モンスターハンター Re:ストーリーズ【完結】   作:皇我リキ

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恐暴竜と最後の決着

 この島に君臨する三つの王。

 海の王ラギアクルス、陸の女王リオレイア、空の王リオレウス。

 

 その三つすら凌駕するこの島に現れたイレギュラー。

 

 

 

「本来なら、少なくとも上位ハンターが四人でしっかりと準備を整えて狩るモンスターですよ。それでも犠牲が出るのが当たり前で、本来ならシノアさん級のハンターを四人呼んで対処するのが当然の所。それをアランさん一人でどうこうしようというのは無謀だと分からない訳じゃないでしょう? 特にアランさんはあのモンスターの恐ろしさをその身を持って知っている筈です。万全だったあなたならともかく、片腕もないのにどうす──」

「俺は一人じゃない」

 いつもの調子でペラペラと言葉を並べるウェインの口を押さえて、俺は周りを観察する。

 

 

 以前火竜の巣であった場所は荒らされ、残っていたのは見覚えのある形をした牙。

 

 

 

 俺とミズキがこの島に戻って来てから続いていたモガの森の異変は、()()()()()()の出現が原因だった。

 

 しかも、ただのイビルジョーじゃない。怒隻慧(アイツ)の子孫である。

 

 

 

「まさか僕にも戦えとか言うわけじゃないでしょうね……」

「いや、お前は普通に足手纏いだから来るな」

「分かってたけど泣きそう。……子育て中のミカヅキをオトモンとして戦うとしたって、それでも安定して勝てる相手じゃない事くらい分かってますよね?」

 俺は何度も()()()()()()に敗北した事を忘れた訳じゃない。

 

 

 けれど、そのどれも俺はちゃんとハンターとしてもライダーとしても真剣にモンスターに向き合えていなかったからだ。

 

 

「いや、俺はイビルジョーを狩る。ハンターとしてじゃなくて……ライダーとしてな」

「竜と絆を結びし者が……ねぇ」

「仲間になるだけがライダーの本質じゃない。怒隻慧には、あーは言ったが……やっぱりイビルジョーは普通の生態系とは相容れないからな」

 だからこそ、俺がこの手で決着を付ける必要がある。

 

 

「それに、ミズキは一人で怒隻慧を倒した」

 怒隻慧との最後の決着は、俺が付けなければいけない。そんな気がした。

 

 

「ミズキちゃんも……大概ですよね」

「ミズキは凄いハンターになるぞ。これから先、もっとな」

「その前にちゃんと親になってもらって」

「それもそうか」

「で、僕がやるべき事は?」

「お前にしか出来ない事がある。頼めるな?」

「腐れ縁の友人の頼みとあれば、ね」

「よし、その命貰った」

「待ってそこまで言ってない」

 顔を青くするウェインにやって欲しい事を伝える。

 

 

 別に難しい事じゃない。頼れる仲間も居るしな。

 

 

 

 

「──嫌だ死ぬぅぅううう!!!」

 日が沈む少し前。夕暮れ時の森を全速力で走るウェインの姿が遠目に見えた。

 

「無理無理無理無理!! せめて生きたまま食べるのは辞めて下さい!! お願いだからちゃんと殺してから食べて!!」

「だーーー!! いつもの三倍うるさいニャ!! ジャギィくらいでゴタゴタぬかすニャ!! いつものペラペラな顔で黙って走れば良いんだニャ!!」

「誰がペラペラだこの泥棒猫!! ギルドナイト様に逆らうと怖い目に遭わしますよ!!」

「ほらほらその元気で走るニャー。僕はお前が食われても別になんとも思わないからニャー」

 ウェインはジャギィ達に追われている。

 

 

「まぁ……ムツキも居るから大丈夫だろう。……大丈夫だよな?」

 遠目でそんな光景を眺め、俺はその姿が見えなくなってから目的地へと向かった。

 

 

