反射的に俺は時間を止めた。先ほどまでいた暗殺者は俺の目の前にいない。ふと視線を下に落とすと、いつの間にかすぐ目の前まで来ていた。恐ろしいほどの速度だ。俺の時間停止の能力は完全には時間は止まらない。かなりゆっくりと動く。だが、ゆっくりと動くのがわかるのは銃弾以上の速度だ。暗殺者はゆっくりと動いているのがわかる。つまり、銃弾以上の速度だ。ラストの腕を掴み、時間停止の能力を付与する。
「っ!?」
ラストも目の前にいる暗殺者に驚愕している。刹那、腰からナイフを引き抜き、暗殺者の背中に刺し込む。俺も剣でもう一人の暗殺者の首を切り落とす。そして能力と解く。
「ガハッ!?」
ラストに背中を刺された暗殺者は、そのままの速度のまま、地面に倒れ込む。首を切り落とした暗殺者は地面に倒れ込み、首はボールのように跳ねて転がって行った。
「お前らは何が目的だ?」
俺は背中にナイフが刺さった暗殺者に問う。反吐を吐きながら応える。
「グッグフ……貴様らに教えることなどない……」
「……お前らは何故アビリティドラッグを破壊したり盗んだりせず、科学者だけを殺してるんだ?」
「教えることはないと……いっただろう……」
「まあいいさ。ぼくの能力で君たちの目的はすべて筒抜けだ」
「……」
ラストは暗殺者の頭に手を添える。
「……貴様らに隠しても無駄か……くそっ」
「答える気になったか?」
「……何でも聞けよ」
「お前らの目的は何だ?」
「アビリティドラッグ製作者を消すことだ」
「何故そんなことを?」
「俺たちの国はアビリティドラッグを悪魔の薬と考える。だからそれをこの世界から消そうとしているんだ」
「……利害が一致しているな。俺たちはアビリティドラッグ製作所をすべて破壊するのが目的だ」
「破壊するとその地域が汚染される。だから俺たちは壊さない。製作者を殺せばそれ以上増えることはない」
「いや。製作者だけを殺しても意味がないと思うね。製作者は記録を残す。それを参考に作ることができる。記録はいろんな場所に散らばる。つまり、国自体を壊滅させなければ作られるということだ」
「……そうか……はは……つまり今までしてきたことは無駄だったってことか」
「……無駄だろうね」
「はあ……任務もろくにこなせず俺は死ぬのか……」
すでに背中から流れ出る血は、床に水たまりを作るほどまで流れ出ていた。もう助からないだろう。
「俺の国はライメイ独立国だ……行くことがあったら……娘に親父はろくでなしだったと伝えてくれ……」
「ああ、行くことがあったら伝えてやる」
目をそっと閉じ、安心したような表情で永遠に目覚めることのない眠りについた。俺たちは立ち上がり、地上に出る。
「!?っ!」
階段最後の1歩を登り切った瞬間、火の球が飛んで来た。瞬時に横に飛ぶ。
「侵入者よ。地下室に何か用事か?」
「……お前は?」
階段を囲むように周囲に集まった兵士とその中央に立つリーダーらしき人物。
「エリアルと言うものだが?ま、侵入者に教える必要もなかったな」
「エリアルって確かブラスト(風使いの能力)のレベル9だね」
「おう?有名人なのか?俺」
「とりあえず、そこどけてもらおうか」
「ははは、そんな要求聞くと思う?馬鹿だね君たち」
「……」
「それじゃ、君たち罪人を今この場で処刑だ」
その言葉を発した瞬間、彼の周りに空気が集まるのがわかった。刹那、目の前から彼が消える。
「グアッ!?」
ラストがうめき声を上げる。横を見ると、ラストの腹に深々と拳が突き刺さっていた。エリアルの拳だ。俺は俊足の能力でエリアルに近づき、剣を振り上げる。
「!?」
目の前からエリアルはいなくなっていた。
(早すぎる!)
俺は時を止める。その瞬間、頭に鈍い痛みが走った。右から太い拳が頭に当たったのだ。俺の体に触れた者は俺の能力が付与される。つまり、発動したときにはすでに殴られていた。
「アッアアッ!!」
耳から熱い液体が出てくる。血だ。時間停止の能力が解かれ、エリアルは俺が吹っ飛んでいるのを見て、驚く。
「おぅ?いつの間にそんなところに?当たった感触はあったが……」
自分の腕を見ながら首を傾げていた。