ワンパンマンと東方   作:Par

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二話まで出来てるのでとりあえず投稿。

諸注意
 東方とワンパンマンのクロスオーバーになります。
 ワンパンマンは、原作と村田先生版(アニメ)の二つを参考にしいます。
 オリジナルの怪人が出ます。
 東方のスペルカードの使用方法、ルールが非想天則のような、格闘ゲームの雰囲気になっています。
 オリジナルのスペルや能力使用方法がでます。
 キャラクターの性格が、原作と違う場合があります。

以上、苦手な方はすみません。


ワンパンマンと東方 二撃目

 チルノに案内されながらサイタマ達二人は、幻想郷と目的地である紅い館について聞いていた。

 

「は、異世界?」

「そうと俺は考えてます」

 

 ジェノスは、自身の考えである「幻想郷異世界説」をサイタマに話した。迷い込んだ状況とチルノと言う妖精の存在から導き出した答えであった。

 

「マジか」

「まだ確定ではありません。ここが我々の知らぬ地球のどこかと言う事も勿論あり得ますが、GPS等の機能が働いていない事とクセーノ博士やヒーロー協会とも連絡が取れない状況です。一応チルノの様な妖精が人為的な生命と言う線もありますが、恐らくは違うでしょう」

「なるほどな」

 

 よくこんな直ぐに色々考えれるなとサイタマは感心した。自分はサボテンに水をやり忘れたぐらいしか考えてなかったのに。同時に思ったのは、もし本当に異世界ならちょっと期待してもいいんじゃないかと言う思いだった。

 

(強い奴とかいるかな)

 

確定しない話を続けても仕方ないので、話は館の事へと移った。チルノ曰くあの館は「紅魔館」と言うらしい。名は体を表すと言うものの、紅いから紅魔館なのか、紅魔館なので紅いのかは知らない。そしてまた一つ興味深い話があった。

 

「吸血鬼?」

「そう、吸血鬼」

 

 館の主は吸血鬼であると言う。吸血鬼と言えば血を吸う有名な化け物である。血を吸うと言えばジェノスは、何時かの蚊の女怪人を思い出したが特に関係も無い事であろうとすぐに忘れた。そもそもあれは、秘密結社「進化の家」の創り出した怪人、この幻想郷に住む者とは、関係があるはずが無い。

 

「では話をできるような相手ではないかも知れないな」

「どうかしらね。一応人間のメイドも勤めてるし早々訪問者に襲い掛かりはしないわ」

「……早々襲い掛かった貴様と言うと、どうも信用できん」

「失礼な」

 

 チルノは、自分のテリトリーに無断で侵入した無法者を成敗してやろうとしただけだと自身の正統性を主張する。とは言え行き成り襲い掛かったのは事実なのでチルノも強く反論はしない。

 

「おっ門が見えた……うん?」

 

 二人の会話を聞き流していたサイタマが見えてきた紅魔館の門に気が付くと同時に門の横に誰かが居るのにも気が付いた。サイタマに言われジェノスもその人物を見る。腕を組みじっと立っている緑のチャイナ服の様な服を着た女性だった。

 

「ああ、あれは門番よ」

「門番?」

 

 チルノがジェノスへ説明する。

 

「紅美鈴って言う紅魔館の門番してるやつ」

「ふむ」

 

 デカイ館となると門番も居るものか。別に不思議なことではない。三人は近づいていくとその門の大きさに感心しつつ、不動の構えの門番に警戒した。

 

(むっ……隙が無い)

 

 緑色のチャイナドレスが風に棚引いてもその身は一切の動きは無い。言葉を発さぬ威圧感、ジェノスはかなりの腕前と感じとる。門番と言うならば彼女に了解を得るか、または彼女を倒し館に入るしかない。

 

(……いや俺達の目的は、幻想郷とやらについて話を聞く事だ。館への侵入が目的ではない)

 

