闘技場に着くと、たくさんの人々が観戦していた。といっても見てるのはモニターで、ステージの上には兵士は互いに向かい合って椅子に座り、頭にヘルメットのような物を付けていた。
「あれは何をしているんだ?」
「見ての通り戦ってるんだ」
確かにモニターでは戦っている。だが、戦っている人間はどこにもいない。
「戦っている兵士はどこだ?」
「あそこだ」
雷電はステージに向かって指をさす。
「……」
「あれは脳と繋がっており、自分の能力をバーチャル世界で自在に使うことができる。バーチャル世界では死ぬが、こちらの世界では死ぬことはない。いわばゲーム感覚でリアルで戦うように戦えるわけだ」
モニターでは、ブレイズとブラストの兵士が戦っているようだ。強力な炎と風が飛び交う。
「あれがバーチャル世界か」
「その通り。あの試合が終わり次第お前にはこの地域の兵士全員と戦ってもらう」
「この地域?何人だ?」
「ざっと200人ほどかな」
「200人とぶっ続けでか?」
「いや、さすがにそれは辛いだろう。途中途中休みを入れる」
俺はそれを聞き、少し安心した。ほどなくして試合が終わり、俺達はステージに向かう。
「レディースアーンドジェントルメーン!!みんなバーチャルバトルフロンティアに来てくれて、どうもありがとう!!今日は別の国の兵士が来たということで、その戦いっぷりを見て行きまーす!!」
司会を務める人物がマイクを持ち、紹介する。
「赤コーナー!!別国からの挑戦者、ふーーーーーゆきーーーーー!!!」
紹介とともに歓声が上がる。
「青コーナー!!この地域最強クラスの電撃をつかさどるレールガン、らーーいーーでーーーーん!!!」
紹介とともにざわざわとし始める。ざわざわ声の内容が俺の耳に届く。
「え?雷電?あのひと瞬殺でしょ……」
「ああ、これは雷電の勝ちだな」
俺は少しムッとしていた。
「さてさて、お二人さん。ヴァーチャルヘッドギアをかぶって、椅子に座ってください」
司会に促されるままにヘルメットをかぶり、椅子に座る。刹那、意識が飛ぶような感覚に襲われる。意識がはっきりしたころ、目の前に見えたのは大きな闘技場だ。いつか読んだことがある古代ローマという時代にあったコロッセオという闘技場のような場所だ。
「ここは?」
「よう冬樹」
俺の反対側の扉から出てきた雷電が話しかけてきた。
「ここってなんだか闘技場って感じで俺は好きだ。お前はどうだ?」
「まあ、嫌いでもないな」
俺たちの会話を遮って司会の声が頭に響く。
「それでは試合を始めます!試合時間は50分!それまでに戦闘不能になるか、制限時間になるまで続きます!ルールなど一切なし!全力の殺し合いです!それではカウントダウン!3、2……」
俺は構えた。剣を腰から抜き取る。雷電は腕を組み、立っている。
「1、0!!」
0の声が聞こえた瞬間、俺は時間を止める。何をしても大丈夫なのなら手加減はいらない。
「もらった!」
俺は剣を振る。雷電の首を刈り取る軌道だ。刹那、剣は物凄い勢いで上空に飛んだ。
「なっ!?」
雷電からあふれ出る電気は俺を吹き飛ばす。
「ぐああっ!!」
俺が地面に落ちたとき、能力が解ける。
「それがお前の能力か。時間を遅くしているようだったが」
「スパークの能力者はみんな俺のこの能力に追いつけるのか?」
「それは知らないな。お前の能力は初めてみる」
「そうか。それならば!」
俺は俊足で雷電に近づく。一瞬俊足を解き、時間を止める。そして雷電の腕を掴む。
「何の真似だ?」
「以前スパークの能力者と戦ったことがあってな。その時はこれで!」
俺は雷電が発する電気をそのまま受け、カウンター。爆発の速度は電気の速度に勝てないが、それが狙いだ。爆発する前に逃げるだろうと予想したからだ。しかし、その予想は外れた。
「ぐっ!?」
爆発と同時に俺の体は吹き飛ぶ。その速度は光の速度を軽く超え、俺の体はバラバラに砕け散る。
