登って来た道とは逆の道を下ると、洞窟が見えてきた。じいさんはそこに迷わず入っていく。
「こんなところに何が……」
「すぐにわかる」
狭い道が続く。と、奥の方から光が差し込む。
「これは?」
洞窟の一番奥に着くと、そこにはまばゆい光を出す円盤のようなものがあった。じいさんは迷わず円盤の上に乗る。途端に青い輪っかが連続で吹き出す。
「な、なんだ!?」
「はよ来んか!」
「あ、はい!」
俺は円盤に恐る恐る乗る。円盤の大きさは人が5人ほど乗れるほど大きい。光の輪はだんだんと増え、最終的に俺の視界を覆いつくす。しばらく待つと、光は数を減らし、ゆっくりと消えて行った。視界が開け、見えた光景は先ほどとは全く異なった光景だった。
「……は?一体何が!?」
そこはコンクリートで作られた部屋だった。先ほどと同じ円盤の他に、いろいろな機械が置いてある。
「帰ったぞー」
「じいさん?月に1回は顔出せって言っただろ?あれ?その人は?」
背が高めの青年がドアの向こうから現れた。
「こいつは勝手にわしの島に流れてきた奴じゃ」
「そうか。それは大変だったね。とりあえずリビングに案内するよ」
「は、はあ……」
俺はいまだに今の現状が理解できなかった。なんとなくその青年についてその部屋から出る。部屋は地下室だったようで、扉の向こうはすぐに階段になっていた。リビングに着くと、椅子に座るように言われ、座る。
「まずは自己紹介だね。ぼくは龍っていうんだ。あと妻と息子がいる」
俺は何を言っていいのかわからずたじろいでいると、じいさんが口を開く。
「ほれ、自己紹介じゃ。早く名前を言わんか!」
「えっと、俺は冬樹……」
「冬樹か。日本人?」
「いや……」
「日本人じゃないのか。まだ海外に日本の名前を使っている人がいるのか」
俺はいろいろと聞きたいことがあったが、何から聞けばいいかわからず口をパクパクさせていた。
「と、とりあえず聞きたいことがある。さっきのあの円盤は何だ?」
「円盤?ああ、ワープポータルのことか。君の国じゃ使ってないのかい?」
「あんなの初めて見た」
「他の国じゃワープポータルないのかな?日本は最先端行ってるからね」
「日本?」
「この国のことさ」
俺は聞いたことがあった。日本は絶対に壊滅しない島国だと。壊滅しない理由はわからないが。
「で、君のことをもっと知りたい。どうしてじいさんの島に?」
俺は島に流れ着く前の出来事を話す。青年は一言も話さず、頷きながら聞いていた。一通り話し終わると、口を開く。
「なるほど。じいさんが君を連れてきた理由がなんとなくわかった」
「え?」
「ぼくも一応兵士なんだ。ついて来なよ」
俺は龍の後ろをついて玄関を出る。
「わぁ……」
俺は玄関を出た瞬間に目に入って来た光景に思わず声を出してしまった。とても高い白いビルがいくつも建ち、地上、空中、上空を車のようなものが走る。その光景は今までのどの国にもなかった。
「外の国ってどんな世界なんだ?」
「どんなって……」
「この国は海に囲まれていて、外からの奇襲は受けない。そしてもし奇襲を受けたとしても絶対に負けない」
「それはどうしてだ?」
「今から行く訓練所に行ったらわかる」
訓練所に向かう途中、俺は目に入る光景にいちいち驚いていた。空を飛ぶ車。もちろん地面を走ることもできる。まるで別の世界に来てしまったような感覚だった。
「着いたよ」
訓練所は他の場所とは違い、2階建ての建築物のようだ。その代り、面積が広い。俺が扉を開けようとした瞬間、中から物凄い音が響いた。
「なんだ!?」
「ここは中からの音は聞こえない防音素材を使った建築物だ。それでもその効果を打ち破るほどの爆音。これがどういう意味かわかるかい?」
「……わかりたくもない」
つまり今までの兵士とは比べ物にならないほどの力を持った能力者がいるということだ。エリアルやカムイとほぼ互角の戦いをしていた俺では到底敵わない。俺は気を引き締めて扉を開ける。たくさんの人の話し声と、能力による騒音。先ほどまで聞こえなかった音が一気に聞こえてくる。確かに防音素材を使われているのがわかる。
