ワンパンマンと東方   作:Par

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Pixivでも投稿しているものです。小説、SSメインでのサイトで投稿したく思い始めました。多少台詞はしてありますが、話の流れは同じです。
以下、諸注意。


諸注意
 東方とワンパンマンのクロスオーバーになります。
 ワンパンマンは、原作と村田先生版(アニメ)の二つを参考にしいます。
 オリジナルの怪人が出ます。
 東方のスペルカードの使用方法、ルールが非想天則のような、格闘ゲームの雰囲気になっています。
 オリジナルのスペルや能力使用方法がでます。
 キャラクターの性格が、原作と違う場合があります。

以上、苦手な方はすみません。



ワンパンマンと東方 一撃目

 体を機械で固めた青年サイボーグジェノスは思う「何と言うことは無い、いつも通りの活動だった」と。そして同時に思う「やはり、強い」とも。彼の目の前には、粉砕され周囲に飛び散る血と肉が広がる。頭上へと吹き飛んだ部位は、ボタボタと音を立て地面へと落ちてくる。一般人が見ればかなりショッキングな光景だ。トラウマになる人間もいるかもしれないが幸か不幸かほとんどの人間は、怪人の出現率の多い場所から怪人の被害を恐れ被害の少ない街へと居を移していた。

 目の前に広がる肉片は、元々10mはあろう丁髷つきでカエルの様な生物だった。その生物は人語を話し「我こそは、水と陸を統べる両生の長である!!我が名は両生王トノサマトード!両性じゃないぞ!!両生である!!さあ人類よ我が前に平伏しひざまッゲコオオオオオォォォッ!?」と、鳥獣戯画のカエルのポーズをとりながら宣言し取ってつけたような名で何番煎じか分からない何処ぞの王は、カエルらしい断末魔を上げたかと思うと肉片となった。ジェノスはヒーローだ。それもヒーローのランクでも上位のS級に一発で合格した実力者である。しかし、カエルを倒したのは彼じゃない、彼は付き添いなのだ。

 

「……」

「……“先生”?」

「……また」

「はい?」

 

 粉砕されたカエルの中心には、ワナワナと震えながら己が拳を何処か恨めしそうに見つめる眩しい男。S級ヒーロージェノスが“先生”と呼び慕う『最強』がいる。男は我慢できずに叫んだ。

 

「また……ワンパンでおわっちまったあああああああああああああああっ!!!」

 

 『最強』、ヒーロー名「ハゲマント」。本名「サイタマ」。

 彼は、あまりに強すぎた。これからも、彼は強くあり、強いままなのだろう。これは、そんな最強が偶然にも紛れ込んだ異世界での幾日かの記録である。

 

 

 

 

 ヒーロー名ハゲマントことサイタマがヒーローランクA級39位へ上がって間もないころの事だ。強すぎる故理解されず、強すぎる故孤独だった彼にも徐々に仲間とも言える存在が出来てきて彼の活動が少しだが彼等ヒーローを統括するヒーロー協会にも認められだした時期、いつも通りサイタマは、(無理やり転がり込んできた)弟子のジェノスと連れヒーロー活動を行っていた。先程一撃で粉砕したカエルの化物も見た目こそカエルだがその巨体は、余りにも脅威であり災害レベルは、街が幾つも壊滅する事必至であろう災害レベル竜と指定“された”。された、と過去形であるのは、この時点ではこの両生王を名乗る怪人の存在は、ヒーロー協会に認知されておらず、サイタマとジェノスがこの怪人の存在を忘れるほどかなり後に、ジェノスの証言とわずかに映っていた監視映像から総合して判断されたものだ。

 二人は買い物の帰りだった。お一人様ワンパックの卵を多く買うためサイタマが弟子の仕事だとジェノスを引き連れ安売りのスーパーへと向かいその帰りだった。ジェノスもサイタマに頼まれずともついて行く気だったので不満も無かった。そんな中偶然通りかかった沼地から現れたのが両生王トノサマトードだったのだが、瞬時に反応したサイタマの拳をくらい結果偉大なる両生王は、長き雌伏のとき、数十年というオタマジャクシの姿を経て満を持して自ら上がったが、ものの数秒でその野望が潰える事となった。

 

「流石です先生」

「……はぁ」

 

 サイタマの活躍を褒め称えるジェノスだが、とうのサイタマ本人は不満でしかない。結局一撃、対して力を込めたわけじゃない拳でカエルの化物は、物言わぬ肉片と化した。いつもこうだ、とサイタマは不満で仕方ない。

