目覚めからうるさいやつに絡まれた。確かカルマとか言ったか。冬樹の上司的な存在だったと思う。
思い通りに事が運ぶっていうのは本当に気持ちがいい。冬樹は俺の力を取り戻してくれた上に鍵を開けてくれた。ラストは冬樹を誘導し、また俺のさらなる力の為にカギとなる人間を集めてくれた。さああとはその力を回収し、邪魔な存在を消すだけだ。
俺は暴れているラストに近づく。ラストはこちらに気づき、攻撃を仕掛けてくる。周囲の人間をサイコキネシスでボールのように一つに固め、こちらに投げつけてきた。
「悪魔の力を抑えられないで暴走か。お前にその力は不要だろ?俺がもらってやるよ」
飛んできたボールは俺の目の前で粉々に砕く。それを見たラストは俺に対してサイコキネシスを使い、俺の体を引き寄せる。俺が引き寄せられた先には光の槍があり、俺を貫く。だが、そんなものが俺に効くわけもない。光の槍は粉々に砕け散った。
「歩く手間を省いてくれてありがとうよ、ラスト」
「ぐっ!?」
ラストの首を掴み、片手で持ち上げる。そして力を吸収する。
「ぐっううああああああああ!!!!」
ラストは絶叫に似た声を上げ、力なくうなだれた。そして俺には力がみなぎる。
「これが全ての悪魔の力か!!」
体の内から燃え上がる負の感情、それからそれを晴らさんとあふれ出る力。俺は負ける気が一切しなかった。
「まずはここにいる人間すべてが相手だな」
俺は振り向き、全ての兵士を見る。兵士たちはあの圧倒的な力の前に少しばかり恐れの表情が見える。
「来いよ。悲劇はまだ始まったばかりだ。真の黒幕を倒すのがお前らの役目だろう?」
「冬樹……?何を……言っているんだ?」
龍は俺をまだ冬樹だと思っているようだ。
「冬樹は俺を封じ込めていた人格の一つだ。俺は冬樹じゃない。この体の主人格、夏鬼だ。俺はすべてを手に入れる。まずはこの世界を征服する」
「夏鬼、だと?この力っ!あの時の!?」
じいさんの能力で生き返ったエリアルは俺の力に心当たりがあるようだった。
「?ああ、そういえばお前、戦ったことあったっけか。あの時は冬樹の力が持つ力を使っていたから本調子じゃなかったがな」
「あれが……本調子じゃない……だと!?」
「信じられないか?ならば戦ってみるか?エリアル」
「……上等だ!お前が黒幕だというならばどのみち倒さなければいけない!」
エリアルは立ち上がり、力を込める。
「エリアル、やつはラストをいとも簡単に倒した。一人じゃ無理だ!俺も加勢するぞ!」
カムイも体に炎を纏う。それを見た兵士たちも剣を構える。
「アクア!お前も手を貸せ!」
「言われなくてもやるわよ!」
兵士たちは次々と力を込める。俺はその様子を見るだけだ。多少のハンデがあっていいだろう。
「全員!全力で能力を発動させ、奴にぶつける!!あいつは俺たちを舐めている!俺たちの力を見せてやれ!!」
タイラントが指揮を取った。俺は腕を組み。仁王立ちする。どれだけの攻撃が来ようとも俺に勝てるものはいない。
そしてタイラントの指示ですべての攻撃が放たれた。火、水、風、雷、あらゆる能力が俺を襲う。が、
「おいおい、この程度か?」
俺は能力を発動させることもせず全て受ける。
「う、嘘だろ!?もっとだ!!もっと火力を上げろおお!!」
兵士たちは必死に能力をぶつける。が、俺にはまるでダメージはない。
「この程度ならお前らも死なないだろ。自分の力の弱さを味わってみろ!」
俺は全ての能力を反射させた。
「「「ぐああああああ!!!!」」」
すべての攻撃が止んだとき、兵士たちは全員倒れていた。
「この世界になってもこの程度なのか人間は……」
俺はため息を吐いた。
「まだだっ!!まだ終わってないっ!!」
俺が立ち去ろうとしていると、兵士が次々と立ち上がる。
「死んでなかったのか。まあ、あの程度で死んでもらっては困るが……いや、生き返らせているのか」
俺は一人の人物に目を向ける。死者蘇生の能力を持ったじいさん。こいつがいる限り兵士は死なない。
「別に死ななくてもいいが何度やっても同じだろ?お前らさっきので学ばねえのか?」
「いいえ、次があなたの最後よ」
俺の背後から声がした。聞き覚えのある声だ。
「……春樹か」
「……」
振り向くとそこには春樹と秋人がいた。
「ちょうどいい、お前らを殺そうと思っていたんだ」
「……」
春樹と秋人は無言で能力を発動させる。彼らの能力は俺と同じだ。元は俺だから。
「お前らなら多少は楽しめるだろう」
春樹と秋人は瞬間移動を使い、死角から俺を攻撃する。だが、あらゆる攻撃は俺の体に触れる前に弾く。エリアルが使っていた風の鎧と同じだ。だが、あれよりも遥かに堅い。
「お前ら俺のことをエンドだと思っていたようだな。おかげで冬樹がエンドを封印してくれたよ」
効きもしない攻撃を繰り返す春樹たちに、俺は語る。
「冬樹は自分が主人格だと思い込んで自分の役割を忘れ、お前たちは体から追い出された。それから俺を見張るために何かと理由をつけ近づいてきた」
「くっ……!」
「この世界に合わせるためにわざわざ一部改変させて冬樹に思い出させようとしたりしていたな。冬樹が自身の役目を思い出したら俺の復活も怪しくなるから冬樹をあの国から逃がした。あとこの世界を作る際に俺の一部をラストに移し、マザーということにしてあいつらを従わせた」
「マザーはあなたの一部だったのね……」
「ただの力をため込むだけの石を俺の一部だと?脳内に語りかけるだけでマザーだとかいう名前を付け俺の思うがままに動いていたよ」
「あなたは何が望みなの!?」
「俺の望み?お前らが一番知ってるだろう?仮にも俺の偽りの人格なんだから」
「……強欲ね。悪魔を自身の力で封じ込め、その力を手に入れた。そのうえさらに力を求め、最後には世界を手にしようと考えている」
「その通りだ。俺は世界を手に入れたい。望みのままに行く世界を。そのためにはお前らの力、返してもらおうか!!」
瞬間移動で俺を翻弄しているつもりの二人をサイコキネシスで捕まえ、力を吸収する。
「きゃあああああ!!!」
「うああああああ!!!」
力をすべて吸い取られた秋人と春樹は地面に倒れそのまま動かなくなった。
「この世界も強者はいない。もっと強い相手がいる世界を征服する……!」
俺は両手を横に伸ばし、力をためる。俺はラストの方を見る。ラストは倒れたままだ。力を吸い取っただけだから死んではいない。
「……」
俺は静かに目を瞑った。兵士たちは相変わらず俺に攻撃をしてくるが、ただの騒音でしかない。
「この世界は征服。次の世界に作り替える」
俺は能力を爆発させる。あたりは真っ白な光に包まれ、音など一切ない世界に変わる。
「この世界に来るのも2度目だな」
ここは新しい世界を作れる、いわゆる真っ白なキャンバスのようなものだ。
「次の世界は、俺を止める強者がいる世界に……」
俺は新たな世界を創造した。無限戦争はまだ終わらない。
長ーく書いたこの作品もこれで終わりですね。後味悪いかもしれませんが、この先はどうなるのかという想像をして楽しんでください。