ヘラクレス。ギリシャ神話が生んだ半神半人の英雄の中でも最大の存在である彼だが、カルデアではバーサーカーとして存在する。バーサーカーと言えば狂化が掛けられており、ランクによっては意思の疎通が困難な相手もいる。例に挙げるとすればランクEXの清姫だろう。規格外評価であるEXが付けられている彼女だが一見すると何処も狂っている様子は見られない。何が狂っているのか?答えは単純明快、彼女の目にはマスターが過去に愛した安珍として映っているのだ。13歳とまだ若い年に亡くなったのにも関わらずマスターに向かって妻とアピールするなど割とバーサーカーしてる。そもそもこんな可愛い清姫に嘘ついた安珍、ワンチャン同性愛者の可能性がある。
話が脱線したが最初の相手はバーサーカーのヘラクレスである。バーサーカー以外のクラスで召喚される事があればグランドクラスとして存在していても可笑しくない彼だが。現在マスターの前で正座していた。これには面談に同伴したマシュもロマニもダヴィンチもビックリである。言っておくが令呪は当然使用していない。ヘラクレスが自発的に正座しているのだ。正座しててもベッドに腰かけるマスターと同じ目線と言う当たりムキムキマッチョマンは恐ろしい。
「さて、最初の面談相手はヘラクレスさんですが・・・」
進行を務めるのは後輩の中の後輩であるマシュ・キリエライトである。そんな彼女はこの面談について頭を悩ませていた。何故かと言えば相手はバーサーカー。同じバーサーカーでもナイチンゲールであれば怪我が絡まない限りは会話が出来るのでありがたいが如何せんヘラクレス。
「■■■・・・」
お手上げである。何を言っているのか理解出来ない。王様の妻を寝取った父親が狂った方も会話が出来ないがまだあっちは言語を話す。ヘラクレスが何を言っているのか全く理解できない。
「うん、ヘラクレスもこういった祭りごとは楽しみたいもんね」
「先輩!?」
何故理解出来るのか、後輩of後輩のマシュでさえも理解出来なかった。
だが、その時マシュに電流が奔る。マスターは一週間もの間一人で頭を悩ませていたのだ。それはもしかしたら狂気の沙汰なのかもしれない。つまりマスターは人の身でありながら、その身に狂化のスキルを宿す事が出来た訳だ。全く訳が分からない。
詰まる所マシュも毎日のようにマスターの身を案じていた事で精神が疲れ切っていたのだ。こうして訳の分からない事を考える程度には。
因みにではあるが、何故マスターがヘラクレスの言葉を理解出来るかと言うと魔力のパスが繋がっているからである。繋がっているからには相手が■でしか会話出来ないヘラクレスだろうが、フラン相手だろうがそれなりの意思は感じ取れる。
「こんな事もあろうかと、稀代の天才であるダヴィンチちゃんは作っておいたよ!」
「あったよ!バーリンガルが!」
「でかしました!」
バーリンガルとは2000年初期に流行ったバウリンガルの言わばバーサーカー用の機械である。詳しい事は省くがこれがあればいかに相手が言語を話す事が出来なくとも会話が出来ると言う優れものである。
ダヴィンチちゃんが取り出したそれをマシュとロマニは興味津々に覗いてみる。
『基本的に平時に12の試練を使っていると、当然の様に魔力が消費されていきます。となれば如何にカルデアからの魔力供給が万全であろうとも、不安が残るというものです』
三人は揃って天井を見上げた。今画面に映っている事が理解出来なかったからである。ヘラクレス、狂っている筈なのに物凄く礼儀正しい。
「でもね、多くの英雄がいる中で今更カルデアの魔力とか心配した所で意味が無いんだよね。正直な話余ってる聖杯から魔力供給する手段もあるし」
現在カルデア内に存在する聖杯の個数は驚きの11個。キリ○トもどんだけコップを使っていたのかと思わないでもない。どうせ願う事も無いので置物と化している聖杯から溜まっている魔力を拝借するのも別に良いだろう。
「とは言え、正直な所ね。ヘラクレスが12の試練を普段から使おうが使うまいが関係無いんだよね」
カルデア最後のマスターには一つの方針がある。
召喚に応じた英雄は、特異点で倒された場合カルデアに送還される。既に死んだ英雄からすれば下手こいたなー程度の考えなのだが、マスターはそれを良しとしない。なるべく被害を出すことなく特異点を乗り切る事を目標としているのだ。だからこそ、ヘラクレスが12回復活できようが正直どうでも良かったのだ。
「それよりも問題はケルトが生んだ槍バカコンビだよ・・・」