 ヒーローに憧れ、3年前にそうであろうと決めた時から死に物狂いで努力した結果がこの常勝無敗の力と死滅した毛根である。イヤ、この際毛が無いのは言い、だが手に入れた強大な力は、敵との均衡した戦いが失われる事を意味した。手に汗握るバトル、熱い闘い、血沸き肉躍る好敵手との決闘。ヒーローとしての輝かしさよりもサイタマは、何処かでそういうのを期待していたのだが最早そんな感情を失って久しい。プロヒーローになったが、それでも自分の満足する闘いは未だに出来ていない。

 平和が一番と人々は言う、サイタマ自身もそう思う。しかし己の性情たる闘争本能は能面の様な無気力な顔に隠れ消えたように見えても、今なお彼の体でかすかに燃えているのだ。平和を望む一方で好敵手の出現を望むサイタマだが、しばらくはその願いが叶えられる事はないかもしれない。

 そんな何時も通りの怪人撃退後の事だった。

 

「……っ!?先生!」

「んあっ?」

 

 ジェノスは不意に感傷に浸たり歩き出したサイタマを何処か焦った様子で引き留める。彼の機械仕掛けの両眼は、あたりを頻りに見渡しその資格情報を解析していた。そしてジェノスは、驚いた様子で告げた。

 

「せ、先生。その、まったく信じられない事なのですが」

「んだよぉジェノス、もったいぶらずに言えって」

「はあ……その、この場所なのですが、我々はいつの間にか移動してしまったようです」

「はっ?」

 

 サイタマは自分の(一応)弟子が何を言ってるのか全く理解できなかった。彼はサイボーグであるが脳とかそう言った所には、生体部分もあるはずだ。サイボーグ改造の影響でついに脳がバグったかと結構酷い事を思っていた。

 

「すみません、俺も突然の事で説明しづらいのですが……まず周りを見てください」

「周りって、お前ここは……あれ?」

 

 ここでサイタマは初めて異変に気が付いた。全く持って不可解なのだが、周りの景色が“変わっていた”のだ。先程まで二人は沼が近くにある住宅街を歩きそこで両生王を倒したのだが、今はどうだろうか辺り一面森、森、森と木々が茂っていた。何故気が付かなかったのかサイタマにはわからない、単に自分がボーっとしていたならまだわかるのだがサイボーグであるジェノスが一切気が付かなかったのはおかしい。

 

「GPS等で位置情報を確認しましたが、俺達は全く別の場所に移動しているんです。それ以前に電波が無いので詳しい位置情報はありませんが、この“状況”が我々のみに“何か”が起きたのかを示しています。俺と先生は気が付く間もなくあの怪人の居た場所からどこかへと移動してしまったんです」

「はぁ~~~」

 

 ジェノスは深刻そうに話しているのだが、サイタマの方は最初こそ驚いたようだったが既に顔が無気力な物に戻っていた。ジェノスは、それにかまわず自身の考えをまとめる様に喋っていた。

 

「催眠による幻覚やホログラム映像を疑いましたが、これらの森は完全に本物、俺のデータにある周辺地図にもこんな森はありませんし、一体何が起きたのか……って、先生!」

 

 ジェノスはいたって真面目な性格だ。何かが起こればそれを生真面目に解析して答えを出そうとする。ならその師匠であるサイタマはどうか?一言で言うならば正反対、彼はいたっておおざっぱで不真面目な部分の方が多いだろう。ジェノスの考察も飽きたのか、彼は既に歩き出していた。ジェノスは慌てて彼を追って駆け寄る。

 

「先生、無暗に歩かれては危険かもしれませんが」

「ん~……まあ大丈夫だろ、じっとしてるのは性に合わないし、何が起きたって言っても移動しただけだろ?その内もとに戻れるかもしれないぜ」

「しかし、敵の作戦と言う事もあり得ますが」

 

 そうジェノスは言うがジェノス自身正直敵がどんな手を使ってきても意味は無いと思った。サイタマの前に小細工など無意味、とりあえずサイタマの足を止める理由を作ろうと思っただけだ。しかしサイタマは結局「いいから、いいから」とズカズカ歩みを止めず謎の森を進んでいった。それにジェノスは呆れるでも無く、やはり先生は度胸があるなと妙な感想を抱き後を追った。

