「西にCV33が4輌。南にテトラークが4輌。北にT-60が2輌……ですが……『怪しいです』」
眉根を寄せて飛酉が言う。美園も同じ表情だ。その報告に関しては奈鹿も同意だった。
やや雲が湧く。曇天。午前9時。南からの乾いた風。緑の香りを含んだ心地よい風が優しく吹き付ける。
「4輌……最大5輌が参加できるこの試合に何処も最大の5輌を『表』に出していない。伏兵で潜伏させているのだろうな」
奈鹿は飛酉や美園と違って落ち着いた声色だった。何でも有りが大前提の【タンカスロン】なら伏兵を予め潜ませるのは常套だ。敵情視察として飛酉を原付バイクで走らせて東陣営――即ち、奈鹿の東チーム――以外から情報を集めさせた。その結果、今回も楽に勝たせてくれない雰囲気だ。他は今回の最大数の5輌を保有し、投入していると考えるの妥当だ。他の陣営からしても、東チームの畿内麻生高校が隠し玉を潜ませているに違いないと思い込んでいるだろう。残念ながらここに並べた九二式重装甲車4輌が最大戦力だ。
「各員、搭乗。あと15分で始まる!」
そう言いながら奈鹿も九二式重装甲車の車長席に収まる。共衛と多鴫は既に搭乗済みだ。
奈鹿は腕時計を睨みながらクロノグラフを作動させるスイッチに人差し指を添えた。作戦は予め各車に通達してある。2輌1個小隊で付かず離れずの距離を維持したまま、索敵&撃破を繰り返すのみだ。絶対に1輌で武功を焦らない事を徹底させる。1輌で出来る作戦はタカが知れている。そして効果は大きくない。1輌に対して多方向からの砲撃で撃破が望ましい。
この試合では東西南北に分かれたチームが中央の立ち退きが完了した民家の村落付近で乱戦が始まるのが予想される。先に最寄の北チームに速攻をかけて2輌のT-60を撃破するのがセオリーだが、きっと潜ませているに違いない伏兵を警戒しなければならない。南チームのテトラークが一見すると火力の上で最も手強いと思われた。西チームのCV33は足回りと機動性にさえ気を付ければ勝機が見える……いずれの場合も伏兵を無視すればの話だ。
「奈鹿、ウチも伏兵を潜ませているって云うブラフで追い込めないかな?」
共衛が砲手席から声を掛ける。
「それも作戦として取り入れたいが、状況如何だな」
奈鹿が返答したと同時に信号弾が上がる。試合開始の合図だ。発作的に奈鹿はダイバーズウォッチのクロノグラフのスイッチを押す。
「各車、前進。いつものニコイチを心掛けろ!」
スロートマイク越しに命令を下す。
いつもの聞き慣れたエキゾーストでエンジンが目覚める。
「小隊、付いて来い。南のテトラークを先に叩く。今回は殲滅戦だ。何が何でも生き残れ。『逃げる時も小隊で逃げろ』」
車長席から頭を車外に出す。双眼鏡で警戒。右手後方に美園が率いる小隊が続く。
南チームのテトラークとは距離1500。各チーム、1500mの距離を置いて待機しているはずだ。伏兵を潜ませる時間は僅かだ。若しも居るのなら、各陣営の付近に伏兵が居て、其処に誘い込む為に態と低速走行や挑発行動に出るはず。何処のチームも被害を最小限にして最大の戦果を挙げたい。それが指揮官の心理だ。4チームが入り乱れる試合で損害を度外視した作戦は自殺行為に等しい。
参加する自分達には何処の陣営が何輌投入したのかは知らされていない。この試合を運営する姿の見えない運営団体だけが知っている。先ほどから上空では複数の下駄履きの小型機が13mm機関砲で撃ち落せそうな速度で試合会場を飛び回っている。あのフロート付き小型機が試合運営の主催者が放った審判なのだろう。
乱戦は狭いフィールドの方が興奮する。選手も観客も。
「10時に土煙だよー。見える?」
共衛はのほほんと言う。
「ああ。確認してる。距離900ってところか。連中はウチをオードブルにしたいらしい」
共衛は13mm機関砲の小弾倉をコツンと叩いて具申する。
「挑発して1輌ずつ片付けようか? あと300近付いてくれたら何とかなるかも」
「いや、駄目だ。先頭の1輌に此方の13mmを集中させるのは難しい。そもそもだな、その距離で当てられるのはお前だけだ」
10時方向。方角からしてテトラークだろう。土煙が立っていない。巡航速度以下の速度。双眼鏡で覗くと横一列に並んで見える。実際にはパンツァーカイルの隊列を維持していると想像に難くない。
車長席に立ち、視界を広く確保して双眼鏡を走らせる。
