どうやら俺はブラッキーになってしまったようだ。 作:ususiojagar
ポケットモンスター、縮めてポケモン。
本当ならばあるはずもない星の、不思議な不思議な生き物。
その数は100、200、300、400、それを知るものはいるのかもしれないが、俺は知らない。
しかも、海やら山やら町やら、いたるところにその姿を見ることができるらしい、そんな星があったらだが。
あ、気が付いたらポケモンの世界の、イーブイになっていました。
もうね、朝起きたら全身モフモフ三等身になってんだもん。
そりゃあ、頭の中に残っていたワンフレーズを呟きたくなるというものですよ。
というより、未だに夢じゃないのかっていう疑問が心の奥底に残っている。
「イーブイィィこれからよろしくね~」
この頬をずりずりされる感覚……現実味がありすぎるんだよなぁ……。
「ユズちゃん。名前決めてあげたら?」
「んとね、じゃあマナブ! よろしくねマナブ!」
あー、現実世界と同じ名前だぁ。
―――――
あれから1週間。
俺は毎日ポケモンスクール的な所に、飼い主のユズちゃんと一緒に通い詰めている。
「マナブ避けて!」
前方から迫る、同じくイーブイ種のたいあたり。
俺は避けようとするが避けきれず、腰にヒットしてしまう。
「マナブいまよ! 『たいあたり』!」
腰の痛みで、たいあたりが出来ない。
「続けて『たいあたり』よ! マロン!」
「ブイブイ!」
相手のイーブイ、マロンがひるんでいる俺にもう一度たいあたり。
俺は目の前が真っ白になって、ぶっ倒れた。
「ユズのポケモンが戦闘不能! よって勝者チヅル!」
「大丈夫マナブ!?」
抱きかかえられて、意識が戻る。
それにしても、酷い負け方をした。
正直に言うが、このような酷い負け方をしているのは今日だけじゃない。
もうユズちゃんに出会った次の日から、ほぼ毎日似たような負け方をしている。
何と言ったら良いのだろうか?
野生の感のようなものが俺には絶望的にかけてるのだ。
例えば「躱せ」「避けて」などと言った命令を下されても、反射的に躱すことができない。
結果、相手の攻撃をもろに受けるし、攻撃を受ければどんな攻撃であれ痛みで少しの間行動できなくなってしまう。
更に言えば、まだ俺はこの体に慣れ切っていないのか、4足歩行に少し違和感を覚えている。
小さな敗因は沢山あるが、大きな敗因はこれらだろう。
「……今日は帰ってゆっくりしよっか、マナブ」
「そんなことですから、貴方のそのポケモンはいつまでたっても役立たずなのですよ? ユズさん」
先ほどの勝負に勝ったチヅルだ。
おかっぱ頭に丸メガネ、典型的な委員長タイプなのだが、俺は嫌いだ。
ユズはどうやら、スクールではいじめられているらしいのだ。
あと2週間もすれば卒業で、冒険に出ることになってはいるが、これではあまりにもかわいそうだ。
「で、でも、もう流石に戦えないよ……」
「良いですか? 私のマロンを見て下さい? マロンは、厳選に厳選を積んだ結果、ほぼ最高レベルの才能を持って生まれたポケモンです。そんなマロンが努力もせずに勝負に勝てる、それはご理解いただけると思います。でも、才能もないポケモンごときが努力もしないで、この私とマロンに勝てると思っているのですか?」
才能か……。
これはポケモンをプレイしていた時の俺への報いだろうか?
少なくとも俺は、ポケモンをガチでプレイしていた訳じゃなかったので、厳選という行為の重要性を把握しているわけじゃない。
でも、ポケモンの話しをする時に友人が厳選をしているということに、嫌な感情を抱いたことはない。
しかし、実際にその厳選をされる立場になってみるとなんと皮肉なことだろうか。
俺達は厳選するトレーナー側から、まさに厳選されるポケモン側に移ったのだ。
もちろん、1週間過ごして理解していることだが、この世界では厳選という行為を嫌うトレーナーが大多数であるのは事実ではある。
ではあるのだがな……。
ユズちゃんの口元が歪み、俺を抱きしめる腕に力が入る。
だけど、ユズちゃんは絶対に口を開かない。
この世界では、少なくとも……いやこのスクールにおける学校カースト制の中においては、強いことこそが正義なのだから。
その後5分程、チヅルの取り巻きも加わってアドバイスという名の自慢大会、そしてユズちゃんの非難会が行われた。
まったくどの世界に行っても、こういう厄介ごとというのは付き物らしい。
誤字脱字等がありましたら感想欄にて詳細にお願いします<(_ _)>