【放課後】
「花村。肉丼は今日行ける?」
「今日!? 昨日約束したばっかなのにもう行くのか?」
「肉丼!? 行くの? 行くの?」
「里中は反応するんじゃねぇよ」
陽介は昨日電話でバスケ部入部を押し付けたお詫びに肉丼おごることになったことを千枝と雪子に説明した。
「そっか、私たちのせいで鳴上君、バスケ部に入部することになったんだよね。そのせいで代表で花村君の財布が犠牲に……」
「天城さん、もっと悲しそうにして! 言葉は悲しそうだけど表情は全然悲しそうじゃないからっ」
「仕方ないよ、花村君だもの」
「俺のせいですか!?」
すると千枝が思い出したかのように言い出した。
「そう言えばさ、今日雨だよね。雨の日って愛家で「雨の日スペシャル肉丼」が三千円であったよね? それにしよ!」
「雨の日スペシャル肉丼?」
悠は首を傾げる。食べたことのある陽介は「あーアレか……」と思い出したのか、若干悲しみの表情になった。
「鳴上、アレはやめた方がいいぞ。ボリュームが半端ない」
陽介は忠告する。悠も恐ろしくなったのか今回は止めようかと思ったが千枝の迫力に負け、結局行くことになった。
「雪子はどうする? 食べる? スペシャル肉丼」
「ん? やめとく」
「そっか」
「ずりぃ」
「ああ」
愛家に来た四人。店主の娘の中村あいかの案内で席に座り、悠、陽介、千枝の三人は雨の日スペシャル肉丼。雪子は普通の肉丼を食べることになった。
「こ、これは……!」
「な、ヤバイだろ? “知識”、“寛容さ”、“根気”、“勇気”。全てがトップクラスじゃねぇと食える気がしない雨の日スペシャル肉丼。一つ三千円」
「幸せだぁ~」
「千枝よく食べるね」
千枝が幸せそうな笑顔で食べているのを見てる雪子。その二人を恨みながらも悠と陽介の二人も食べ始める。
「なぁ、花村」
「言うな鳴上。何となくわかるから」
「本編」では相棒である二人。ここでも見事な相棒の仲なのか、言いたいことが何となくわかる様だ。
……もしかしたら、二人とも偶然同じ気持ちになったからかもしれないが。
「食べても食べても丼の底が見えないんだが……」
「俺もだ。見てるだけでお腹いっぱいだ……」
二人は前の女性陣を見てみる。雪子は普通の肉丼なのでもう食べ終わっており、水を飲みながらゆったりとしていた。
「ーー! さ、里中……さん?」
「花村……。そっとしておこう……」
千枝を見るとお腹いっぱいで机に突っ伏していた。かなり哀れな姿だと、男性陣は即座に思った。
「それじゃ、三千円。まいどありー」
三人は諦め、お金をしっかりと払い店を出ることにした。
ちなみに悠はその日の夜ご飯は食べれなかったらしい。そして部屋で一言呟いた。
「雨の日スペシャル肉丼。恐るべし……っ」