 戦い詰めの毎日の弊害なのか自然と闘う発想が生まれてしまった。サイタマとジェノスは、それぞれが両極端な人間(とサイボーグ)だ。サイタマは、人畜無害な一般人のようで割と喧嘩っ早く頭に血が上りやすい所がある。ジェノスは一見してクールなサイボーグだがこちらも周りが見えなくなる事が多い。弟子は師に似るのか、似たもの同士が集まったのか。

 

「失礼、少し尋ねたい事がある」

 

 ジェノスは、一定の距離を保ちながら美鈴に声をかけた。

 

「……」

 

 帰って来たのは、沈黙だけだった。それは決して門を通さぬと言う無言の返事なのだろうか。ジェノスは、無理やり押し通ろうかと構える。

 

「あ、まったジェノス」

 

しかしそれを見てサイタマが待ったをかけた。

 

「先生?」

「あ~こいつもしかして」

 

 サイタマは、なお不動の構えを説かぬ門番を覗き込んだ。すると「やっぱそうか」と頷いた。

 

「こいつ寝てるわ」

「え?」

 

 大変気の抜ける結果だった。寝てるだと?ジェノスは、まさかそんなと思いつつサイタマと同じように彼女に近づきその顔を見るとなんと間抜けな事か門番である彼女は、コックリコックリと舟を漕ぎ立ちながら眠りについていた。唖然とする。隙が無いと警戒したが隙だらけだった。

 

「この門番はたまに居眠りしてるわ」

「……門番だよな?」

 

 それはつまりサボりではないのか?サイタマはそう思わずにはいられない。

 

「なんにしても寝てるだけなら脅威も無いでしょう、起こして話を聞くとしましょう」

 

 肩透かしを食らったためかジェノスの言葉には、若干力が無い。ともかく門番の彼女を起こして色々と幻想郷の事やその他諸々話を聞いた方がいいだろうと手を伸ばし肩を叩こうとした。

 

「あ」

 

 それを見てチルノがジェノスを止めようとしたが、それよりも先にジェノスの視界は反転することになる。

 

「んなっ!?」

「おおっ?」

 

 驚愕するジェノスと感心した声を上げるサイタマ。ジェノスは自分の体が完全に回転し頭から地面に落ちた事を衝撃を感じてから認識した。

 

(な、なにが起きた……っ!)

 

 状況を確認しようとするが、頭部への衝撃が大きかったのか生身の部分である脳が揺らされサイボーグながらも脳震盪のような症状が出ていた。視界がゆれる中で見たのは、自分を見下ろすあの門番だった。

 

「你好、お客様」

 

 その明るい笑みち挨拶は、正にジェノスを投げ飛ばしたと証明するかのようであった。

 

「婦女子の体に行き成り触れるのは、マナー違反では」

「なら起きててくれよ、門番」

「あ、それ言われると弱い私」

 

 目覚めた門番、紅美鈴とサイタマは、事も無げに語り合っている。ジェノスは地面に大の字になりながら驚いたままだった。自分に起きた事が飲み込めていないジェノスにサイタマが気が付くと、彼は笑いながら美鈴を指さした。

 

「お前こいつにクルッと回されたんだよ」

「おや、見えましたか」

「見えるだろあんぐらい」

「ふむ?」

 

 何とか立ち上がりながらジェノスは、にこやかな美鈴を見た。一見して華奢な女性だ。しかし、サイタマの言葉もあったが確かに自分は、この女性に投げ飛ばされたようだ。それも一瞬の内、サイボーグのセンサーで認識できないほど早く。

 

(隙は、やはり無かったのか……)

「あんた大丈夫?」

「……俺は、まだまだ未熟だ」

「そりゃ熟れないでしょ、鉄ならさ」

「そう言う意味ではないが……」

 

 自分もやはり未熟だ。この少しの間にジェノスは猛省していた。そんなジェノスの事を一応心配してチルノが声をかけるが、頓珍漢な答えで終わらせた。そんな二人を無視するように、サイタマは美鈴と話をしていた。

 

「すごいなお前、ジェノスから一本取るなんて。けっこう強いんだな」

「いやいや私もまだまだです。そういうあなたこそ私の動きを目で追いましたね」

「難しいことじゃないだろ?」

「出来る方には、しかし普通は難しい」

 