 ウェインの仕事は、ジャギィ達を少しの間でもミカヅキ達から離れさせる事である。

 そうする事で、ようやくミカヅキと話を出来る時間が作れる訳だ。

 

 

 

「……こうしてちゃんと話すのは、本当に久しぶりだな。ミカヅキ」

 火竜の巣に到着して、威嚇する二匹の竜に攻撃の意思がない事を示すために手を挙げてそう口にする。

 リオレイアが口から焔を漏らした。そんなリオレイアに、ミカヅキが「待て」とでも言うように短く鳴く。

 

 すると、リオレイアは目を細めて一歩下がった。

 

 

 ミカヅキとリオレイアの背後には、生まれたばかりの新しい命が三つ。

 ミカヅキはそんな火竜の幼体を一瞥してから、ゆっくりと翼を広げ、いつでも攻撃出来る姿勢で俺の元に寄って来た。

 

 

 

「大丈夫だ。俺は敵じゃない。……お前を助けたいんだ。けれど、俺も助けて欲しい。その為には、お前の力が必要だ」

 手を上げたまま、ゆっくりと近付く。

 

 ミカヅキもゆっくりと頭を俺に近付けてきた。

 この距離でブレスを放たれたら、避けるのは不可能だろう。そんな距離だ。

 

 

 

「グォゥゥ……」

 ゆっくりと鳴いて、ミカヅキは鼻先を伸ばす。

 

 俺が上げた手に、その鼻先が触れた。

 

 

「これまで悪かった」

「グゥゥ」

 目を細めて、ミカヅキが頭をぶつけてくる。普通に痛いが、このくらいで済ませてくれたのは幸いだ。

 

 

 

「お前がまだチビだった時の事を覚えてるか? 生肉をあげるふりして取り上げた時、怒って俺に火を吐いただろ」

 普通に死ぬかと思った思い出である。

 

 

「その後、仲直りの証としてお前は俺を噛んだ。……痛かったのを思い出した」

「グォァァ」

「今は辞めろよ。流石に残りの腕一本がなくなると困る」

 ミカヅキの鼻先を押さえて、頭を下ろさせた。この大きさのモンスターに戯れられたら命がいくつあっても足りない。

 

 

 

「……ミカヅキ、力を貸してくれるか?」

 そんな俺の言葉に、ミカヅキは短く鳴いてから背後の奥さんと子供達に視線を向ける。

 

 リオレイアは若干怪訝そんな反応を見せたが、子供達はピーピー鳴いている。ハッキリ言って何がどうとかは分からない。別にライダーはモンスターと会話が出来る訳じゃないからな。

 

 

 ただ、先にウェインに来てもらってジャギィ達を引き連れて逃げてもらった事は理解して貰えているのか。

 

 リオレイアはミカヅキに向けて鳴いてから、小さな火竜達を寝かせ付けるように巣の上で丸くなった。

 

 

 

「ジャギィ達ならウェインに任せろ。ほら、今だに遠くから悲鳴が聞こえるだろ」

 俺が何を言ってるのかは分かっていないだろうが、リオレイアは目を細く開けて俺とミカヅキを見てから、ゆっくりとその瞼を閉じる。

 

 どうやら、とりあえず旦那さんを借りる事は許して貰えたらしい。

 

 

 

「今度お土産を持ってこないとな……。行くぞ、ミカヅキ──……ライドオン」

 俺は絆石を握って、ミカヅキの背中に乗った。

 

 

 まずはミズキを助けて、その後に俺とミカヅキでモガの森の何処かに隠れているイビルジョーを狩る。

 

 

「ミズキ!」

 これで全てに決着を付けて、俺はそれでやっとライダーとして歩いていけるんだ。

 

 

「アラン……?」

「今すぐに助ける。良いか、俺の言う事をよく聞け」

 ミズキのか細い声に手を強く握りしめながら、俺はこれから行う事を彼女に説明しようする。

 

 

 いつも元気だった彼女をここまで追い込んだのは俺だ。

 初めからこうしていれば──ミカヅキと、モンスターライダーという立場と向き合っていれば……彼女をこんなにも長く苦しめる事はなかった筈なのに。

 