 

「……また、妙なのが紛れ込んだわね」

 

 そんな二人を見つめる虚空からの視線があったことに、まるで気が付かぬままに。

 

 

 

 

 サイタマの脚力は、常人のそれを超えサイボーグであるジェノスをも超える。月から地球へジャンプして戻れるのだから当然ではある。そんなジャンプ力は如何なる場面でも役立つものであり、今もその場面であった。

 

「ぃよっと!」

 

 ドスンと音をたて空からマントをなびかせサイタマが降り立った。地面を凹ませた着地は、降り立つというより落下と言う表現が合いそうだ。

 

「どうでしたか?」

「ん~……なんか村みたいなのと屋敷みたいなのが見えたわ」

 

 超高度へのジャンプからの地上の観察。100mも飛び上がればそれなりの範囲を見渡せる。サイタマは、空から見て2つの人の生活できそうな場所を見つける。彼の言う「村」と「屋敷」である。

 

「なるほど、ではどちらかに行けば最悪人に道は聞けそうですね」

「だな」

「それで、どうしますか?村と屋敷、2つありますが」

「ああ」

 

 サイタマは不意に視線を下ろすと、道に落ちていた木の棒を拾った。ジェノスは、サイタマの行動の意図は分からないがただじっとその行動を見る。

 

「よっ」

 

 サイタマは拾った棒を軽く放り投げた。空中でクルクルと回転する棒は、重力に引かれ当然落下する。カラカラと棒が落ちるとサイタマは強く頷いた。

 

「あっち行こうぜ」

 

 サイタマは棒の尖った方が倒れた方向を指さし言った。何と言う事は無かったのだ。彼は考えても仕方ないので棒で行き先を決めただけなのだった。

 

「えっ、先生そんな方法でいいのですか?」

「いいの、いいの。丁度あっちは屋敷があるから面白そうだし行こうぜ」

 

 そしてサイタマはのんびりマイペースを崩さず歩き出す。ジェノスはそれが先生の意志ならばとなんの疑問も持たずついてゆく。

 少し歩くと大きな湖へと出た。二人が住んでいる所は、近代的な場所でその周りには、少し前にあった大きな闘いの所為で街は無くなり残ったのはヒーロー本部と更地しかなく森は勿論目の前にある様な湖は無いのでいよいよ自分達は未知の場所に居るのだとジェノスは思う。そして湖からまた少し離れた所には、サイタマの言ったとおり大きな屋敷が見えた。それは不気味なほど紅かったため、遠くからでもとても目立つ。

 

「あれですね先生」

「ああ……うん?」

「っ!?動態反応!」

 

 目的地を確認したところでサイタマは、ふと湖の方を見た。次いでジェノスが自身のセンサー類に何か高速で動く物体を感知した。生体反応もあるため生物であるのはわかる。それはサイタマが見た方向から迫っていた。人間の出せる速度ではないので怪人か何かであるとジェノスは予想した。何者だろうか、何時の間にか連れて来られた見知らぬ土地故にジェノスは何時も以上に警戒し身構えた。

 

「おっ?」

 

 ジェノスが義眼レンズで視覚映像を拡大し迫る対象を捉える前にサイタマが“それ”に気が付いた。それは宙を飛び回りながら勢いよくサイタマへと向かってきた。

 

「先生!」

「ああ、いいから」

 

 ジェノスがサイタマを庇おうとしたがそれをサイタマは制した。するとグングン近づいていたその飛翔物体は、サイタマの直ぐ真横を通り過ぎ直ぐにUターンをして湖の上に現れた。それが飛んで通った後には、パラパラと氷の粒が舞い散り、周辺の気温が下がるのがよく分かった。

 

「そこの変な二人!あたいの縄張りに入って挨拶も無しとは、とっても失礼ね!」

 

 腕を組んで浮遊する者、氷の羽、青い服に青い髪。小さな少女の姿のそれは、強きに叫んだ。

 

(こいつは……氷の羽?人では無い様だが)

「うわ、さむっ!」

 

 周辺の温度低下と氷の羽をもつ目の前の少女が無関係とは言えない。背中には浮くようにして氷の羽があり浮遊する姿からも彼女が人間では無い事は明らかであった。ジェノスは“敵”に容赦はない、見た目が少女であろうと自分の敵であるならば即焼却できるようにした。対照的にサイタマは、まるで警戒した様子は無くまるで近所の子供に話しかける様に話し出した。

