あれから時が経ち、俺は再び闘技場に立っている。あの時のリベンジだ。
体力勝負で負けたあの日からひたすら訓練に打ち込んだ。体力をつけるためにひたすらあの広大な運動場を走り、能力強化訓練も一日に何回もやる。また武器の使い方も指摘され、練習した。前回より遥かに強くなれたはずだ。
「レディースアーンドジェントルメーン!!今日は前回大敗北を決した冬樹のリベンジだ!!果たしてどこまで戦えるようになったのか!それじゃあ始めよう!カウントダウン!3、2、1、0!!」
いつかのあの司会者のカウントダウン。0が聞こえた瞬間に動く。走って一気に距離を詰める。
「全く勉強してないみたいですね!むやみに突進して来ても動きが読みやすいんですよ!」
俺に向かって縦切り。俺がそれを横に躱すと、次に来るのは横切り。二刀流ならではの動きだ。だが俺はそれを読み、瞬間移動。
「なっ!?」
「今までの俺とは違う!」
後ろに瞬間移動をした俺は背中を突き刺す。
「ぐはっ!?」
俺は能力訓練により、俊足は限界突破した。そして高速で移動する俊足の能力は変わり、場所を移動する瞬間移動になった。
たとえ相手の動きが読めようと、突然場所を移動されたらどうしようもない。そのまま試合は終了。智樹にリベンジを果たした。
現実世界に戻ると、智樹はお見事と言って手を差し出してきた。
「負けです。急に消えて後ろに回られたらどうしようもありません」
「ああ、君もなかなかのものだったよ」
智樹は軽く会釈すると、控室に戻って行った。
「見事に1人目に勝ちました!さあここからが本番です!!100人切りあと99人!どんどん行きましょう!!」
俺は瞬間移動を駆使して敵を倒し続けた。さすがに3人目から同じ手で倒すことはできなかったが、瞬間移動を1回しか使えないなんてことはない。相手の攻撃を読み、躱し、切り倒す。もはや相手にならない。
「さあいよいよ91人目!冬樹の先生である龍選手です!」
「冬樹、本当に強くなったね。だけど、僕に勝てるかな?」
「ああ、勝って見せるさ!」
俺は瞬間移動で一瞬で背後に回る。
「もらったっ!」
振りかぶった剣は弾かれた。
「っ!?」
「忘れたかい?ぼくの能力はアンチブレイク。どんな攻撃でも弾く」
「ふっそうだったな。ならこれでどうだ!」
再び瞬間移動、そして時間停止。時間は完全に止まっている。俺は瞬間移動で移動しつつ銃を撃つ。そして空中に移動し、龍の頭に手をつくと、時間停止を解く。時間が動き出した銃弾はすべて龍に向かって飛ぶ。能力を打ち消す能力によりアンチブレイクの能力は打ち消されている。
「うっ!?」
言葉もろくに発せないまま龍は蜂の巣になり、試合終了。現実世界に戻ると龍と向かい合う。
「見事だよ。時間停止と瞬間移動で一瞬で数発の銃弾を撃ち込んでくるなんてね」
今までは高速で移動していたため、光の速さを越え、消滅していた。だが、瞬間移動は場所を移動しているために速度など一切関係ないのだ。そしていままで制限時間があり、時間はわずかに動いていた時間停止の能力は、時間停止は俺が能力を解くまで完全に時間を止めることができるようになった。
「さあ、次は92人目!体力勝負で敗北したと情報を手に入れました!無敵の体を持つ錬選手です!」
今まで弱い兵士から順番に戦ってきた。となると龍は錬より弱いということになる。いや、錬がそれほど強かったということだ。
「あれから強くなったのか?いや、聞くまでもないか。龍を倒せるほどだからな。あの時より強いのだろう。期待しているぞ」
「それはどうも。前回のようにはいかない」
俺は瞬間移動で背後に回り、剣を背中に刺す。
「くっ!」
硬い肉体は剣で切り裂くことはできなかった。
「刺すという考えはいいな!だが俺にそれは効かぬ!」
錬に刺さった剣を抜こうとしても筋肉で挟まれ、抜けない。錬は体を捻じり、大きな腕を振り回す。剣を手放し、俺は時間停止をする。完全に時間を止めているために、エリアルと戦った時のように止めた後攻撃を当てられるということはない。
(そろそろあの能力を使うか……)
