俺たちに実害はなかった。気を失った子供達も元気にはしゃいでいる。昨日の出来事を聞いてみたが、ギターを持ってるお兄ちゃんに曲を弾いてもらってたと言っていた。気を失ったことは覚えていないらしい。俺も曲を弾いている男を見つけ、そのあと気を失った。なぜ気を失ったのかは覚えていない。カルマも同様覚えていないようだ。
「昨日俺たちに何があった……」
俺は昨日のことが気になり、そう独り言を言う。
「昨日の気を失ったことについてか。俺もあの未来は見えなかった」
「あのギターを持った男……あのひとが何か関係ありそうなんですが」
「あの男か。確かにあの男を見つけてそのあと気を失った。可能性はあるな」
俺は昨日のことが気になり、こう提案する。
「俺、過去に行ってきます。昨日何があったのか気になります」
「そうか。いいと思うぞ」
過去に行ける保証はない。でも、未来に行けたのだから、不可能ではないはずだ」
俺はあの出来事の前、公園に着く前の時を思い浮かべる。
(戻れ、戻れ、戻れ)
戻れ戻れと強く念じる。
ギュルルルと何かを回すような音が頭の中に響く。
ふと目を開けると、そこは昨日の任務を終えたあと、公園の前を通る瞬間だった。
「どうした?冬樹」
俺を不思議そうに見つめるカルマ。
(そうか。今のカルマ大佐は次起こることを知らないのか)
「カルマ大佐。この公園で俺たちは気を失います。原因は不明です」
「冬樹、いつ未来に行ったんだ?」
「いえ、過去から来ました」
カルマは少し驚いたように目を丸める。
「そうか。謎の気絶か。君はそれをどうやって回避するつもりだ?」
「そのまま公園に行きます。おそらくギターを持った男がこの気絶に関係があると思うので、何かされる前に捕らえます」
「そうか。だが、その男は何の罪があるんだ?何かないと捕まえるのは禁止されているぞ」
俺は考えた。しかし、その男が一体何なのかわからない。
「少し、話を聞いてみましょう」
「わからないのか……気絶したときに記憶が飛んだのか?」
「男を見つけたところからの記憶がありません。気を失ったのは覚えています。その欠けた記憶が気になって過去に戻ってきたんです」
「そうか。ではその男に少し話を聞いてみるとしようか」
公園に着く。その男はジャングルジムの上でギターを弾いていた。ぽろろんという優しい響きをさせながら、その男は子供に音を聞かせている。
「おや、また会えたね」
「?」
俺はこの男が何を言っているのかわからなかった。
「ふふ、その顔は私が何を言っているかわかっていない顔だね。当然か。わたしが記憶を消したのだから」
「お前……何を言っているんだ」
「しかし、わたしと会ったあの時に戻れるとは、君はやはり面白い能力を持っている」
ぽろろんと音を鳴らしながら、男は語っていた。
「お前は何者だ」
「前にあったときと同じ質問。答える必要はないね」
「身分がはっきりしないものは捕らえるように言われている。おとなしく同行願おうか」
ふふふ……と薄気味悪い笑いをして、ギターを弾くのをやめる。
「もう少し、記憶を消しておくべきか」
俺はそのシーンに見覚えがあり、本能的に時間を止める。
(このまま一気に捕まえる!)
俺はジャングルジムを上がり、その男を捕まえる。
「……時間停止か」
「え?」
ギターを弾く手をつかんでいるため、音を鳴らすことはできない。
停止可能時間の5秒をすぎ、周りの風景に色がつく。カルマはこちらに歩いてくる。
「ふぅ……ここまでか」
その男は明るい口調でそういう。抵抗する力がなくなり、腕が上にあがる。
「なんてね」
一瞬で俺は宙に舞う。
「え?」
その男に片手で投げられたのだ。
「冬樹!」
「君たちは厄介だ!君たちの記憶、すべて消してあげよう!」
その男がジャングルジムに立ち、ギターを鳴らす。
ジャアアアンという音を鳴らし、その音が俺の耳に入る。少しづつ、その音が消え、代わりにギュルルルという何かを回すような音が聞こえてくる。
「は!?」
「どうした?冬樹」
目の前にはカルマがいた。
「俺は一体……」
「過去に戻って来たんだろ?」
「え?」
俺はカルマが何を言っているかわからなかった。
「戻ってきたんじゃ……ないのか?」
俺は戻ったという記憶がなかった。
「俺がどうして過去に?」
「えっと……なんでだったか……」
カルマも何故過去に戻ったのかを忘れているようだ。
「まぁとりあえず今日の仕事をしようか。考えるのはそのあとだ」
俺たちは今日の仕事にとりかかった。