目を開くと、そこは基地だった。今はいつだろうか。恐らく故郷が破壊される前のはずだ。
「……腕がない」
腕がないということはエリアルと戦った後か。
「気が付いた?」
スロウスが話しかけてくる。
「ああ。悪いが俺は行かないといけないところがある。自己紹介はまた後だ」
「?まあ、いいや。わたしには関係ないし」
俺は基地を出る。俺は俊足でハルト連合国に向かった。
森を抜け、草原を走りぬけると見えてきた門。すでに兵士はいなかった。
「間に合え!」
俺はさらに加速し、街の中心に向かった。
「みなさん!早く逃げてください!」
「待って!家には大切なものが!」
兵士が国民を誘導する。俺はその間を駆け抜ける。中心部に着くと、兵士が中心部に向かって、あらゆる能力で攻撃していた。中心から東側の兵士を見渡すが、カルマはいない。俺は南側に周った。
「やれ!もっと!もっとだ!!」
そう式するタイラント。俺はその横に立つ。
「いまはどんな状況だ?」
「お、お前は!」
タイラントは俺をみて驚きを隠せないでいた。チラッと中心にいる敵を見て、俺を見直す。
「お前本物か?」
「ああ、本物だ!そんなことはどうでもいい!今はどんな状況だ!」
「突然お前に似た奴が国王を殺そうとしたらしい」
「殺そうとしたってことは殺されてはいないんだな」
「ああ。それで今はあいつをその場で処刑していいと命令で殺そうとしているのだが、能力は愚か物理攻撃すら無効化する!」
「そんな馬鹿な!そんなバカげた能力があってたまるかよ!」
俺は俊足でもう一人の俺の元に向かう。後ろからタイラントが制止するが、俺の耳には届かない。
「くそっ!くらえ!」
近接攻撃での戦闘を主軸とする兵士は必死にもう一人の俺に攻撃しているが、何かに弾かれているようだ。砂煙によって何に弾かれているかはわからない。
「そこをどけ!」
「!?」
俺は俊足で近づきながらそう言い放つ。
「い、いつの間に!くらえ!」
「!?」
目の前の兵士は俺に向かって大剣を振り回す。俺は間一髪回避する。
「邪魔だ!」
俺は目の前の兵士の能力を打ち消す。ビルドアップの能力を持つ兵士は筋力を失い、大剣を落す。その間に俺は目の前のもう一人の自分のバリアらしきものを打ち消し、剣を突き刺す。
「……誰だ?」
「!?」
確かに手ごたえはあった。なのに全く全く狼狽える気配がない。砂煙が無くなり、その人物が露わになる。
「……ほぅ。冬樹か。まさか本物が来るとはね」
「お前は誰だ?」
剣はもう一人の俺の腕に確かに刺さっていた。だが、全く狼狽える気配はない。ダメージが入っていないのだろうか。
「いいでしょう。教えてあげます。私はエンド、この世界の神」
エンドは俺の剣を素手で触れ、握りしめる。そのまま剣を粉々に砕いてしまった。
「なっ!?」
「私の体に触れること自体ありえないこと。私に何をしたんですか?」
「っ!」
俺は後ろに飛ぶ。
「逃がさない」
俺に向かって黒い炎が飛んで来た。俺はそれを吸収する。
「何なんだ一体!」
「神だと言っているでしょう?他にもこんなこともできます」
そう言った瞬間、俺に向かって雷が落ちる。所詮は能力。俺は雷を打ち消し、前に飛ぶ。エンドは黒い炎を横に伸ばし、剣のように振り回す。俺は体勢を低くし、それを躱す。奴の腹に手を触れると同時に何か銀色の物が飛んで来たのが一瞬見えた。銀色の何かはエンドの腹に食い込み、すかさず俺はエクスプロージョンで爆破する。
「ぐっ!?」
爆風で距離を取ると、エンドは腹を押さえて、ひざをついていた。
「私に何をしたのですか!?」
突然俺の頭の中に直接語りかけるように声が響く。
『冬樹!離れて!』
俺はその声に従い、後ろに飛ぶ。
「逃がしません!」
エンドは俊足で俺を捕らえようと突進してくる。俺に腕が届く前に、俺とエンドの間の空気が爆発する。その爆風は凄まじく、俺とエンドは真逆の方向に吹き飛んでいく。そして、ピッという小さな音とともに、エンドの腹部が爆発した。
「うあああああ!!!」
「い、一体何が……」
「自家製リモート爆弾。スナイパーの弾にリモート式発火装置と大量の爆薬を入れておいたわ」
声の主はケイナだ。
「この能力は?」
『私の部下のテレパシー(精神感応)でそちらに連絡しているの』
「さっきの目の前で起きた空気の爆発は?」
『あなたの後ろにいる子に聞きなさい』
俺はケイナに言われる通り、後ろを振り向く。そこには兵士の服装をした秋人がいた。
「冬樹!大丈夫だった?」
「あ、ああ。お前、その恰好は?」
「ぼく、冬樹のような強い兵士になることにしたんだ」