 

「なんだよ、お前滅茶苦茶寒いんだけど」

「そらそうよ、あたいは氷の妖精なんだから」

「妖精?」

「そう、なに知らないの?」

 

 生意気な態度とフワフワと浮いている姿にサイタマはどこか最近知り合った“子供”の超能力者を思い出す。もっともその超能力者であるS級ヒーロー戦慄のタツマキは、サイタマよりも年上であるのだがそんな事を気にするサイタマではなかった。

 

「へえ妖精って本当にいたんだな」

「あらら本当になにも知らないのね」

「いいからお前温度下げるのやめろよ、寒いんだって」

「だから無理よ。冷気はあたいが生きる証、生きるから出るの。だから止められないわ」

 

 彼女の周りの湖の水は、既にパキパキと音を立て表面が凍り出した。空中の水分も冷えきり霜が降りる。彼女は氷その物、故にその冷気がとどまる事は無く、増える事はあっても減る事は無い。

 

「じゃあ俺らが移動するわ。悪かったな、縄張り入って」

「ってそうだった!あんたら勝手に縄張り理に入って許されると思ってるの?」

「えー俺謝ったじゃん」

「謝ったてダメよ!あたいはとっても怒ってるわ!」

 

 彼女はプリプリと頬を膨らまし不満を体全体で表している。実に面倒な奴に捕まったとサイタマは思った。小さな体で怒る様は、まるでどこかのS級2位のようだ。彼女はそのまま怒って話し続ける。

 

「最近あんた達みたいな妙な奴がふえて困ってるの!人間みたいなのとか妖怪みたいなのとか!勝手にこの湖を荒らしたりしてその度にあたいにケンカを売ってきて、とってもとっても迷惑してるわ!」

「ええ、俺ら関係ねーじゃん」

「いいえ、あたいの勘がつげてるわ!あんたら二人は、ここの奴らじゃない、そっちのなんか重くて固そうな奴は見た事ないし、あんたなんかもう……なに、え?えっとなんの妖怪?」

「……ん、あっ!?妖怪って俺!?」

 

 重くて固そうなのはジェノス事で間違いないが、もう一人の奴って誰だとボーッと考えていたら自分の事を言われてると遅れて気が付くサイタマ。しかも妖怪と言われ全く持って心外だと反論する。

 

「お前どこみてそんなこと言ってんだよ!」

「そんな頭見た事ないわ、みごとなハゲね」

「うるせーよ!?」

「だって人間ってハゲても少しは残るんでしょ?ハゲ方が見事過ぎてもうこれは妖怪ハゲアタマとしか」

「素でハゲてんだよチクショウこのやろうっ!!」

 

 ハゲだハゲだと罵られるのは今に始まった事じゃない、言われた回数は数えきれないだろう。だがどれだけ言われても慣れる物じゃない。未だ未練がましく昆布を食べたり育毛剤を試したりとしているサイタマからするといい加減にしてほしい言葉だ。

 

「まああんたが妖怪だろうと人間だろうとあたいは今とっても不機嫌なの、今まで通り相打ちよ!」

「返り討ちじぇねーのかよ」

「あ、そうだった?」

「勝負するならこっちが返り討ちにするけどな」

 

 サイタマは戦いが避けられぬと悟ると少し面倒そうに拳を軽く握った。が、鋼鉄のサイボーグがサイタマの前に出た。

 

「先生、ここは俺がやります」

「ん、ジェノス?」

「敵は未知の存在です。先生には無用の心配ですがまず俺が様子を見ます」

「……そか、じゃあがんばれ」

「はいっ!」

 

 赤く熱を発する右手がジュウジュウと音を立てている。冷やされる気温の中で相対する高温を発するジェノス。妖精はウググと苦手そうな相手が来たと後ずさった。

 

「なんだか熱い奴、あたいの苦手なタイプだわ」

「貴様がどれ程の実力を持つか知らないが、先生と戦いたいのならまず俺と一戦交えてもらおう」

「ケンカを売られた!」

「最初に売ったのは貴様だ」

「そうだっけ?けどいいわ、なぜならあたいは最強だから!」

 

 その自身がどこから来るのかしらないが、ジェノスは油断せぬよう心掛ける。自分は今まで色んな怪人と戦ってきたが、恥ずべき事に油断して負ける事が多かった。見た目が少女の妖精であろうと油断は禁物だ。

 

