真剣で格闘士(グラップラー)に恋しなさいッッ! 作:バランスのいい山本
『俺は主役の初戦闘描写を書こうとしたら、ほぼオッサンの話で終わっていたッッ』
何を言ってるのか分からねェと思うが、俺も何をされたのか分からなかった……
神心会好き乙だとかバキ好き乙だとか、そんなチャチなもんじゃあ断じてねェッッ
もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ……
と、言う訳で戦闘パートは次回になりますッッ
そしてついに、あの男も今作に登場ッッ
ヒントは「キャー! 私のスーパーマーン!」ですッッ
それと同時に、衝撃の設定改変がありますッッ
詳しくは本文と後書きを見て下さいッッ
【闘い】は太古より人類に刻まれた本能である
人類が人類になる以前から持っている行動原理の1つだ
生活の糧を得るために、他の生物と闘う
有利な環境を手にするために、他の集団と闘う
勝者はそれを手に入れ敗者は最悪の場合、命を落とす
だから、勝つために人は頭を使った
より合理的な戦略を考え、より効果的な武器を作る
時には、効率的な肉体の鍛錬に勤しんだりもした
そうして長きに渡り体系的に、あるいは経験的に積み重ねられた勝つ技術が『武術』と呼ばれ、やがて『格闘技』とも呼ばれるようになったのだ
ならば、その中でも一番優れた武術とはなんであろう?
一番強い格闘技―――――地上最強の格闘技とは一体何だ?
長い年月をかけて多くの人に議論されているこの議題
様々な人が様々な説を述べており、話題が尽きる事はないだろう
そして、ここにも1人
一貫してこの説を唱える男がいた
―――空手最強説―――
『空手こそ地上最強の格闘技である!』
その男の言葉を信じ、集まった人の数……およそ100万!
最強を目指す者達にとって、避けては通れぬもの……
それがこの地上最大、実戦派空手の格闘技団体―――神心会なのだッッ!!
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とある川神市内の大きなビル
その建物内にある道場の中心に、空手の道着を着た1人の男が立っていた
道着の襟の後ろには太い字で館長の2文字が刻まれている
周りには長方形の木片を持った屈強そうな若い男が4人
中心にいる男は見たところ、歳は50代だろうか
身長は170後半。ごく一般的な男性の背丈だろう
しかしその男の身体、間違いなく……太いッ
首・肩・腕・胸・腹・脚・手足の指にいたるまで太っているッッ
鍛えこまれた筋肉の造りがそうさせているのだ
その体重、うっすら脂肪を残し110キロ!
さらに取り分け人目を引くものが、その男にはある
毛髪が一本もない……俗に言うスキンヘッド
そして、右目を覆う黒い眼帯である
男の名は『愚地独歩』
この人物こそ、世界最大の勢力を誇る空手道団体・神心会の館長であり、創始者なのだッッ
「こォォォォォォォ――――」
足先を僅かに内側に向け、空手の呼吸法『息吹き』と共に顔の前で交差していた両腕を開いた独歩。その道場内に張り詰めた雰囲気は門下生だけでなく、見学に来ていた少年部の子供達にも伝わり皆、口を真一文字に閉じて彼を見つめている
「カッ!!!!!」
その一声と同時に独歩が滑らかな動きで空手の構えをすると、瞬く間に周りの男らが持っていた木片を貫手で、手刀で、足刀で、最後は頭で見事に切断した。『折った』のではなく『斬った』のだ。当然、断面に接着剤などが塗られている訳もなく、独歩のもつ空手の技術がそれを可能としたのだ
「次ィ!!!」
独歩の掛け声と共に門下生によって次に用意されたのはテーブル、そして大きな氷の塊である。キンキンに冷えてある氷からは水も滴っておらず、湯気ならぬ冷気が立っていた
独歩は氷の前に立つと壁とも言える氷の表面に拳を合わせる
「ぬんッ!!!!!」
一瞬の静寂の後、氷塊へ放たれた独歩の正拳
―――――ピシ…ッ と
そこから始まる亀裂が氷全体を駆け抜け、独歩が構えを後ろに向けた時には、机から割れた氷の欠片が床へと崩れ落ちていた
「(や、やっぱスゲーな館長……あれから3年も経ってるってのに、全く衰えちゃいねぇぜ)」
門下生として演武を見ていた準は感嘆の息を吐いて独歩を見つめていた。比べても仕方ないのかもしれないが、やはりこうも実力の差を見せつけられると神心会空手の有段者である準も悔しくないと言えば嘘になる