「! 12時! 1200! あいつらバカか!」
奈鹿が思わず怒鳴る。
CV33が4輌、脇目も振らずに真っ直ぐ吶喊してくる。隊列も減った暮れも無い。素人や海千山千が多い【タンカスロン】だがあれは、酷い。
「各車通達! 正面のCV33を確認したな? 第1小隊が先陣を切る。第2小隊は左右警戒。距離700で横槍がなければ西チームのCV33を砲撃する。3号車、準備しろ」
速度を上げる九二式重装甲車の2個小隊。共衛の砲撃に恃んだ正面衝突を敢行する予定だ。左右は美園が率いる第2小隊に任せて、奈鹿は自分が率いる3号車を見る。700m先の動体標的に砲弾を当てられる腕前を持つのは我が戦車道部では共衛しか居ない。CV33のような豆戦車なら13mm機関砲で正面装甲をブチ抜ける。大まかな照準は車体の向きに制約されている13mm機関砲では左右に射角が取れないので最大でも1輌のCV33しか仕留められない。多鴫の背中を爪先で何度か、モールス信号を打つように突付いて指示を出す。第1小隊のもう1輌の3号車の熟練度では最初の一連射で700m先に着弾させるのが限度だろう。
「チッ……民家に隠れるか!」
試合会場の真ん中に疎らに点在する民家に全てのCV33が車体を滑らせようと突然、右へ左へと散る。
「奈鹿!」
共衛が叫ぶ。このままでは絶好の標的が逃げてしまう。距離800。共衛の腕なら何とかなる。13mm機関砲の徹甲弾なら何とか正面装甲を抜ける距離。
「!」
奈鹿は共衛の左肩に爪先を置く。多鴫も操縦桿を握り直して車体をやや右方向に傾ける。弾かれたように奈鹿は引き金を引く。
13mm機関砲が火蓋を切る。曳光弾が白く尾を引きながら飛んでいく。3回の指切り連射。指切り連射の度に着弾が正確になる。後続する3号車も13mm機関砲を唸らせる。
民家を遮蔽にしようと車体の左脇腹を見せた先頭のCV33に共衛の思いが次々吸い込まれて、小さな車体が削岩機を当てられたように震えたかと思うと白旗が揚がった。
「……先ずは1輌」
奈鹿は再び、多鴫の片や背中に信号を打つ。共衛は空になった弾倉を交換する。CV33の8mm機銃では距離が有り過ぎて脅威ではないが、折角の逢瀬を邪魔するように横から伏兵や他のチームの乱入が想像されるので、試合終了の信号が上がるまで気が抜けない。共衛は弾数の多い30発入りの大弾倉を余り信用していない。経験上、作動不良が多いと感じているからだ。
奈鹿の駆る1号車に続いて3号車も13mm機関砲を砲撃するが戦果は無かった。着弾地点に小さな土煙を上げるだけだった。
幸いだったのは、3時方向で北チームのT-60が潅木でカムフラージュしたCV33を撃破したのが見えた事だ。いざと言う時の為の伏兵だったのだろう。正面の西チームはこれで残り3輌。
9時方向のテトラーク4輌もCV33に襲い掛かる。奈鹿率いる東チームと南チームのテトラークが刹那の間だけ同盟を結んだ。CV33を片付けた後はテトラーク4輌が即、敵となる。或いは同盟を結んだ振りをして強力な主砲を搭載した旋回砲塔がない九二式重装甲車の横腹を攻撃して一網打尽にする心算かもしれない。
目の前で起きた現実ではテトラークが更に1輌のCV33を撃破した。遮蔽に隠れたCV33もテトラークからみれば背中を見せているも同然なのだ。
蜘蛛の子を散らすようにCV33の統制は崩れて遁走を試みるCV33が更に1輌、撃破される。それは美園の報告と同時だった。
『2時800にT-60、2輌! 動きが緩慢です……物見でしょうか、それとも誘導でしょうか?』
「誘導だな」
即答する奈鹿。たった2輌しか出てこないのがそもそも臭い。奈鹿は辺りの遮蔽や木立の中に伏兵が居ると睨んだ。
「誘いに乗るな。距離は有る。此方が挙動を止めない限りこの距離から砲撃して当たるとも思えん。警戒は続けろ」
『了解』
その時だ。多鴫が急制動に出る。
奈鹿車の前方20mに着弾。後続する3号車も慌てて制動をかける。
テトラークが早くも裏切った。4輌のテトラークの内、1輌は残党狩りとでも言わんばかりにCV33を追い駆けている。残党と思われるCV33が37mm砲に追い立てられて遮蔽の民家を悉く破壊される。
「此方も腹を突付かれる! 美園! 続け! テトラークの背後を取るぞ!」
『了解!』
