俺は暗い空間にいた。あの空間だ。いつものように光が差し、もう一人の自分が現れる。
「俺はまた大罪を犯したのか?」
現れたもう一人の自分はこう言い放った。
「俺はお前。お前の体が無くなったら困る。だから助けた」
「……いい加減教えてくれ。お前は一体何なんだ?」
「……悪魔だ」
「……」
「時期に分かるときがくる。それまではお前の体の中にいる」
最後にそう言って悪魔と名乗るもう一人の自分は消えた。それと同時に俺も目が覚める。起きようと右腕を床に付こうとした。だが、感覚が違う。そのまま俺は横に倒れてしまう。そして同時に気付く。自分の腕がないことに。
「ああ……あの時に消し飛ばしてしまったんだったな……」
だが、不思議なのは腕の傷がすでにふさがっていることだ。
「気が付いた?」
「……誰だ?」
「わたしはスロウス……起きたなら看病はもういいよね。眠いし」
「……お前は何の大罪だ?」
「説明するのも面倒。それじゃあおやすみ」
スロウスと名乗る見た目は12歳ほどの少女はスタスタと歩いて行ってしまった。俺は左腕で起き上がり、大広間に出る。マザーの部屋だ。ラストと見知らぬ2人の子供。あとのやつらはどこに行ったのだろう。ラストは俺を見るなり、おはようと言ってきた。
「その子供は?」
「誰が子供だ!俺はラース!で、こいつは俺の双子の妹スロウスだ」
「能力は?」
「クローズブラスト(至近爆破)と俊足だ。でスロウスはインスタントリカバリー(瞬時回復)と俊足だ」
「大罪は?」
「憤怒。こっちは怠惰だ」
「二人とも双子なだけあって息ぴったりなんだ」
ラストが言うにはその息の良さでほとんどの国を壊滅に追いやることができるらしい。だが……
「お前も自分でしゃべれよ!」
「めんどくさいよぉ」
「めんどくさいことをこっちに押し付けてんじゃねぇよ!」
「うるさいなぁ」
「ああん!?」
とどう見ても息がいいようには見えない。すると二人が突然何かに耳を傾ける。恐らくマザーの指示が来たのだろう。俺には全く聞こえない。
「冬樹と言ったか……お前も俺たちと一緒にこい。次の国を潰しに行くぞ」
「だが俺は……」
そう言って無くなった右腕をさする。
「腕はスロウスが治した。だが能力だけで腕一本治すのは無理だ。聞いた話じゃお前強いらしいからな。一緒に来てほしい」
「行ってきなよ冬樹」
「お前に命令されたくはない。ああ仕方ねぇ行ってやるよ」
俺たちは隠れ家を出て目的の国に向かって歩いた。
俺は冬樹を連れてパトロールをしている。どう考えてもこいつは冬樹じゃない。おかしいのだ。何がと言われてもはっきりとは言えない。俺も何がおかしいかはっきりわからないのだ。俺は冬樹を誰もいない路地に連れ込み、先頭を歩かせる。
「……何の真似ですか大佐」
俺は先頭を歩く冬樹に銃を突きつけたのだ。
「お前は誰だ?」
「冬樹ですが?よく知っているでしょう?」
「いや違う。お前はそんな喋り方をしない」
「ちょっと気が変わっただけですよ。やはり上の人には敬意を示さないと」
「いや、それだけじゃない。お前は何もかもが……」
「ふふふ……さすがですね大佐。だけど、それだけじゃ、オレハヤレナイ」
振り向く冬樹の顔はもはや人間ではなかった。悪魔。その言葉が似合う。俺は引き金を引き、その悪魔を撃つ。刹那、目の前から悪魔は消えていた。
「くそっどこに行った!?」
周囲を見渡すがどこにもいない。だが声が聞こえた。
「ここのあたりって誰もいないんですよね?それじゃあ好都合だ。あなたを誰にもバレずに殺せる」
刹那サイドのビルが崩れ始める。
「っ!?」
俺は下敷きになった。上の方から声が聞こえる。
「やっぱり弱い。未来予知程度の能力でよく大佐になれたものだ」
俺は耳を澄まし、その位置を確認する。足音が頭上に来た。その瞬間俺は冬樹の脚を掴む。
「未来予知だけで大佐になれたらいいよな」
「なっ!?」
俺はそのまま立場を逆転させる。地面から頭だけを出した悪魔に向かって銃を突きつける。
「大佐になれた理由は二つ。その指揮能力の高さ。そして、この禁断の能力を持っているおかげだな」
「お前のその能力はっ!?」
「ああ。親友の最後に俺に託した能力だ。まさかあんなことができるとは思わなかった。そして俺はこの能力を手に入れていろんなところで使った。そして気づいた。この能力は危険だと」
「ロールリバーサル(立場逆転)。触れた相手と場所を入れ替える。噂で聞いたことがあったが、まさかあなたがその持ち主だったとはね」
「さあ、聞かせてもらおうか。お前は何者だ?」
「お前に答えることなどない。それから、この程度で俺に勝った気にならないでもらいたい」
「どういうことだ?」
「こういうことだよ!!」
突然地面が吹き飛ぶ。俺は宙を舞う。爆発が起きたのだ。悪魔を中心に、かなりの範囲が吹き飛んでいた。俺は地面に着地した。
「エクスプロージョンか?」
「エクスプロージョンだけだと思わないでほしいな!」
次に放たれたのはブラストだった。風の弾だ。
「お前も多数能力者か!」
「多数能力?いや違うな。貴様ら人間に能力を与えてるのは俺だ。正確には取られているというべきか」
「取られている?」
風の弾を躱し、そう問う。
「バカな人間のおかげで最近徐々に力を取り戻しつつあるがな。その復讐として貴様ら人間を一人残らず殺してやるよ。まさに無限の戦争に終止符が打たれるわけだ」
「そんなことさせるかっ!」
俺は銃を撃つ。が、炎に跡形もなく燃やされてしまった。
「それはブレイズか」
「そろそろ終わりにしようか!」
ゴゴゴという音が響き、地面が揺れる。
「地震!?」
「消えろ」
刹那悪魔を中心に地面が抉れ、俺は降り注ぐ瓦礫の下に埋まった。