 サイタマは、弟子であるジェノスの強さをよく知っている。自分の感覚で強さを測る事は、案外当てにならないと知っているが、ジェノスは一発でS級ヒーローになれた実力者であり、最近になってパーツを変えより強さを増した。そのジェノスがいとも簡単に投げられた。これは中々面白いと思えた。美鈴もまたジェノスに使った技を見切ったサイタマに興味を持ったようだ。

 

「しかし見ない顔、氷精あなたが案内を?」

「あたいの縄張りに来たから返り討ちにあった」

「あったのか……」

「ここに来たいって言うから案内してやったのよ」

「それはご苦労様。しかしご両人、御用は何でしょう。あ、それと突然失礼しました」

 

 チルノから事情を聞いた美鈴は、ジェノスに謝罪をしながら改めて門番としての仕事に戻る。

 

「い、いや……俺の方も油断があった。俺はジェノス、こちらはサイタマ先生だ。それで用件なんだが、実は……」

 

 ジェノスは簡単に事のあらましを話す。瞬き程の時間で幻想郷に紛れ込み、チルノと出会い人里か紅魔館へ行くか悩んだ挙句ここへ来たと素直に告げた。そしてよければこういった事態が珍しい事か、それとも比較的あり得る事かも確認をとる。

 

「ほうほう、ではお二人は「外来人」と言う事になりますね」

「外来人とは?」

「そのままの意味です。ここ幻想郷は、外より隔離された場所、しかし稀に外より何かしらが紛れ込む事があります。人か、物かは問わず……俗にそれを外では神隠しと言う」

 

 ここでこの幻想郷が異世界だと判明する。つまりサイタマ達は、神隠しに遭ったのだ。

 

「特に珍しい訳でもなければ、さりとてよくある事でもない。そんな感じの事なのですよ。色々原因はありますが、まあお二人の場合状況から偶然迷い込んだとかそのあたりでしょう」

 

 「自分は専門家ではないですが」と美鈴は念を押す。

 

「帰る手段はあるのか?」

「無論あります。ここからは見えませんが、ある山に博麗神社と言う神社があります。そこの巫女に頼めば帰る手段を教えてくれるでしょう。すぐに、とはいかないかもしれませんが」

「いや、それだけ聞ければ十分だ。助かった」

「行くのであればまず人里へ行くとよろしい」

 

 目指すのは人里、先ほどサイタマが見つけたと言う村である。ちょうど反対方向になるので、特に問題なく行くことができるだろう。

 

「お待ちを」

 

 二人が人里へ向かうとわかったのか、美鈴は二人を引きとめた。わずかに声のトーンも変わっている。極端な敵意はないようだが、様子が変わったのはわかる。

 

「一つお願いがあるのですが」

「俺達にか?できる事であればかまわないが」

「問題はないでしょう、そしてお願いとはそちらの御仁に」

「お?俺か」

 

 美鈴はサイタマの事をじっと見据えていた。その目には、明らかな闘志が宿っている。サイタマは、なんとなく彼女が何を頼みたいのか悟った。

 

「そちらの方は、純粋な人間ではないようですが貴方は、強い人間ですね」

「ははは、聞いたかチルノ?こいつちゃんと俺を人間だとわかってくれたぞ」

「あれれ本当に?」

「嘘言うかよ」

 

 まだサイタマを妖怪と思っていたチルノは、疑う様にサイタマを見る。これ以上は無駄かとサイタマも諦めた。

 

「幻想郷じゃ皆バンバカ弾幕ごっこで勝負して体が鈍るのです。たまには誰かと組み手でもしたいんですよ」

「ならやるか?」

「……先生?」

 

とんとん拍子に決闘が決まっていた。ジェノスは、乗り気なサイタマを少し意外に思った。以前ジェノスは、サイタマと模擬戦をしたことがある。その時は、無理を言って戦ってもらった上に手加減をされていた。美鈴の提案に軽く乗ったのは、どう言う心境の変化かジェノスには、わからなかった。