「冬樹、こっちにおいで」
俺は龍の後ろを歩きながら能力訓練をしている兵士を一人一人見て行く。ダイヤモンドを一瞬で溶かすほどの炎を発したり、恐らく100トンはあろうダンプを風の力だけで持ち上げたり、分厚い鉄板をいくつも重ねた壁を水の力だけで貫く。そんな今までに見たことのない力を持った兵士がたくさんいた。
「ここだ。とりあえずこれ着て。気休めにしかならないけど。入ったら気を抜かないように」
そう、不吉なことを言いながら渡されたのはゴムでできたスーツだった。龍は俺がスーツを着たのを確認すると、扉を開き、中に入る。
「こんにちはー」
「ん?ああ、龍か。今日は休みじゃなかったのか?」
「うちのじいさんが別国の兵士を連れてきたから、ちょっと見学にね」
「それ大丈夫なのか?スパイとかじゃないだろうな?」
「大丈夫。もしものことがあったらすぐに殺すから」
「そうか。それならいいが」
龍と話すその男は、最後の言葉を言い終ると、腕をその部屋の奥の的に向ける。的は普通だが、その奥にある物が普通じゃない。水のカーテンがいくつも張られ、一番奥にゴムでできているのであろうマットが壁に張ってある。俺がそのマットを凝視していると、一瞬でマットがぐにゃりと曲がる。次の瞬間物凄い轟音が鳴り響く。雷のような音だ。
「ほら、冬樹、気を抜いたら死ぬよ」
「なんだよ今の……」
「うちの国の最強の兵士の一人、雷電の能力だよ」
俺は龍が紹介した雷電と言う男を見る。
「どうも。外国のやつと仲良くするのは気が進まないが、龍の紹介だ。仲良くしよう」
雷電は手を差し出す。握手をしようということらしい。俺はその手を握る。握った瞬間に、物凄い電気が体を駆け巡る。
「うあああああっ!!」
「おっと。まだ電気が残ってたか」
「な、何なんだよ!」
「俺の能力はサンダー。いや、君たちにはスパークの方が馴染み深いかな?」
能力はレベル10を超えると限界突破をすると聞いたことがある。その時能力の名前が変わり、レベルという概念は無くなる。つまりこの男は限界突破をした能力者ということだ。
「そうだ冬樹、あのマットを見てきなよ」
「何故?」
「いいからいいから」
俺は50メートルほど先にあるマットの元に行った。マットは元の姿に戻りつつある。俺はマットの中心を見た。
「これは?」
マットの中にめり込んでいた鉄の玉を取り出す。
「君たち他国の兵士って能力にばかり頼ってるだろ?」
言われてみればそうだ。エリアルは風の鎧による防御力と風の弾、アクアは水による攻撃、カムイも炎による攻撃だった。そしてエンドも。
「俺はその鉄の玉に電気を蓄積させ、放電の勢いで撃つ。簡易的なレールガン(超電磁砲)だ」
「レールガン?」
「知らないのか?世界の武器で最も強い武器だ。電気を圧縮したレーザー砲だ」
「電気を圧縮ってことはその球必要ないのでは?」
「ああ。こういうこともできるぞ」
そう言って再び腕をマットに向ける。たださっきと違うのは手を銃のように人差し指と中指をマットの方に、親指を上に伸ばし、薬指と小指を曲げる。人差し指と中指で電気がバチバチと光ったと思った瞬間、電気のレーザーがマットを貫く。……いや、何枚も張られた水に電気が流れ、マットにぶつかるころにはその力は弱く、マットに変化はなかった。
「とまあ、こんな感じで玉があるのとないのではかなり差が出る。お前たち外国人とレベルが違うのはこの技術を持ってるからだな」
日本の最先端技術を知った俺は、ただただすごいとしか思えなかった。
「さて、それじゃあじいさんが連れてきた君の力を見せてもらおうか」
「というと?」
「そのままの意味だ。闘技場で全力で戦ってもらう」
俺は頷いた。その頷きを見た雷電はついてこいと言って、闘技場に向かった。