「一応は名乗ろう、俺はジェノス、こちらのサイタマ先生の弟子だ。妖精、お前の名は」

「あたいはチルノ、氷の妖精。固そうな人間、絶対零度は辛いでしょうけど凍っておしまいにしてあげる。ケンカは買ってそして勝つ!」

 

 妖精チルノが吠えると周辺の温度が今まで以上に低下する。サイタマが「さむっ!?」と叫んでいるが今この周辺は-20度を下回った。さむっと叫んで済む温度でもないのだが、彼は普通の人間とは一線を画すので気にしてはいけない。ジェノスはと言うと体の動力を可動させボディの温度を上げた。気温差と凍結しては蒸発する霜の所為でジェノスから蒸気が上がる。戦闘開始である。

 

「先手必勝!」

 

 ジェノスから距離を取ったチルノの周りに輝く光弾が展開された。それは一気にジェノスへと飛来する。光り輝く遠距離攻撃は、ドカドカ音を立て土煙を巻き上げた。それを見てチルノはどうだ見たかと自慢げに笑う。

 

「鮮やかに勝利!やっぱりあたいったら最強ね!」

「終わりか?」

「へっ?」

「焼却っ!!」

 

 土煙から聞こえた声に反応して確かめる間もなく、煙の中に赤い超高温のエネルギーが凝縮され放たれた。ゴオッと音を立て放たれたその熱線は、一瞬の内にチルノを飲み込み湖の水の多くを蒸発させ射線上にあった森や山肌を削った。サイタマは、チルノが熱線に飲まれた時「ピチューン」と音が聞えたが気がした。

 

「おお、相変わらず容赦ねーな」

 

 呑気な感想を漏らすサイタマ。熱線が収まると煙も吹き飛んだのか無傷のジェノスが姿を現した。腕が展開しその掌底から放たれた今の攻撃は、チルノに抵抗の間も与えず消し飛ばしたのだ。

 

「どうやら先生が戦うまでも無かったようですね」

「みたいだな」

 

 ほんの数秒で着いた決着にジェノスは思う事も無く、サイタマもこんなものかと思うだけであった。小さな少女の姿を吹き飛ばす事に関しての罪悪感も敵とわかった以上ジェノスには無い。では館へ行くかと移動しようとした時チルノが消滅した所から声が上がる。

 

「死ぬかと思った!」

「なにっ?」

 

 ジェノスが驚いた様子で見ると、そこには先程焼却されたはずのチルノがジェノス以上に驚いた様子で相変わらず浮いていた。

 

「跡形も無く蒸発したのは久しぶりだわ。死なないけど死ぬかと思った」

「貴様、生きていたのか?」

「知らないみたいだから言ってあげるわ。妖精ってのは“自然”なのよ。あんたは、自然を殺しきれるの?」

 

 子供の様な見た目のわりに理知的な事を言う。考え無しの馬鹿とは違うのかとジェノスは考えを改めた。

 

「って、前誰かに聞いたわ!」

 

 訂正、やはり馬鹿らしい。どうも自分でも死なない理屈等を理解しきれていないようで、誰かに聞いた説明をそのまま言っただけの様だ。しかし“死なない”とは中々の脅威である。不死身の如く再生力を持つ相手は何度か戦った事はある。しかしそれらは、あくまでも凄まじい再生力で不死身に近いだけであり肉体の再生には、体の一部が残る必要もある。しかし妖精は、チルノは違う。ジェノスは彼女が跡形も無く蒸発したのを確認している。センサー類でもそれを確認した。つまり彼女は、“無”から再生したのだ。これでは、相手が如何に実力が下でも何時か此方が力尽きる。どうするかと思考を巡らせた時、今度はサイタマがジェノスの前に出た。

 

「先生?」

「ん、俺がやるわ」

 

 彼の表情はいつも通りだ。怪人と相対した時、スーパーで買い物をした時、いつもと変わらぬ彼だった。ジェノスはサイタマがいつも通りならば、今回もいつも通りに適当に話が付くと悟る。ならばと、「わかりました」と一礼をして彼は、後ろへと下がった。

 

「なあチルノ」

「なにハゲアタマ?」

「うるせえよ!?」

 

 悪気を一切感じさせないチルノの純粋な言葉がサイタマの心に突き刺さった。彼女は本気で彼を妖怪ハゲアタマと思っているようだ。おのれこの小娘、サイタマはギリギリと歯ぎしりをしながら睨みつけた。

