

(勘弁してくれよ…)

正直、学校の制服は「しょうがない」と割り切れるのだが、私服までスカートなんて堪らないほど恥ずかしい。しかもロングじゃなくてミニスカートだし。どんな罰ゲームだ?

「まったく」と美希がぶつぶつ言いながら、はい、と何かを手渡す。

「これ読んで勉強しなきゃダメなの!!アイドルやるんだからスカートくらいで照れてちゃダメ!」

美希から渡されたのは美希が愛読している女性向けのファッション雑誌だった。中を見ると、ご丁寧に下線やマーカーも引いてある。

「…分かったよ」

渋々、美希から雑誌を受け取り、自分のバックに入れた。

「それじゃあ、朱里!早く行こうなの!ハリーハリー!!」

「…ちくしょう」

そして、すぐ、朱里たちは765プロへと向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

765プロ内では現在、全てのアイドルと社員が集まり、大いに賑わっていた。

「ねーねー、兄ちゃん。遊ぼうよ→!!」

「…あー、真美。仕事がまだあるんだ、あっち行ってくれ」

「暇だよー!兄ちゃん!!」

765プロはまだまだ駆け出しの芸能事務所。そのためか、仕事が恐ろしいほどなかった。

それは先日、新しいプロデューサーが入っても状況は変わらず。ほとんどのアイドルは仕事より事務所でのお留守番の時間の方が長いという異例の事態となっている。

「あー、諸君!!全員そろっているかね?」

そんな中、全員の前に社長が姿を現した。

「大丈夫です、全員そろっていますよ」

小鳥が全員いることをしっかりと確認する。

「あずささん、今日は珍しく遅刻してませんね」

「ええ、今日は朝5時に家を出ましたから~」

「5時!?」

社長はがやがやと騒ぐアイドルたちを手拍子で黙らせる。

「さて、君たちは知らないだろうが…本日をもって、新たなるアイドル候補生が2人、この765プロの一員となる!!」

一瞬の沈黙の後、アイドル全員がドッと騒ぐ。

「「「「新人!?」」」」

「うむ、今回の2人はなんと姉妹!しかも音無君と律子君が選考に非常に悩んだほどの逸材だ!!」

「えー!?姉妹!?真美たちとキャラ被ってるじゃーん!!」

「ほんとほんとー!!」

「いやいや、2人は1つ齢が離れていてだね…双子というわけではないのだよ」

「どんな子なんだろう、真ちゃん?」

「うーん、きっとフリフリで可愛い子だよきっと!」

「ねーねー、伊織ちゃん!律子さんが悩むなんて凄い人なんだよね!!」

「ふん、きっと見かけだけよ。このスーパープリティな伊織ちゃんに敵うアイドルなんている訳ないでしょ?」

「はいはい、みんな静かに!!」

律子が思い思いに喋るアイドルたちを黙らせる。

「では、私は彼女たちを呼んでくるから、ちょっと待ってくれたまえ」

そういうと、社長は扉の向こう側へと消えていった。

 

 

 

 

 

 

「ハードル上げるなよ社長…」

扉越しで聞こえてくる社長の発言に戦々恐々な朱里。周りも勝手に盛り上がっており、非常に出て行きにくい空気が生まれている。

「逸材だって朱里!美希たち期待されているってこと!?」

「…絶対勘違いしてるって。姉さんだけならともかく…」

ピョンピョンと跳ねる美希とは対象に頭を抱える朱里。

「待たせたねぇ、2人とも!」

「あ、はい…」

「みんなの準備は万端だよ!さあ、バッチリ決めてくれよ!」

「え、えっと……」

朱里が戸惑っていると、美希がギュッと朱里の手を握り締める。

「はーい、分かりましたなの!朱里、はやく!」

「ちょ、まっ――」

「さぁ、みんな!この子たちが新しい候補生だ!」

結局、美希に引きずられる形で事務所に入り、765プロのメンバーとの初対面となった。滅茶苦茶格好悪い。

(うわぁ…みんなめちゃくちゃこっち見てる…)

当然といえば当然だが、全員が一斉にこっちを見ている。しかもかなり奇抜な入り方をしてしまった。目立つのも当然か。

「それでは美希君、自己紹介を」

「はーい!美希は星井美希なの。14歳の中学3年生!よろしくなの!」

「中学3年!?」「胸が大きい…」「金髪だぞ…外人かなんかなのか?」「くっ」

美希は周りの声を聞きながら、「えへへ」と笑い、その場でくるりと一回転する。

「さあ、朱里君も」

「…えっと、星井朱里です。齢は美希姉さんの一つ下の13で、中学2年生です。よろしくお願いします」

「うわーキレイです!!」「…こっちも胸、大きいわね」「まあ、なんと可憐な…」「くっ!」

(褒められてるんだけど…なんか複雑だ)

綺麗…。みんなには決して悪気はないんだろうけど、何か複雑だ。とりあえず、頭をぺこりと下げた。

「~!!」

と、その時、一人の少女がバッと飛び出し、自分たちのほうに近づいてくる。

前髪を上げて大きく額を見せる長髪の少女だった。その手には可愛らしいウサギが握られている。

(ウサギの…ぬいぐるみ?)

