拠点に着くと、すでにグリード以外の全員が集まっていた。グリードはエンドとの戦いで死んでいる。つまり、全員が集まっているということだ。
「遅かったのう。まあよい、これからどうするのだ?」
「待たせたね。これからマザーに向かって悪魔を封印したときに取得した能力を全力でぶつける」
「そんなことしたらマザーが壊れるのでは!?」
「大丈夫。マザーが直接脳内に語り掛けるの。その力をマザーにぶつけると、その力を吸収し、マザー本来の力を取り戻せると」
「マザー本来の力?」
「まあ、やればわかるさ」
俺は一人見知らぬ人間に目を向ける。一人だけ偉そうに座るその男はこちらに目を向けニヤニヤと笑っていた。
「お前が冬樹ってやつか?」
「……お前は?」
「アロガンス。傲慢の大罪だ」
「自己紹介は済んだかな?それじゃあ、マザーに向かって君たちの力を全力でぶつけるんだ」
俺たちは全員力をためる。スロウスに向かって放ち、リフレクターによりその力をマザーにぶつける。そうすることでクロノスの能力を放つことができる。
全員がスロウスに向かって能力を放つ。ラースは光の槍を、ジェラシーは黒い弾を、ラストは音を一か所に集中させ、圧縮させた弾を、グラトニーは黒い炎を、アロガンスは空気を圧縮させた弾を。そして俺はダークマターを解き放つ。一斉にマザーの下にいるスロウスに向かって放つ。
スロウスはすべての能力をリフレクターでマザーに向かって弾く。マザーに能力がぶつかると、マザーは強い光を発する。そして能力はすべて吸収された。するとだんだんと光が収まり、そのまま元の状態に戻ってしまった。
「……おい、何も起きな……ぐっ!?」
突然体に違和感を感じた。力が抜けていくような、そんな感じだ。ふと横を見ると、グラトニーが倒れた。
「グラトニー!?」
さらにラース、スロウスと倒れる。
「ラース!スロウス!!一体何が!?」
突然マザーが黒い光を発し始めた。俺はマザーを見る。そこには、マザーに手を触れ、力を取り込むラストの姿があった。
「力を持っていた人間が、すべての力を失ったら、立っていられるわけがないよね」
「ラスト……!どういうことだ!」
俺もだんだんと力が抜け、立っていられるような状況じゃなくなってきた。
「すべてはこの世界を征服するためだ!この世界を征服し、すべてが平等な世界を作る!」
「それがお前の目的か!」
俺は必死に立ち上がる。
「冬樹、そんな状態で何をしようというんだい?」
「俺は!そんなことのためにお前に手を貸したんじゃない!!世界の平和のためにその力を使うんだろう!?」
「征服こそ平和だろう?君は黙ってみているといいさ!」
俺は時間停止を使う。しかし、能力は一瞬にしてかき消された。
「なっ!?」
「無駄だ!この領域はすべて能力を吸収する!それを僕が取り込む!」
俺はもう立っていられない状態になり、その場に倒れる。
「て……めぇ!絶対に……止めて……!」
俺はその場で意識を失った。
意識を失った俺がいた場所は、黒い空間だった。いつものようにもう一人の俺がそこにいる。
「それでいいんだ。冬樹」
「それでいい?何がいいんだ!ラストの思惑にのり、挙句の果てに力をすべて奪われた!」
「それでいいんだ。お前は大罪を犯し、力を得ることは許されない」
「話にならない!お前は一体なんなんだ!?悪魔だとかもう一人の俺だとか!」
俺はもう一人の俺に詰め寄る。背後から別の声が聞こえた。
「それについては私が説明しよう」
「?」
俺は背後を見る。そこにいたのは、エンドだった。
「エンド……お前はどこまで知っている!」
「冬樹のすべてといってもいい。俺たちは生まれたときからずっと一緒だった」
エンドが俺に近づく。
「お前が忘れたすべての記憶を戻してやるよ。そうすればお前の本当の力を発揮できる」
エンドが俺の頭に触れると、俺は記憶をすべて思い出す。