 

「お前が死なないのはわかったよ。けどこのままジェノスと続けると多分その内ここが吹き飛んで更地になる。それはお前も嫌だろ」

「嫌に決まってるわ」

「じゃあ次で最後な?今度は俺が相手だ。さっきと同じ、お前が一回死んだらお前の負け」

「あたいが勝つ条件は?」

「俺が死んだらでいいよ」

「……ふーん」

 

 実に生意気だ。チルノは頭の眩しい“妖怪”を見てそう思った。「俺が死んだらでいいよ」だと?まるで自分は、死ぬ訳が無いと言うようだ。無作法不躾な無法者め、この最強チルノ様の縄張りに入ってさも自分が主導権を握っているようではないか?今迄現れた妙な奴らとは、違うようではあるが新参者に違いない。先程は油断したが教えてやろう、妖精の本気を。

 

「誰もが皆もあたいを妖精と言う。侮って痛い目を見ろ妖怪め!」

「わけがわからんな……まあ遊ぶか」

 

 ここに第二ラウンドのゴングが鳴る。今度は一切の油断なし、チルノの冷気も先程以上に上がり(下がり?)心なしか氷の羽もその大きさを変えたように見えた。

 

「教えてやろうハゲアタマ!ここでは、スペル<技>を使って戦うの!」

 

 チルノは懐から一枚のカードを取り出した。タロットカードの様なものだが、その絵柄までは見えない。

 

「氷符アイシクルフォール!」

 

 チルノが技を宣言した。すると彼女を中心に先程の様な光弾が現れる。だが今度はそれ以上に氷の弾丸が多い。扇状に広がりそれがサイタマとその周辺めがけ撃ち放たれた。

 

「へえ……」

 

 サイタマは、その氷弾を難なく避ける。彼女の攻撃は、近くにいたジェノスにも襲い掛かったが、これも彼は焼却砲で軽く防いだ。他の地面にぶつかり炸裂した氷弾は、バシバシとその地面を凍らせた。その氷弾一つ一つが氷点下の温度となり、温度が即ち威力に直結していた。

 

「よけたな!」

「避けるさ、寒いしな」

「うぐぐ、続けてくらえ!」

 

 今度は普通の光弾の連射でチルノは攻撃を仕掛けて来た。花火の様だと先程サイタマは、感想を抱いた光弾だがこれもまた攻撃である。常人には、その高速の弾速は見きれないだろう、或は美しさに目を奪われている間にやられるかもしれない。だがサイタマはそれすらも難なく避ける。ユラユラと揺れる様に、攻撃が来る場所を完全に見きって歩く様に彼は攻撃を避けていた。

 

「なんて奴!草みたいにユラユラうっとおしいなあ!」

 

 チルノは思わず叫んで毒づいた。

 

「ならこうだ!凍符フリーズアトモスフェア!」

 

 チルノは二枚目のカードを取り出し叫んだ。すると先程の弾幕と違い今度は、彼女を中心に冷気が展開した。空気の凍る音が聞こえ出す。凄まじい彼女の冷気の表れだ。そしてその冷気は牙をむく。

 

「……おっ?」

 

 サイタマは両手両足に異常な冷たさを感じた。不思議に思い手を見るとそこに氷が付いていた。

 

「知ってるか?フリーズは、動くなって意味もあるんだってさ!空間を凍らせたなら避けれないだろ!」

 

この異常な冷気によって凍らされた空気中の水分が彼に付着したのだ。その氷は、凄まじい速度で成長していく。人間ならば凍傷は確実、並の妖怪でもその重みで動きを制限される。腕と足の表面が氷で覆われるのを見てサイタマは、動きを止めていた。

 

「そらみろ凍ったな!」

 

 サイタマの体が凍り出したのを見ると、チルノは続けてカードを構え叫んだ。

 

「冷符瞬間冷凍ビーム!」

 

 彼女の手から一直線に真白の超低温の光線が放たれた。その技の名の通り、瞬間に光線の射線上の空気と湖の水は冷やされまるで氷が空中を走るように見えた。

 

「あぶない!」

「ん?」

 

ジェノスがサイタマに向かい叫んだ。サイタマは、その声に気が付いてはいたが動く事なく超低温の光線に飲まれた。バキバキと音を鳴らし光線の着弾点周辺は凍り付く。その中心には、氷像となったサイタマがいた。

 

「な、なんという瞬間冷却……さっき以上の温度低下だ……クソ、離れていたが俺のボディにまで影響が出るなんて」

 

 急激な温度低下は、遂に生身ではないジェノスにまで影響を与えた。例え鋼鉄の肉体でもサイボーグである以上完全なロボットではないため生身の部位はある。更に彼のボディには、多少なり油等の液体も使われていた。通常機械に使われる油が凍る事など滅多にないが、チルノから発せられ撃ち出される冷気と氷はそれすらも凍らそうとしていた。

 

(そ、それよりも先生は……いや、死ぬ訳は無いが凍ってしまっている以上動きが取れないっ!)