そして独歩が演武の締めくくりとして用意したのは、2つのコンクリートブロックの間に架けられた1本の針金である
「(これは俺も初めて見る………針金切り)」
細い針金といえど紛れもない金属
曲げる事は容易くとも切るとなると話は全くの別物だ
皆の視線がより一層独歩に集まる中―――
「つッ!!!!!」
振り落とされた右の手刀によって小さな金属音を立てながら、針金は一刀両断された
「ハハ……挨拶としちゃまずまずってェところだな」
自身に贈られる拍手喝采に独歩はニンマリと笑顔で答える
「へェ~ッ、日本刀でもこうはいきませんよ。やっぱり館長も怪物だな」
「おだてるねィ、井上。そんなことしたって
「イヤイヤ……そういう意味で言ったんじゃないんですけどね。久々に館長が支部に来てくれたと思ったら、こうもアッサリ演武を生で見せてくれるとは思いもしなかったもので……」
「なァに、せっかく少年部のガキ共も見てるんでェ。このスーパードッポちゃんのカッコいい所を見せてェじゃねェか」
「まァ館長の事だから、そう言うとは思いましたケド……実際は違いますよね?」
「おうよ、まァアレだ……ただのケジメだよ。なんせ
「確かにそうですが……だからって館長がッ……」
「あ、あの!……館長、少しお話よろしいですか……オス」
2人の会話へ入って来たのは、少年部に所属している小学生低学年くらいの小さな女の子だった
「おう、どうした嬢ちゃん? 俺らに質問か?」
「オス、あの……さっき見してくれたのって……空手、なんですよね?」
大きな体格で見下ろす独歩に動じず、少女は聞きたい事を口にした。少女を含めた子供達からしてみれば先程の演武で独歩が行ったことが現実離れし過ぎており、あれは自分達がしている空手ではなく、ただ独歩の馬鹿力でなした力技ではないのか……と疑問に思ったのであろう
「ハハ、当然空手だわな。見た通り空手ってのは手足を武器化することにある。気の遠くなる程の永い時間をかけ、嬢ちゃんの想像を超える執念をもって鍛錬の日々を経るんだ。そうして手足はやがて【鈍器】と化し……さらに切れ味を帯びて、遂には【刃】と化す。 武器なんざァ用意しねェ……手に何も持たぬことを旨とする道―――――――だから空手って言うンでェ」
……って、嬢ちゃんにはチョット難しすぎたか? と、最後に言うと独歩は女の子の頭をワシャワシャと撫でた
「なんとなくですけど、分かりました……オス。 なら私でも……館長みたいに強くなれますか?」
「おうよ、女・子供でも大の男にケンカで勝ち得る―――――これがそもそもの空手術だ。そのうちお嬢ちゃんもソコにいる坊主なんざビッシィーーーッとやっつけちまうかもなァ?」
「だな。そもそも俺は小さな女の子相手には手も足も出ないっての。幼女は手折るものじゃねェ……愛でるものだからなッ」
「こら井上、邪念をこじらせるンじゃァ……ないッ!」
「あべしッ!?」
べチッッ、と女の子の耳にも届く程の強烈なデコピンの一撃を独歩からもらった準は額を抑え、地面にのたうち回る
「少しは自重しろやおめェさんはよォ……」
「す、スゴイ……
「どうでェ、
片膝をつき、起き上がろうとしていた準に向けて独歩は正拳突きを寸止めした
「………ッッ」
「人間なら無論一パツ、正確に急所を射抜きゃ牛だってイケるぜ?」
独歩の拳を間近で見た女の子は思わず生唾を飲み込む
『見た』と言うと語弊があるかもしれない。彼女は井上の前で止まった拳を見ただけで、正拳突きの動作は見えていなかった
「か、館長ォッ!」
と、そこへ大急ぎで駆けつけたのは同じく神心会門下生の寺田である。顔から汗を大量に噴き出しており、呼吸も少し荒い
「どうしたってェんだ? そんなに慌ててよう」
「そ、それが……本部の人間だと名乗る男が急に
「どうも、邪魔するぜェ。押ゥ忍ッ!」
道場の入り口からズカズカと中に入ってきたのは、空手着に身を包んだ加藤清澄だった
「あ~……もうそんな時間だったな、確か」
道場の壁に掛けてある時計を眺め、井上が呟く
「愚地館長、3年振りの再会ッスね。ごぶさたァ……」
「加藤ッッッ……オマエ、今までどこ行っとった?」
「日本各地の支部で空手を磨いてたンスけどね……今日はチョット懲らしめる奴がいてよォ。悪いが少しの間、
「なるほどね……あいかわらず好きだなァ、オメェも。井上、琢磨に加藤が到着したと伝えてこいッ!」
「押忍ッ」
準は道場を出ると、すぐさま上の階へと走っていった
