目的地に行く途中、ラースに目的地について聞く。
「センシュトラル国だ。前回お前が行ったアルタイアの敵国だな。たぶんまた戦争を仕掛けに行ってるから手薄なはず」
「子供のくせにやけに賢いな」
「子供じゃないやい!」
「もう面倒だからさっさと行ってさっさと終わらせよ」
「お前は少しくらいやる気出せよ!」
ガヤガヤとしながらも目的地に着く。国内は全くと言っていいほど兵士がいない。普通に国民が行き来する。俺たちもその流れに乗って潜入する。
「それじゃ、一気に調べにかかるぞ!」
「早く終わらせて帰ろー」
二人はバラバラの方向に走って行ってしまった。俺はとりあえずありそうなところを調べてみる。最初は目立つ建物、次に重要そうな建物。と探し回っていると、一人の女性を見つけた。赤髪は美しく、瞳はキラキラと輝いている。白い肌に優し気な笑顔。俺はその美しさに見とれていた。ドクンと心臓が高鳴った。あの女性が欲しい。そんな気持ちが芽生える。俺はその女性に近づいた。
「あら?こんにちは。何か御用ですか?」
「ああ、いや、その……なんだ……きれいだなって」
「?ふふ。ありがとう」
俺は気づいた。この女性に一目ぼれしたんだと。同時に内側からどす黒い感情が芽生える。この人を自分のものにする。これが色欲なのか。
「俺と来てくれないか?」
「え……ごめんなさい……いまいろいろ立て込んでて……」
「来ないのなら無理やりにでも連れて行く!」
俺はその女性の腕を引っ張っていた。そして両腕に女性を抱え、俊足でその場から立ち去る。
「おい!誘拐だ!!エミリアが誘拐された!!」
「追え!!」
周囲にいた人々が、俺を追いかけてくる。だが、俊足に追いつけるはずもない。
「降ろしてください!!私をどこに連れて行くんですか!?」
「俺は君に一目ぼれした。だから、君を俺のものにする」
「何を言っているんですか!?わたしには彼が……」
「っ!?……そうか。もう彼氏がいるのか……」
「だから……」
「じゃあ、その彼氏を殺す」
「っ!?やめて!彼は何も悪くないじゃないですか!」
「そうだな。だが、君がその男を愛し続けるというのなら、存在そのものを消す必要がある。でないと君を俺のものにできないからな」
俺はアビリティドラッグなどもはやどうでもよくなっていた。彼女を連れて帰りたい。その一心だ。
「お、来たか。冬樹-!!」
ラースは俺に手を振る。俺はそのまま置いて行くように俊足で走り抜ける。
「あっ!おい!冬樹!」
ラースとスロウスも俺の後ろについてくる。
「おいお前なに持ってんだよ!」
「美しい女だよ俺はこいつを連れて帰る!」
「何言ってんだ!あそこは白だろ!?ならその国の人間に手を出したらダメだ!マザーの言いつけだ!」
「俺はマザーってやつの声を聞いたことがない。だから俺は言いつけなど守る必要ない!」
走っていると、正面から集団が歩いてきた。旗を見るとセンシュトラルの国旗だ。恐らくセンシュトラルの兵士が帰還してきたのだろう。俺は透明化を使い、姿を消す。
「……子供がこんなところで何をやっている?」
集団の先頭の男がそう問う。
「あ、カムイ!カムイ!助けて!」
「俺たちはセンシュトラルの兵士だ。迷子か?センシュトラルまで連れて行ってあげよう」
カムイと呼ばれたその男は彼女の声が聞こえないようだった。
「俺たちは迷子なんかじゃない!」
ラースはカムイに叫ぶ。その声に不機嫌な顔を見せる。
「そう。それじゃあ……」
カムイの周囲に火花が飛び散る。
「敵国の兵士か?」
恐ろしいほどの威圧感。それに二人とも立ちすくむ。俺も同じだった。と、隙を見せた瞬間、エミリアは俺から逃げ出す。
「カムイ!助けて!」
「っ!?エミリア!?」
「お、おい!何もないところから人が!?」
俺の透明化も解けてしまった。
「貴様!エミリアに何をした!」
「別に。その女を俺がもらうつもりだっただけだ」
「何をふざけたことを言ってんだ!?」
「……ところで、お前はエミリアの彼氏か?」
「カムイ!あの人私を連れて行こうと……」
「エミリア、下がってろ。こいつは少しばかり懲らしめないといけない」
カムイのさっきの威圧感はさらに膨張し、殺意、そんな言葉すら優しいほどのオーラを放っていた。刹那、手を前に突き出す。その手の平から炎を飛ばす。
「っ!?思い出した!」
おれは躱しながら、前に立つ男の正体を思い出す。
「センシュトラル国の英雄、獄炎の使者の異名を持つ最強のブレイズの能力者!」
「ほぅ、俺のことを知ってるのか。だからといって、手を抜く気はない!」
俺の足元から炎が噴き出す。俺は俊足で躱す。
「おい!俺たちも加勢するぞ!」
「おっと、邪魔はさせない!」
カムイの後ろにいた兵士が俺に向けて銃を向ける。が、銃を切断する。ラースが剣で銃を切ったのだ。
「い、いつの間に!?」
「ねえ、面倒だからさあ、さっさとくたばってくんない?」
スロウスが端から端まで一瞬で移動し、すれ違いざまに周囲の兵士を切る。俊足だ。俺はスロウスの強さがわかった。あの速度で回復し、さらに一瞬で多数の敵を葬り去ることができる。あの速度は俺とラースじゃ勝てないだろう。
「な、なんなんだあの速さは!?」
「よそ見してんじゃねえぞ!!」
ラースは兵士を殴りつける。殴った瞬間に近接爆破で兵士を木っ端みじんにした。兵士の頭が大砲の弾のようになり、それに当たった人間を吹き飛ばす。
「あいつら、強いな」
「おい、よそ見してる場合か!誘拐犯よ!」
カムイが炎の球を放つ。俺はしゃがみ、炎を躱し、俊足で近づく。
「そんな鈍い攻撃じゃ俺達には勝てない!くらえ!」
カムイに剣を切りつけた。