4輌の九二式重装甲車は9時方向に大きく曲がりテトラークの一団に正面から挑む。一合で1輌仕留められたら運が良いだろう。逆に此方の被害が出たら更に90度左に回頭して体勢を整える。
「肝が冷やされるぜまったく!」
車長席に収まって旋回砲塔をテトラークに向ける。機銃のストックに肩を当て、コッキングレバーを勢い良く引く。
「各車車長に通達。任意でテトラークを機銃で撃て。目標は勿論、操縦席」
テトラークの足が少しでも乱れるのを期待して機銃を撃つ。震動に近い反動がストック越しに肩に伝わる。
「共衛、まだ撃つな。多鴫、このまま真っ直ぐ。正面に居るヤツを仕留めるまで喰い付け。横っ腹に滑り込め。3号車と同時に接射で仕留める」
多鴫は無言だ。ただただ、操縦桿を切って、紙一重で37mm砲を避けている。彼女にとっては今が腕の見せ所で大事な花道なのだ。
3門の37mmが先陣を切る奈鹿車を狙う。ここで奈鹿が被弾して白旗を揚げても殲滅戦ゆえに東チームは健在だ。試合は続行する。自動的に指揮権は美園に渡る。勿論、そのようなネガティブな思考は捨てる。1輌も欠けてはいけないといつも言い聞かせているのだ。その割にはいつも辛勝で冷や汗を掻いてばかりだ。その経験は確実に奈鹿の欠点を埋める要素として蓄積されている。
「…………!」
テトラークとの距離450に迫った。その時に爪先で共衛に砲撃命令を出す。13mm機関砲の徹甲弾で辛うじて貫通する距離だ。軽戦車のテトラーク相手に機関砲で勝っている部分が有るとすれば、37mm砲よりも砲撃のサイクルレートが早い事だけだ。テトラークの主砲は砲弾を1発ずつ装填して狙って撃つ、大方の戦車と同じスタイル。それに対して九二式の13mm機関砲は引き金を引いている限り機関銃と同じ仕組みで弾倉の限りの砲弾を撒き散らす。左右に射角が取り難いと言う大きな問題点は有った。それを埋めるには真正面に標的を据えて標的が必殺の37mmを放った直後の僅かな時間を狙って豆鉄砲の弾を叩き込むしかない。
多鴫との連携も大事だった。共衛が砲撃する瞬間、多鴫が僅かに速度を緩めてくれればそれだけで命中率は上がる。被弾するリスクも上がる。先に此方の弾を相手に叩き込んで相手に白旗を揚げさせれば万々歳だ。
「!」
背中を軽く蹴られた共衛は反射的に引き金を引いて13mm機関砲で砲撃した。距離400。多鴫が急制動が掛からない程度に低速に落とした瞬簡の事だ。
3発の曳光弾が伸びてテトラークの車体正面に機関砲の砲弾が集中する。後続する3輌も各自の判断で機関砲で砲撃する。このような場合を想定して、真正面から敵と相対する時は必ず撃たせてから全力の砲撃を始めろと指示している。距離にもよるが13mm機関砲の徹甲弾で正面装甲がぶち抜ける戦車は数えるほどしかない。だからこそ、敵の隙を狙うしかない。タイミング的にも物理的にも隙を狙うしかない。
異音。
「?」
甲高い金属音。九二式重装甲車が被弾したわけではなさそうだ。その瞬間、目前のテトラークが白旗を揚げる。
「ちょっと狙ってみた」
共衛が悪びれを見せない声で言う。
「何?」
残り2輌となった目前のテトラークの左右を4輌の九二式重装甲車が抜けていく。テトラークが砲塔を旋回して後方へ走り去る九二式重装甲車を砲口で追うが、追いつかない。その砲塔へ向けて各車が自己判断で砲塔の照準器付近に6.5mm軽機関銃の銃弾を浴びせている。破片や曳光弾の残光で僅かでも狙いが狂うのを目論んでいるのだ。
テトラークは残り3輌。伏兵が居たのなら4輌。
「……共衛、何をした?」
先ほどのテトラークが何処にも派手な被弾をしたわけでもないのに何故か白旗を揚げたのに奈鹿は不可解に思った。
「砲口に13mmを叩き込んでみた」
「何! そんな事が出来るのか!」
思わず声を跳ねて驚く奈鹿。共衛は当たり前と言わんばかりに『首を横に振って』、否定した。
「狙ってできるわけ無いじゃん。あの時、真正面からぶつかっても撃破する自信は無かったんだよねー。だからさぁ、どうせ撃破出来ないのならって、ちょっと遊んでみた」
いつも通りの口調。
「……今のは愉しかった……」
多鴫が相槌を打つように口を挟む。被弾するか否かの中で更に撃破できるかどうかの瀬戸際を愉しんでいたのだ。共衛の思考を読んだと言うより、共衛ならこの時になればこのような思考に走るに違いないと多鴫なりに博打に出たのだ。
