ロキ・ファミリアに雄狐様を!   作:長月の辺

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第三話

食事を済ませた後、フィンが冒険者依頼(クエスト)について説明しメンバーの選抜をした。

その結果は、一班がアイズ、デコボコ姉妹、レフィーヤ。二班がフィン、オオカミ野郎、ガレス、犬っころのラウル。

 

「……なぁ、一班(こいつら)、大丈夫か?」

「ンー……」

 

編成が不安のようで、ベートがストレートに尋ねる。フィンはその問いの答えを黙考する。

それもそうだ。戦闘狂(バトルジャンキー)が三人もいる。ティオネだけは猫を被っているが、その実凶暴だ。レフィーヤがストッパー役を務められるとも思えない。

しばらく沈黙が続いた後、フィンが口を開く。

 

「ティオネ、君だけが頼りだ。僕の信頼を裏切らないでくれ」

「――お任せくださいっっ!!」

「「ちょろー」」

 

フィンスキーなティオネがあまりにも単純だったので思わず半眼で呟くと、ティオナも同じように呟いた。

 

「じゃあ、拠点の防衛はリヴェリアと朱華に任せるよ。二人とも精神力(マインド)を回復させておいてくれ」

「……止むをえないか」

「やったー!お昼寝大好きー!」

「朱華、話聞いてた?」

 

パーティが決定してから、数時間の仮眠をした後。フィンやアイズ達は51階層へと出発した。

 

 

 

 

わっちの名前はクズハ・朱華。狐人(ルナール)の男の子だ。見た目と言われれば、艶やかな栗色の髪の毛に、丹念に手入れされた綺麗な狐耳、淡く黄色いまん丸お目め。よく中性的と言われる。

蒼がメインのシンプルな着流しに黒い帯と羽織はお気に入りの戦闘服。そこから覗くフッワフワな尻尾。毎日の毛繕いの賜物だ。

 

わっちは昔むかしに極東からこの迷宮都市に来たらしい。らしい、というのはそれが物心つかぬ赤ん坊の頃の話だからだ。

我らが主神、ナイチチの女神ロキの話によると、【ロキ・ファミリア】の本拠(ホーム)の前に書置きと共に捨てられていたそうだ。門番がわっちを見つけた時には、危険な容態といった感じだったようで、ロキはすぐにわっちに【神の恩恵(ファルナ)】を授けてなんとか命を繋いだ、ということだったらしい。

その後、ロキや当時の団員に蝶よ花よと可愛がられて、今に至る。気が付いたら武器持ってダンジョンにいたくらいだ。昔は過激な奴が多かったなあ。

 

「何を黄昏ているのだ、残りの物資の詳細を調べることを言い付けられただろう」

「あー、はいはい。今やりま~す」

 

昔を思い出していたらおっかさんに叱られた。渋々出がけにフィンに頼まれた仕事をするため、リヴェリアと物資が置いてあるテントに向かう。

 

今回は未到達階層の開拓ということで、武器や食料、アイテムも豊富だ。余程のことがなければ持つだろうが、フィンがアイズに言っていた通り、ここはダンジョンで、いつ何が起こるかわからない。こういった細かな確認でも重要なことだ。

 

それから暫くして物資の確認を終えた。外に出てて、ふと遠くを見やる。

拠点が設けられているのは巨大な一枚岩の上だ。そこから見える、灰色一色の大地に樹林。未だに一部の冒険者しか見ることのかなわない光景だ。

 

「そろそろフィン達が帰ってくるかねぇ」

「フィン達は大丈夫だろうが、アイズ達が少し心配だな」

 

リヴェリアと二人で言葉を交わす。その時だった。

 

「敵襲だぁーーっっ!?」

「っ!?」

 

団員の叫び声が聞こえた。どうやらモンスターが来たらしい。すぐに声が聞こえた方向へと向かう。

何やら人だかりができている。その中心にいたのは、全身が滑りのある液体で覆われ、嫌な臭いの煙を放つサポーター役の団員。彼が着けている装備は溶けてなくなっており、肌は黒紫に変色している。

 

「何があった!?」

「し、下から、あのモンスターがこの液体を飛ばしてきて、こいつがそれを浴びて……」

 

リヴェリアの問いに群がっている団員の一人が一枚岩の向こうを指差す。その先で、黄緑色と極彩色で彩られた見たことのない芋虫のようなモンスターが蠢き、這いずって一枚岩の絶壁を登ってきていた。

 

「総員戦闘配置につけっ!!すぐに防衛線(かべ)を張れ!!」

 

リヴェリアが指示を飛ばす。団員たちはそれぞれ剣や槍、弓矢や盾などの武器を取り、前衛は盾を一枚岩の崖でネズミ返しのように盾を構え、壁を作る。

その時、芋虫たちが動きを見せた。数匹が一斉に黒と紫の大理石(マーブル)模様の腐食液を吐き出してくる。

まだ戦闘用意ができていない者は避けきれずに腐食液を喰らってしまう。

 

『ああああああああああっ!?』

 

