アルタイア独立国の中は、入り口近くが一目見ただけで戦の後だとわかるほど荒れ果てていた。それだけ防衛が強かったことがわかる。
「さて、どこを調べるか」
アルタイア独立国は、これといったシンボルもなければ、特別発展しているという場所もない。平均的に発展して行ってるという感じなのだ。
「とりあえず国の中央に行くのはどうだい?」
確かにそれは一理ある。大切なものほど守りやすいところにある。前回行ったトラナイド国も中央にそびえ立つ塔の地下にあった。
「それにしてもお前、いつもあんな風に入っているのか」
「うん。便利でしょ?この能力」
ラストの能力、記憶操作で門番の記憶を書き換え、入ることに成功した。前回もそうだが、堂々と入るのはリスクもないし、本当に楽だ。
「とりあえずお前を殺したい」
「何故だい?」
「言わないとわからないか?俺の記憶を消しやがって」
「ああ。そういうことか。ごめんね。でも、あの時は敵対状態だっただろう?」
「……そうだな」
俺たちは雑談しながら国の中央にあると思われる建物に向かう。一度入れば警戒する人間などいない。何事もなく目的地に着いた。
「……本当にここにあるのか?」
「た、たぶん」
ついた場所は、一軒家だった。それもボロボロの。
「……入ってみるか」
周囲に兵士がいないことを確認し、中に入る。ドアにはカギはかかっておらず、普通に開いた。
「……どこかに地下への道がないか探してみよう」
中もボロボロで、歩くたびに床が軋む。まるで人が住んでいた気配がない。
数分探索しても何一つ見つからなかった。
「ここじゃないのか……次に行くか」
ボロボロの家を出て、その周辺にある家をことごとく探索する。結局地下への道を見つけることはできなかった。
「次はどこに行くか……」
「政治堂にでも行ってみようか」
「そんな簡単でいいのかよ……」
「大丈夫大丈夫。いざとなれば記憶消せるから」
ラストはさらりと恐ろしいことを言った。だが、それは正しい。俺たちはあくまでも不法侵入者だ。
「それじゃあ行こうか」
「そうだな」
俺たちは政治堂に向かって歩く。場所は国の西側、中央よりだ。場所がわかるのはグラトニーが簡易的に書いた地図のおかげだ。
「おい、お前ら」
道を歩いていると、後ろから何者かに話しかけられる。振り向くと、国民のようだ。服装はいたって普通。何の変哲もない服装だ。
「なんですか?」
話しかけてきたそ人物はポケットに手を突っ込み、手帳のようなものを取り出す。それはこの国のシンボルマークが書かれた手帳だった。世界共通で決められている兵士を示すその手帳は俺も俺の国のシンボルマークが入った物を持っている。つまり、この国民は兵士だ。
「兵士さんが何か御用ですか?」
ラストは特に焦る様子もなく問いかける。
「先ほどから家に入っているのを見ていた。何を言いたいかわかるな?」
「ああ、そういうことですか。それはあなたの夢の話でしょう。彼は国王だよ。そしてわたしはその付き人さ」
「あ?何を言っている!」
ラストはギターを鳴らす。その音一つで兵士の態度は急変した。
「あっすみません!同盟国の国王様でしたか!申し訳ありませんでした」
頭を下げ、そそくさと逃げる兵士。先ほどの音で記憶を書き換えたのだろう。
「えげつないことをしやがるな」
「楽でいいじゃない」
自分の国が独立国ではなく共和国だという記憶を植え付けられた彼はこの先どういう風に生きていくのか。それを考えるとラストの能力は本当に恐ろしい。その後は何事もなく政治堂に着いた。
「さあ、探索しようか。その前に……」
政治堂に入るやいなや、大音量でギターを鳴らす。音は壁に反射し、建物全体に響き渡る。音で人間の思考を操る彼の能力でこの建物にいる人間全員の思考を乗っ取ったのだろう。
「ふぅ……やっぱり能力を最大で使うと疲れるね」
能力にも体力を使う。使いすぎると疲れが生じる。この大きな建物全体に能力をかけるほどの力だと、かなりの体力を使うだろう。それでも一息つく程度とは、ラストの体力はそうとうだろう。
彼の能力のおかげで、どこに入っても何も言われない。俺たちはスムーズに探索することができた。
「……あったな」
政治堂の西端にある階段に地下への道はあった。二階への階段の隣に隣接するように地下への階段があった。