 

 今すぐにでもサイタマを助けに行きたいが超低温の空間では、彼もまた動きを抑制される。動力をフル稼働させ熱を発して凍り付くのを防いでいるが、空気中の水分が彼の体に付着し凍る。そして蒸発した水分までも再び凍り付いていた。超高温と超低温が彼を中心にぶつかり合い溶かしてもまた凍る堂々巡りとなっている。サイタマの実力を知っているために凍った程度で死ぬ事は無いと言い切れるが、見た目では完全にサイタマは凍り付いている。この隙に砕かれでもすればいくらサイタマと言えど危ないと思った。

 

「そらカチンコチンだ!そして決着!」

 

 この隙を見逃すチルノではなかった。とどめとに食らえと弾幕を放った。

 

「先生っ!」

 

 ジェノスが無理やり体を動かし助けに入ろうとした時、サイタマの氷像にピシリとひびが走った。そして次の瞬間には、氷像が粉々に砕けるがその中に居たはずのサイタマの姿が無い。どこへ消えたのかチルノはキョロキョロとあたりを見渡したがふと自分に影が落ちているに気が付く。遮蔽物は無く頭上に物も無い何何故影が自分に落ちているのか?何か奇妙だと思った時、チルノの後方から声がした。

 

「お前は夏に欲しいタイプだな」

「いっ!?」

 

 まず一つ言うならば、彼サイタマは空を飛ぶ事は出来ない。人間は空を飛べないと彼もそう言っている。そしてチルノは、依然として空中に浮いている。その後ろに現れたのだ。サイタマが。では、サイタマは、空を飛んでいるのか?否、こちらも依然として宙を飛ぶ術は無い。では何をしたのかと言えば単純な話である。彼はただ地面を蹴って飛んだだけだ。丁度チルノの後ろに落ちてくるように、同時に拳を振りかぶりながら。チルノには、その拳が実際の何倍もの大きさに見えた。

 

「ひょ、氷着っ!!」

「おっ?」

 

 咄嗟だった。思考する間もない本能がそうさせたのだ。チルノは、体を氷で包み込みさらに膨張させた。サイタマは少し感心したようにして拳を引っ込めた。膨張する氷は、サイタマを遠くへと押し出していった。

 

(先生、やはり無事だったか……流石です)

 

 ジェノスはまずサイタマの無事を喜び安堵した。同時に僅かでもサイタマが負けると思った事を恥じた。しかしそこまで思わせたあのチルノと言う妖精の強さも大した物だとも考える。

 

(災害レベルなら虎以上は間違いない。場合によっては鬼、か)

 

 そこに居るだけで凍傷になるほどの低温を発生させるのだから、ヒーローにとってもやはりやりにくい相手には違いない。サイタマに対する防御への反応も良かった。そしてこんな“妖精”が居るこの場所がはたしてどこなのかより謎が深まった。

一方サイタマは、弾くようにして押し出された後湖に投げ出された。宙を飛び回れない彼は、弾かれた勢いと重力に逆らう事は出来ない。そんな状態のサイタマにチルノは、追い打ちをかけようと追いかけて来た。

 

(あたいの天才的頭脳が告げている!こいつ、ヤバイ!)

