目を開けると向こうの方から兵士が駆けつけてきた。
「エンド様?いや、あれは冬樹だ!」
「エンド様はどうした!?」
俺は呆れた。力に憑りつかれた兵士はすっかりエンドを信仰していた。そして、その力をもって俺に勝てると考えていた。剣や銃を構え、俺に向ける。
「エンド様の力を持った我々がお前ごときに負けるわけがない!!死ね!!」
掌を前に突き出し、力を集中させる。そして放たれる。ブラストの能力だ。
(あの時のやつか……。昔は逃げるしかできなかったが、今は違う!)
俺は瞬間移動で素早く背後に回る。
「な!?」
「時間停止の能力だ!!身を守れ!!」
俺のことを知っている二人の兵士は時間停止の対策をした。ブラストの能力を持つ兵士は身のまわりに触れるだけで敵を傷つけるかまいたちを、その隣にいた兵士はブレイズの能力で炎の壁を作り上げる。周囲に近づくだけで身を焼く強力な炎だ。
だが、俺にそんなものは効かない。エンドの力を手に入れた俺には。
バチッという音とともに能力は消え去り、俺の腕が二人を捉える。
「何ッ!?」
「バカなっ!!」
「勝負ありだな。能力を発動させれば一瞬でお前らの首は飛ぶ」
「くっ……」
二人は武器を落とし、手を上げる。
「エンド様はどうした……」
「エンドは俺の中に封印した。お前らに与えた力もそろそろ消えてくるころだろう」
「……」
俺は二人が力を抜いたのを見て手を放す。
「お前らはカルマ大佐の指示に従いこの国を立て直せ。俺はまだやることがある」
「冬樹に指図される筋合いはない。国を捨てたやろうに」
「国を捨てた?それはお前らも一緒だろう?エンドから力をもらった程度でエンドに従いやがって」
「この世界は力こそ正義だろ!エンド様に従うのは当然だ!」
俺は再び呆れる。
「そう、力こそ正義か。ならば俺が正義だ。だから俺に従え!」
「くっ……」
「カルマ大佐とともにこの国を復旧しろ分かったか」
「ああわかったよ!」
二人の兵士はぶつくさ言いながら立ち去って行った。俺は門の外に向かった。
門の外にはラストがいた。
「僕に協力してくれるのかい?」
「……お前なんでここにいるんだ」
「君の末路を見たくてね」
「俺がエンドに負けるとでも?」
「グリードは負けたよ」
「どういうことだ?」
「グリードはもともと君の代わりに用意した器だ。悪魔を封印するね。それでエンドを封印するために戦いを挑み、指一本触れることなく死んだ」
「……」
「残りは二人。怠惰の悪魔と憤怒の悪魔だ」
「どこにいるのかわかるのか?」
「これから行く。ラースとスロウスと合流し、シュバルツを封印する」
俺は日本で戦ったシュバルツを思い出す。俺が敗れたあの悪魔だ。ラースに勝てるとは思わない。
「俺が手伝う。ラースに勝てるとは思えない」
「ラースはね、君が思っている以上に強いよ」
そう話しているうちにラースとスロウスに出会った。
「ラース、スロウス、シュバルツは?」
「自国に入っていったところだよ。任務か何かで出てきたところを叩く」
「ラース、俺が手伝ってやる」
「お前の手伝いなんていらないよ!俺一人で十分!」
やけに自信満々だった。
しばらく待つとシュバルツが門から出てきた。一人だ。よほどの自信があるのだろう。
シュバルツは頭の後ろで腕を組み、歩く。
「腕は吹きとばしたはずだ……何故」
「悪魔だ。普通の常識は通用しない。だが、彼の回復能力は凄まじい。冬樹との戦いの後能力を使って日本から退散したが、次に現れたときにはすでに腕は回復していた」
「……」
俺は悔しさを噛みしめていた。あれで本気じゃなかったということだ。俺があれだけ本気で挑み負けた相手が本気ではなかったというのは本当に悔しい。だが、それと同時にそんな相手にラースが勝てるのかと疑問だった。
「おい、ラース。本当に勝てるのか?」
「任せとけって!」
そういうとシュバルツに向かって突進していった。俊足の能力だ。
「ん?」
シュバルツはラースの存在に気づき、顔だけをそちらに向けた。そしてラースの手がシュバルツに触れる前に避ける。
「なんだぁ?」
「チッ!」
ラースは素早く体勢を立て直すと地面に向かって能力を発動させる。地面を爆発させ、砂煙が上がる。
「なんだなんだぁ?俺の命を狙ってんのかぁ?」
煙の中でもシュバルツはまだおどけて見せる。ラースはシュバルツの足首を掴む。
「よし、捕まえたぞ!」
ラースはすかさずシュバルツの右足を爆発させた。
「うあっ!」
シュバルツはバランスを崩しその場に倒れた。ラースはいったん離れ、煙の中に隠れる。シュバルツは片足で立ちあがる。刹那銃弾が煙の中から飛び出し、シュバルツに当たる。バランスを崩しながらも立ち続ける。ラースは剣を抜き、シュバルツを剣で切りかかる。
シュバルツは素早く剣を躱し、ラースの顔面を掴み、地面にたたきつけた。
「さっきからなんなんだぁ?このクソガキが!」
「くそっ!はーなーせー!!」
「おめえには俺にやった分をしっかり受けてもらうぞ!」
シュバルツは顔面を掴んだままラースの体を持ち上げる。手を離したかと思うとラースの腹に蹴りを入れる。すでに足は回復していた。
「ガハッ!!」
「まだまだあ!!」
空中で蹴り、殴り、ラースをぼこぼこにしていた。
「ふぅ……ガキが調子に乗るな」
「こんのおお!!」
ラースは憤怒し、俊足でシュバルツの足元に移動する。シュバルツが頭を掴もうと手を伸ばそうとして、ラースに股間を蹴られた。
「!?」
そのままシュバルツは地面に崩れ落ちた。