必ず、共衛は遊ぶ。多鴫も一枚乗った。意思の疎通よりも早い連携。呼吸が合っている以上の実に荒い連携。
「この野郎……今度は私も混ぜろよ」
引き攣る笑顔で砲手席と操縦席に座る、愛すべき面子を見る。
視界に入る2輌のテトラークは九二式重装甲車群を追撃する事は無く、そのまま前進する。今度は2輌しか確認されていないT-60を手頃な対戦相手と睨んで直進したのか。テトラーク1輌は先ほどのCV33の残党狩りに割かれているはずなので心の中でCV33を応援した。CV33の火力ではテトラークを倒すのは難しいだろう。
「各車このまま前進。目前の木立の中で態勢を整える」
目前200mの位置に有る木立は、先ほどのテトラークだけで編成されるチームがスタートした辺りだ。試合会場の真ん中で乱戦が始まると予想したが、思いの外、各チームが散らばらなかった。
木立を目指して前進。奈鹿は車長のハッチから身を乗り出して警戒に当たる。他の車輌の車長もそれに倣う。砲手は先ほどのテトラークの一団との邂逅で消費した弾倉を交換しているだろう。
曇天である事を除けば長閑な雰囲気だ。ギャラリーが五月蝿いのはいつものこと。乱戦が必至の今回の試合では戦車の付近まで雪崩れ込んで観戦しようとする馬鹿が少ないから助かる。選手も観客も、幾ら自己責任が前提の【タンカスロン】でも死傷者は出したくない。観客の群れを逆手に取って一時的な人間の盾を形成する作戦も時折見かける。『人間が邪魔だからと率先して観客を機銃で撃ち殺す』のは道理が違う。
「! 12時300! 4号車止まれ!」
スロートマイク越しに奈鹿は叫ぶ双眼鏡の端にチカっと光るハレーションを見つけて違和感から即座に判断した。
直後、急停止した4号車の前方1m付近に着弾。砲声と飛び散る土の具合から見て37mm砲だ。それも榴弾ではない。
「小隊、散れ! 伏兵だ!」
2個の小隊は小隊単位で左右に分かれて伏兵が忍んでいるであろう木立を避けた。大きく左右に散開した。
「矢張り伏兵か……テトラークは合計5輌か」
「どうする? 1輌しか潜んでないみたいだし、全門集中させる?」
共衛が訊く。
「……ああ。それしかないな」
共衛の意見に反駁する根拠は無い。全くの肯定だ。
「第2小隊、『直角定規』で攻める。伏兵テトラークの左脇腹に廻れ。此方はケツを叩く。相手は1輌だ。落ち着け」
『了解』
ヘッドセットから第2小隊長の美園の返答が来る。
『直角定規』とは畿内麻生高校戦車道部で通用する幾つかのテンプレート的作戦概要だ。1個の敵或いは密集する集団に対して一群が一方向から攻め、もう一群が右乃至左方向から攻撃を仕掛けて敵火力を分散させて撃破する形式を指す。自軍より少ない数の相手に有効な戦術で本来なら打撃力が強く射程も長い主砲で行う戦法だ。それを機関砲の弾幕で補っているだけだ。
「1輌に4輌で『直角定規』は心苦しいね」
全く心苦しくない声で共衛が言う。どうしてコイツは喋る台詞全てに重みを感じさせないのだろうか。
目前の木立の中に有る潅木の合間に陣取っているテトラークは此方の作戦を理解したのか砲弾を立て続けに撃ち放って距離を稼ごうとする。後退からの全速力を発揮されると面倒な事になる。奴の足回りのクリスティー式は後退の速度が馬鹿にならない。
「間違えても奴の履帯を千切るな。撹乱からの『直角定規』を行う」
クリスティー式の足回りは履帯を外した時こそ本領を発揮すると思っている。片方の履帯だけを外せば鴨みたいなものだが、両方の履帯を外せば九二式重装甲車では絶対に追いつけない速度を発揮する。両方の履帯が健在な方が作戦を練り易い。
目前400m。100mほど距離を離された。37mm砲の直撃を躱す為とは言え、少しばかり安全策に懲り過ぎたか。
第2小隊は後退するテトラークの左側200m辺りを併走する。お互いが脇腹を見せている状態だ。テトラークは砲塔を大きく振って第2小隊にも牽制の砲撃を加える。併走する第2小隊の危険度が低いと判断したらしいが、それは正しい判断だ。九二式重装甲車の砲架に具えられた13mm機関砲は真横を向くことは絶対に無い。小さな砲塔の6.5mm軽機関銃の豆鉄砲では打撃力不足なのを知っているからだ。
『6時600! 2輌! テトラークです!』
美園から伝達。先ほど躱したばかりのテトラークが返す刃を向けてきたらしい。
「面倒臭ぇ、挟まれる……」