「あんなに嫌っていたのにか?」
「うん。さっきの能力もぼくの。ちょっと特殊なブラストの能力。まだ本格的に使いこなせるわけじゃないけど、さっきみたいなことはできるようになった」
俺は感心していた。そこにエンドが飛び込んでくる。
「この下等生物にっ!このわたしが傷つけられるなんてっ!許さない!!」
そう言いつつ、激情に任せて、突進してくるエンド。俺と秋人は身構えた。すると、エンドの下から氷が突き出してきた。それは的確に腹部を貫き、エンドを串刺しにした。
「ガハッ!?」
「よう、冬樹!」
「お前は!」
声がする方を見ると、どこかで見たことがある兵士がいた。
「……誰だっけ?お前」
「おい!冬樹!親友の名前忘れたか!?トーマだよトーマ!」
「あー……ああ……うん」
「ああもう!お前が国を出て行って大変だったんだぞ!?」
『悪いけど、のんきに話してる場合じゃないみたい』
俺達は氷に串刺しになったエンドを見た。
「こ……のぉおおおお!!!」
エンドは氷をバラバラに砕く。
「あれで生きてるのか……あいつは人間じゃないみたいだな」
俺は地面に落ちて、フラフラと立ち上がるエンドを冷ややかな目で見る。エンドの腹部はぽっかりと穴が空いているが、傷口は黒く、血は流れていない。
「コノ下等生物ガアアアアア!!」
先ほどの穏やかな声とはかけ離れた声を絞り出し、両手を広げ天を仰ぐ。腹部から黒い光が天に伸びる。
「な、なんだ!?」
『逃げて!嫌な予感がする!』
俺たちはその声に従い、エンドから離れる。後ろでゴゴゴゴゴと音が立ち、次の瞬間爆風が襲う。
「うわあああっ」
俺たちは地面を転がる。立ち上がり、周囲を見る。
「大丈夫か秋人!トーマ!」
「う、うん……何とか……」
「俺も大丈夫だ……」
そしてエンドの方を見る。砂煙が風で流れて行き、エンドの姿が露わになる。
「な、何なんだよ……その姿!」
背中からは翼が生え、目は赤く光る。先ほど腹部に空いた穴はふさがり、髪は黒く、炎が燃えるようになびいていた。
「貴様ラヲ殺スノニ本気ヲ出サナイトイケナイトハナ」
「っ!来るぞ!」
俺たちは身構えた。刹那、目の前に瞬間移動し、俺は腹部に蹴りを入れられ、空高くを舞う。宙から下を見ていると、トーマは背中から蹴りを入れられ、物凄い速度で横に、秋人は足を払われ、地面に倒れ、拳を腹部に打ち込まれていた。そして、自由落下で俺は地面に落ちる。
「ガハッ!」
「う、うう……」
俺たちが倒れたのを見て、他の兵士も能力を使い、攻撃をするが、すべて跳ね返され、自分の能力でやられていた。銃弾も物理攻撃さえも跳ね返っているようだ。
「コノ姿ニナッタ私ニ指一ツ触レルコトハデキナイ。コノママ滅ビルトイイ!!」
エンドはそのまま黒い球体を空中に作り始める。
「な……にを……」
「ダークマター。国一ツ滅ボスコトナド簡単ダ」
「そ、んなことは……させない!!」
俺は立ち上がり、エンドに向かって走る。
「無駄ダ!」
エンドは片腕を上にあげたまま、もう片腕で炎の剣を振る。俺は時間停止をし、後ろに回り込み、エンドの背中を踏み、時間停止を解く。
「届けえええ!!!」
俺は空中にあるダークマターに腕を伸ばす。
「ソウハサセナイ!」
エンドは剣を俺に向かって振る。刹那、俺の足元で空気の爆発が起き、さらに空を舞う。炎の剣はかすりもしなかった。
「ナッ!?」
「冬樹……頼んだよ!」
「ああ!秋人!助かった!」
「コザカシイ!!消エテシマエ!!」
俺は視線を秋人から黒い球体に向ける。下では強力な爆発音が聞こえた。恐らくエンドが秋人を殺したのだろう。
「くっ!まだ足りないか!」
俺はあと少し届かず、自由落下体勢になる。
「無駄ダト言ッタハズダ!」
「それはどうかな」
俺の目の前に銀色の弾が飛んでくる。その弾は瞬時に人の姿となった。
「ナニッ!?」
「カルマ大佐!」
「冬樹!あとは頼んだぞ!」
カルマは俺の腕に触れる。すると、景色が一瞬で入れ替わる。先ほどまで上にいたカルマは下にいた。ダークマターはすでに腕を伸ばせば届く距離にあった。
「大佐!」
カルマは微笑み、瞬時に消えた。俺はダークマターに触れ、打ち消した。打ち消されたダークマターは爆発し、俺は空高くにあがっていた。
「何故だ!?」
上で爆発が起きたはずなのに、何故空を舞っているのか。俺はその原因を突き止めるために下を見た。エンドが俺をエクスプロージョンで爆破させたのだ。そして、ダークマターは小規模ながら爆発を起こし、国の中心から数百メートルにかけてぽっかりと穴を空けた。俺はそのまま気を失った。