俺は耳を押さえ、地面でのたうちまわる。激痛が頭に走る。
「侵入者がどれほどのものなのかと思ったが、全く、面白くない。死ね」
再び風が吹き始める。まるで低気圧のようにエリアルに向かって風が吹く。手を前に出し、風をそこに集中させ、空気の球を作り上げる。そして、俺に向かって放つ。空気が圧縮され、白い球となって飛んでくる。キーンという音とともに時間が巻き戻る感覚に襲われる。
ハッと我に返ると、そこは階段を上っている最中だった。
「どうしたんだい?冬樹」
俺はラストをその場に残し、俊足で一気に階段を上り、エリアルに剣を突きつける。一秒もたたなかっただろう。エリアルもその周囲を囲んでいる兵士も驚いていた。……俺も驚愕した。そのままエリアルを叩き切ろうとしたのだが、エリアルの5cmほど前で止まってしまった。まるで見えない鎧に止められたかのようだ。
「驚いたな。まるで目で追いつかなかった」
「くっ!」
俺は後ろに飛びのく。刹那、横腹に鈍い痛みが走る。チラッと横を見ると、エリアルが俺を蹴り飛ばしていた。コンクリートの壁を突き破り、隣の部屋に転がり込む。
「ガハッ!」
四つん這いになり、反吐を吐く。エリアルはその壁からゆっくりと入ってくる。
「俺に手を出そうなんて無理だよ。あるやつを除いてな」
顔だけをそちらに向け、エリアルの話を聞く。
「俺の能力はただのブラストじゃない。追い風を使い人間離れの速度を出すことができるようになった。さらに、俺の周囲に風の鎧を纏う。銃弾ですらも弾き飛ばす」
腕を胸の前に組み、自慢げに話すエリアル。俺が剣を取ろうとすると、瞬時に横に移動し、腹に蹴りを入れてきた。
「人の話は最後まで聞かないとダメだろう?」
「ぐぅ……ああ……」
「……内臓いくつか破裂したか?だけど、安心しなよ。君はここで死ぬのだから」
ぼやけた視界で最後に見たのは、コンクリートの瓦礫を振り下ろすエリアルだった。ハッと我に返る。
「くそっ!!」
「ど、どうしたんだ?」
エリアルに勝てない。2度も殺された。レベル9というのは嘘だと思った。あの強さはおかしい。レベル10並みだ。俺は歩みを止め、エリアルを倒す方法を考える。そして、俺は走り出す。
「冬樹!?どうしたんだい!?」
俺はエリアルに無防備な状態で体当たりの如くぶつかっていった。当然、弾かれる。
「なんだお前は。何をしたいんだ?」
「てめえを殺す!」
「……はぁ。わけがわからない」
刹那、瞬間移動で接近し、殴りかかってくる。
「!?」
エリアルは吹き飛んだ。空高くまで。カウンターエクスプロージョンで先の体当たりでわざと相手の能力を吸収し、接近した瞬間にそれを爆発として打ち返したのだ。天井を次々と突き破り、屋根に穴が開く。そしてある程度の高さまで行くと、自由落下だ。ドーンと音を立て、建物の外に落ちる。混乱している兵士たちを俊足で次々と殺す。途中、能力で攻撃してきた兵士がいたが、カウンターエクスプロージョンで吸収し、切り殺す。あらかた片付いたところで壁を破壊し、外に出る。
「お前……俺に何をした!」
エリアルは状況がわかっていないようだった。腹部には先ほどの爆発でやられたであろうと思われるやけどの跡があった。さすがはエリアルだと思う。落下のダメージを無効にしていた。
「さっきも言っただろう?お前を殺す」
「妙な攻撃だな。攻撃を弾かれたようだ」
実際は物理攻撃は弾けない。最初の風の鎧を弾いただけだ。
「物理攻撃が利かないのならば、あれでやるしかないな!」
両手を前に突き出し、手の甲に掌を重ねる。掌の中央から横に伸びるように空気が集まる。最後に強い風が吹いたかと思うと、そこには太刀があった。
「この能力を使うのはあいつとお前くらいだ。認めよう。一度でも俺にダメージを与えることができたお前の力を」
「それはなんだ?」
「風の剣と俺は呼ぶ。空気を圧縮し、その固まった空気の周りを鋭く風が吹き荒れる」
柄を握り、片手で振ると、白い刃が高速で飛んでいく。鉄筋コンクリートの建物を真っ二つにしてしまった。