奈鹿は忌々しそうに顔を歪めて砲塔の蔀窓を開けて後方を確認する。確かに双眼鏡にはテトラークが映し出されている。先ほどと違って、満身創痍と言う出で立ちで装甲に多数の擦過跡を作っていた。T-60と交戦して敗走してきたか……そのまま態勢を立て直す心算だったのだろうが、自分達の伏兵が窮地なのを逆手に取って挟撃を思いついたらしい。
「美園、第2小隊の指揮を任せる。併走するテトラークと私達の距離をもっと取らせろ。此方は6時のテトラークを仕留めに入る。可能なら併走するテトラークを片付けろ」
『第2小隊、了解。隊長達には絶対に近付けません!』
指揮を任された事で奮い立つ美園。声を聞くだけで解る。早く成長して次代の隊長を引き継いでくれ。
「第1小隊、180度回頭。6時のテトラークを片付ける。遮蔽は無い。3号車、回頭したら右方向のテトラークの左脇に砲撃しながら『滑って廻れ』。正面からじゃまともに勝負できない。車長、機銃の弾幕を忘れるな!」
37mmの砲撃が段々正確になる。蛇行を心掛けた回避で第1小隊は被弾を躱しているが、逃げるだけでは勝負は着かない。
「多鴫、合図をする。その時に『廻って左側に滑れ』。左方向のテトラークを喰う。距離は近い。かなりタイトな接敵になる。共衛、私の合図を待て」
奈鹿は乗員に指示を出した後、後続する第1小隊の九二式重装甲車3号車にも同じ指示を出す。畿内麻生高校戦車道部は車輌を通し番号で呼称している。小隊単位での行動がメインだが、「第1小隊2号車」と言う呼び方はしない。【タンカスロン】では現場で能動的に合流と再編が頻繁に行われると想定してあるのが主な理由だ。小隊単位で所属と番号を割り振っても意味が無いと考えている。4輌の車長が臨機応変に現場で自分の頭で考えて状況に対応する能力を養うのだ。実際に、4輌とも隊伍を組まず、最初から訓令で作戦を実行したことも有る。隊の長にだけ依存すると土壇場で思考が固まって柔軟な対応が出来ないのを防ぐためだ。
その為に1号車3号車が第1小隊。2号車4号車が第2小隊と言う暫定的な振り分けをしている。離脱する車輌次第で直ぐに再編したり、単騎を別働させて3輌を本隊とする場合も考慮している。それ故の通し番号での呼称だ。
なだらかな、然し、狭い草原。地面の起伏は小さい。猛然と走れば軽く車体が浮くであろう凹凸。当初は試合会場の中央で乱戦が生じるかと想定したので奈鹿の頭の作戦図は大幅な書き換えが必要だった。
ダイバーウオッチの回転ベゼルを『残り1分』に合わせる。試合会場の地形を高等線で表した地図を一瞥。今頃、別働しているテトラークは間抜けなCV33を葬っただろうか? 姿や思考が見えない2輌のT-60は今何処で何をしている? 誰もが漁夫の利を狙っているバトルロイヤルだ。完全に引き篭もって趨勢が固まるまで物見を決め込んでいるチームも出てきて当然だ。
ジャスト1分経過。
「『滑れ』!」
奈鹿はスロートマイクで後続する3号車に指示を出しながら、爪先で多鴫の肩を蹴る。
180度の急な回頭。エンジンが悲鳴を挙げる。履帯の寿命がまたも縮む。地面に深い抉れを刻んで2輌の九二式重装甲車は突如反転し、テトクラートに向かうも20mほど進んだだけで突然、左右それぞれへ操縦桿を切って、テトクラート2輌の左右へ展開する。
虚を衝かれたテトクラートは37mmで発作的に攻撃するも砲弾は虚しく空を穿つ。テトクラートの砲塔の旋回速度とその左右の脇にドリフトしながら猛スピードで接近する九二式重装甲車。両組、停止する挙動を見せる。テトクラートはそれぞれ、脇に接して停止しようとする九二式重装甲車を狙い、九二式重装甲車は『絶対に外さない距離で確実に停止して砲撃する為に』。
2輌のテトクラートの砲口はそれぞれ2輌の九二式重装甲車を捉えた。砲口の先、20mも無い。どちらが発砲しても『絶対に外さない距離』。
「ってー!」
車長席からの咆哮に背中を押されんばかりに反応した共衛は軽口を消失させて引き金を握り締めるように引いた。
刹那。
轟音。車長が収まる旋回砲塔の右脇を37mmの対戦車砲弾が掠る。それだけで車体が大きく揺れる。それに対し、13mm機関砲の小気味良い軽快な砲撃音よ。
20mの距離から小弾倉15発全てがテトクラートの左側面……車体と転輪の僅かな隙間に機関砲弾が叩き込まれてその打撃力は装甲を破り、内面を皮膜したカーボン層に達した。
「………………」
