ロキ・ファミリアに雄狐様を!   作:長月の辺

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ちょっと書き溜めてたので5~7話ぐらいうpします。


第一話

視界一面に大きく広がる荒野。

モンスターの咆哮がうるさい。端正に手入れしているケモミミが粟立つ。目の前にいるモンスターはすごく気持ち悪い。丁寧に毛繕いしている尻尾に悪寒が走る。

山羊みたいな角に醜悪な馬面。『フォモール』という名のモンスターだ。

 

馬面のソイツの首を一刀で切り捨てる。お気に入りの二振りの小太刀は今日も良い切れ味だ。金色がベースで彩られた鞘の方は《玉鏡(たまかがみ)》、真っ白な鞘の方は《明晴(あきばれ)》と銘打ってある。

 

そのとき、一際大きな咆哮が聞こえる。そちらを見ると数匹のフォモールが腕を振り上げてこちらの陣営に攻撃しようとしていた。

 

「盾ぇ、構えぇーっ!!」

 

号令と同時に幾つもの衝撃音が前衛壁役(タンク)の方から聞こえてくる。わっちも動く時間ですかねぇ?

 

「前衛、密集陣形(たいけい)を崩すな!後衛組は攻撃を続行!」

 

戦場を見渡すと、陣形の中心で指揮をする小人族(パルゥム)のオチビ、前衛で二つのデカい盾を構えてるドワーフの爺、矢や魔法を立て続けに放つハイエルフのおっかさん。アマゾネスのデコボコ姉妹は後衛の攻撃の中を駆け抜けかいくぐり、フォモールを斬り伏せている。

 

「ティオナ、ティオネ!左翼支援急げっ!」

 

小さな団長、フィンの指示がデコボコ姉妹に向かう。やはりアイツはよく戦場が見えている。こっちとしてはありがたい限りだ。

 

「あ~んっ、もう体がいくつあっても足りないよーっ!」

「ごちゃごちゃ言ってないで働きなさい!」

 

彼女らは走り、複数のフォモールを一瞬で倒す。流石は脳筋のボコの方。馬鹿デカい大双刃、《ウルガ》を容易く振り回している。デコの方は我慢の限界が来そうかね?

 

それにしても数が多い。ちょっと押され気味だ。陣形が少しずつ小さくなっている。

 

「リヴェリア~ッ、まだぁ~!?」

 

ボコの方、いや、言いすぎると後が怖い。もといアマゾネス姉妹の妹、ティオナが痺れを切らして叫ぶ。その声の行先、後衛の方から魔法が紡がれていた。

 

「【――間もなく、()は放たれる】」

 

魔法を紡いでいるのは、みんなのおっかさんことリヴェリア。なんでもエルフの王族らしい。

 

「【忍び寄る戦火、免れえぬ破滅。開戦の角笛は高らかに鳴り響き、暴虐なる争乱が全てを包み込む】」

 

しっかしリヴェリアの詠唱は長い。それだけに高い殲滅能力のある魔法だけど、いい加減ちまちま首を刈ってるこっちの身にもなってほしい。

 

「【至れ、紅蓮の炎、無慈悲の猛火】」

『――オオオオオオオオオオオオオウッ!!』

 

咆哮の方を見やると、フォモールが前線の一角を吹き飛ばしていた。

 

「――ベート、穴を埋めろ!」

「チッ、キツネ野郎にやらせろよ!」

 

おいオオカミ野郎、それはわっちのことか?そいつはできない相談だ。

確かに魔法で一っ飛びできるけど、こっちはこっちで忙しい。なんせ今15匹くらいに囲まれている。ここで離脱したらこの戦況はフィンでも難しくなる。

 

「レフィーヤ!?」

 

叫び声がして、フォモールの壁の隙間からエルフっ娘のレフィーヤが鈍器の衝撃波で吹き飛んでいるのが見えた。あれは少しヤバいかもしれない。オオカミ野郎のベートもフォモールの追撃には間に合いそうにない。

 

魔法を使うか一瞬躊躇って、いるはずのお嬢がどこにいるのか、フォモールの首を()ねながら彼女を探す。

ふいに視線を戻すと、レフィーヤの眼前に立っていたフォモールの体から血飛沫が噴出していた。血霧のカーテンの向こうに見えたのは、今まさに探していたお嬢、アイズ。

 

「アイズ!」

 

ティオナが声を上げる。アイズはレフィーヤを見てから、瞬時に動いた。一閃、また一閃と次々にフォモール共を屠っていく。

もうアイツ一人でいいんじゃないかな?

 

「ちょ、アイズ、待って!?」

 

うちのお姫様は止まらない。どんどんフォモールの大群へと前進していく。あれはまずいか。何か知らないけど焦ってるみたいだ。

 

周囲にいた最後のフォモールを斬り伏せて戦場を見渡す。アイズのおかげで崩れていた一角も持ち直し、徐々にだがこちら側が押してきている。今ならあのわんぱくなお嬢様のところに行っても大丈夫だろう。そう考えて魔法を紡ぐ。

 

「【飛べ(ウォラーレ)】」

 

わっちの第二の魔法、長短文詠唱で破格の効果、しかし多大な精神力(マインド)消費の魔法。

 

「【アーラ】!」

 

唱えた瞬間、金色の長い髪の斜め後ろに()()する。そのまま地面に足を着いた瞬間、疾走、そしてアイズに追いついた。フォモールを斬り裂きながらアイズに呼びかける。

 

「あ~……だる~……はぁ……アイズ?何を焦ってるのか知らないけど、あんまり無理したら駄目だ。今リヴェリアが詠唱してるし、戦線の維持をするだけでいいぞ?」

「……うん」

 

うんとは言ってもまだまだアイズは止まりません。フォモールを一撃必殺し続ける。

いつからあの可愛い可愛いアイズたんはこんなモンスター絶対殺すウーマンになってしまっただろうか。いや、今もすっごく可愛いし美人だけども。

 

「はぁ……昔はわっちのことを『お兄ちゃん』って呼んでくれたのに……育て方を間違えたのかなぁ……」

「……そんな呼び方、してないよ。ふざけている場合なの、朱華(しゅか)?」

「んなわけないっ」

 

襲いかかってきた5匹のフォモールを回転斬りでまとめてフォモ/ールにしてやった。

アイズも次から次へとフォモールの上半身と下半身をサヨナラさせている。ワザマエ。

 

「【汝は業火の化身なり】」

「【ことごとくを一掃し、大いなる戦乱に幕引きを】」

 

フォモールを屠っていると後方に膨大な魔力を感じた。そろそろリヴェリアの詠唱が完了する頃合いだ。

 

「アイズ、朱華、戻りなさい!」

 

アマゾネス姉妹のデコの方、姉のティオネが叫ぶ。その声に従ってわっちとアイズは陣の中央へ跳躍。おお、眼下の豚共が吠えること吠えること。まあ馬なんですけどね。

 

「【焼き尽くせ、スルトの剣――我が名はアールヴ】!」

 

リヴェリアが展開している魔法円(マジックサークル)が戦場全体に拡大する。杖を振り上げて、リヴェリアが魔法を発動させた。

 

「【レア・ラーヴァテイン】!!」

 

大・炎・上!

魔法が発動した次に瞬間、魔法円(マジックサークル)から無数の火柱が突き出し爆音を伴って火炎の大矢がフォモールの大群を襲った。無論、こっち側に被害は無い。

 

灼熱の紅焔に飲み込まれて、数瞬の内に醜い馬面は消え去った。

 




絵が描ければなあ。
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