今日は7月18日月曜日。この国では海の日で祝日と定められている。だが、この高校では今日模試があり全員登校している。みな大学受験に関わってくるこの模試を真剣に受けていた。1人を除いて。1年Bクラス国府宮奏太は他のみんなとは違った心構えで模試を受けていた。
(このテストが終わったら自分は死ぬ)
彼はこと理不尽な生活から離れるため自殺をすることを考えていたのだった。そしてその実行日が今日の放課後なのであった。
長い長い模試が終わった。奏太にとってはこれが最後のテストであった。クラスメートや先生の顔を見るのが今が最後。だが別になんの感慨もなかった。誰の世話にもならず生きてきたのだ。(金は親のものだったが)そんなことを考えているうちにSTも終わった。
いよいよ「その時」がやってきてしまった。この世界とお別れをするのだ。人はいつか死ぬのだ。それが早いだけ。怖くはなかった。不安はまっくない。前から決めていた学校の屋上に向かった。
「いよいよか...」
遺書をポケットに入れて屋上に来た。もう引き返せない。というのは屋上にくること自体がいけないことだからだ。よくアニメやドラマで屋上で弁当を食べたり、告白したりというシーンを見かけるがそもそも屋上に入ることができないうちの学校は無縁の話をだった。というより屋上に入れない学校のほうが多いのではないのだろうか。まあ引き返すつもりもないので構わない。この世界に思い残すこともない。あと2週間で誕生日だったが別に祝ってくれる1人がいるわけでもないので何の引き留める要素はなかった。
フェンスの上に座る。死ぬことを決意した自分にしか見られない景色だ。心地よい風がふく。天気もいい。自分の最後を飾るのにふさわしい日だ。13年間と11カ月の出来事が走馬灯のように浮かんでくる。最近の記憶は辛いものばかりなのが悲しい。
「今までありがとう」
そっとささやいた。復讐心などもうこの時はなかったのかもしれない。誰にも聞こえなかっだろう。重力で自分の体が地面に向かって急降下する。数十メートルの高さは一瞬だった。そして鈍い衝撃。目の前が真っ白になる。
奏太は確かに死んだはずだった。
「ここは...。」
白い空間がただただ無限に広がっている。死後の世界は存在したのか。未曾有の出来事に想像が膨らむ。突然目の前に何かぎ現れた。人間...だろうか。人間と違うところは白い布を体に巻きつけたような異様の服と鎖が手についているところ。そして背中にその存在感を全面に出すように羽が生えているところだろうか。人間の言葉で表わす。なら天使といったところで間違いないだろう。
「こんにちは。国府宮奏太さん。」
天使は僕の名前を知っている。さらに日本語を話す。こごが仮に死後の世界だったのなら、言葉を話す生き物がいるのが納得できない。そもそも言葉というのは人間が作ったものであってましてや日本語は日本人が作ったものだ。死後の世界は当然異世界なので日本語を話すことがありえないのだ。
「あなたは私の存在やあなたがここにいるよりも先になぜ私と会話ができるかのほうが気になっているようですね。私が見てきた他の人間たちは見知らぬ場所に来たら恐れ慌てふためいていましたが、あなたは違うようですね。」
そうだここはどこなんだ。なぜ何もない。やはり死後の世界なのか。不安にならないのは死に対する恐怖が消えた以上なんでもできるような気がしていたからだ。自分はこの先どうすればいいのだろうか。様々な疑問点が湧いてくる。それより先にこの天使に聞かなければならないことがある。
「お前は誰だ。そして何をしている。僕をどうするつもりだ。」
「誰という質問に対しては名前を答えることに代えさせて頂きます。私の名前は...そうですねコリンとお呼び下さい。あなたのこれからの生まれ変わりのサポートをさせて頂くことです。」
...コリン。自分が好きな本に出てきた巫女の名前だったな。そんなどうでもいいことを思い出す。
「あのぉ。生まれ変わりについて聞かないのでしょうか。」
心配そうに聞いてくる。当然知らなくては困るので聞いておく。
「教えてくれ。」
少し強気に答えた。
「あっ!!すいません説明しておかなければいけないことはまだまだたくさんあるのですが今戻るように指示されてしまいました。本当に申し訳ないです。時間がもったいないので生まれ変わりについてのルールを知るのも兼ねて分かりやすい例で一度体験してきて下さい。」
「え?」
「好きな時代はありますか。偉人とかでもいいです。」
「信長。」
反射的に答えてしまった。もっと無難な偉人を言えばよかったと後悔するのはもっと先の話。
「イメージを受けとりました。それでは行ってきて下さい。この生まれ変わりが終わったらまた会いましょう。」
コリンと名乗った天使は目をつぶり手を合わせた。僕の目の前がさっきまで見ていた白とはまた違う白の世界に包まれる。目を開けていられるず閉じる。目を開けたらまた別の世界に繋がっしまうような気がして怖くなる。記憶が続いていたのはこの辺まで。その後は意識が遠のいていったことだけは確かだった。
目を開けたそこは自然が溢れる森の中だった。木と木の間から差す木漏れ日が朝であることを告げる。予想してたとうりまた違う場所に来てしまったのだった。