 

「お話を聞かせた対価代わりにでも」

「いいぜ俺は」

「おいおい門番。そいつ強いよ?」

 

 チルノは、サイタマがトンでもない奴だと身をもって知っているので美鈴に忠告した。

 

「強いでしょうね。自惚れるつもりはありませんが、私の動きを人間で特別な力なく目で追えたのは、あなたが初めてです」

「そういう強さじゃないんだけどね」

「まあいいじゃねーかチルノ。なあ、俺さっきチルノと戦ったんだけど、そん時の……ああ、今言った弾幕とか言うのじゃなく殴りあいか?」

「チルノと?勝ったのですか?」

 

 美鈴は、二人がチルノに出会った事と戦闘になった事は聞いていた。ただ説明したのがチルノとジェノスの二人で、戦闘に関してはジェノスとチルノの戦いだけを聞いていたため思わず聞き返した。

 

「勝ったけど?」

「言っとくけど、こいつ飛べないし弾幕出せないから」

「……」

 

 「これは驚いた」美鈴は、驚愕か戦慄にも似た感覚を覚えた。目の前の男は、確かに強者だ。それは間違いない。だが人間として頭一つ抜けた強さと考えていた。彼女は、考えを改める。

チルノは妖精だ。妖精は基本妖怪等の強さのヒエラルキーでは、下に位置する。しかしその妖精の中でチルノは、特別に強い妖精であり並の妖怪相手でも勝てる強さを持つ。普通の人間が勝とうなど思うのは、まったくの自惚れだ。

 この幻想郷には、ごく一部人間でも特別な地位と強さを持つものがいる。先ほど美鈴が言った巫女なる人物がその一人であり、美鈴も巫女に手酷くやられた記憶がある。だがこの男サイタマは、特別な力を感じさせない普通の人間だ。しかし武に心得がありそうだと思い、それに合わせて組み手でも久々にしたいと思ったのだが、チルノを倒したと言うのなら話は別である。チルノからもその事に肯定と取れる言葉が出た。同時に彼は空を飛べず弾幕が出せないと言う。いよいよ普通の人間のはずなのだが、しかし違う。

 

「念のため聞きますが、知恵比べで勝ったとかではありませんね?」

「ちげーよ、普通に殴った」

「めっちゃ痛かったんだからな」

「悪かったよ」

 

 普通の人間がチルノに出会った時の対処法には、謎々を出すと言うものがあり、人里の知がそのように教える事がある。チルノの強さは、妖精を超えたものであるが残念な事に頭が良いわけではない。頓知の利いた謎でも出せば頭を捻り出すのでその隙に逃げれるのだ。一応その対応をしたのかと疑ったが、やはり違うようだ。

 つまり勝ったのだ。目の前の男は、飛べず弾幕も出せず、拳だけで人ならざる者に。

 

(面白いじゃないですか)

 

 遊びのつもりではあった。だが久々に本気の組み手が出来そうだと武術に生きる者として血が騒いだ。

 

「……ジェノスさん、この方の強さはあなたから見て如何ほどでしょうか?」

 

 最後にサイタマと一緒に現れたジェノスに聞く。ジェノスは、一度サイタマを見てから美鈴を見る。そして自信を持って答えた。

 

「失礼を承知で言うが、あなたじゃ勝てない」

 

 迷いの無い言葉。美鈴は、それこそ聞きたかったのだ。

 

「サイタマさん、お手合わせ願います」

「ああ」

 

 ジェノスの言葉が真実なら、これは美鈴が挑戦者だ。違ったとしてもチルノを倒せる程の人物、どっちにしても美鈴は闘いが楽しみだった。

 二人は、少し門から離れ相対する。

 

「……一つ、チルノからスペルに関して簡単に聞いたようですが、更に御教えします」

「まだなんかあるのか?」

「スペルを持つ者は、何か能力を持ちます。彼女、チルノであれば“冷気を操る程度の能力”です」

「程度?」

 

