悪魔化したシュバルツは俺が戦った時以上の威圧感を放っていた。明らかにラース、スロウスが勝てるような相手ではない。
「やっぱり俺も手伝ったほうが……!」
俺が前に出ようとすると、ラストが俺を止める。
「まあ見てなよ。ラース、スロウスは2人で100倍の力を発揮する。シュバルツの悪魔化だってどうということはない」
ラースとスロウスは手を繋ぎ、ラースは右手に、スロウスは左手に剣を持つ。シュバルツは宙に浮き、周囲には光の剣を無数に構える。
「行くぞ!スロウス!」
「うん、ラース!」
俊足で一気に距離を詰める。距離を詰める彼らに向かってシュバルツは剣を飛ばす。ラースが剣を弾くと無防備になったラースにすぐに剣が飛んでくる。しかし、スロウスが手を引き、それを躱す。すべての剣の弾幕を協力プレイで躱し、それでもなお前に進む。
目と鼻の先にラースとスロウスが迫ってくると、シュバルツは手に槍を持つ。槍をラースに向かって振り下ろすとラースはそれを止め、左腕をしならせる。スロウスが前に投げ出されると同時に剣をシュバルツに向かって振る。
「チッ!!」
周囲に浮いていた光の剣を防御に使うシュバルツ。先ほどまで攻撃をしていたシュバルツが防御に徹することになるほどに激しい攻撃だ。防御に使った光の剣は砕け散る。
「このっ!!」
光の剣が砕け散った瞬間、シュバルツは槍をスロウスに向かって振るう。が、シュバルツの背後で爆発が起こる。いつの間にか背後に回ったラースが能力を発動させたのだ。
「い、いつの間に!?」
「一人に集中していたら一人を見失うのは当然だろ?」
「このぉっ!!」
ラースに向かって槍を振るうシュバルツ。しかしスロウスが背中を切りつける。
「クッソお!!」
シュバルツはいったん距離を取り、回復に徹する。しかし、それを追従するラースとスロウス。光の剣でガードするも、もう一人がシュバルツを切りつける。
「あいつらは双子なだけあって息の合った攻撃が可能だ。シュバルツでも彼らを止めるのは難しいだろう」
ラストが解説する。
「このおおお!!」
シュバルツの渾身の攻撃がラースの腕を貫く。
「うわっ!!」
「っ!」
スロウスはラースの元に素早く駆けつける。傷口に手を触れるだけでラースの傷は一瞬で癒える。シュバルツは二人が同じ位置に来たのを見逃さなかった。彼らの周囲に光の穴を出現させた。
「くらええ!!」
光の穴から無数の矢が飛び出す。
「ラース!」
「おう!」
地面を爆発させ穴をあける。だが、シュバルツが同じ作戦に引っかかるわけがなかった。真上に光の槍を出現させ、そのまま落下させる。
「スロウス!」
「うん」
ラースは一瞬で横に穴をあけ、スロウスを投げ入れる。スロウスは素早くラースを引き、槍を回避した。
「……ちっ!手ごたえがない」
シュバルツは目を閉じ、音を確認する。そして槍を両手に出現させると、地面に突き刺す。
「あっぶねぇ!!」
ラースは剣でガードした。しかしスロウスは肩に槍を受けた。
「っ……いたい」
シュバルツの両サイドから飛び出してきたのだ。しかし、それをシュバルツは読んだ。
「やっと動きが止まったな!!」
シュバルツは再び槍を上げ、突き刺す。
「くっ!穴の中じゃ逃げ場がない!」
「どうする?ラース!」
「どうしようもねえんだよ!!このままくたばりやがれ!!」
ガンガンと槍を振り下ろすシュバルツ。ラースとスロウスは必死に剣で受け止める。
(どうするっ!このままじゃ俺たちは負けるっ!考えろ、考えろ!!)
ラースは剣で受け止めながら考えた。
(そうだ!冬樹の能力は俊足だった!俊足の限界突破は瞬間移動だ!今こそ、限界突破するときだ!!)
ラースは俊足の限界突破をイメージする。
(瞬間移動は一瞬でその場に移動する。自分の場所を移動させるだけだ!)
ラースは目を閉じ、場所をイメージした。そして俊足。
「なっ!?」
手ごたえがあった片側の槍はそのまま穴に落ち、シュバルツはバランスを崩す。スロウスはその一瞬を見逃さなかった。穴から抜け出し、素早く離れる。
「できた……!瞬間移動だ!」
「限界突破したか。ラース。あいつはさらに強くなった」
スロウスは自分の肩を回復する。
「行くぞ!スロウス!反撃だ!」
「うん!」
「くっそ……やっと反撃できると思ったら強くなりやがったのかよ!!」
「行くぞ!!」
ラースは瞬間移動で目の前に移動し、シュバルツを切りつける。すかさず瞬間移動でその場から消える。スロウスはさらに追い打ちをかける。
「ぐあっ!」
「まだまだ!!」
瞬間移動で背後に回ったラースはシュバルツを切りつける。
「があっ!」
瞬間移動を繰り返し、シュバルツを切りつけ続ける。スロウスとのコンビネーションで追い打ちを繰り返す。そのうちシュバルツは倒れた。
「はぁ……はぁ……」
「やった……のか?」
「ま、まだだっ!!」
シュバルツは起き上がる。傷も徐々に回復する。
「ちっしぶといやつめ!」
ラースがシュバルツに近づき、剣を振りかざす。シュバルツはにやりと微笑む。スロウスはそれを見逃さなかった。
「ラース!ダメ!離れて!!」
「え?」
「もう遅い!!」
シュバルツはラースの足を掴み、背後に巨大な光の穴を出現させた。
「な、なんだ!?」
「俺は悪魔だ!お前を連れて地獄に帰ってやる!!」
「ラース!!」
シュバルツの体は徐々に光の穴に入っていく。ラースは穴の中に引きずり込まれていく。
「た、助けて!!」
ラースは必死に手を伸ばす。スロウスはラースの手を取る。俺も瞬間移動で移動し、ラースの手を引く。光の穴から無数の手が出てきて、ラースの体を掴む。
俺とスロウスは腕をつかみ続けることができず、離してしまった。直後、目の前にラストが出てくる。
「悪魔シュバルツ!ラースの中に封印されろ!!」
ギターを鳴らすと無数の手は大人しくなり、そのままラースを手放す。そして、光の穴が消え、シュバルツが出てきた。
「くっそお……」
「シュバルツの体の自由は奪えた。さあ、ラース。止めだ」
「お、おう!」
シュバルツに剣を突き刺し、シュバルツを倒す。シュバルツは煙となり、ラースの体に入り込む。
「……これで、封印できたのか?」
「ああ、できた」
「……」
「ラース?」
ラースはぼーっとしたまま動かない。
「ラース、大丈夫?」
「あ、ああ……」
「本当に大丈夫か?ラース」
「……なあ、あの記憶は……本当の記憶なのか?」
「……」
「冬樹、お前は知ってるのか?」
「ああ、悪魔は真の記憶を持っている」
「真の記憶?なんなんだいそれは」
「お前は……知らないのか?」
「?」
「……いや、こっちの話だ」
俺たちは次の標的を探しに向かった。