腕と足、どちらも失いもはや動くことすらままならない。もちろんそんな僕が兵士を務められるわけもなく、病室のベッドでただ天井を見つめていた。
ガラガラとドアを開く音が聞こえた。そちらを見ても誰もいない。
「春ねえ、冬樹の様子は?」
誰もいないはずのその場所に僕は話しかける。すると、そこから声が聞こえた。
「ダメね。もう抑えられない。もうじき夏鬼が目覚めるわ」
「……そうか。もともと無理があったんだ。冬樹もよく抑えていたほうだと思うよ」
「いや、むしろわざと冬樹の中に眠っていたのね。夏鬼」
「……どういうことだ?」
「失った力を取り戻すために冬樹に戦わせたってこと。今までの戦いにいくつか不明な点があった。冬樹が本来死ぬはずだった未来、能力が発動し、過去に戻っているの。それから冬樹の力が及ばないときは、夏鬼が表に出て、力を発動している。そして、冬樹は何者かに唆されていたように動いていたわ」
「本来死ぬはずの未来……死ぬ直前に過去に戻るなんてそんなことは!」
「もちろん意識してできるものではないわ。夏鬼が発動させたと考えるべきね。冬樹が死んでも夏鬼は復活できただろうけど、冬樹に死なれてはいけない理由があった。だから過去に戻り、冬樹を生き残らせた」
「何者かに唆されていたように動いていたというのも……」
「夏鬼が関与した可能性あるわね。あとラスト、彼もまた夏鬼に操られていた可能性あるわ」
「夏鬼どこまで手の込んだことを!」
僕はない腕をベッドの上に叩きつける。
「もう夏鬼は復活する。私たちができるのは夏鬼を再び封印することだけね」
「冬樹がいなくてできるのか?」
「……おそらくできないわ。でも冬樹がまだ中で眠っているだけであったら……冬樹を目覚めさせられれば可能かもしれない」
「可能性は限りなく低いよね」
「ええ」
「でも行くしかない」
僕は自己再生能力で体を再生する。
「春ねえ、いつまで姿を隠しているつもりだ?」
「一応行方不明ということにしているから隠してたけど、もう意味ないわね」
春ねえは姿を現す。
「行こう、主人格を止めるために!」
冬樹は立ったまま意識を失っているようだ。先ほどから声をかけても全く反応がない。幸い奴は周りの兵士に敵意を向け、暴れているため、こちらに攻撃してくることはない。
「……っ」
「冬樹!?」
「……冬樹……か」
「?」
様子が違う。いや、これは様子が違うというレベルではない。雰囲気、オーラ、あふれ出る力が違いすぎる。
「お前は!?エンドか!?いや、それ以上に!!」
「ふっエンドは俺の力の一部に過ぎない……ようやく、準備が整った」
「準備?」
俺が首をかしげてその男を見つめていると、突然腹部に衝撃が走る。そのまま後ろに飛ばされ、木にぶつかる。
「ガハッ!?」
吐血し、そのまま木を背に崩れ落ちる。薄れゆく意識の中、部下たちの呼びかける声が聞こえた。