【午前】
千枝と陽介はまた競争しながら入ってきた。ただ昨日と違うのは今回は勝敗が明確に決まったところだった。
「うっしゃぁぁあ!」
「あ、あたしが花村に負けるなんて……。ガクッ」
「どんな卑怯な手を使ったの?」
「フライングとかしたのか?」
陽介が勝ったことに悠と雪子はあぁ言ってはいるが、結構内心驚いていた。
「卑怯な手もフライングも使ってねーよ。ただ里中とまた会って階段に差し掛かった途端に走っただけ。さらに言うなら二階についた時に図書室の方を指差して『肉があるぞ!』って叫んだだけ」
「それ十分卑怯な手だと思うのは俺だけか?」
「鳴上君。私も思ったよ」
「勝てばいいんだよ勝てば」
千枝は自分の席につくと、まだ敗北を気にしていたのかたまにため息が聞こえた。陽介はかなり喜んでいる中、卑怯な手を聞いた悠と雪子の二人は若干引いていた。
すると陽介が悠の方を向いて話しかけてきた。
「鳴上、今日沖奈市行くってこと忘れてないよな?」
「あぁ。大丈夫だ」
それだけ聞いて満足したのか陽介は千枝のところに向かった。悠はしばらくそちらを観察してると
「騙したなぁ!」
「ふげぇっ!!」
千枝にお腹を蹴られてうずくまる陽介の姿があった。恐らくあの卑怯な手を千枝に教えた結果、騙されたことに腹がたった千枝にやられた、ということだろう。
……そっとしておこう。そう思い悠は静かに自分の席についた。
【放課後】
悠は陽介と電車で沖奈市に来た。稲羽市への電車が一時間に一本の為、遊ぶ時間はたった一時間しかなかった。
「意外と不便だけどさ、たまには都会も恋しくならない?」
と陽介が若干暗い表情で訊いた。悠は頷く。
いくら両親の都合で引っ越しが多くても稲羽市みたいな田舎は来たことがなかったのだ。
「バイクとか乗れたら楽になるかもな」
冗談混じりに言った悠の一言。陽介は何か思い付いた顔をしていた。余計なことを言ってしまったのかもしれない。数秒前の自分を殴りたい気分の悠だった。
「今日はさ、いろいろ回ろうぜ」
陽介を先導にして沖奈市を見て回った。喫茶店や映画館。交番や服屋、そしてここにも本屋があった。
映画館の横にはクレーンゲーム機があって一回百円。二人で一回ずつ遊ぶことにした。
「鳴上って意外と器用だよなぁ」
「折り紙で鶴作れるぞ。大きいのも小さいのも任せとけ」
「女子か」
喋ったり遊んだりしながら一時間を楽しんだ二人。
「もうそろそろか。何かお土産買ってこーぜ」
悠は適当にお菓子を買って帰ることにした。
陽介と駅の通路を歩いてるとき、人とぶつかってしまった。相手の携帯が落ちてしまったので悠は拾って相手に謝りつつ渡す。
「すみません。これ、落としてしまって」
「……いえ」
帽子を深く被っていたせいで顔はよく見えないが声と体格で女性だということはわかった。しかも身長は自分より少し下。中三から高一くらいだった。
「あの」
悠は去っていこうとする女性にある一言言おうと呼び止める。
「……そのストラップの“がんもどき”。美味しそうだなって」
すると女性はクスッと笑って少しだけ帽子を上げる。可愛らしい顔でまるで“アイドル”にいそうな体型だった。
「ありがと」
それだけ言うと女性は今度こそ去っていった。悠は電車がまもなく来ることに気づき、急いで陽介が先に行ったホームへと向かった。
【夜】
今日も堂島は仕事だった。二人で弁当を食べているとテレビにとあるアイドルが映っていた。
「久慈川りせ……?」
「あっ、“りせちー”だぁ!」
菜々子は知っているらしい。
「りせちーとっても可愛いよね!」
「あ、ああ……」
悠はもう一度テレビに映っている「りせちー」こと久慈川りせを見る。すると悠は何か違和感を感じた。
見たことある、そう真っ先に思った。
「ああ、思い出した」
「……? 何思い出したの?」
「今日、沖奈市の駅で会った」
「えええ!? いいなーっ」
菜々子はとても羨ましそうな表情をしていた。
今日も早く寝ることにした悠。実は何か忘れているような気がしたのだが、思い出せずまぁいいか、的な感じで寝た。
夢で陽介とひたすらジャンケンする夢を見た。とてもシュールな夢だった。何か陽介とさらに仲良くなれそうな気がした。
早めのりせちー登場。でも稲羽来るのはゲーム通り7月くらいです。
りせ可愛いと思います。ゲームでもコミュ出来るようになったらMAXになるまでひたすら恋愛(りせ)コミュしてましたから(笑)
ネタがなくなりそうです。毎日じゃなくなるかも。