ロキ・ファミリアに雄狐様を!   作:長月の辺

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第八話

「久々のお天道さん……」

「今は夕日だけどねー」

 

ティオナの無粋なツッコミはいざ知らず、わっちは久々の娑婆の空気を堪能する。

 

白亜の摩天楼『バベル』から出ると、地上は夕暮れだった。街灯の明かりがポツポツと灯っており、探索帰りの冒険者たちが大通りを歩いていた。

 

現在、【ロキ・ファミリア】のメンバーは本拠(ホーム)に向かって鉛の如く重い足を動かしている。一本道が地味に辛い。

 

「うあー……疲れたー、体だる重ズキ~」

「お肉食べたーい」

「しっかりせんか。もうすぐじゃぞ」

 

やはり転移と付与魔法(エンチャント)の負荷がハンパじゃない。これからは少し控えていかなきゃなあ。

 

わっちももう歳か、なんて言ってる場合ではなく、まだまだ若者に後れを取るわけにもいかず、ましてやフィンとリヴェリアとガレスには負けてもいられない。

わっちはようやくのぼりはじめたばかりだからな。この果てしなく遠い坂をよ……

 

なんか色々と終わりそうになったところで、この街で一番見知っている建物が見えてきた。

幾つかの高層な塔で構成され、中央の一番高い塔に滑稽そうに笑う道化師(トリックスター)の旗が立っている。

それこそ、わっち達【ロキ・ファミリア】の本拠(ホーム)、『黄昏(たそがれ)の館』。

 

「今帰った。門を開けてくれ」

 

門番役の子二人が敬礼して遠征メンバーを出迎えてくれた。それからフィンの言葉で門を開ける。

 

「湯船に浸かって極東の酒でも飲みたいねぇ」

「おお、それならわしも付き合うとするかの。最近お主の仕入れてくるアレは美味いからのお」

「フィンもどうだ?おっさんはおっさん同士、仲良く杯交わさん?」

「まあ、少しだけならいいかな?」

 

フィンを先頭にして、全員が赤銅色の塔に向かい門をくぐった。その時。

 

「――みんな!おっかえりぃぃいいいいっ!」

 

館の扉を勢い良く開けて走ってくるソイツは、朱い髪を後ろで短く一つに束ねているということで漸く女性だと分かる。その体は母性を感じさせるような凹凸(おうとつ)はなく、しかしその体からは人ならざる者の気を放つ人物、いや、神物(じんぶつ)

 

「無事やったかーっ!?うちは寂しかったでー!」

「えっ、ちょっ、きゃあっ!?」

 

女が大好物の彼女は女性陣目掛けて突っ込んでいく。それを軽々と躱すアイズ、ティオナ、ティオネ。一番後ろで反応できなかったレフィーヤが犠牲になり押し倒された。

 

「ロキ、今回の遠征での犠牲者はいなかった。到達階層も増やせてないけどね。詳細はまた後程報告するよ」

「みんな頑張ってくれたんよー」

「んー、そっかぁ……了解や。おかえりぃ、フィン。朱華もなー」

「あぁ。ただいま、ロキ」

「ただいま~」

 

細目を弧のようにして、にへっと笑いながらわっち達を労ってくれたのは、【ロキ・ファミリア】の主神、女神ロキ。暇を持て余して地上に降り立った神々の一柱。

 

わっちがロキや他の神々を見て思ったことは、カミサマってとても俗っぽいってことだ。娯楽を求めて下界に来ただけはあるといったところか。

 

「おお~、エルフ娘のプニプニお肌やぁ~」

「やっ、やめっ!?」

 

我が子を慈しむその笑顔は、段々と下卑た笑みに変化していく。流石にレフィーヤが可哀相だ。

 

「ロキさんロキさん。レフィーヤもみんなも疲れてるし、そろそろいい?」

「おおっと、すまんレフィーヤ。人肌恋しゅうて、ついなぁ」

「い、いえ……ありがとうございます、朱華さん」

「お安い御用でー」

「ところで……グフフ。レフィーヤ、ちょっとおっぱい大きゅうなった?」

「なっ、なってませんっ!?」

 

この女神、台無しである。

 

「ティオネ~、それフィンの腰巻きとちゃうか!?ポロリしちゃったんか、なぁ!?」

「うるさし暑苦しいわねー」

 

みんなはロキに構わず、館に向かう。

基本的にロキを敬っているという者は数少ない。それでも、家族としての安心感と情がそこにあった。全員が、帰ってきたと感じられる瞬間だった。

 

「アイズも、おかえりぃー」

「ただいま、ロキ……」

 

ロキがお気に入りのアイズに何とはなしに声をかける。今度はさっき見た慈愛の笑みだ。

 

「ん。体、ズキズキ痛むなー。ちゃんと休まなあかんよ?」

「……」

 

アイズは沈黙でそれに応える。アイズの体の状態を見抜いたのは、腐っても神といったところか。

その後、ロキはアイズに背を向けて、フラフラとあっちへ行ったりこっちへ行ったりしていた。

 

「さぁて……みんなー、とりあえずお片付けをしよう。手ぶらの奴は傷の手当てやら入浴やら済ませちゃってくれー」

 

いつまでも玄関先で立ち止まっているわけにもいかないので、キリのいいところで指示を出す。

 

館に入るとお留守番の子達に出迎えられた。彼らが後片付けを手伝ってくれるのだ。幹部のわっち達はほとんど無い荷物を預け、一度各々の自室に戻る。それから風呂場へ向かった。

 

「さっさと飯食って休みてえぜ」

「朱華、酒はあるかのう?」

「混みそうだから晩酌でよい?」

「そうだね。後で頂くとしよう」

 

汗や埃などで汚れた服を脱衣所で脱ぎ、風呂場に入る。このホームは狭い敷地に建てられたので、全体的に少し手狭な感じもなくはないが、それが良い。

この風呂場も例外ではなく、十人足らずで満員になる。

 

「ふぅ……極楽ぅ~」

「ジジイくせえな」

「まったくじゃな」

「君が言うの、ガレス?」

 

言葉を交わしながら汚れと共に疲れを湯で流す。天にも昇る思いだ。

 

『うおーっ!?安心せぇティオナー!うちが揉んで大きくしたるーっっ!!』

 

シャワーを浴び終えて風呂場から出ると、誰かさんの叫び声が聞こえた。今日は一段とはっちゃけているようだ。

 

『レフィーヤァ慰めてくれぇええええええ!!』

『えっ、ちょっ、きゃあああああああああ!?』

 

今度は悲鳴も上がった。レフィーヤは犠牲になったのだ、犠牲の犠牲にな。

なんだか急に昔が懐かしくなってきた。ロキには相当可愛がられたもんだ。

 

「昔はわっちもあんなだったかなぁ」

「ジジイくさいのぉ」

「ガレス、それ気に入ったの?」

「俺は先行ってるぜ」

 

当時の女性陣とロキに辱められた記憶が甦り、少しだけレフィーヤに同情した風呂上りなのであった。

 

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