 確かにチルノは、氷を生み出し冷気を発していた。しかしそれは、程度で済ませるほどの小さな力ではない。今も少し離れて出来る限り冷気をセーブしてもらってやっと寒さが抑えれたのだ。美鈴の言い方にサイタマは、納得がいかなかった

 

「言い方の問題です。別に悪い意味じゃないのですよ。チルノは氷を生み出すので、氷を操るとも言えます。氷や冷気、表現は様々で厳密に言えなかったりするのでそういう言い方になるんです」

「ふうん?って事は、お前もなんか能力があるんだろ」

「ええ、私は“気を使う程度の能力”」

「お茶でも淹れてくれるのか?」

「ふふ、気功とかの方ですよ」

 

 見せた方が早いと美鈴は、両手を合わせ呼吸を整える。するとサイタマとジェノスには、彼女の体が少し輝いて見えた。

 

「面白そうだなそれ」

「これも見えたみたいですね。気は生命のエネルギー、それを私は操れる」

「……つまり、ちょっとは楽しめるって事で良いんだよな?」

 

 それはまるで挑発のようだった。だがサイタマは本気で聞いたのだ。ただ強いだけじゃないと言う事を確認したかったのだ。美鈴もそれを承知していた。だがその言い方にカチンと来ないかと言えば別であろう。

 

「私も楽しみたいものです」

「……じゃあやるか、少しずつペース上げてく感じで」

「そうしましょうか」

 

 気は今練った。体にエネルギーが巡り何時でも闘える状態だ。美鈴は、体を構えた。いかにも拳法家と言う様な構えだった。一方サイタマは、特に構えてはいない。まるで突っ立っているだけのようにも見えた。構えないのか?美鈴は、不審に思ったがサイタマの目は、じっと美鈴を見て捉えていた。

 

(隙だらけなのに、隙が無い……ッ)

 

 奇しくもそれは、ジェノスが寝ていた美鈴に抱いたものと同じだった。立っているだけなのにサイタマに隙が見えなかった。一見すれば隙だらけだが攻撃できる形が思いつかない。こう言った場合こう着状態になり最悪千日手になってしまうのだが、それは美鈴もサイタマも望む展開ではない。美鈴は意を決し、攻撃をしかけることにした。

 

(初手で様子見を)

 

 様子見、しかし本気で。彼女が踏み込むと、その姿が掻き消えた。彼女がいた場所で僅かに土埃が舞うと、一跳びでもって5m離れたサイタマへと肉薄した。放つのは、力を込めた拳、あえて狙うは隙だらけの体。

 

「―――ッ!?」

 

 入った。そう思った。しかし美鈴の拳は、サイタマの体をすり抜けた。そのように見えた。だが実際は、超高速で動いたサイタマの残像に拳が飲まれただけである。

 

(消えっ!いや―――)

 

 サイタマ本体消えたと思った。しかし、美鈴はすぐさま体を下げた。ヒュッと風を切る音が鳴ると、彼女が被っていた帽子が飛んでいった。美鈴の頭の上をサイタマの拳が通過した。

 

「お、避けた」

「シュッ!」

「おお」

 

 今度は、連続の突き。美鈴の手が幾つにも見える。全てがサイタマに向かい急所を狙っていた。しかしサイタマは、一歩も動かずに上体の移動だけでそれを避けて見せた。

 

(これもっ!?ならば)

 

 美鈴は、攻撃の中に罠を混ぜた。一手、サイタマが美鈴の思った方向へ逃げるよう攻撃をして突き切らずに体勢をずらし左の拳を握る。サイタマの体が左側に動くのを見て狙った通りの位置に避けてくれた事に喜び、軽く体を下げそこから勢いをつけて拳を突き上げる。形としてはアッパー、上手くいけばサイタマの顎へとあたる。だが、それは叶わない。

 

(なッ!?)

 

 美鈴は見た。自分が振り上げようとする左手に向かうサイタマの右手手刀を。いつ放たれたのかわからない攻撃、それがほんの僅かに迫っていた。

 

(振り抜く!?戻す!?)