数個の悲鳴が響いた。団員たちに混乱が広がる。このままでは被害が甚大になってしまう。

 

「サポーターは怪我人を下がらせて手当しろ!弓兵は休まず矢を放て!使えなくなった盾はすぐに放棄して別のものを使え!総員全力を尽くせ!」

 

リヴェリアの怒号が鳴り響く。それでも未知の恐怖に陥ってしまった者数名は怯えて体を震わせている。

 

「なら、わっちは……【臨む兵、闘う者、皆陣(なら)べて前に在り】!」

 

わっちの第一の魔法、仲間の士気を高め、僅かだが強化する支援魔法。

 

「【ファクトゥム・リングア】!」

「よくやった朱華!皆のもの、フィン達が戻ってくるまでの辛抱だ!」

『おおおおおおおおおっ!』

 

団員たちが鼓舞されて雄叫びを上げる。芋虫たちが次々に腐食液を吐き出す中、彼らはなんとか持ちこたえている。

 

「リヴェリア、わっちが魔法を撃つ」

「ああ、私は指揮で忙しい。フィン達が戻り次第詠唱を始める。幸い相手は知能が低いのか一方からしか攻めてこないからな」

「了解した!」

「頼んだぞ。――魔導師はフィン達が戻り次第詠唱を開始しろ!それまでは弓や盾で応戦だ!武器を投擲しても構わん!使えるものは何でも使え!」

 

人のいない場所に腐食液の塊が着弾して煙を上げる。

精神力(マインド)に余裕を持たせることを念頭に置き、詠唱を開始する。

 

「【森羅万象五つの(ことわり)(あお)(あか)、緋は金、金は(みどり)、翠は(くろつち)、涅は蒼を殺す。翠は緋、緋は涅、涅は金、金は蒼、蒼は翠を生む。それぞれ導き導かれ、天の星を(かたど)り、今ここに理を(あらわ)さん】」

 

わっちの第三の魔法。変な詠唱で少し特殊だが、これだけはちゃんとした攻撃魔法。

 

「【テラ・クインクステラ】!」

 

それぞれ青、赤、緑、茶、金の色の光球が目の前に現れ、それぞれから線が伸びていき、星形の魔法円(マジックサークル)のようになる。

 

「一気に行くぞ!【ペダルファ】!!」

『――――――ッッ!』

 

五つの光球は五芒星を成し、芋虫たちに突貫する。そのまま直撃し、太い列を形成していた芋虫たちの前から数列が壊れた鐘のような鳴き声を轟かせた後に消滅した。

それでもまだうじゃうじゃと芋虫たちが湧いてくる。

 

「チッ……リヴェリア!わっちは前に出る!」

 

リヴェリアの返事も待たずに《玉鏡》と《明晴》を抜き、腐食液を避けつつ、一枚岩の崖際から跳躍。眼下に幾本もの矢が数匹の芋虫に突き刺さってからすぐに溶かされて折れているのが見える。

空中で魔法を詠唱する。

 

「【纏え(アムニス)】」

 

わっちの()()()()()。アイズと同じ、付与魔法(エンチャント)

 

「【マギア】!」

 

小太刀の刃に揺らめく半透明のオーラのようなものが纏わるように現れる。これは精神力(マインド)、または魔力そのものだ。Lv.6になったときに発現した魔法だ。

 

一枚岩から10M(メドル)くらい離れた列の半ば程にいる芋虫の背に着地して、それから前列の方に跳び移りながら芋虫を斬りつける。すると、腐食液が斬った部分から噴出する。

予想はしていたが、やはり体液全てが腐食液のようだ。付与魔法(エンチャント)使っておいてよかった。おかげで刃が溶けることはない。ただし、この魔法は武器に纏わせるとかなりの負荷がかかるので、気を付けなければならない。

 

それすらも斬り飛ばし進み続ける。芋虫たちがこっちへ来ようとおしくらまんじゅうしたり、考えなしにこちらに向かって腐食液を浴びせようとしてきたりする。それをひょいっと避けてやれば味方への攻撃(フレンドリーファイア)となる。ザマァー!

 

崖下まで来たら今度は崖の真ん中辺りまで登り詰めている芋虫に向かって跳躍して、一閃。芋虫は斬られた際に体をくねらせ、数多くの短い足を崖から離す。その腹を踏みつけて再び跳躍。陣営の防衛線の後ろにスタッと着地。100点満点。

体ズキズキする。これが恋?いいえ、反動です。

 

後ろに並ぶ他の芋虫を巻き込みながら下へ落ちていく。これで多少の時間稼ぎはできるだろう。しかし、低脳な芋虫は同朋のことなど気にせずにその上を這いずって一枚岩を登ってくる。

 

「オチビとお嬢達はまだなんですかねぇ……」

「よくやってくれた、朱華。だがしかし、残りの矢が心許ない」

「構わず撃った方がいい。フィンならもう気付いてるだろうから、どうせこんなタイミングで……ほら、来た」

 

いいタイミングでフィン達が帰ってきた。

 

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