 

 だからこそ、今こそ彼女を助けようとしたその時。

 

 

 

「今からミカヅキの突進でここを吹き飛ば──」

「──グォゥァァァァアアアアアッ!!!」

 ──突如、空気の振動が俺の言葉を遮った。

 

 

「今の……イビルジョー、なの?」

「……流石ミズキだ。よく分かったな」

 彼女を安心させる為、ゆっくりと言葉を返す。ここで嘘を言った所で、ミズキを不安にさせるだけだ。

 

 

「俺達が見つけ出したモガの森の異変。どうやら、怒隻慧の忘れ形見だったらしい。……俺は、今からソイツと決着を付けてくる」

 本当は最初にミズキを助けたかったが、ここまで近い場所で鳴き声まで出されると、ミズキを助ける為の隙がここに居る俺達全員の隙になる。

 

 

「アラン……大丈夫なの?」

「俺は怒隻慧と決着を付けられなかった。自分の中で揺れていた答えが、やっと見つけ出した答えが、アイツが()()()()と思う気持ちを受け止めきれなかったからな」

 俺はあの時、怒隻慧と分かり合えた。確かに俺はあの時ライダーになれたのだろう。

 

 

 だけど、その後の一歩を踏み出す事が、あの時まだ未熟だった俺には出来なかった。

 

 

 

「ハンターもライダーも同じだ。お前がハンターとして答えを出したように、俺はライダーとして答えを出して……怒隻慧(アイツ)との因縁に決着を付けたい」

「アランなら、大丈夫」

「だからミズキ、もう少しだけここで待っていてくれ。……必ず、助けに来る」

「……うん。待ってるね」

 弱々しい、か細い声で──けれど安心し切った声で、ミズキはそう返事をしてくれる。

 

 

 

「行くぞ、ミカヅキ」

 振り向いて。

 

 俺は、イビルジョーの咆哮が聞こえた方角に視線を向けた。

 この場所で戦う訳にはいかない。ならば、こちらから出向くのが正解だろう。

 

 この場所もそうだが、ミカヅキの巣にも近付けさせる訳にはいかない。

 

 

「グォァゥゥ」

 ミカヅキは「良いのか?」とでも言うように首を傾げた。俺はそんなミカヅキの首元に手を回して身体を持ち上げながら「良いんだ」と声を漏らす。

 

 

 ミズキを助け出して、彼女を安全な場所まで運び出す事そのものは不可能な事ではない。

 

 けれど、ここで大きな音を立ててその後ミズキを運んでいる間──この場所の近くにあるミカヅキの巣は完全に無防備だ。

 

 

 

 俺は俺とミカヅキと、ミズキを信じる。ライダーとして。彼女の夫として。

 

 

 

 

「行くぞ、ミカヅキ」

 左右で非対称な大きさの翼が広がって、空へと舞った。ボウガンのスコープを覗き込む。

 

 

「──あそこか」

 大きな木が揺れたのを見逃さず、俺はミカヅキに道を示した。

 

 

 先手必勝。

 ミカヅキは加速しながら、黒い影が視界に入り、射程内に入った時点でブレスを放つ。

 

 

 

「──グォォゥァァアアアア!!!」

 爆炎が上がり、聞きなれた咆哮が森の中で反響した。

 

 

 流石に距離が遠いか、あるいは流石は怒隻慧の忘れ形見と言うべきか。

 大きなダメージは与えられなかったようで、爆煙の中からその眼光を光らせるイビルジョーは、真っ直ぐに空を舞う俺達を睨み付ける。

 

 

「思っていたよりデカいな……」

 なぜこれ程まで巨大な生き物が、半年以上もこのモガの森で隠れて暮らせていたのだろうか。

 

 そんな話をミズキにしたら、彼女が真剣に──それでも楽しそうにその調査に乗り出す光景が脳裏に過ぎった。

 