 

 攻撃か、防御か。選ぶならどちらか、思考するような時間も無い中美鈴が咄嗟にとった行動は、攻めて避ける事だった。避ければ隙を見せる。拳を無理に引かず美鈴は、あえて踏み込んだ。サイタマと彼の右手の間には、僅かに隙間がある。潜り込むようにしてそこへ入るとサイタマに背を向け踏み込んだ。

 

「カッ!!」

 

 サイタマに背中からの体当たり。それは中国拳法、八極拳で有名な鉄山靠と言う技であった。背中からぶつかるそれは、様々な漫画、ゲームで使われ八極拳の代名詞のように使われている。そして美鈴の鉄山靠は、ただの鉄山靠にあらず。凄まじい速度で繰り出されたそれは、一見して踏み込みが無く威力が低くなると思われる。だが彼女は、ほんの少しの動作をもって強い踏み込みを行い一気に爆発的攻撃を行うことが出来る。その威力は、まともに食らえば、妖怪とて骨を砕かれるほど。それは、気を使う程度の能力で気を高めた事も勿論だが、紅美鈴と言う鍛え抜かれた達人である彼女だからこそ出来る技である。

 サイタマは、鉄山靠を食らいドンっと押され山なりに飛んだ。その体は、宙に浮いている。落ちる前に畳みかけようと美鈴は、また踏み込んでお互いの距離を縮めた。

 

「ハアッ!!」

 

 放つのは右手掌底。獣の牙の如く襲い掛かりサイタマの腹部へとめり込んでいった。今度は、間違いなく攻撃が入った。サイタマは、更に吹き飛び紅魔館の壁に叩き付けられた。

 

「―――ッフウウーーーッ」

 

 美鈴が呼吸を整える。先程のサイタマの攻撃、ただの人間の手刀のはずが、日本刀を思わせる刃に見えたのは、気のせいではないと美鈴は感じた。

 

(食らえばただでは済まなかった)

 

 攻撃を続け同時に相手の攻撃を防げたのは、運が良かったと冷や汗を流す。

 その一分ほどの攻防を、ジェノスは固唾を飲んで見守っていた。

 

「紅美鈴、何と言う強さだ」

 

 自分を気が付かぬ間に投げ飛ばした事に納得する。美鈴は、達人だ。単純な殴り合いでは、サイボーグの自分も分が悪いかもしれないと思うほどに。

 ジェノスにとって武術と言うものは、同僚であるS級ヒーローのシルバーファングが扱う流水岩砕拳を特に思い浮かべる。それもまた中国拳法のような動きを持ち、その使い手シルバーファングもまた達人と言える超人だ。だがシルバーファングは、長年の修行により身につけた力だが、若い美鈴がシルバーファングと同じかそれ以上の実力を持つとは考えにくい。

 

「紅美鈴、人間離れした強さと思ったが……チルノ、彼女は」

「言って無かった?美鈴は、妖怪よ」

 

 これで合点がいったとジェノスは納得する。人間であるシルバーファングは、長年の修行で力を身につけた。対して美鈴は、妖怪である。筋力、体力等の肉体の土壌が違うのだ。そして若いと考えたが、見た目どおりの年齢とも限らない。シルバーファングよりも長い年月で培った武術と恵まれた肉体を彼女は持っているのだ。もっとも、ならばシルバーファングがここにいて、彼女と戦って負けるかと言われればそうとも言えない。結局、シルバーファングも化け物じみた超人なのだ。

 

(とは言え、先生は今も手を抜かれていたな)

「あんたあいつの弟子なんでしょ?応援とかいいの?」

「いいや、先生は本気どころかまだ遊んでるんだろう。俺はそこからでも学ぶものを探す」

「ふーん」

 

 そのジェノスの言葉は、美鈴にも聞こえていた。そして彼女もサイタマがこれで終わる様な人間ではないとわかっていた。

 

「……どうでしょうか、私の強さは」

 

 そう問いかけると、壁にめり込んでいたサイタマは、何事も無かったかのように壁から出て体に着いた汚れを掃った。

 

「まあまあじゃね?」

(……マジですか?)