誰もが息を呑んだ。呼吸を忘れたかのように静かな時間が1時間も経過したような感覚だ。実際は2秒程度の時間だ。
あの、独特の心地よい音を立てて白旗が揚がる。2輌のテトラークは白旗を揚げたまま停止した。
体の芯が撃破の悦びに打ち震える。『乗員の連携が有れば』旋回砲塔を持たない戦車でも、強力な戦車に対抗できる事を再確認した。
「よっしゃー! 良くやったお前ら!」
奈鹿が興奮を抑えられないでとうとうガッツポーズをする。
「未だ試合中っすよ」
共衛が窘めるが彼女も笑顔を完全に殺せないで居た。多鴫は我慢できない様子でスキットルを取り出して一口呷る。
『第2小隊隊長車より第1小隊隊長車へ』
美園から入電。
『テトラーク1輌撃破しました! 損害無し! 直角定規で倒しました!』
此方も声が踊っている。
「よーし、合流だ。今から言うポイントに……」
お互いが悦ぶ声を抑えきれない興奮した状態。その状態で奈鹿は合流地点の指示を出すべくクリップボードの地図を手に取ろうとした時だ。
『隊長! 6時800! 新手です!』
第1小隊の3号車車長が絶叫する。
「! まさか!」
6時の方向800mと言えば、ギャラリーが押し合い圧し合いしている地点だ。
そのギャラリーの波を割って強襲をかけてくる車輌が居るのかと、旋回砲塔の蔀窓の銃眼を開けて双眼鏡で覗く。
「やべえ……3号車、来い! この場から離れる。第2小隊! T-60が動い……!」
『きゃあ!』
スロートマイクで第2小隊に伝達中に美園の悲鳴が鼓膜を劈く。
『4号車被弾! 白旗です! 敵戦力不明! 離脱します!』
美園の声に混じって4号車の車長が叫ぶ。
『方位西! 敵影2輌! それ以外は不明! 美園車、この場から離れます!』
「命令だ! 逃げ切れ! フィールドど真ん中の民家で落ち合おう! 此方は簡単に逃がしてくれそうに無い!」
『ご武運を!』
奈鹿、舌打ちする。
「多鴫、ここは拙い。中央の民家までかっ飛ばせ」
命令を受けた多鴫は躊躇わずに回頭し、だだっ広く、なだらかな凹凸が続く草原に向かって走り出す。配下の3号車にも同様の指示を出す。
「飛酉、T-60のスペックを送信してくれ」
携帯電話を取り出してそのようにギャラリーに混じる飛酉に指示。声の調子から全てを悟ったらしい飛酉は無言で電話を切り、1分後にテキストファイル化したスペック表を奈鹿の携帯電話に送信してきた。
「向こうの方が足が速いな……20mm機関砲か。装甲も向こうが上……」
圧倒的不利は今に始まったことではない。九二式重装甲車で【タンカスロン】に参戦している時点で様々な無理が山積みなのだ。
第1小隊は試合会場中央の、嘗てCV33が陣取ろうとしていた民家が点在するポイントまで不規則な蛇行を続けて進む。9時の方向1000mの辺りに美園車が見える。
「!」
思わず身を乗り出して双眼鏡を美園車の後方へ振る。
「T-70! T-60の奴らの伏兵か……確か……」
「……45mmだ」
前方を向いたまま多鴫がぽつりと言う。
奈鹿もT-70は知っていた。主砲の45mm砲と中戦車に匹敵する装甲を持つ、軽戦車で、試合で出会いたくない部類の戦車だったので以前にスペック表を見た時から印象が強かった。
「大人気無いなー」
共衛が自分の身に降り掛かっている事ではないように言う。
民家の遮蔽を利用して各個撃破に持ち込むしか勝機が見えない。
「だが……45mmだ」
隠れた民家の陰を特定されると45mm砲の前では防弾の効果は薄い。
「美園、T-70を引きつけろ」
2輌のT-70の砲撃に追い回されながら民家を目指す美園にスロートマイクで指示。
「逃げ回るだけでいい。持ち堪えろ」
『現在進行形でやってます!』
悲鳴に近い美園の返答。
「3号車。もう一回、『横に滑れ』。但し、今度は此方も同じ方向に『滑る』。1輌ずつ撃破する。低速で蛇行、合図の後に回頭して機関砲と機銃で弾幕を張れ、目標は右手側のT-60。此方は『大きく滑り込む』」
其処まで言うや否や、声に出して5秒からカウントダウンを開始する。多鴫は全てを理解してフルスピードで走り出す。
「ゼロ!」
カウントゼロ。作戦開始。その声はスロートマイクで3号車にも伝わる。
距離をジリジリと詰めつつあった併走するT-60の目前で突如として2輌の九二式重装甲車が履帯を地面の草原に削りつけて回頭しドリフト走行を見せる。そのまま操縦桿の切り損ないかと思うほどに車体を傾けて2輌が整然と並んで片輪を僅かに浮かせて草原を滑る。