「さあ、俺を楽しませてくれ」
俺はゾッとした。あんなものに当たってはひとたまりもない。ああ、そうだ、入り口の荒れた後に何かで切られたような跡があったのはこれだったのか。
俺は一気に近づく。エリアルは風の剣を横に振りかぶったかと思うと、物凄い速さで横に振る。刹那、風の刃が綺麗な直線のまま飛んでくる。俺は体勢を低くする。間一髪その刃を躱す。
「まだそれで終わったと思うなよ!」
そういうと、再び剣を横に振り、風の刃を作る。かと思うと、瞬時にもう片方の腕を縦に振る。十字架の風の刃が恐ろしい速さで接近してくる。いつの間にかもう一本風の剣を作り上げていたのだ。
「くそっ!」
俺は時を止め、十字架を避ける。いつの間に移動したのか、十字架を躱した後、エリアルのいた方を見るが、いない。ふと横を見ると、そこでまた十字の風の刃を作っていた。
「躱せない!」
俺は俊足を使う。
「ぐっ!?」
腕が消し飛ぶ。光以上の速度で移動すると、人間の体は崩壊する。俺は時間停止を解く。
「ぐぅあああ……」
腕が無くなった痛みが走り、俺は悶絶する。そんな俺をエリアルは冷ややかな目で見ていた。
「自分の能力で自分を傷つけるなんて、やはり君は馬鹿だな」
「俺の能力を知っているのか……?」
「時を止める能力。噂に聞いたことがある。ゴーデンテイ王国を壊滅させた兵士がそんな能力を使っているとか。あと、スパークの能力者を消し飛ばしたって話だな。まあ、どうやったのかは予想はつくが。やられたスパークの能力者と同じことをやったのだろう?」
その通りだった。あの一瞬ですべてを感づいたのか。
「お前は何者なんだ?」
エリアルが聞く。俺は何者か?俺は……答えられなかった。自分は一体何者なんだ?
「答えられない、か。まあいいさ。お前を生かしておくとこの先危険だ。ここで死んでもらう」
エリアルは一瞬で俺の前まで来ると、その剣で切りかかる。俺はカウンターエクスプロージョンを使う。風の剣は瞬く間に吸収され、消失する。それに驚いたエリアルは飛びのく。
「な、何をした!?あの剣は何だって切れるはずだ!それなのに!」
俺は朦朧とした意識の中、その声を聞いていた。貧血のせいだ。腕から流れる血が貧血を引き起こしている。
「……もうお前はしゃべることもできないか。最後にお前の能力を知りたかったが、仕方ない」
俺はそのまま目を閉じる。意識は暗い闇の中に引きずり込まれる。
僕が階段を上り切ったときにはすでに冬樹は建物の外で倒れていた。何が起こったかはわからない。大型の男がこちらに歩み寄ってくる。冬樹を倒すほどの強さ……僕には到底勝ち目はない。すると、奥の方で倒れていた冬樹が、ゆらゆらと立ち上がる。
「マダ……オワッテナイ……」
その声は冬樹のものではなかった。男はその声に驚いたように振り向く。刹那、物凄い勢いで吹き飛ぶ。
「ぐあああッ!」
男は壁にぶつかり、その動きを止める。そして、立ち上がると同時に高速で冬樹に攻撃を仕掛ける。が、冬樹は一瞬でその男の背後に周り、再び男を吹き飛ばす。
「あれがカウンターエクスプロージョンなのか?だが、あれは一度能力を吸収しないと使えないって言っていた」
男は瞬時に体勢を立て直し、切りかかるが、それを軽く躱し、腹に蹴りを入れる。刹那、爆発が起き、男が吹き飛ぶ。まるで能力を吸収してるようには見えない。一方的に男を攻撃する冬樹。チラッと見えた横顔は、悪魔のようだった。最後に男が宙を舞い、地面に落ちる。その顔は原型をとどめてはいない。腕や足は片方づつ無くなり、腹は内臓が見え隠れしている。かろうじて生きているのか、ゲフッゲフッと血を吹き出す。僕は冬樹を止めに走る。
「もうやめろ冬樹!こいつはもう戦えない!」
僕の声が届いたのか、攻撃をピタリとやめる。そして、気を失うように倒れ込む。これがジェラシーが言っていた冬樹の裏の顔か。僕は冬樹を背負い、その場を立ち去る。途中でエクスプロージョンの能力者を見つけ、思考を乗っ取る。最大火力でこの国を爆発させ、僕は立ち去った。