錬に剣を刺し、自らの腕に傷をつけた。それを繰り返す。最後に腹部に剣を刺し、時間停止を解く。
「ふ、何度やったところで同じことよ!」
錬は本当に剣が刺さっていてもどうと言うことはないと言わんばかりに俺に向かって腕を振り下ろす。瞬間移動で、躱すと、地面に穴が開く。錬の攻撃力はそれほどまでに高いということだ。瞬間移動で背後に回り、エクスプロージョン。爆発により、刺さった剣は深く入り込む。
「ぐあっ!?」
「いくら爆発や攻撃が効かなくても」
瞬間移動でさらに先ほど刺した剣の位置に移動し、爆破。
「さらに強い衝撃で内部にダメージ与えられたらどうしようもあるまい!」
「くっ!そういうことか!」
錬は体全体に力を籠める。アイアンボディの能力を発動したのだろう。俺は構わず剣を刺した場所に移動し、爆発。
「な、何故だ!?」
錬に刺した剣は内部に入り込み、錬はダメージに苦しむ。
「俺の能力を打ち消す能力は、俺の能力効果範囲内の能力すべてを打ち消すことができるようになった。俺の手が触れていなくても能力は打ち消される」
最後に腹部に刺した剣の前に移動し、爆破。そのまま錬は倒れた。
「短時間でここまで強くなるとはな……負けだ」
錬に剣を突き刺した際、自分に傷をつけたのは、カウンターエクスプロージョンが強化され、能力は吸収し、物理ダメージは入るがその分のダメージを受けた回数分だけエクスプロージョンを使えるようになったためだ。つまり、今まで能力を吸収した際、一度だけしか吸収、そして爆破ができなかったものが、吸収した回数と同じだけ爆破することができるようになった。能力だけじゃなく、剣による傷のように打撃によるものでもこの効果が発動できる。また、能力を打ち消す能力は触れた相手ではなく、効果範囲内のサイコパス全員の能力を打ち消すことができるようになった。範囲は10メートルだ。
その後93人目、94人目と次々に倒す。さすがに錬以上の力を持った兵士だ。かなり苦戦した。そして98人目。相手は雷電だ。
「まさか短時間の訓練でここまで強くなるとはな……さあ、俺を楽しませてくれよ」
「楽しむ前に倒してやるよ」
「おっと始まる前から燃えています!これは熱い闘いになりそうです!!それではカウントダウン!3、2……」
俺は剣を呼び出し、体勢を低くする。
「1、0!!」
0とともに走り出す。
「お前の攻撃はもうわかってる!!」
雷電は電気を地面に張り巡らせた。俺は瞬間移動で上に飛ぶ。
「空中じゃうまく戦えないだろう!!」
俺に向かって電撃が飛んでくるが、それを瞬間移動で躱す。
「後ろ!!」
雷電は後ろを振り向き、レールガンを撃ち込む。が、俺はそんなところにはいない。
「……っ!?」
雷電が後ろにレールガンを撃ち込むことは読んでいた。俺は雷電の背中に深々と剣を突き刺していた。
「ガハッ!?」
背中を貫かれた雷電は放電をする。
「うああああっ!」
体に電気が流れ、そのまま吹き飛ばされる。雷電は息を荒くしながらこちらを振り向く。
「俺に傷をつけるとは……なかなかやるな……」
「くっ……まだ倒れないか」
雷電は背中に刺さった剣を電気の力で引き抜く。直後、傷口は焼かれふさがる。
「電気の熱は一瞬で人を焼く。このくらいなんてことない」
「もう満身創痍じゃないか。そろそろ諦めたらどうだ?」
「ふ、本当の戦いでこの程度、まだ軽い傷だ。それより俺の電気を食らったお前はどうなんだ?諦めた方がいいと思うが」
「何を言って……」
突然俺の体は雷電の方に引き寄せられる。
「なっ!?」
雷電に引き寄せられた体は、再び雷電の拳によって離される。
「ぐっ!?」
さらに勢いが弱まったと思った瞬間、再び雷電の元に引き寄せられる。
「俺の電気に触れた人間は俺から逃げることはできない。死ぬまでサンドバックになってもらうぞ!」
「そんな攻撃、俺に効くかよ!!」
能力を打ち消し、瞬間移動。雷電の背後に回る。雷電は先ほど抜いた剣で俺の斬撃を止める。
「言っただろう?俺の電気を受けた人間は俺から逃げられないと。すなわち、お前の居場所は容易にわかる!」
「くっ!」