突然の予測していない挙動に一拍の時間、置いて行かれた2輌のT-60は砲塔を旋回させて暴走気味な九二式重装甲車を砲撃しながら追う。T-60の曳光弾が2輌の後方を過ぎ去っていく。機関砲だけの勝負なら一日の長が有る事を見せ付けてやりたい。
左側を走るT-60も20mm機関砲を唸らせるが友軍が邪魔で視界を大きく阻害される。
敵味方が体当たりしそうな距離。3号車が急制動を掛けて右側のT-60の車体左を機関砲で捉え、その3号車の陰からまだ片輪を浮かせたままの奈鹿車が更に大きく迂回して、左手側T-60の視界の死角から飛び出てその向こうのT-60の車体後部に回り込む。
「ってーっ!」
奈鹿車と3号車が一斉に砲撃。15発の弾頭はT-60の装甲の薄い部分を穿つ。T-60は互いの車体が邪魔で死角同士をカバーする事が出来ずに急な接敵を許した上に接射をも許してしまった。
2輌のT-60が軋むような音を立てて砲塔を旋回させたが、途中で白旗が揚がり、行動不能と判定された。
「!」
信号弾。2輌の強敵を屠っても安心していられなかった。大会運営側からの信号弾が上がった。2発の色違い。CV33で編成された西チームとテトラークで編成された南チームの車輌が全て撃破された事を報せている。それは水面下で活動する、北チームの伏兵が潜んでいた事を言外に物語っている。
九二式重装甲車3輌。T-70と車種不明が1輌で3輌。数の上では同数でも補え切れない溝を感じる。伏兵はCV33とテトラークをたった1輌で撃破したと考えた方が賢いだろう。過大評価ではない。直感だ。
「奈鹿。否な空気だ」
共衛が言う。曇り空が今にも泣きそうな灰色を帯びてきた事を言っているのではない。
「『横滑り』は見せ過ぎた……看破されるかも知れん」
多鴫も表情が読めない声で言う。
「中央に、民家に篭れ。」
奈鹿は呻く様な声で多鴫に言う。多鴫は黙って本来目的である民家を目指す。3号車も100mほど左側について前進を始める。
「さぁ……面白くなってきた……」
多鴫のその独り言は車内の騒音で掻き消された。
民家に向かって先行していた美園から連絡が入る。
『美園車より隊長車へ! 敵と交戦中! 民家は罠です! 3方向から砲撃を受けています! 火力集中! 撤退不能! 撤退不能!』
「チッ……多鴫!」
「おうよ」
美園の声に混ざる砲声と機関砲の砲撃音。奈鹿率いる第1小隊は全速力で民家を目指す。罠だと美園は言った。その罠を食い千切るのも戦車戦の面白いところだ。恐らく連中は美園を膠着させただけで止めを刺す気は無いだろう。美園の危機と言う餌に仲間が駆けつけた所を各個撃破する心算だろう。
「面白い……3号車。私の尻に付け。吶喊する」
双眼鏡を覗きながら口の端を吊り上げて言う。
「3号車。1号車が砲撃を開始したら左右どちらでもいい、『横に滑れ』。私達が手近な標的を釘付けにする。その敵車輌に横っ腹から体当たりしろ。恐らく、第1小隊はどちらかが被弾して白旗判定が出る。少なくとも1輌仕留めれば勝機は見える」
『り、了解!』
3号車の車長の声は震えている。無理も無い。至近距離での、それも接射しか許さない作戦ばかり強いているのだ。だが、無謀な特攻ではない。双眼鏡の向こうを見ながら奈鹿は3方向から散発的な砲撃を加えて美園車を膠着させている状況を確認した。
「距離500。蛇行開始。速度は緩めるな。共衛、砲撃準備。500先の、ケツを此方に向けて砲塔を旋回させている手前の奴を狙う」
「りょーかい」
この期に及んでも気の抜けた緊張感の無い共衛の返答。共衛は機関砲の肩当に肩を当て直すと無倍スコープを覗き込んだ。
T-70が迫る。T-70の砲口が真っ黒な点になると直ぐに大きく操縦桿を切る。直後に必ず砲撃が襲い来る。
「!」
3輌のT-70のうち1輌が此方の動向に引っ掛かった。釣っているのが自分達だけだと思うなよと、車長席に収まった奈鹿が独り言を言う。
「多鴫! 吶喊! 3号車! 付いて来い! 共衛! 撃て!」
350m以下の距離になるや否や命令を下す。流石の共衛も弾幕が必要だと感じていたのか30発入りの大弾倉を差し込んでいた。その13mm機関砲が砲身も焼けよと言わんばかりに吼え狂う。弾頭は悉く砲塔に命中する。砲塔の装甲は厚い。13mm砲弾では貫通は難しい。500mで20mmの装甲を貫通する性能を持つが、T-70の装甲は最大で60mmだ。砲塔もそれに近い数値だろう。