 

「成体でなくても恐暴竜か。……一気に終わらせるぞ、ミカヅキ!」

「グォゥァアア!!」

 旋回し、ブレスを空中から叩き付ける。

 

 怒隻慧の忘れ形見といっても、体長は怒隻慧の半分もない程度。その急成長ぶりには驚かされるが、母親と比べてしまうと驚異度は低い。

 

 

 しかし、それは怒隻慧そのものがおかしかっただけだ。この成長中の個体ですら、モガの森の生態系は崩壊しかけている。

 

 だから、ここで決着を付けなければいけない。

 

 

 

「──グォゥァァァァアアアアア!!」

 空から一方的に攻撃を仕掛けてくる俺達に苛立っているのか、空まで空気を振動させる程の咆哮を上げるイビルジョー。

 

 そうして頭を持ち上げると同時に、その口元から黒い何かが盛れた。ソレは、次の瞬間俺達の進行方向に向けて放たれる。

 

 

「──っ、ミカヅキ!!」

 あの若さでブレスを吐いてくるとは想定していなかった。

 

 翼を翻して、ミカヅキはソレを交わす。

 しかし首を振り回してブレスを吐き散らすイビルジョーに近付く事が出来ない。

 

 

 それほどまでのエネルギーを何処から発生させているのか。もしくは、それだけモガの森の命を喰い散らしたのか。

 

 

「……相容れない、か」

 人と竜は相容れない。ずっと、そう思っていた。

 

 ミズキをハンターとして導いて、その先でライダーとしての道を再び歩こうとしている。

 そんな中でミズキは自分の答えを見付け出し、怒隻慧を狩る事が出来た。なら、俺は──

 

 

「俺も、お前を狩るよ。……ミカヅキと一緒に」

 竜と絆を結ぶ存在。俺は子供の頃に見た夢を思い出して、今再びその夢へと歩き出そうとしている。

 

 

 けれど、それは簡単な話じゃない。

 

 この世界に生きる以上、俺は向き合わなければいけない。竜の命と。

 それは、ハンターでもライダーでも変わらない。

 

 

「そうだ……。俺はライダーとして、お前を狩る」

 地上から俺達を睨むその眼を真っ直ぐに見ながら、そんな言葉を口にした。

 

 

 俺はお前と、怒隻慧の命に向き合う必要がある。

 

 

 

「少なくとも……この島でお前達は生きていけない。この島はお前の居場所じゃない。……だから、俺はお前を狩る!!」

 イビルジョーだけじゃない。火竜や海竜、狗竜達。この島に住む人々を含めた全ての生き物の命と向き合って。

 

 

 その先に、その命を奪わなければならないとなるならば──俺はその命と向き合わなければいけない。

 

 

「怒隻慧とは……ちゃんと向き合えなかった。だから、お前とは……!! ミカヅキ、俺を信じろ。突っ込め!!」

「グォァァゥウウウッ!!」

 ブレスを避けて旋回していたミカヅキは、俺の言葉を信じて真っ直ぐイビルジョーに向かうように降下し始めた。

 

 当たり前だが、イビルジョーは口を大きく開いてブレスを放とうとする。

 俺はその足元に向け、引き金を引いた。

 

 ブレスが放たれる直前、着弾した徹甲榴弾が起爆してイビルジョーの身体を揺らす。

 ミカヅキは右に逸れたブレスを錐揉み回転しながら避け、イビルジョーに脚の爪を叩き付けた。同時に俺はミカヅキから飛び降りて、通常弾をその横腹に叩き込む。

 

 

「グォゥァァァァ……!?」

 火竜の爪の毒が身体を蝕み、銃弾が抉った肉からドス黒い血液が流れ出た。

 

 

 思っていた通り。

 コイツはイビルジョーとはいえ、まだ成体になりきれていない幼い個体なのだろう。

 

 怒隻慧の忘れ形見とは言っても、そもそも怒隻慧だって化け物じゃない。ただの生き物だった。

 だからコイツも、ただのイビルジョーなのだろう。

 