「へェ、逃げずに来たのか……いい度胸してるじゃねェかアイツ。館長も見ていくかオレの空手? すぐ終わらせてやるからよッッ」
「加藤、ケンカするのは構わねェが……組織を背負っとるなどと、大それたことは考えんでもよい」
「……はァ? そいつァ、どういう意味なンだい?」
「立ち会えばワカる……琢磨は邪心をもって勝てる相手じゃねェって事がな。妙な功名心に囚われると、頭っから喰われるぞ」
それだけ言い終えると、独歩は他の門下生を集めて試合の準備に取り掛かるよう指示を出し始めた
「お、面白ェ……上等だぜェッッ!!」
持っていたペットボトルを放り投げ、上段蹴りで木端微塵にしながら加藤は気合を入れる。それは、まるで雄叫びをあげる獰猛な『獅子』を彷彿とさせた
今、【神心会のデンジャラスライオン】と呼ばれた男が琢磨に牙を向くッッ
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その頃、琢磨は独歩らがいる第一道場の上の階にあたる第二道場にいた。加藤がやって来る2時間以上も前に到着していた彼はここで朝の鍛錬をしていたのだ
現在は親指で支えたまま、逆立ちの姿勢でヨチヨチと道場の隅を回っている。そして、同じように親指の逆立ちをしていた『源 忠勝』を抜き去った
「オッシッッ!……これで、一周抜かし、達成だな、タツ?」
「チッ……10周まで、あと2周だって、のに……クソ!」
「オイ、負けたからって、最後までやりきれよ? んで、昼飯は、お前の手料理……な?」
「あぁ……分かってる。どうせ、親父も……食うんだ、大した手間でも……ねェしよ!」
ぱっと見は近寄りがたく、ぶっきらぼうな言動が目立つ忠勝だが、何だかんだ言いながらもこうして琢磨と一緒に鍛錬しているあたり2人の仲は良く、そして心根は良い奴である
その後、2人が周回をし終えて床に座り込む
全身、汗でびっしょりである。既に床は2人の汗で水浸し……いや、汗浸し状態だった
「ッたく……少し、呑気過ぎや……しないか? これからあの、加藤清澄と試合するのに、よ……」
「呑気? そうでも、ないさ……。なんせ、隣には……虎殺しの息子が、いるんだからなァ?」
「ハッ……とんだ、買い被りだな。俺はただの、出来の悪い……空手家だ」
「……………」
――――――や、闘(や)りてェッッ!!!
俺には分かるッッ
こいつの強さ……加藤の比じゃない事ぐらいッッ
花山を抜いて、同年代の男にコイツ並の強ェ奴ァ……俺は知らねェッッ
出来る事なら……俺はお前と闘ってみたいッッ
コイツの空手、受けてみたいとさえ思っているッ
そして、今すぐコイツにッ……拳を打ち込みてェッッ
「テツ、落ちつけ」
「え……ッ」
「試合を前に高ぶり過ぎだ。俺に対する殺気が漏れてるぜ?」
―――――――――俺以上にな
「押ー忍ッ 邪魔するぜェ。 ボス、とうとうあの男が来たぜ!」
階段を駆け上がり、第二道場に到着した準が琢磨に加藤到着の報を伝えたのは、ちょうどそんな時であった
作者コメント
愚地独歩
眼帯装備のドッポちゃん、まじこいに参戦ですッッ
オーガのいないこの世界で誰が彼の右目をヤッたのか……
勘が鋭い人なら分かると思います……ホラ、あの男ですよ?
しかし、強さは当然マスタークラス。ビームや気弾も廻し受けで完全防御ッッ
『矢でも鉄砲でも火炎放射器でも持ってこいやァ……』
源 忠勝
さァ……問題はこのツンデレですよね?
お分かりの通り、なんと……この作品……
克己がでませんッッッ
理由としては、この世界での彼の強さが非常に中途半端である……という事です
一子やクリスら一般武士娘になら圧勝すると思いますが、果たしてマスタークラスの連中相手に彼の空手が通用するのか……?となると思わず首を捻ってしいます(あくまで個人的見解ですが……)
どうしても天神館の鍋島のようなポジションになってしまいそうで、それだと登場も活躍も期待できず……あの真・マッハ突きも一発撃てば腕が無くなるって……いつ使えばいいのよアレ!?
そんな訳で非常に扱いが悪くなる愚地克己さんを見たくない自分は、断腸の思いで登場を辞退させるという結果にしましたッッ 克己が大好きな皆さん、真剣でスイマセンッッ
そして、克己に代わり、独歩の養子ポジションに入ったのがタッチャンになります。イメージとしては克己ではなく、餓狼伝の『丹波文七』に近い感じになるかと
強さも琢磨、花山に続いて男子学生中では最強クラス
2-Fで脅威になる存在は間違いなく彼になるでしょう