本命は自分達ではない。後続する3号車だ。決死隊を引き受けさせてしまった3号車が仕留める。そして確率の上では3号車はその直後に撃破される。
奈鹿車の13mm機関砲が目前の砲塔を一時的に黙らせる。それでも尚、奈鹿車は吶喊を緩めない。距離は縮まって体当たりを敢行した。それでも履帯は止まらない。
「3号車!」
『ただいま!』
一番手近に居た目標のT-70の車体後部に体当たりをした奈鹿が叫ぶ。奈鹿車の弾倉は交換中。体当たりされたT-70の砲口が躊躇いを見せる。どちらを優先的に砲撃するのか一瞬だけ迷った。それが命取りだった。
3号車の機関砲が接射で砲撃。車体側面の履帯上部の隙間に機関砲弾を容赦無く叩き込む。転輪も履帯も弾けるように破壊されてそのまま砲弾はカーボン層が囲う車内への侵徹を確認した。従って、T-70を1輌撃破。白旗が鮮やかに咲く。
『美園車! 撃破されました! 申し訳ありません! 1輌の右履帯を『外しました』! 白旗判定が出ていません! 修理して戦線に戻る心算です! 早く次の手をお願いします!』
目前のT-70を撃破と同時に美園から連絡。美園を失ったのは痛手だ。美園は奮戦したのだろう。自車と引き換えにT-70を一時の間、擱座させた。物理的に砲撃しながらの修理は至難の業だ。砲撃だけに専念しても民家の遮蔽が邪魔をして正確な砲撃が難しいだろう。
健在なT-70が迫る。距離250m。白旗が揚がったT-70を盾に奈鹿車と3号車が滑り込んで潜む。
「3号車。迂回して美園が擱座させたT-70を片付けろ。まともなアイツは私が食い止める!」
『了解!』
撃破した興奮と新たな脅威に感情がアドレナリンで茹でられている声がヘッドセットから聞こえてきた。
「共衛、牽制砲撃。多鴫、挑発行動開始。前後に適当に動け。この擱座している車輌を使うぞ」
T-70から這い出ようとしていた乗員達が顔を青褪めさせて再び車内に潜り込んだ。
時間にして2分。たったそれだけの時間だった。
『撃破! なれど被撃破!』
動けないで居るT-70を仕留めに廻らせた3号車からそのような報告が入る。相打ちで果てたらしい。美園車より練度が低い3号車が擱座した優秀な車輌と刺し違えた事は大きな賞賛に値する。
奈鹿車も態勢を整えて90度、右に回頭。全速力で駆け出し、残る1輌の砲撃を躱すべく蛇行を始める。
「3時300! 敵1輌! T-70!」
残存する敵戦力はT-70。こいつが残党のCV33とテトラークを仕留めた『押さえ』だと言うのは雰囲気で解る。
「多鴫! 共衛! 行くぞ!」
「おーよ!」
「……おう」
最後の敵に奮起する一同。30mほど直進して蛇行に入って回避運動をした時だ。必殺の45mm砲を警戒する余りに小刻みな蛇行を心掛けた多鴫が悪いのではない。
無茶な『横滑り』やドリフト紛いの走行を押し付けた奈鹿に責任の所在が有るとも言えない。
九二式重装甲車の左履帯が突如、弾け飛んで右履帯が地面を大きく削りながら蹴る。横滑りを多用した所為で履帯の一部が寿命を迎えたのだ。
「!」
3人は自分達の身に起きた事を理解した。擱座で動けなくなったと。そして即ち、敵主砲の格好の餌食になった事を。
数瞬後に九二式の車体は大きく揺れた。横転しそうな衝撃だった。これからは作業用ヘルメットでもいいから標準装備にするべきだと思った。
白旗が、揚がる。九二式重装甲車の砲塔から白旗が揚がる。
この試合では敗北を喫した。
泣きそうな空がとうとう泣き出した。
雨がしとしとと降り出す。やがて、雨は驟雨となり、九二式重装甲車の車体を雨粒が激しく叩く。
車体を激しく雨が叩く。連打するのは畿内麻生高校戦車道部の専売ではない。
敗北した。
それを報せる信号弾が打ち上がる。
嗚呼、敗北したのだ。
誰しもが否定しようの無い事実を確認する。
今回は負けた。この勝負では負けた。
誰も口を開かない。衝撃で開いたハッチから入り込む雨に顔を撫でられたまま、奈鹿は放心していた。操縦席で多鴫がスキットルを呷る。共衛は首を項垂れてピクリとも動かない。
負けたのだ。
負けてしまったのだ。
飛酉はこの記録をデジタル媒体に残すのに血涙を流す思いだった。