外見だけ見れば実に女の子らしい、可愛らしい様子の少女だが、どこか不機嫌な顔をしている。

ピタッと朱里たちの目の前に止まると、ビシッと2人を指差す。

「…私は、アンタたちなんかに負けないから!!」

「!?」

いきなり朱里たちを、指差し、宣戦布告する少女。

朱里は突然の出来事に茫然とし、美希はぷっと噴き出した。

「あはは、でこちゃん、面白いの!!」

「~!でこちゃん!?あんたねぇ、先輩に対して…!!」

「こら伊織!初対面でそんなこと言わないの!それに765プロでは先輩風は吹かさない約束のはずよ!?」

律子がじろりと睨みつけると、伊織は「分かったわよ」と言い、渋々戻っていった。

「えっと、朱里さん。とりあえず、あなたは今日、伊織たちと一緒にダンスレッスンに参加してもらいます。美希さんは春香たちとボーカルレッスンへ」

「はい」

「はーい、分かったの、律子…さん!」

たどたどしい敬語を使いながら美希は返答した。

「…こんな様子で本当に大丈夫なんですかね、社長」

「なあに、大丈夫さ。はっはっは!」

プロデューサーの呟きは社長以外、誰にも聞こえることはなかった…。

 

 

 

 

 

 

…ダンスなんて簡単だ。そう思っていた数時間前までの自分に説教を入れたくなった。

「はい、そこまで!」

レッスンスタジオの一室で、律子の声が響き渡る。その瞬間、メンバー全員の動きが止まった。

現在、朱里たちはレッスンスタジオで基礎的なダンスレッスンを受けている。

メンバーは朱里、先ほど朱里たちに絡んできた少女「水瀬伊織」と事務所最年少の双子姉妹「双海亜美」と「双海真美」、ツインテールが似合う元気いっぱいの少女「高槻やよい」の5人。講師にはトレーナーではなく律子が担当してくれた。

朱里はダンス経験は学校の授業でやった創作ダンスくらいしかない。だからその延長戦かな?と舐めて挑んでいた。

だが、やり始めて分かった。これはとんでもなく難しいと。

まず、朱里は頭の中ではどう動けばいいか分かっている。だが、体がそれについてこないのだ。動きはぎこちなく、ステップはバラバラ。足が思うように動かない。

周りに合わせようとすると、今度は腕や顔が下がっているとの説教が飛ぶ。それらを一度に守ろうとすると、一気に体力が持っていかれる。

(これに歌まで歌うんだろ?どんだけみんな体力あるんだよ…)

「だ、大丈夫ですか?」

「…なんとか」

やよいが心配そうに声をかけるので、とりあえず手を上げてアピールするが…全く説得力が感じられない。

いや、この朱里の姿を見れば誰だってそう思うだろう。それほど今の朱里の様子は酷かった。

手足はガクガク、顔は真っ赤、体中から汗が滴り落ちている。

終盤、朱里は脱水症状でも起こしたのかと思えるくらいに疲労困憊になっており、危うく律子からストップがかかりそうになるほど動きがやばかった。

伊織は呆れた表情を浮かべ、朱里を見る。

「…律子、こいつ本当に逸材なの?ステップはバラバラ、顔は下向いているし。とんだ期待外れの新人ね」

「!ちょ、ちょっと伊織!まだ入って初日の子にそこまで…」

慌てて律子は伊織の発言を止めるが、伊織の小言は止まらなかった。

「…!」

悔しいが、伊織の発言は正しい。基礎の時点でこのありさまなのだ。こんな有様では候補生とはいえ、アイドルを名乗る資格すらないだろう。怒鳴り返す気力もない朱里はグッと歯を食いしばることしかできなかった。

「…ま、律子のレッスンを最後までやりきったのは、褒めてあげるけど。根性まで無いんじゃどうしようもないもんね」

「ぬふふー、いおりんツンデレだ!」

「ツンデレツンデレ→!」

「うるっさい!いおりん言うな!!」

亜美、真美にからかわれると、伊織は顔を赤くする。…どうやらあだ名で呼ばれるのは慣れていないらしい。

「はいはい!喋るのは後にして!!時間が押しているから、しっかり柔軟とマッサージをみんなで行う!!それで今日のレッスンは終わり!!」

そう言われると、伊織はすぐさまやよいと組を作り、さっさと朱里の反対側へと行ってしまった。

(あの野郎…)

