今俺がいる場所は、真っ暗な中で俺にのみ降り注ぐ光がある空間だ。ああ、またこの夢か。俺は目を閉じ、影の語りを待つ。
「また、大罪を犯したのか」
来た。影だ。俺の……影だ。
「今回の大罪はなんだ?」
「わかっているくせに……知らないフリをする気か」
「……」
さすがは影だ。俺の考えなどお見通しのようだ。ああ、わかっている。嫉妬。奴の強さに嫉妬したのだ。俺の力すら及ばないあの力に。
「嫉妬……それで、俺の4つ目の能力は何だ」
「カウンターエクスプロージョン(反撃爆破)。相手の能力を吸収し、その力をそのまま爆発として放つ」
「そうか。それで、俺はこれからどうしたらいいんだ?」
「マザーに従うな。それだけだ」
「どういうことだ?おい!」
俺の問いかけはむなしく、影は消えてしまった。そして俺の意識は遠のく。
目を覚ますと、頭上にはマザーがあった。どうやら秘密基地に帰ってきたようだ。
「お、起きたか。よかったよかった」
声の方に目を向ける。ひげを長く生やした男がそこにいた。俺は体勢を整え、その男を見つめる。
「……誰だ?」
「そんなに警戒しなくてよい。わたしはグラトニー。暴食の罪を背負っている」
「……」
「ふふ。君の考えていることはわかる。わたしの能力を知りたいのだろう?」
「ああ」
「アビリティーアブソープション(能力吸収)。能力を吸収し、自身の体力を回復させる。もう一つはサイコキネシス(念力)だ」
「……冬樹。多数の大罪と多数の能力を持っている」
俺の自己紹介を聞くと、グラトニーは目を見開く。
「わかっているよ。あの2人に聞いた」
グラトニーが指をさす方向を見る。ジェラシーとラストがそこで思い思いに過ごしていた。ラストはギターを弾き、ジェラシーは本を読んでいる。俺がラストたちを見ていると、ラストは何かに反応する。
「おっと。マザーから命令だ。アルタイア独立国の調査だ」
「アルタイアと言ったらあの戦争があったところか。世界でも最高クラスの戦いを繰り広げたセンシュトラルアルタ戦争。両国ともに甚大な被害を受けた」
「ああ。有名だね。いまでもその戦争は終わってないらしいからね」
ラストとジェラシーはアルタイア独立国の話で盛り上がる。それを眺める俺にグラトニーが口を開く。
「行って来たらどうだ?あそこは黒だよ」
「え?」
俺はグラトニーを見る。彼は遠い目をしていた。
「何故わかる」
「わたしはあそこの出身だからね。知っているんだよ。あそこは最悪だ。皆殺ししてきてくれよ」
「……」
グラトニーに背を向け、ラストに歩み寄る。ラストは俺の顔を見て、何を考えているかわかったようだ。
「ふふ。君も来る気だね。心強いな」
「お前にいろいろ聞きたいこともあるからな」
「そうか。それじゃあ歩きながら話そうか」
俺たちは秘密基地を出て、アルタイア独立国に向かった。
アルタイア独立国向かう途中で俺は聞きたいことを聞く。
「お前は俺とどこかであったことあるか?」
「ふむ。そんなことか。もう2回あっただろう?」
「俺にそんな記憶はない」
「ああ。そうか。ぼくの能力で君の記憶を消していたからね。これでどうだ?」
ラストがギターを鳴らす。その音とともに、俺の頭の中に蘇る記憶。ジャングルジムに座るラスト、それを捕まえようとする俺とカルマ。そして、時間を戻し、ラストを捕まえようとする俺、再びラストに敗れる。そんな記憶。
「ああ……そうか。違和感の理由はこれだったのか。お前に負けたんだな」
「そうさ。ぼくの勝ちだよ。ま、今となれば勝てる気がしないけど」
俺たちはその後、無言で目的地に向かった。
人々が忙しく行き来する国の入り口。目的地に着いたのだ。
「作戦は?」
「作戦?そんなの入って中を調べるだけだね」
「はぁ……」
俺はため息をつく。その入りかたを聞いたんだ。そして、調べる場所も知っておきたい。
「ま、ぼくに任せてよ」
俺たちは堂々と国の入り口から国に入る。