ロキ・ファミリアに雄狐様を!   作:長月の辺

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第六話

「もうっ!驚かせるなんてひどいですよ、朱華さん!」

「ごめんごめん。わっちはそんなことするつもりなかったんだけどね?」

「いい加減機嫌直しなよ、レフィーヤ。朱華は大体あんな感じじゃん?何て言うか、こうピューッと出てきてパァーッと消えるっていうかさ」

「ティオナ、頭の悪そうなこと言うのはやめてちょうだい。それを神出鬼没っていうのよ」

 

今はダンジョンの中層、17階層。

ダンジョンは上の階層に行くほど狭くなり、全員一斉に進行するわけにはいかない。人数が多いため、50階層と同じく安全階層(セーフティポイント)である18階層で先行と後続の二つに部隊を分けた。先行はわっちとリヴェリアが率いて荷物多めに、後続はフィンとガレスが担当することになった。

 

そして今。わっち、ずぅーっとレフィーヤに怒られてる。なんでかって?それはアイズが50階層で芋虫女のモンスターを倒した後、転移先をレフィーヤの目の前にしてしまったからだ。

 

「きゃああああああああああああああっ!?」なんて黄色い悲鳴を上げられて爆音との高低差ありすぎて耳キーンなったわ。ただでさえ連続で転移して頭重くてダルかったていうのに、大歓声とも相まって倒れそうになったよ。

 

「人を心配させておいて、まったく……」

「いや~、すまんの~。お詫びに帰ったら300ヴァリスあげるからさ」

「そんなんじゃ何も買えませんよ!」

「そっかぁ……じゃあ、アイズたん?地上に戻ったら『じゃが丸くん』いっぱい買いに行こうよ!」

「……!!……うん」

「ア、アイズさんっ!?」

 

ふふふ、これが300ヴァリスを侮った貴様の末路だァー!!300ヴァリスあればアイズたんが大好きなじゃが丸くんを10個買える。

 

アイズたんとお出かけなんて久しぶりだなあ。このお姫様はいっつも鍛練と探索しかやってないからね。息抜きも大事です。

 

「……レフィーヤも、行く?」

「えっ、あっ、は、はい!ぜひ!」

「朱華のおごり?やったぁーっ!」

 

ありゃりゃ、二人きりとはいかなかった。でも仲間思いのアイズたんも素敵……!

 

「でも悔しい~。頑張って50階層まで行ったのにぃ~」

異常事態(イレギュラー)は仕方ないでしょ」

 

ティオネが手に持っている普通と違う極彩色の魔石を見ながら言う。ああ……あの惨状が脳裏を過って寒気が……

 

「テ、ティオネ?なんか欲しいものある?何でも買ったげるよ?」

「何を考えてるのか分からないけれど、あんたからの贈り物なんかまっぴら御免よ。団長からがいいわ」

「そ、そっすか……」

 

ご機嫌とらないとって思ったけど失敗しちゃった。ティオネだけは怒らせないようにしよう。

 

暫く歩いていると、サポーター役の子達の足取りが重くなってくる。それもそうだ。訳の分からないこともあったし、遠征の帰り道でもあるしその疲労はかなりのものだろう。

 

「……リーネ、手伝おうか?」

「えっ?あっ、だ、大丈夫です!?」

 

ヒューマンの女の子、リーネちゃんにアイズが声を掛ける。でもすごい勢いで断られてしまった。少しショボンとなってしまうアイズたん。可愛い。

 

リーネちゃんはLv.3で、アイズはLv.5。第一級冒険者に対して、下位の冒険者は引け目を感じるのは分かる。レフィーヤもそうだけど、しかし同じ【ファミリア】の仲間で家族みたいなモンなんだからそんなに縮こまらなくてもいいのに。

 

「止めろっての、アイズ。雑魚(そいつら)に構うな」

 

オオカミ野郎が口を挟んできた。ムッツリなコイツがアイズに直接話しかけるのは、戦闘の時か自分の持論を述べる時だ。

 

「それだけ(つえ)えのに、まだわかってねえか、お前は。弱ぇ奴等にかかずらうだけ時間の無駄だ。間違っても手なんて貸すんじゃねー」

「……」

「精々見下してろ。強いお前は、お前のままでいいんだよ」

 

