「作戦の準備は出来ているか?」
無線からカルマの声が聞こえる。俺たちの班の司令塔であるカルマは離れたところから無線で指示をする。
「はい。でも本当に俺で良かったんですか?」
いまだにこの班の指揮官が俺なのが不安で仕方ない。
「君の能力ならば相手の一手二手先を読める。君がやることはそれを仲間に伝え、勝利を掴むことだ」
「……わかりました」
「それじゃあ頼んだぞ」
「カルマ大佐……未来では……おれは死にますか?」
「……」
カルマは何も答えなかった。
「俺たちの指揮官新人だってよ」
「マジかよ……俺たち用済みってことか」
「カルマ大佐は何を考えてるんだ……」
俺に対する愚痴が聞こえる。聞こえないはずの距離からそう言ってるのが聞こえる。ガヤガヤと騒ぎながら作戦開始場所に向かっていた。
「冬樹!元気出して!あんたは強くなってるんだから」
ケイナが俺を励ます。俺の訓練に幾度も付き合ってくれた、いわば俺の先生だ。俺の実力も分かっているのだろう。
「指揮官なんて初めてだから怖いんです。俺のせいで誰かが死ぬと言うことを考えてしまって」
「戦場に死は付き物よ。全員無傷で帰ってこさせた指揮官なんていないんだから。ほらもうすぐ作戦開始よ。しっかり指揮してよね」
そう言うとケイナは後方に戻ってしまった。無線で全員に指示を出せる。後方でも話すことは可能だが、そばに居てくれるのとは安心感が違う。
「遠距離班は突入後屋根上や建物の屋上に向かってください。突撃班の援護を頼みます」
「了解」
ケイナのみがそう返事してくれた。これはカルマの作戦だ。最初は遠距離班を高台まで誘導、そして一掃していく。そうすることでこちらの被害を減らせるとカルマは言っていた。
「俺たちはどうするんだよ」
柄の悪そうな男がそう言う。突撃班の主力の一人、ケイネットだ。髪は赤く、頬に大きな傷がある。ずっしりとした体型だが、走る速度は速い。ビルドアップ(筋力上昇)のサイコパスだからだ。
「突撃班は敵を倒しながら南東へ向かい、その後南、南西の順に敵を一掃します」
「それがカルマ大佐の指示か?」
透き通った声で質問をする彼は主力の一人、レイラン。ブレイズのサイコパスだ。バランスの取れた体格の彼は2年前の作戦で大戦果を上げた一人だ。
「はい」
俺が一通り作戦について説明し終えたタイミングでトマホークから作戦開始の指示が来る。直後に壁の中から爆発音がなる。爆弾は前日にスタイルチェンジのサイコパスが仕掛けた。
「突撃!!」
オオオオ!と大声を上げながら壁の中に突撃していく。さんざん訓練した俺はある程度の敵を倒しながら進む。能力は使わない。
「雑魚どもがぁ!!どけぇ!!」
大声で敵をなぎ倒しながら進むケイネット。
「ふん。所詮は低レベルのサイコパス。敵でもない」
敵を次々と燃やし、一掃するレイラン。
遅れをとるまいと敵をなぎ倒す仲間。俺だけが浮いて見える。
「ガキ!何やってる!指揮をしろ!」
周りの戦いぶりに見とれていた。ハッと我に返り、指揮をする。
南、敵の主力がかたまっている場所だ。
「待ってください。ここはスパークのサイコパスが……」
すべて言い終わらないうちに口を挟まれる。
「何チンタラしてんだ!!敵がきちまうだろうが!!ええいこんなやつの指揮なんて聞いてられん!進むぞぉ!!」
俺の制止を聞かず、敵の主力に突っ込んで行った。
バチン!!
破裂するような音と共に頭が飛んでくる。ケイネットだ。ビルドアップは所詮筋力が通常の10倍になる程度。電気など食らうと一撃で死ぬ。
次々と倒れる仲間たち。俺はただ眺めるしか無かった。
「……お前がこの隊の指揮官か」
仲間をすべて殺したスパークのサイコパス。静かにそう問いかけてきた。
「うっ……あっ……」
目の前のサイコパスは仲間を一人ですべて殺した。そんな事実に恐怖した。
「……話にならん。貴様は弱い。弱きものは死すべきだ。死ね」
俺の体に雷が落ちる。