 

 

「お前がどうやって隠れていたのかは知らないが、それは後でゆっくり調べさせてもらう」

 着地して、イビルジョーを見上げた。

 

 ミカヅキと大差ない全長。

 イビルジョーとしては小さいが、産まれたであろう時期を考えると竜の成長スピードには驚かされる。

 

 

 

「ミカヅキ、終わらせるぞ」

「グァゥゥ」

 ミカヅキの横に並んで、ボウガンを構えた。

 

 以前のように片手剣を一緒に使う事は出来ないが、俺には失った自分の右腕よりも頼りになるミカヅキ(オトモン)が居る。臆することはない。

 

 

「グォゥァァァ!!」

 地面を蹴って、俺達を噛み殺さんと向かってくるイビルジョー。

 

 ミカヅキがブレスを地面に撃って、爆炎の中で俺はミカヅキを踏み台にして地面を駆けた。

 次の瞬間、お互いの牙で相手の首元を噛み砕こうと取っ組み合うミカヅキとイビルジョー。

 

「俺も居るぞ……!」

 その頭上から、イビルジョーの脳天に通常弾を叩き付ける。頭蓋への衝撃で顎の力が弱まった所で、ミカヅキがゼロ距離でブレスを放った。

 

「やったか……? いや──」

 爆風で体が浮く。爆煙の中に見えたのは、堆黒尾と比べると見劣りしてしまうが、生き物としては異常なまでに太い尻尾。

 

 それが、ブレス直後の硬直で固まっていたミカヅキに叩き付けられた。

 

 

「ミカヅキ……!!」

 地面を転がるミカヅキに、イビルジョーはその大口を開いてブレスを放とうとする。そうはさせるかと、その口の中に徹甲榴弾を撃ち込んだ。

 

 爆発と、ブレスの暴発でイビルジョーの口から血と肉が吹き出る。

 それでも命の灯火が弱る事はなく、イビルジョーはその殺意の矛先を俺に向け直した。

 

 

「怒らせたか……」

 冷や汗が垂れる。ミカヅキが立ち直すための一瞬。

 

 

 イビルジョーは頭を持ち上げた。

 ブレスかと思い、飛び退く準備をするが──イビルジョーは踏み込んで突進してくる。

 

 

「ふざけるな……!!」

 飛び退いてから、そのままでは避けられない事に気がついた。

 

 弾倉を膝で蹴って飛ばし、ソレに向けて引き金を引く。

 弾倉の中の銃弾が全て誘爆して、俺の身体は爆風で吹っ飛んだ。その代わり、突進を避けられた上にイビルジョーには爆発が直撃する。

 

 

「ミカヅキ!」

「グォゥァァ!!」

 それでも姿勢すら崩さないイビルジョーは、ブレスを放とうと地面を踏み抜いて急停止。横凪に首を振るその首元に、ミカヅキのブレスが先に着弾した。

 

 

 その巨体が揺れて、地面に倒れる。

 

 

 

「分かってる。……お前は、ただ生きてるだけだ」

 ゆっくりと、イビルジョーに近付いた。

 

 

「俺も、ミカヅキも……この島にいる誰もがそうだ。……お前も、この世界で生きている。でも、だからこそ……俺はお前の命を奪わないといけない」

 厳密に言うならば、俺もリーゲルさんのようにこのイビルジョーを匿って、このイビルジョーが生きる場所を探す事だって出来るのかもしれない。

 

 

 ライダーとして、そんな道もあるのかもしれない。

 

 けれど、それは俺がなりたいライダーとしての姿じゃない。

 

 

 

 俺はミズキが憧れて、目を輝かせる、色々なモンスターの知識があって、そんなモンスター達と生きていく。

 そんなライダーになりたいんだ。

 

 

「──だから、お前一匹を救う事は出来ない。……だから、俺はお前の命に向き合わないといけない」

 ミカヅキのブレスをまともに受け、毒で身体がいうことを聞かなくなってきているのだろう。

 