「能力が効かないなら直接攻撃しかないよな!!」
俺の腹部に蹴りを入れ、突き放すと、一瞬で俺の元に近づく。時間停止でそれを止めると、瞬間移動で後ろに回り、背中を切りつける。背中に刃が当たった瞬間俺の体に電気が流れ込む。
「うああああっ!?」
「お前の能力は読んだ。同時に使える能力は二つまでだな」
時間停止と瞬間移動で二つの能力を使っている。能力を打ち消すことはできない。
「鉄は電気をよく通す。さらにすでにお前の体に電気が溜まっている。さらに電気が通った。これでもまだあきらめないつもりか?」
「さすがだな雷電。だが、今までに何回俺にダメージを与えた?」
「?」
何を言っているかわからない様子だ。能力による攻撃は吸収して爆破する。それだと威力は落ちる。それに吸収が間に合わない時がある。そんな弱い能力は持っていない。
「見せてやるよ。俺のカウンターエクスプロージョン……いや、リベンジエクスプロージョンを」
瞬間移動で後ろに回る。
「無駄だと何度言えばわかる!」
雷電は振り向き、俺を切ろうとする。それを狙い、俺は爆破。剣は爆破により粉々に。その火力により雷電は焼け死ぬ。
カウンターエクスプロージョンが限界突破し、リベンジエクスプロージョンとなった。先ほどの効果とともに、ダメージを受けたら受けた分だけ威力が上乗せされるという効果を持った。俺の唯一の攻撃能力だ。
現実世界に戻ると、雷電は心なしか清々しい表情をしていた。
「負けたよ。見事だ。まさかあんな切り札を用意していたなんてね」
「切り札は最後まで取っておくものだろう?」
「フッ。確かにね」
そう言って雷電は控室に戻って行った。
「いよいよ99人目!!我が国最強の兵士の登場です!!」
「……100人目は?」
「100人目は別の会場で行います。それに彼は兵士ではないので」
「そう……」
俺はヘルメットを被り、先にあの世界に入る。しばらくして、細身の男が入ってきた。
「お前が挑戦者か?」
「ああ、そうだ」
黒髪で片目は隠れ見えない。もう片方は眼帯をしていてこちらが見えているのかわからない。どう見ても舐められている。
「ま、せいぜい楽しませてくれよ」
「それはこっちのセリフだな」
司会のカウントダウンとともに俺は走りだす。動きがわからない状態でうかつに近づくのは得策ではない。相手の周りをぐるりと回る。少し前かがみの男は手をぶらぶらとさせながらまるで動こうとはしない。
(あいつ動かない……ならばこっちから!!)
時間停止、そして瞬間移動で銃を撃つ。360度すべての角度からの銃弾。どうあがこうと逃げられない。地面に降りた瞬間能力を解く。一気に地面に打ち込まれた弾は地面を抉り、砂煙を上げる。
「砂煙が上がる?つまり攻撃が当たってない!!」
「気が付くの遅いねええ!!」
その声は俺の背後からだった。
「なっ!?」
咄嗟に振り向き、後ろに躱すが、あいつの武器であろう長い爪が俺の目を切り裂く。
「いつの間に……」
「けけけっ!そんなうすのろな攻撃じゃあ俺はやれんよ!!」
俺はその場に立ち、動きを読む。男は相変わらずゆらゆらとその場で揺れ、まるで攻撃してこない。
〈動きが読めない……あいつの能力は一体?)
俺は投げナイフを呼び出し、男に投げる。投げナイフはそのまま男に刺さる……いや、すり抜けた。
(あいつの能力はなんだ?見たことがない能力だ……)
「けけけっ!!だからそんなうすのろな攻撃じゃ俺はやれないって!!」
「なっ!?」
俺の正面にいるはずの奴の声が後ろから聞こえ、振り向こうとする前に背中から爪が貫く。腹から五つの爪が飛び出してきていた。
「ガハッ!?」
その爪はそのまま消えてなくなった。地面に伏せ、腹を押さえ、後ろを見るが、奴はいない。先ほどの位置を見ると相変わらず奴はそこに立ち、ゆらゆらと揺れていた。
「一体……どうやって……」
「けけけっ!お前に俺の能力がわるわけがない!そのままわからないまま死んでいくんだな!!」
俺は押さえた腹を見る。血はダラダラと流れている。と、影が揺れたような気がした。
(影?俺の影……まさか!)