 

 天才か否かはさて置きチルノの危機感知は、間違ってはいない。サイタマは、ヤバイ。その強さを表現する場合、そうとしか言えない。幸いにもサイタマは飛ぶ事が出来ないのだと分かり短期決戦を選ぶ。チルノは、渾身の力を籠め技を叫ぶ。

 

「氷塊ッ!」

 

 チルノの手に現れたのは、彼女の体の何倍もある巨大な氷塊であった。それはハンマーのような形をしており、チルノにとって「凄くてゴツイ」と言う強さのイメージその物だ。それを放つ。振りかぶり水に落ちようとするサイタマに向かって確実に当てる。

 

「おお?」

「グレエェトオォックラッシャアアアァァァツ!!」

 

 氷塊が水面にサイタマごと叩き付けられると、水面が衝撃で波打ち同時に凍った。衝撃が氷と言う形になっていく。なおも氷塊は形を保っている。氷塊を核にして肥大化する氷の重さは、既にチルノの体重を軽く超え湖に沈みながら凍っていく。

 

「冷気と重さ!凍って潰れろ、ハゲアタマ!」

 

 チルノは勝ちを確信する。手応えはあった。自分の生み出した氷塊にサイタマがぶつかった感覚を確かに感じた。であれば勝ったのは自分だ。間違いなく。

 相手がサイタマでなければだが。

 凍り付いた湖にひびが入ったのは、チルノが勝利を確信して直ぐだった。ひび割れ万華鏡の様に反射する氷には、確かに見えた。氷よりも眩しい輝く頭が。

 

「技を宣言するってのは気持ちいよな」

「あっ」

「俺もたまにするんだよ……こうやってな」

 

 氷が粉砕されたと思うと既にサイタマが目の前に居た。今度はもう氷をまとって防御する暇が無かった。明らかに先程の攻撃と速度が違う。チルノがその瞬間考えれた事は、自分は手を抜かれていたと言う事実だった。

 

「普通のパンチ」

 

 気合も無い、雄叫びでもない、ただ普通の呟きのようにして宣言された普通の拳は、たやすくチルノを消し飛ばした。

 見知らぬ地での“一撃目”は、こうして放たれたのだ。

 

 

 

 

「まいった!」

 

 消し飛んだチルノは、ジェノスの時のようにもう復活を果たした。ダメージが大きかった所為か再生は、少しばかり遅れた。

 

「一回消えたのにダメージとか蓄積するのかよ」

「気持ちの問題よ」

 

 ようは疲れたと言う事らしい。

 

「強いわねあんた達、あたいの子分にしてもいいわ」

「いやそれはおかしい」

「ふつうお前がなるんだろ」

 

 負けたチルノが二人を子分にしようとする。なんともおかしな提案だ。呆れる二人にチルノは、とても自慢げに説明しだす。

 

「わかってないわね二人とも、強い子分を従えるあたい……つまりあたい最強!」

 

 敗北した事実をすっ飛ばした提案であった。実に都合がいい頭の構造をしているようだ。二人は呆れるばかりだ。

 

(やはりバカか)

「バカかお前」

「なにおう!?」

 

 罵倒をジェノスは、心の中で思ったがサイタマは、普通に声に出していた。

 

「それよりチルノ、一つ聞きたい」

「なによジュ……ジェ?じぇじぇじぇ?」

「ジェノスだ。あそこにデカい屋敷があるが、お前あれが何か知ってるか?」

 

 ジェノスは、当初の目的地である真っ赤な屋敷を指さし聞いた。チルノは、ああなるほどと頷き答えた。

 

「あんたらあそこに用があったのね」

「知ってるのか?」

「あそこは紅魔館って言うのよ、ここじゃ割と新参の方なんだけどあいつらが来てから新しい妖怪やら何やら増えててよく分かんないわ、なんなら案内ぐらいしてやるわ」

「案内か……そうだな、頼もうか」

 

 紅魔館と言う屋敷は、既に視界に入る距離ではある。その点で案内など必要は無いのだが、しかし現地の人間(妖精だが)を連れていた方が、相手に対しも警戒心を抱かれずに済むかもしれない。チルノは、少し抜けた所があるが今の自分達にとっては、貴重な情報源でもある。ジェノスは、彼女の提案を受け入れた。

 

「……そういえばここはどう言った場所なんだ」

「ああ、そう言えばあんた達迷ってたのね。ここってこの湖?」

「それより、つまりだな……お前が住んでいるこの土地は、なんて所かと言う意味だ」

 

 妖精が舞う世界。自分達が見慣れた物は、怪人や怪物達だ。最早疑う余地は無いかもしれない。ジェノスは、最後の確認をしたかったのだ。自分の考えが正しいか、予想があってるのか。

 

「だったら一言、ここはね「幻想郷」って言うのよ」

 

 きっとここは、別の世界だと言う事の。

 

(そういやサボテンに水やってないな)

 

 サイタマは、特に何も考えてなかった。

 

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