 イビルジョーは倒れ伏したまま、大きく腹を膨らませたり萎ませたりしながら、俺を睨んでいた。

 

 

 必死に生きようとしている。

 今ならそれが、手に取るように分かった。

 

 

「だから、俺は眼を逸らさない」

 イビルジョーの眼前に立って、ライトボウガンの銃口を向ける。

 

 赤く光る眼光は、そんな俺を強く睨んでいた。

 

 

 

「ちゃんと、俺の手でお前の命を終わらせる」

 怒隻慧との因縁だけでなく、ただそこにいる一つの命としても。

 

 

「俺は……ライダーだから」

 その引き金を引いて、俺はイビルジョーの命を奪った。

 

 

 

「……ミカヅキ、ミズキの所に」

 その亡骸に手を合わせてから、俺はミズキの元に向かう。

 

 

 

 モガの森の生態系を狂わせた元凶は、その膨大なエネルギーを地に帰す筈だ。

 ミズキは多分その姿を直接目にする事は出来ないだろう。少し残念だが、コイツの事は俺が記憶として連れていかなければいけない。

 

 

 もし、全てが上手くいって、ミズキが元気になったら。

 

 

 正直お互いに親になるというのは全く想像が付かない。実感もない。ミズキの腹が大きくなっているのを見てもないからな。

 

 

 けれど、多分俺達はこの生き方を変えられない。

 きっと周りに迷惑をかけるだろうが、ハンターもライダーも、子育てと一緒に続けていく筈だ。

 

 

 

「ミズキ!!」

「アラン……!」

 久し振りにその顔を見て、俺はそう確信する。

 

 

「えへへ、大きくなったでしょ」

「ビックリするくらいな……。良いから、早く村に戻るぞ」

 話したい事が沢山あった。

 

 

 けれど今は──

 

 

「アラン、あのね」

「……なんだ?」

「信じてたよ」

 ──彼女の顔を見る事が出来ただけで、それだけで嬉しい。

 

 

 

 

 

「あ、アラン……」

「なんだ?」

「……まずいかも」

「た、頼むミカヅキ!!!」

「グォァァ……」

 そして今日は多分、忘れられない日になる。

 

 

 

「しっかりしろミズキ!!」

「あ、安心したら……なんかもう……ダメかも」

「ミズキぃい!!」

 村に着いた時、事情を知っている人が多いとはいえ当たり前だがリオレウス亜種(ミカヅキ)が突然空からやって来て村は若干パニックになった。

 

 そのまま出産に加えて。

 ジャギィへの囮にしていたウェインとムツキの事を忘れて二人に怒られ。そのせいで出産に立ち会えなかったムツキは数週間口を聞いてくれなかったり。

 ウェインがイビルジョーに襲われて大怪我をしていたドスジャギィを見付けて、俺はミズキに言われ生まれて数日の子供を放ってドスジャギィを助けに行ったり。

 

 

 

 

 

「久しぶりだなドスジャギィ……。しかし、この場所で寝てるとは……奇遇だな」

 本当に、あの日からの出来事は、ずっと忘れられない。




ここ数年、モンスターハンターの創作とどう向き合っていくのか考えていました。
しかし流石にこの作品をいつまでも放って置くのは違うなと思い、完成させた次第です。後日談としてはあと一話あります(もう書き終わってます)が、物語の大筋はこれで完成ですね。最後のお話は短編集みたいな感じのお祭り小話みたいな感じで、完成イラストと合わせて更新したいと思います。

話を戻すと、この話を改めて書いて、やっぱり自分はモンスターハンターの世界が大好きなんだなという事でした。なんか色々と思ったり考えたりしていますが、ゲームの新作が出る時にまた連載作品を書けたら良いなと思っています。

先んじてはこの作品の後日談最後の小話と、現在連載中の盟友クエストを年内に完成させるつもりですので。両作品ともに楽しんでいただければ幸いです。
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