幼稚園の頃の記憶だ。俺はその日、7つの大罪をすべて発揮する。女の子に色欲を発揮し、その女の子が好きな男に嫉妬する。俺を馬鹿にするものに憤怒し、俺に喧嘩で負けたやつを傲慢な態度で馬鹿にする。先生に怒られ、やけになり一人でほとんどすべての給食を食べる。食べ終わるとやる気が一気に失せ、怠惰に。そして、休み時間、自分もおもちゃが欲しくなり、人のものを取る。そして取り返された時、俺は暴走した。
七つの大罪すべてを犯した俺は暴走し、能力を使う。その能力はサイコキネシス。まずは目の前のおもちゃを奪い取った少年を天井に打ち付け、すぐに床に突き落とす。それを繰り返すと、先生が止めに入る。しかし、先生にその少年をぶつける。すでに少年は原型をとどめてはいなかった。
暴走は止まることを知らず、周囲にいた子供を次々と一か所に集める。園長が警察に連絡し、警察が来た頃には、すべての少年少女、先生が肉の塊と化していた。
それを見た警察は援軍を呼び、銃を構える。動くなと言って動かない俺ではない。一歩、また一歩と警察に向かって歩みを進める。警察は俺の足に向かって銃を撃つ。しかし、銃は発射された瞬間に停止する。サイコキネシスで銃弾を止めたのだ。
怖くなった警察は逃げ出す。しばらくすると、軍隊が来て、全員が俺に向かって銃を構えた。そして、全員が発砲。しかし、すべての弾丸は俺の目の前で止まり、さらに銃弾をそのまますべて軍に向かって跳ね返した。
それから俺はひと時暴れると遊び疲れた子供のごとく、その場に眠る。警察は俺を捕らえ、牢獄に入れるが、俺は目を覚まさない。俺が目を覚ましたころ、親がこちらを心配そうに見ていた。
「この子には悪魔がついているようです……悪魔祓いをするので、解放してはもらえないでしょうか……」
「しかし……」
警察の中で一番偉い人だろうか。身だしなみがしっかりしていて、ほかの警察とは違うオーラを出している。その人に母親は交渉する。
「……悪魔のせいならば警察などで決められません。確かにあの力は人間の力ではない。悪魔だと考えるのが普通でしょう」
「それじゃあ……!」
「はい。悪魔を払うことを条件に、解放しましょう」
俺は解放された。そしてあの記憶だ。悪魔祓いをしても祓えないと言われ、俺を突き放した親。そしてラストとの出会い。その後、ラストの暴走だ。
「この記憶は……」
「冬樹、お前の力は時間停止でもなんでもない。すべての能力の元祖はサイコキネシスだ。いわゆる超能力と言われるもの。それがはるかに進化した世界がこの世界。すべての力の源を持つお前はすべての能力を持っていてもおかしくはない」
「この世界で最初の能力者はサイコキネシス……それってつまり……」
「そう。お前のことだ。そして、お前が気になっているもう一人のお前のことだが、あいつは洗脳されたお前だ」
「洗脳された俺?」
「そう。教会では悪魔を祓えなかった。その代わり、悪魔の源である大罪を封じることにしたんだ。その方法は簡単。精神を洗脳し、大罪を犯さないようにするというものだった」
「そんな奴の言うことは聞くな」
「そんな簡単なものでお前が止まるわけがないよな」
「そうだな。つまり、洗脳された俺を殺せば俺の真の力が発揮されるということか?」
「そういうことだ」
俺はもう一人の自分の首を掴み、力を籠める。
「や……めろ……」
「お前を殺して俺はラストを止める!」
もう一人の俺はもう動かなくなっていた。偽物だと言っても自分を殺すのはやはり気分が悪い。もう一人の俺が消えてなくなった時、俺の体に力がみなぎるのがわかった。
「そういえばエンド。お前はマザーに吸収されたんじゃないのか?」
「あんなものに吸収されるわけがないだろ。だって俺は……だからな」
「どういうことだ?」
「つまり、奴はまだ最強になり切れていない」
「ふっ。そうか。エンド、お前はそこで見ていろ。俺の力を見せてやる」
俺は精神世界から抜け出し、現実世界へと戻った。