無事にリストに載っている建物を回り記録し終えた俺たちは、一番最初に入ってきた城壁の外に戻る。カルマはすでに戻っていた。
「時間通りだな冬樹。ん?ああ、君がさっき冬樹が言ってたここの兵士から狙われている子供か。確か名前は秋人だったか」
「はい。うちの国の住民になりたいそうなので、連れて帰ります」
秋人は俺の後ろに隠れ警戒していた。カルマは秋人に手を差し伸べる。
「ああ、歓迎するよ。俺はカルマ。冬樹の上司ってところかな」
秋人は警戒を解いてカルマと握手をする。
「それにしても遅いですね。カメリオン中尉」
すでに指定された時間は過ぎていた。カルマはカメリオンに無線を繋げる。
「カメリオン、どうした?遅いぞ」
「すみま、せん……敵に、ばれて、しまいました……今、必死で、逃げてる、のですが、巻くことは、できな、さそうです」
息も絶え絶えになりながら現状を伝えていた。
「相手にネイルダウン(見極めの能力)のサイコパスがいたか……」
ネイルダウンは嘘や偽造、変装などすべての正と異なるものを感じ取る能力である。つまり、スタイルチェンジのサイコパスの天敵というところだ。
「助けに行かないと!」
「待て!ろくな装備もしないで行ってはダメだ!死ぬだけだ!お前まで死ぬぞ!」
「仲間は見捨てられませんよ!」
俺は再び壁の中に戻る。カルマはついてこなかった。
「カメリオン中尉、今どこですか!?」
俺は地図を片手に走りながらカメリオンがいるところに向かう。
「南、民家の隙間、敵は20だ」
俺はその位置に向かう。南の民家とは言っても、かなりの範囲が該当する。俺たちの集合場所が目的地ならば、北東に向かっているはずだ。つまり、南東から東にある民家のどこかだろう。俺は南東に向かった。
「待て!侵入者め!逃がさんぞ!」
声が聞こえてきた。おそらく近い。
「カメリオン中尉、敵の声が聞こえます!レンガの民家の近くですか!?」
「ああ、ただ、もう、逃げる、ことが、できなさそうだ」
俺は近くの壁を上り、屋根の上にあがる。ここならば場所がわかるはずだ。……いた。
「そこから右に曲がってください!」
俺は屋根の上から指示を出す。俺の方にくるように。
「そのまままっすぐ!」
俺は下に降り、カメリオンを待つ。カメリオンは腕から血を流し、片腕を押さえながら走っていた。
「逃げろ!20人なんて、お前ひとりじゃ、勝てない!」
カメリオンは俺に大声でいう。
俺は逃げなかった。
「仲間か!?まだ侵入者がいたか!まとめて捕まえてやる!」
敵は銃を構えながらこちらに向かってくる。俺はカメリオンが俺の後ろにくるのを待つ。
「カメリオン中尉は逃げてください。カルマ大佐は城壁の外です。大佐にはよろしく言っておいてください」
俺は後ろに来たカメリオンにそういう。
「……頼む。死なないでくれよ」
カメリオンはそういうと、逃げ出す。ここは一本道。回りこまれることはないだろう。
「お前もあいつの仲間か?異国民め、スパイとはいい度胸じゃねぇか!」
横に並んだ5人、後ろに4人。計9人がいた。おそらく後で11人が来るだろう。敵兵は銃を構える。
「撃て!」
引き金を引かれる瞬間に能力を発動させる。5秒。俺は一気に距離を詰める。動きが遅くなったが、弾が撃たれる。それを横に躱して、ハンドガンを構え、撃つ。弾は勢いよく発射され、すぐに空中で止まる。残り3秒。俺は後ろに回り、後ろの4人を切る。そして能力が切れる。
敵兵が撃った銃と俺が撃った銃の銃声が一気に鳴り響く。そして、俺の弾は敵の胴体に撃ち込まれ、後ろの4人は首を切られ、倒れる。血が生々しく流れる。
「うわあああ!」
銃を撃ち込まれた兵士が死なずに悲痛の叫びをあげる。
「一体何をしたぁッ!」
敵兵は撃たれた部分を押さえ、悶えながら叫ぶ。
「何があった!?」
悲鳴を聞きつけた兵士がやってくる。俺はすかさず時間を止め、殺しにかかる。
新しく来た敵は4人。一気に叩き切って能力を解除する。
「うわああ!」
4人が同時に倒れる。俺は一息ついた。
(なかなかやれるな……あの練習をやってるときのことを考えながらやると、見たくないものは見なくて済む)
俺は敵を切った剣を下に振り切りながらそう思う。
ゴォオオオオ!!