俺は再び奴を見る。奴の足元に影はない。
(そういうことか……)
俺は立ち上がり、周囲を見渡す。俺の後ろの方でゆらゆらと動く影があった。俺は時間停止と瞬間移動を使い、その影がある場所に向かって銃を撃つ。360度すべての方向からの銃弾。逃げられるわけがない。地面に降り立ち、能力を解く。
「なああああ!?」
銃弾を撃ち込まれた男は姿を現し、その場に倒れ込む。
「なんでだ……なんで俺の能力がわかった!!」
「影だ。お前の分身か何かには影がなかった。
「くぅ……まさか俺の能力を見破れる奴がいるなんてな……だが、それだけと思うなよ?」
「何?……ガハッ!?」
再び背中から突き刺されるようなダメージ。後ろを見ると、奴がそこにいた。
「な……ぜ……!?」
「ぎゃははは!!何故かって?教えないよーだ!!」
笑いながら地面に転がる男。俺は殺意が沸く。無理やりに動き、そいつの元に走る。
「てめぇ!!」
「おっと」
地面に弾を叩きつけたかと思おうと、煙が立ち込める。煙玉だ。
「小賢しい真似を!!」
俺はきょろきょろと周囲を見るが、煙に巻かれ、何も見えない。と後ろから斬撃。
「くっ!」
「こうなれば俺の姿なんて見えやしないよなぁ!!こっちからは丸見えだけどなぁ!!」
ひたすら背中からの攻撃。
「このっ!!」
後ろに剣を振るが、影がない方の奴。剣をすり抜け、爪は俺突き刺さる。
「ガハッ!!」
「いいねえ!!俺の動きを読んできたみたいだねぇ!!だからって勝てるわけないじゃん!!」
数分。ひたすら後ろからの斬撃を受け、煙が切れたころには俺は地面に倒れていた。
「はあ……はあ……ガハッ……」
「あれぇ??せっかく俺のからくり解いたのにもう終わりかよぉ……面白くないなぁ」
目の前で佇む男をうつろな目で見ていた。まるで体が動かない。
「まあ、そうだよねえ。あれだけ毒を受けて立ってられるわけがないよねえ」
俺は目を閉じる。内側から湧き上がる憤怒。俺はその怒りに任せ、体を動かす。
「な、何故だ!!何故動ける!!」
瞬間移動で背後に回り、男の頭を回し蹴りで蹴り飛ばす。
「ぐああっ!!くそっ!!」
煙玉。また煙が立ち込める。
「ぎゃははは!!まさかまだ立ち上がるなんて思ってなかったけど、またたのしめ……」
セリフが終わる前に男の顔面を殴りつけていた。そのまま地面にたたきつける。歯が何本も欠け、眼帯は取れかかり、目が露わになっていた。目は白目で気絶しているようだ。だが、すぐに気がついたようで、すぐに逃げようとするが、腹を足で押さえる。
「や、やめろ!!」
俺が一瞬動きを止めると、背中に斬撃が入る。
「あはっあはははは!!まさか忘れてたわけじゃないよな!!」
足で抑えられてれていながら手を叩いて喜ぶ男に容赦なくリベンジエクスプロージョン。煙は一瞬で晴れ、地面は隕石が落ちたかのような穴が開く。男が無事でいられるわけもなく。頭は完全につぶれていた。
現実世界に戻ると、ゆっくりとその男の方を見る。
「ひ、ひぃ!!」
俺は走ってそいつを殴りつけようとしたが、いつの間にか来ていた錬が俺を止める。
「離せ!!あいつを殺さねぇと気が済まねぇ!!」
「気持ちはわかるが落ち着け!もう戦いは終わったんだ!!」
俺の怒りは徐々に収まり、逃げる男の背中を睨みつけながらつぶやく。
「あの野郎……いつか殺す!」
しばらくして、怒りが収まった。控室にいるとステージから聞こえる解散の声。
「えー一部放送事故がありましたが、これにて99人切り達成しました!100人目はまた明日になります!皆さま、最後までお付き合いありがとうございました!!」
俺は立ち上がり、龍の家に戻った。すでに龍は家に帰っており、食事の用意がしてあった。
「お疲れ」
「ああ……」
「最後の彼の能力は陽炎。彼の居場所が別の場所に見える。また彼の陽炎は特殊で、彼の影の方は彼の意思だけで動かすことができ、武器を持たせればそれはすり抜けず相手にダメージを与える」
「俺は怒りに任せてあいつを……」
「恐らく君は明日あたり、この国の兵士全員から追われることになるだろうね」
「は?一体なぜ……」
「気づいてないのかい?君、まるで悪魔のような容姿になってたよ」
俺は自分の手を見る。
「今は大丈夫みたい」
「そう……」
俺は目の前に出されたお茶を見ながら静かに思いふけった。