「……ここ本当に機能してんのかよ」
地下はかび臭く、ところどころの壁が崩れ始めていた。電気は来ているが、薄暗く、蛍光灯は心もとなく点滅していた。
「ああ……おそらく機能はしていた。それも数時間前まで」
「どうしてそんなことがわかるんだ?」
「これを見てくれ」
一直線の地下通路の側面にあるドア。その一番近い部屋から調べている。中も同様、ボロボロだ。その部屋にある机の中をラストは漁っていた。
「なんだこれ」
「科学者の日記みたいだ。昨日の夜まできっちり書かれている。つまり、何らかの影響を受けてここがボロボロになった」
日記には丁寧に日付が書かれていて、内容はアビリティドラッグについての記録や科学者間の関係についてなど、その日にあった出来事が書かれている。
「なるほどな。一体何が起こったんだ?」
「さあね。でも、その日記でここにアビリティドラッグがあることはわかった。急いで見つけよう」
アビリティドラッグがあることが分かったため、アビリティドラッグがある部屋を片っ端から探した。そして、通路の途中の部屋にその部屋はあった。
「……どうなってんだよ」
そこは、トラナイド国と同様に、科学者は全員この部屋で死んでいた。
「おいおい、誰がこんなことをやったんだよ。全く、どうせならアビリティドラッグも壊して欲しかったな」
俺たちはアビリティドラッグに近づく。すると、奥の方から小さなうめき声が聞こえてくる。
「誰か生き残りがいるのか?」
「だ、誰だ!?た、助けてくれ!」
倒れた本棚の下からその声は聞こえた。俺たちはその本棚に近づく。
「お願いだ!ここから出してくれ!」
本棚を持ち上げ、元あったであろう場所に戻す。本棚の下から足が変な方向に曲がってしまっている科学者が這い出てきた。
「どうした?何があったんだ?」
「た、頼む!この地下室から早く!グフッ!」
俺に掴まって懇願していた科学者は突然反吐を吐く。
「大丈夫か!?」
「うぅ……頼む……ここから……」
「まだ意識はあるようだね。ちょっと記憶を覗かせてもらうよ」
ラストは科学者の頭に手を当て、目を閉じる。
「……なるほどね。暗殺者か」
「暗殺者?」
「ああ。アビリティドラッグを作る人々を殺し、アビリティドラッグを作らせないようにする。どこの国の暗殺者かは知らないけど、ここは早く離れた方がいいかもね。科学者と間違われて殺されるのはごめんだよ」
俺たちは科学者をその場に置き、出口に向かう。
「ま、待ってくれっ!助けてくれ!ガハッ!」
足も変な方向に曲がっていたし、本棚の下敷きになっていた。内臓がつぶれていてもおかしくないだろう。暗殺者の能力がどれほどのものかはわからないが。
「そういえばお前はアビリティドラッグをどうやって破壊するんだ?」
「ああ。そんなのそこら辺の兵士を操って壊させるよ」
「なるほどな」
俺たちは部屋を出て、地下の出口へ向かう。通路を歩いていると、首筋に冷たい気配を感じた。
「動くな。貴様ら科学者か?」
誰かが俺の首に刃物を当てているようだ。
「いや、科学者じゃない」
「ならば兵士か?」
「ああ。だが、ここの兵士じゃない」
「……そうか。だが、俺の存在を知ってしまった以上、貴様らには死んでもらう」
首に当てられた刃物がさらに深く食い込む。恐らく俺の首を跳ね飛ばすつもりだろう。だが、そう簡単に死ぬわけにはいかない。
瞬時に能力を発動させ、過去に戻る。部屋から出てきたところまでだ。
「ラスト、走るぞ」
「え?あ、ああ」
俺たちは通路を走る。階段の前に何者かが降り、俺たちの道を塞ぐ。後ろを振り向くも、後ろにも敵がいた。
「貴様ら、科学者か?」
「いや、科学者じゃないな」
「ならば兵士か?」
「ああ、兵士だ。だが、ここの兵士ではない」
「そうか。ならば運が悪かったと思え。俺たちの存在を知ってしまった以上、生かしておくことはできない」