俺は咄嗟に横に飛ぶ。大きな火の球が背後をかすめる。
「ッ!?」
俺は火の球が飛んできた方向を見る。新手だ。ブレイズのサイコパスが2人、こちらに火の球を飛ばしてきていた。
「ハッ!」
掛け声とともに発射される火の球。今度は横に二つ先ほどより小さな球が並び、迫ってくる。俺は時間を止める……
「なっ!?」
能力は発動できなかった。俺は迫ってくる火の球を地面に伏せて躱す。
「ハッ!」
連続で火の球が飛んでくる。小さな火の球が連続で俺を狙って飛んでくる。
俺は必死で躱しつつ、能力発動を試みる。火の球が腕をかすめる。
「ッ…!」
自然を装った格好のため、かすっただけでもやけどを負う。
相手はこちらが能力を使えないことを悟ったのか、勝利を確信したようにニヤリと口を歪ませる。
(なんでだ……なんで能力が発動しないんだ!?)
俺は能力発動を試みる。躱した先に撃たれた火の球に直撃する。
「うわあああ!」
俺の体が火が付く。
(このままじゃ、焼け死ぬ!)
俺は火の消化を試み、地面を転がる。相手は火だるまになった俺の方に歩いてくる。
(痛い!痛い痛い痛い!)
体中が焼けるように痛い。意識が少しずつ遠のく。最後に見たのは敵が俺に向かって剣を振り下ろす姿だった。
ふと目を開ける。そこは先ほどの援軍4人を倒したところだった。
(時間が戻ったのか!?)
俺は痛みで時間を戻すことなど考えていなかった。
(この後は……!)
俺は咄嗟に横に飛ぶ。この流れは先ほどと同じ。俺は銃を取り出し、火の球を躱す。
すぐに体制を整え、右側の敵を撃つ。
「うわぁッ!」
相方が撃たれ、怯む。だが、すぐにこちらに向き直る。俺はその隙を逃がさなかった。
一気に距離を詰め、もう片方の胸に剣を突き刺す。そして、撃たれた衝撃で倒れたもう一人に剣を振り下ろす。最初の9人。援軍の4人。ブレイズのサイコパス2人、計15人を殺した。その時間はたったの2分程度だろうか。発動させたのは2回だ。
俺は援軍が来る前にその場を後にした。
集合場所に戻ると、秋人が飛びついてきた。秋人は泣いていた。
「死んだかと思った……敵、たくさんいたんだろ?」
カメリオンがこちらに来る。撃たれた腕は包帯で応急処置がとられていた。
「よく生きて帰ってきたな。どうやってあの数を乗り切ったんだ?」
「俺の能力です。時間を止めて数人を一気に倒してきました。
「お前の能力って確か……時間停止とやらだったか」
「はい」
「特別な奴だということで、俺はお前をそこまでよく思っていなかった。だが、その特別さがわかったよ。まぁ、なんというか、助けてくれてありがとな」
カメリオンは笑ってそう言った。そこへカルマが来る。
「さすがだな。やはり君の能力はすばらしい。俺の能力で君の未来を見たが、どうしても死ぬ未来しか見えなかった。だから止めたんだ。だが、俺の能力を書き換えるとはな」
「そういえばカルマ大佐の能力は何ですか?」
「俺の能力はフューチャプレディクション(未来予知の能力)だ。見たいと思えば未来が見える。君の未来は火だるまになって死ぬ未来だった。だが、先ほど変わった。こうして生還してくる未来に」
「俺は一度死にました。大佐が言った通り火だるまになって。しかし、その瞬間、自分の思考と関係なく過去に戻りました」
「過去にか……だから対策ができたのか。おそらく俺の予知が書き換えられたのはその時だな。まったく、俺の能力を書き換えるとはとんでもないやつだ」
そういいながらもカルマは笑っていた。
俺たちは自分の国に帰った。任務は成功だ。帰国後、秋人ははるねぇに預けることにした。はるねぇならば安心だろう。俺は自分の部屋で自分の能力について思考していた。