 

 無傷だった。サイタマの体には、全くの外傷は無く精々服が汚れて破れただけだったのだ。サイタマ自信も表情に変化はない。

 

「まいりましたね、まさか無傷とは」

「……お前も本気じゃなかったろ」

「ええ、まあ」

 

 二人は、戦いの前に少しずつペースを上げていくと言っていた。実際に全力の攻撃でもなかったのだが美鈴は、一撃一撃手を抜いてはいなかった。サイタマも攻撃は一度しかしていない。けど無傷はねーよと美鈴は内心ツッコム。

 

「サイタマさん、どうやら貴方には、様子見も何も意味はないようだ」

 

 そう言うと美鈴は、両手を合わせてまた呼吸を整えだした。

 

「今からは、最初から本気で……いや、貴方の本気を引き出させていただきます」

「そっちは、ガチでやるってことか?いいぜ」

 

 美鈴の体がサイタマに気を見せた時のように光出した。眩しい光ではない、それは虹色のような光だった。

 

「弾幕は使いません、しかし今度は気を攻撃に使わせてもらいます」

「ああ、何でも使って来いよ」

「お言葉に甘えます」

 

 準備が整ったのか美鈴が構えた。そして、開戦。

 その時ジェノスとチルノが聞こえたのは、美鈴の爆発的踏み込み震脚による大音と、その踏み込みによって放たれた渾身の一撃により起こった破裂音の様な音だった。

 

(コレも止めますか)

 

 美鈴の拳は、サイタマによって片手で受け止められていた。止められる事を予想はしていたが、片手で容易く止められるとは美鈴も思わなかった。

 

(ならば!) 

 

虹符「烈虹真拳」!!

 

 続けて先ほどの様に美鈴は、拳の連撃を放つ。だが今度の連撃は、その全てが虹色の気を帯び見る者を虜にするほど美しい。

 

「っ!?今スペルを」

「スペルカードは、別に言葉にしなくてもいいのよ」

 

 明らかに使用された技、スペルカード。しかしチルノの時のように言葉にして宣言されたものではなかった。ジェノスは、一瞬で放たれたスペルに驚いたがチルノは、何ということも無いと説明した。

 

「スペルはなんか偉いやつ等が決めたルールでしかないから、あとカッコつけ?」

「……ルール違反と言うわけではないのか」

「ルールっても弾幕ごっことかでよ、これは格闘の決闘だから別にいいんじゃない?」

 

しらないけどさ、と最後にチルノはしめた。そう言われたらそう納得するしかなく、特に批判する気もないのでジェノスは闘う二人に視線を戻した。一瞬にして十を超える攻撃は、強力である。対してサイタマ、同様に拳を放つ。二人の間で拳と拳のぶつかり合う音がなり、一撃一撃毎に衝撃が放たれる。

 

(なんて重いっ!)

 

 サイタマの人間とは思えない一撃の重さに驚き、その一撃に込められた威力にもまた驚愕する。力を込めた一発でなく、連続して放たれる拳一つ一つがすでに必殺の拳となっている。並みの妖怪では、拳を合わせただけで吹き飛んでいるだろう。

 そこからの攻防は、美鈴が只管に攻めサイタマが守りに入る展開だった。しかし実際のところ守りのサイタマには、余裕が感じられ美鈴はと言うと、サイタマに対し攻めきれず、むしろ疲労感は美鈴の方が多く見える。テンポを変え、攻撃手段を変え、からめ手を使う。だがいかなる攻撃を繰り出しても完全に防がれ、ダメージらしいダメージを与える事が出来ずにいた。強いて美鈴が勝機を見出したのは、攻撃が当たっていると言う事だった。サイタマの余裕の表れなのかわからないが基本的に彼は、攻撃を受け止めて防御していた。それならば、と美鈴は笑う。

 

(肉体に触れれる以上、気は通せますからね)

 

