無人島のじいさん
目を覚ますと草で作られた屋根が目に入った。
「ここは……」
俺はゆっくりと体を起こす。
「うっ……」
頭がズキズキと痛む。思わず頭を押さえる。
「目が覚めたか」
声がする方に目を向けると、長い白髪と長い白髭の男が座って焚き木をしていた。
「何者だ?」
「……助けてもらった人間に言う言葉か?」
「……すまない。助けてもらって感謝する。それで、じいさんは誰だ?」
「お主の恩人だ。起きたのならさっさと出て行くといい」
俺は言われた通り、出て行くことにした。手作りと思われる家の裏側に回り込み、森を抜ける。目の前に広がったのは白い浜辺と広大な海だった。海岸にはボロボロに朽ちた船があった。俺は海沿いに浜辺を伝い歩く。……何時間歩いただろう。見えてきたのは最初に見た朽ちた船だ。俺は唖然とした。ここは島だ。俺は白髪のじいさんに会いに行くことにした。
「じいさん。ここはどこだ?」
「……わししか住んでない無人島だよ」
「船もないのにどうやって出ろと?」
「泳げ。何のための手足だ」
「こんな場所も方角もわからない広大な海を渡れだと!?ふざけるな!」
「それならどうする?ここで生きるか?」
「それは……」
「大体お主は何者だ?島に流れてきたから仕方なく助けたが、まずはお主から自己紹介するべきじゃないのか?」
「くっ……」
俺は言い返せないでいた。仕方なく俺は頭を下げる。
「無礼な発言をしてすみませんでした……助けていただいたことに感謝します。俺は冬樹といいます」
「冬樹か。して、何故この島に流れ着いた?」
俺は今までの経緯を説明した。
「それからの記憶はありません。気が付いたらここに……」
「……お主、その男に負けて悔しくはないか?」
「……悔しいです。ああ悔しい。今すぐ殺してやりたいほどに!!」
俺は負けた瞬間を思い出し、頭に血が上る。
「そう。それならこっちへ来い」
「?」
「食え」
「は?」
俺はじいさんに近づく。突然今まで焼いていた魚を差し出された。
「いや、あの……」
「いいから食え」
「……はい」
俺はしぶしぶ地面に座り、差し出された魚を食べる。
「うまい……」
「……」
俺は一匹をペロリと食べてしまう。
「まだあるぞ」
「そんな……俺ばっかり食べて大丈夫なんですか?」
じいさんは親指で後ろを指す。チラッと見ると、大量のツボがあった。恐らくそこにスタックがあるということだろう。昔ながらの塩漬け保存だ。
「それじゃあいただきます」
先ほどから不機嫌そうだったじいさんの顔は、その言葉を聞いて満足気な顔になった。食べ始めて気づいた。俺は相当お腹が空いていることに。
「腹が減っては何も出来ぬ。腹が溜まったら行くぞ」
「どこにですか?」
俺は魚を食べ終えじいさんの後を追う。山をひたすら上る。目的地に着くころには、俺はくたくたになっていた。じいさんは涼しい顔で山の頂上から空を見ていた。
「ここは?」
山の頂上は木が一切なく、足場も狭い。高度は結構高いため、下の光景が一望できる。俺は一通り眺めた。水平線が果てしなく続くだけで他の島、大陸は一切見当たらない。地球は丸いんだなと改めてわかるほどに美しい曲線だ。
「ほれ」
「おっと」
俺は投げ渡されたナイフを受け取る。これは恐らく魚の内臓を取り出すために使っているナイフだろう。少し血が染み付いていた。
「これは?」
「見ての通りナイフだ。今からここで殺し合いをする」
「は?」
まるで意味が分からなかった。
「言っておくが全力で来い。でないとわしは殺せない」
「いや、だから殺し合いって……いったいどういうことですか?」
「お主が負けた奴が憎いのだろう?その憎しみをそのままわしにぶつけろ」
俺は結局わからなかった。仕方なしにナイフを構える。
「それじゃあ遠慮なく行きますよ」
「おう。来い」
俺は駆け出す。狭い足場だが、せいぜい闘技場程度はあるだろう。十分走り回れる。
「ハッ!」
俺はナイフを横に振る。しかしそれはじいさんには当たらない。すかさず俺は突く。しかしそれも躱される。そして俺は足をかけられ転ぶ。
「どうした?その程度か?」
「くっ」
俺はこのまま行っても勝ち目がないとわかり、俊足を使った。
「む?」
俊足でそのままじいさんにナイフを突き刺す。だが、俊足でほぼ瞬間移動に近いレベルであるにも関わらず、ひらりと躱される。
「なっ!?」
俺は振り向く。じいさんはみぞおちに手刀を入れてきた。
「ぐぅおおお」
みぞおちに入れられた俺はそのまま地面に崩れ落ちる。
「なんじゃもう終わりか?」
俺は上目遣いでじいさんを睨みつけ、時間停止を使う。これならば躱せまい。俺は背後に回り込み、首を切りつける。が、また外れた。刹那、腹に蹴りが入った。
「うあああっ」
時間停止を解き、じいさんを見る。
「お主妙な能力を使うな。しかし、弱い」
「くっ……」
「このままやってもわしが勝つだけだ。いい訓練所がある。来い」
俺はナイフをじいさんに返し、じいさんの後を着いて行った。