「チェックメイト!!何が起こったかわかりませんが、冬樹選手がどこかへ消えてしまったので、雷電選手の勝利です!!」
その声とともにヘルメットを外す。雷電の方を見ると、雷電もヘルメットを外し、こちらを見ていた。
「何をした?」
「簡単だ。跳ね返しただけだ」
「どうやって?」
「磁石と同じだ。お前が触れた瞬間にN極の電気を流し込んでいた。あとは俺がN極の電気になるだけだ弾くことになる」
「その理屈だと、お前も弾かれて俺と同じように消えるんじゃ……」
「地面にS極の電気を流せばいい。それだけのこと。戦い方が全然だめだ。おい!智樹!」
「は、はい!!」
名前を呼ばれた兵士は控室から出てきた。
「こいつは新人だ。まだ戦果も低い。お前は智樹と戦ってみろ」
俺は舐められたような気がして苛立った。
「ああやってやるよ!俺だっていろいろな戦いをしてきた!新人如きにやられるかよ!」
おれは再びヘルメットを被る。意識が浮上し、再びあのステージが視界に入る。その少し後に智樹が現れた。
「よろしくお願いします!」
礼儀正しく頭を下げ、挨拶をする。その後、剣を持ち、構えた。智樹は二刀流だった。
「ああ、よろしく」
俺もぶっきらぼうに挨拶をし、剣を構える。
「それでは冬樹選手の二戦目!果たしてどのような戦いを見せてくれるのか!カウントダウン!3、2、1、0!!」
0が聞こえた瞬間に俺は俊足を使う。一瞬で距離を詰め、剣を振るう。カンっという金属と金属のぶつかる音。智樹が俺の振った剣を剣で受け止めたのだ。
「はあっ!」
智樹が左手に持った剣を振るう。俺は素早く離れる。地面に足がついた瞬間に俊足で飛ぶ。横がダメなら突きだ。俺は剣を腹に向かって突き刺す。しかし、再び剣は金属音とともに弾かれる。
「っ!」
まるでこちらの動きを完全に読んでいるような動きだ。俺は素早く体勢を整える。
「遅い!」
「ぐあっ!?」
俺は体勢を整え構えようとしたところで横腹を切られる。智樹は俺を切った瞬間飛び退く。全く隙がない動きだった。
「お前の能力は一体……」
「心の目です。相手の動きを読み、360度すべての角度を見ることができますよ」
「……」
俺は剣を智樹に向かって投げる。クルクルと回転しながら智樹に向かって飛んで行くが、智樹はそれを躱す。そして俺に近づいてくる。俺は剣を呼び出し、構える。ヴァーチャル世界であるここだからこそいつでも道具を取り出すことができる。カンと金属音とともに剣がぶつかり合う。智樹のもう片方の剣が俺を切りつける。
「ぐっ!」
智樹は切りつけた瞬間後ろに下がる。
「もう終わりにしますか?」
「まだだ」
俺はピンと伸びた糸を引く。糸の先は先ほど投げた剣だ。智樹は後ろから迫る剣を難なく躱す。まるで後ろに目がついているように。先ほどの話は本当だったようだ。
「そろそろ本気で行きます!」
智樹は俺に向かって走る。動きこそは遅いが、二刀流でそれを補っている。さすがに剣1つで二刀流と戦うのは辛い。攻撃を躱し、すばやく後ろに回り込む。が、後ろを取れない。すでに振り向いていた。確かに動きを読んでいるみたいだ。俺は時間を止めた。
「これならばどうしようもあるまい!」
俺は剣を振る。カンっと音を立て、それを弾かれる。
「なっ!?」
剣を剣で止めていた。動きを読むというレベルではない。素早く離れ、時間を戻す。
「本当に妙な能力ですね。まるで時間の流れを操っているような」
「どうやって……」
「予想していた通りの動きでしたから。能力に慢心して攻撃してくることは読んでいました。その軌道に剣を添えれば防ぐことができる。それじゃあ終わりにしましょう」
俺は俊足で智樹に近づく。剣を俺に向かって振ってくると予測し、横に躱す。が、全く別の方向から剣が迫る。
「っ!?」
俺は瞬時に離れる。と、剣は目の前に迫っていた。智樹は剣を投げていたのだ。俺は躱すことができず額に剣が突き刺さり、試合は終わった。
「やっぱり弱いな冬樹」
俺は屈辱でいっぱいだった。俺は闘技場を後にした。