「っ!!」
目を覚ます。まるで怖い夢を見ていたかのような感覚に襲われる。
「おい!ボーッとしてんじゃねぇ!指揮をしろ!」
ケイネットの怒鳴り声が聞こえる。
(この場所は……)
すぐさま状況を把握する。ここは最初の奇襲開始時の場所だ。敵をなぎ倒しながら進むケイネットと敵を次々と燃やすレイラン。それに続く仲間の兵士。このあと南に向かう。
「未来が変わった。過去に……いや、今の時間に戻ったのか?」
突然の通信。カルマの未来で俺が死ぬのが分かっていたようだ。
「はい。例のスパークに殺されかけました。南は避けた方がいいかもしれません」
「そうか。ではそのまま南西の方に進んでくれ」
俺はカルマの指示を皆に伝え、南西に向かう。
南西。俺たちは敵兵をなぎ倒しながら進む。突然目の前から青い光が高速で飛んでくる。
「っ!?」
その光は後ろにいた味方兵を一撃で殺す。正体は稲妻だ。
「どういうことだ!?」
稲妻が飛んできた方を見ると、スパークのサイコパス。先程俺たちを一掃した奴だ。奴は南にいたはずだ。
「……虫けらどもが。我々の領地を荒しおって」
稲妻が飛び、仲間を撃つ。
「虫けらとはいい度胸だな。俺の業火を受けるがよい!」
レイランがやつに向かって火の玉を放つ。
「……遅い」
「っ!?」
いつの間にかレイランの目の前に来ていた。
「ぐぁぁあああ!!」
雷に撃たれ倒れる。
「……お前もこいつの仲間だろ」
俺の方を向き、そう問いかける。
「……俺がこの隊の指揮官だ!!」
時間停止。これならば敵は動けないはずだ。
俺は距離を縮め斬りかかる。
「お前は俺の速度についてこれるようだな」
「っ!?」
奴は俺の腕を握る。時間停止が利いていない。
「……稲妻。光の速度。お前も俺とおなじか」
手に電気が貯まるのが見える。
俺は左手でナイフを取り出し、奴の胸に差し込む。
「っ!?」
その瞬間、敵が消える。いや、光の速度を越えて移動したのだ。人間は光の速度で移動すると肉体がバラバラになる。彼は強靭な肉体をしていて、雷、つまり光の速度で動いていた。それでバラバラになることを防ぐ。だが、そこに光の速度を足したらどうだろう。
時間を止め、光の速度で動けるようなもの。彼は俺の腕を掴んでいた。つまり光の速度で動いていたのだ。そこに俺の攻撃を交わそうと自分の能力を使う。光の速度をゆうに上回る速度で移動した彼はどうなるか。
「……いない?」
バラバラになった体はそれでもその速度を落とさない。さらに細かく破壊され、ついには消えてなくなる。
彼は俺の能力をスパークと勘違いしていた。だから雷が効かないと思ったのだろう。かわすことを優先し、俺の能力と彼の能力により消滅したのだ。
「いったい……どうやったんだ!?」
時間が戻り、ケイネットが俺にそう問いかける。彼から見たら、一瞬で俺が敵のところに行き、敵を消したように見えたのだろう。
その後、俺たちは敵を殲滅していき、南の門まで来て俺たちの班は作戦完了。……おかしい。
「敵主力は一人しかいませんでした」
「何!?敵はいったいどこに……」
カルマと無線で話していた。次の瞬間、来たの方で爆発が起きた。
「まさか!」
俺は仲間をおいて北に向かう。
「なんでこんなに敵がいるんだ!」
俺の行く手は俺たちが殲滅した南よりはるかに多い敵が待ち伏せていた。
(まさか俺たちの作戦がばれていた!?)
俺はそんなことが頭によぎる。
「それはない」
「!?」
俺は声のする方を見る。俺の後方だ。
(いつの間に……)
その女は髪が長く、服は神父が身に付けているようなものを着ていた。
「そこの物陰に隠れていただけです」
先程から俺の考えを読んでいるように口を開く。
「私はマインドコントロール(思考読み取り能力)のサイコパス。あなたの考えはお見通しです」
前方からくる敵を倒しながら彼に話しかける。
「お前が作戦を読み取り流したのか?」
「そのようなことはしていません。面白くないでしょう。奇襲が来るのに備えては。驚いた顔が見れないでしょう」
「お前はいったい……」
「私はレイあなた方の敵でも味方でもありません」
「何者なんだ?」
「旅人です。占いをしながら各地を回っています」
俺はどこかで似たようなことを聞いた気がした。
「ふふ……もう彼にあったのですね」
(彼?)
「記憶を消したのですか……また面倒なことを……」
独り言のようにそう言っていた。
「お前が何者かは知らないが、俺は先を急いでいるんだ。だから……」
「ならここはお任せください。無駄な仕事を減らしてくれたお礼です」
「?」
首をかしげる俺を横目に、彼女は杖のようなものを敵に向けた。
何かを呟いたかと思うと、その空間に黒い裂け目ができる。ゴゴゴという音と共に、周りの物を吸い込む。
敵がどんどんと吸い込まれていき、ついには誰もいなくなった。
「今のは……いったい……」
聞いたことも見たこともない能力。謎が深まるばかりだった。
「それではまたお会いしましょう。頑張ってくださいね」
そう言うと、俺が来た道を引き返して行った。