まただよ。わざわざ誤解を招くような言い方をする癖は治らないなあ。ホントに素直じゃないんだから、このツンデレ狼は。

アイズも、ベートが極悪人ではないことを分かっていると思うから、わっちからは特になし。でもアフターケアも必要だ。

 

「リーネちゃん、疲れたろ?飴ちゃんあげるー。ほら、アイズたんにも」

「え、あ、ありがとうございます」

「……ありがとう」

「荷物持ってくれてるみんなにもプレゼント~」

 

懐にしまっておいた飴をリーネちゃん達サポーター役の子とアイズたんにあげる。

実はコレ、わっちがある【ファミリア】に提案して内密に作ってもらってる非売品なのだ。気付かない程度に少しだけ回復薬(ポーション)を混ぜてある。リンゴ味はわっち好みのモノ。

ベートが苛立たしげにこっちを見るけど、知らんぷり。

 

『――ヴゥオォ』

「んお?」

 

突然、ケモノの気配と荒々しい息づかいを感じて、わっちの狐耳がピクリと動く。

すると、通路の向こうから大量のモンスターが出てきた。

 

『ヴヴォオオオオオオオオオオオオオオッッ!!』

 

地面を伝ってビリビリと振動が体を走る。49階層にいた馬面のフォモールに少し似ている、頭は牛で体は人間。出会った冒険者(ヤツ)は必ず殴る!その名も、『ミノタウロス』!

 

「せやかてミノたん!」

「てめえは何を言ってやがんだ!ちっ、馬鹿みてえに群れやがって……」

「ベート、お前……目がっ!!!!」

「そういう意味じゃねえよ、面倒くせぇ」

 

おっ?ベートの突っ込みが弱弱しくなった。それもそうか。億劫になるほどの大群だ。数は数十匹。

 

「リヴェリア、これだけいるし、私達もやっちゃっていい?」

「ああ、構わん。ラウル、フィンの言い付けだ、後学のためにお前が指揮を執れ」

「は、はい!」

「ファイトだよっ!」

 

浅い階層でわっち達第一級冒険者がやりすぎるのは良くないからね。下の子達の実力を伸ばすのは重要だ。

しかし、数が数なのでわっち達も戦闘に加わる。

それからはもう数で劣っていようがリンチにしかならない。ミノタウロスの力は、かなり強めなLv.2の冒険者くらい。わっち達幹部にとっては物足りないといった感じだ。

 

 

戦闘は常にこちらが優勢で進んでいく。半分くらいはヤったし、もうこのまま倒しきれるだろう。

 

『ヴォオオオオオオオオオオオオッ!?』

「ほえ?」

 

しかし、驚くべきことが起きた。

彼我の戦力差に恐怖したのか、モンスターの習性に背いて一匹の牛さんが背中をこっちに向けて逃げ出した。それに続いて残りの牛さんたちも一斉に軍隊の兵士たちのように綺麗に足並み揃えてエスケープ。

 

「ええっ!?」

「お、おいっ!?てめえ等、化物(モンスター)だろ!?」

 

ティオナとベートが驚愕の声をあげる。

あれ?この道の先って正規ルートじゃなかった?

 

「ヤバ~い!早く追わなきゃ!」

「追え、お前達!」

 

リヴェリアも気付いてたようだ。このままでは他の冒険者のご迷惑になってしまう。

 

「遠征の帰りだって言うのに……っ!」

「あの、私っ、白兵戦は苦手で……!?」

「杖でもできる。いいね?」

「あっ、はい」

 

ヤバいよヤバいよティオネが怒っちゃうよ。怖いから文句を垂れるレフィーヤには有無を言わせないでおいた。

 

「ちょっと、そっちは!?」

 

ミノタウロスたちを追いかけていくと、なんと奴等は16階層へ続く階段を駆け上がって行ってしまう。コレは本当にまずい。転移使うか?

 

「面倒な予感しかしねえぞ……!?」

 

わっち達は死にもの狂いで牛さんの群れを追いかける。帰って『あげ丸ちゃん』食べたい。

あげ丸ちゃんっていうのは、極東のダイズという食用の植物の種子の搾り汁を海水から塩を作る際にできる余分な液体によって固めた食品を薄く切って油で揚げた最強のフードだ。

ああ、あげ丸ちゃん食べたい。

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