「スカアハさんと、クー・フーリンさんですね。お二人は師弟の関係でありますし、息の合ったコンビネーションを見せてくれましたね」
『分かります。それにスカアハさんは神殺しも可能なお方ですし、私も確実に勝てる可能性はないですね・・・』
■■■の三文字の間にヘラクレスはどれほどの言葉を詰め込んでいるのかとロマニが驚愕に顔を染めていた。
「私が一緒の時は回避とか一回使ったら終わるのにさ、スカアハさん毎回毎回回避使ってきてさ・・・」
「ケルト流と言う名の宝具封印とかぶっぱはロマンの人達涙目ですよね」
「それに何だっけ?どちらか片方倒したら強制即死貰うんでしょ?もうそれってあの二人だけで特異点どうにかできそうだよね」
ソロモンの目の前で青タイツに自害を命じたらスカアハ切れて魔術王涙目にならないだろうか。まぁ流石に自害を命じる程薄情でもないし、そこまで簡単に事が済むなら一度目の邂逅で速攻倒している。
と言う訳でヘラクレスを返して呼び出したるは槍バカ師弟。スカアハは何時もの様に姿勢正しく佇んでいるが、クー・フーリンは何故か槍を突きつけられた状態で寝そべっている。
「なんでだぁ!」
因みに槍を突きつけているのはマスターである。槍はスカアハが快く貸してくれました。少しでも突き刺されば激痛を生んでくれるルーンのおまけつきである。原初のルーン万能説極まってる。
「何でクーさんもスカアハさんもさ、即死決めてくるの?」
「え、いや、即死を決めるも何も。俺の宝具ってそもそも心臓に必中させる事で即死させるもんだから、即死するのは当然なんだが・・・」
「でもアルトリアに躱されてるじゃん!当たるって結果が先に出る宝具なのに幸運に負けるとは何なのさ!」
「いってぇ!刺すなよ嬢ちゃん!」
「スカアハさんはまだ即死が決まらないのも納得出来るんだよ。クーさんにゲイボルグ譲った訳だし」
「まぁそれでもスタンさせてから逃れられない様にしてからゆっくりと心臓を貰い受けるがな」
「じゃあ私の時もそのコンボやってくださいよ」
そう告げられたスカアハは目を逸らした。何が問題なのかと小一時間問い詰めたい。
「まぁアルトリアの件もあるしさ、幸運高い人とかさ、それこそヘラクレス相手なら即死出来ないのもまぁ納得出来る」
「ふふ、如何にヘラクレスが相手だとしても私は必ず殺し尽して見せるがな」
スカアハさん渾身のどや顔である。ぶんぶんと盛大に動く尻尾が幻視されたのはきっと気のせいだろう。
「それよりも納得出来ないのは強制即死でーす!ばーか!」
叫びながらマスターは槍と力いっぱい突き刺した。もちろんランサーにである。
「マスターが壊れました・・・」
「ブォウ・・・」
マシュの呟きに究極体となったフォウさんが応答する。八頭身になった彼、もしくは彼女だがクー・フーリンの上でスクワットを行っている。
「ランサーが死んだ!」
「稽古が足りんからじゃ」
「勝手に殺すんじゃねぇよ!」
話を戻そう。この二人がコンビを組んだ『光と影の師弟』どちらかを倒してしまうと強制的に即死をされるというふざけた話なのだ。ガッツで耐えれる?じゃあ追撃しとくな!とかいう心折設計である。頑張って聖杯転臨までさせた清姫が一瞬で消えてマスターは涙目になった。清姫と一緒に涙目になった。是非も無いネ!
「何なんですか、師弟で組まないと仇討ちしてくれないんですか?私達じゃ仇討ちするに値しないんですか・・・?」
段々と尻すぼみになっていくマスターの声にスカアハも申し訳なさで一杯になってしまう。かと言って仇討ちを使えるかと言うと微妙な所なのだ。色々と制約のあるルーンを限定的に使用してるだけなので平時も使えるかと言われると難しいのだ。
その時、そっとマスターが立ち上がりスカアハの正面に立つ。そして突然の行動に出た!
「おっぱいタイツおっぱいタイツ!!!」
「!?!!!????」
揉んだ。
「回す方のノッブだってさぁ!揉んだんだよなぁ!マスターの私が揉んでも問題無いよなぁ!」
「回す方のノッブって誰ですか・・・」
マシュは助けに入らない。否、入る事が出来ないのだ。だって自分も似たような恰好をしているのだ。いつその矛先がこちらに向くか分かったもんじゃない。
「大体こんなでっかいメロンぶら下げてあんなに早く動けるって何なのさ!私にも分けろよ!カルデアサマーメモリーだってたわわに実らせてさぁ!」
この後騒ぎに駆け付けた無い方のセイバーが駆け付けるまで師匠は揉まれ続けた。