 美鈴の技、気の真骨頂。練った気を相手へと送り込む。気とは、言ってしまえばエネルギーである。その効果は、使いようによっては肉体を強化する事も可能で日常的には、健康の為に気を使う事も珍しくない。だがどんな薬も摂りすぎれば毒となる。気もまた同じ。過剰に気を肉体に送り込めば、内部で収まり切らなくなり溢れ出して相手を内部から破壊することが可能である。

 

(次の一撃で試すか)

 

 なるべく悟られないように、そのままのペースで攻撃を続けながら、体内で気を凝縮させる。そしてそれを右手に移しサイタマへと繰り出した。一見変わらぬ攻撃、故にサイタマはそのまま手で受けようとした。だがあたる直前に美鈴の右手が虹色に発光、気を込めた一撃だと気がつく。瞬時にサイタマは、どうするか考えたが、すぐに答えは出た。

 

「むんっ!!」

「おっ?」

 

 答え、何もしない。サイタマはそのまま攻撃を受けた。

ドッと音が破裂する。美鈴は、渾身の力を込めて打ち込んだ。掌で攻撃を受け止めたサイタマの体が地上から浮き上がり、気が彼へと流れていく。それは一瞬の早業であり、まるで居合いの如く繰り出された。ジェノスのカメラアイでも追えぬ速度での攻撃、美鈴は何時の間にかサイタマの後ろにいた。

 

華符「彩光蓮華掌」!!

 

 華符「彩光蓮華掌」。それは、極限まで凝縮された気を、相手への攻撃と共に送り込み爆発させる美鈴の必殺の拳。普段は弾幕として使われ、美しき蓮華の花を思わせるこの技であるが、彼女本来の強みである格闘戦においてもその強さと美しさは損なわれる事なく、むしろ増している。

サイタマから溢れる虹色の光は、まさに気の爆発。ジェノスとチルノも思わず目を覆った。

 

「くっ!先生!!」

 

半端な攻撃ではないのは確かだ。果たしてサイタマはどうなったのか。

 

(通ったか?結構まいってくれると嬉しいけど……っ!?)

 

 美鈴も爆発によって舞い上がった煙が納まるのを待つ。が、ユラリ、と煙の中で何かが動くのを見た瞬間、彼女の本能が告げた。

 

(やられ……っ!?)

 

 煙から彼女の先ほどの動きより早く、性格に、必殺の拳が現れ迫った。体感時間は極めて穏やかに、しかし体は一切動かなかった。現れた拳、無傷のサイタマ。迫る絶対的死を目の前にしても、美鈴の体は一ミリたりとも動けない。サイタマの拳が彼女の鼻に当たるかどうか距離、その時、ピタリ、と拳が止まる。それに安堵する前に、拳が運ぶように持ってきた衝撃波が彼女を通り抜け、後ろの紅魔館を襲う。壁をなぎ倒し、草木は舞上がり、突風のようにして衝撃が走っていった。美鈴はと言うと、体は無事だが綺麗なロングヘアーがオールバックに変形していた。

 

「っと。今の、気だっけ?面白かったぜ」

 

 そしてサイタマ。彼は今までの戦いなど無かったかのようにあっけらかんと感想を述べ、軽く美鈴のデコをたたいた。

 

「あ、ど、どうも……」

 

 美鈴は呆然としたまま、サイタマを見る。

 強い。圧倒的に、強い。それ以外に何もいえない。技術があるとか、力があるでもない。ただ只管に強い。サイタマは『強さ』その物だった。

 

(高みとは、彼の事なのか)

 

 彼女は人ではない。見た目以上に多くを見てきた。自分が一番など自惚れたりはしない。己より強い者など、幾らでもいるのだ。ここ幻想郷ではなお更であった。だが彼は、その中でも一際異彩を放つ。彼女が出会ってきた強者は、何時か勝てると思える。しかしサイタマは違う。まるで浮かばない。

 

(私の勝つ姿が、まるで……)

 

 奇しくもそれは、ジェノスが嘗て感じたものと同じものであり、サイタマもまた同じようにおどけていたのだった。

 

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