…仕方ないので、朱里は双海姉妹に混ぜてもらうことにした。

「双海さん…あいつさ、私に恨みでもあるのか?」

朱里は目線の先にある、伊織を睨む。

「…いおりんね、たぶん悔しいんだと思うよ」

「…悔しい?」

「うん」

マッサージをしてもらいながら、朱里は真美の会話に食いつく。

「同じくらいの年でそれだけスタイルがいい子なんていないから」

「…私が?」

「うん、凄いよ。ボン、キュ、ボーンって感じ」

「…そうかぁ?」

スタイル…か。確かにそうかもしれない。何か体育とかやっている時も男子の目線は自分の胸や足にある気がする。ブラジャーもサイズが同年代の子よりも大きいのを使っているし、ヒップも大きいかもしれない。

(自分はスタイルなんていらないんだけどなぁ。胸揺れるし、邪魔なだけだし。あの青髪の人くらいの胸のサイズくらいで十分なんだけどな…)

そういえば、さっきの自己紹介の時も、あの人の目線はずっと胸にあったし。…胸なんかいらないのに。

すると、今度は隣にいた亜美が会話に入って来た。

「それにね、亜美は思うに、いおりんは嬉しいんだと思うな」

「…嬉しい?さっきは悔しいっていってたのに?」

「律ちゃんってさ、結構厳しいんだよ。めったに褒めないし。だからいおりんはあかりっちのことを『律ちゃんが選んだ逸材』って期待してるんじゃないかな?」

…なるほど。だからレッスンの様子を見て失望した、と。あの醜態では怒鳴りたくなる訳だ。

ともすれば、さっきの発言も本気で言った訳ではなかったのか?あの言葉は朱里を奮い立たせるための演技、朱里に気合を入れるためだけのただの行為ということなのだろうか。その証拠に最後には褒め言葉を残しているし。

(…ちくしょう、何か、格好悪いな)

精神年齢ではこっちが上のはずなのに。なんか…もの凄くかっこ悪い。

「…?そういえば…あかりっちって何?」

「あだ名だよあだ名!!それに双海さんなんて呼ばなくていいよ!ちゃんと名前で呼んで!!」

「それに苗字だとどっちを呼んでいるのか分かんなくなるしね→!」

そう言うと、2人はグイッと朱里の体を持つ。

「はい、柔軟いくよ→、亜美、そっち持って!!」

「了解、真美!!」

「ちょ、ちょっと待っ…!!うわ、痛い痛い痛い痛い!!!」

「うわぁ、体固いね、あかりっち」

「もっと体柔らかくないとダンスは踊れないよ?もっと柔らかくしなきゃ」

グイグイと朱里の体を押す2人。たまらず、スタジオの外に聞こえるほどの大声で叫ぶ。

「痛ってえええええ!!!」

「うるっさいわよ、あんた!!」

…そんなこんなで朱里の初レッスンはこうして終わったのだった。

 

 

 

 

 

 

(あー、こりゃ絶対、明日筋肉痛だ)

体の節々が痛みながら朱里は事務所へと報告に戻った。美希はまだレッスンから帰っていないらしく、事務所にはいない。

(…姉さんはまだいないのか)

「す、すみませーん!」

「?」

美希を迎えに行こうと、事務所を出ようとした所、朱里はやよいに呼び止められた。

「…えっと、高槻さん?で大丈夫だよね」

「はわっ、えっと…やよい、でいいですよ!齢、同じくらいですし」

「…じゃあ、お言葉に甘えて…やよい。どうしたんだ?」

口調を砕けたものへと直すと、やよいはぱあっと明るい顔になった。

「はい!あの…明日から一緒に頑張りましょうね!!」

そう言うとやよいは、がばっと両手を後ろに跳ね上げながらお辞儀をする。

「…!うん、そうだな」

そのかわいらしい仕草にどこか笑みを浮かべてしまう朱里。

「えへへ…じゃあ、手を上げて貰ってもいいですか?」

「手?」

「ハイ、ターッチ!」

スッと手を上げると、やよいは勢いよく自分の手へとタッチする。

「イェイ!」

ハイタッチが終わると、やよいは「お疲れ様でしたー!」と言って、朱里が見えなくなるまで見送ってくれた。

(…もうちょっとだけ…頑張ってみるかな)

レッスンで受けた傷が少しだけ癒されたのを感じ、朱里は歩き始めた。

こうして、朱里のアイドル候補生としての初日は終わりを迎えたのだった。




とりあえずは中学生組との交流です。伊織と仲良くなるのはもう少し先かな?
朱里のスタイルは…千早が嫉妬するくらいだと思ってください。

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