南の海(日本の中で)はきれいですね。
織斑神社の儀式の一つに、剣舞と呼ばれるものがある。
文字道理、剣(剣といっても白木の柄と鞘で飾られた太刀だけど)を持って舞う儀式である。
いつから始まったのか、この儀式の意味がなんなのか。
数世紀も前の戦国時代に起こった戦乱の最中に生じて失い、忘れ去られてしまったが、
それでも伝統は残さなければならないとは、一夏のおばあちゃん、織斑十夏(とおか)がいつの日か一夏にいった言葉である。
一夏はそんなおばあちゃんの思いを受けて、小さい頃より剣舞を初めとした色々な儀式を練習し、行ってきた。
勿論、本番でも練習でも剣舞は本物の真剣を用いる。
幼い一夏にはかなりの負担だった。
それでも頑張ってきたのは大好きなおばあちゃんの為だった。
そんな一夏にも、絶対に耐えられないことがあった。
剣舞の後に行う『口噛み酒』と呼ばれるモノを作る儀式だ。
最古の酒と言われているこれは、お米を噛んで自分の唾液と混ぜ、吐き出して発酵させる。
この一連の工程を人前で行うのだ。
思春期の一夏には恥ずかしすぎる儀式。
しかも、この町の住人達は何故か織斑神社の儀式が大好きなのだ。
ほぼ全ての住人が見ているまえで行うので更に恥ずかしい。
次の日、クラスメイトに何を言われるかと憂鬱な気分も合わさり、一夏の心の中はぐちゃぐちゃにかき回されたような形容しがたいモノになっていたほどだ。
剣舞と口噛み酒を行うまでの僅かな時間を憂鬱と過ごし、
おばあちゃんが後ろで優しく見守るなかなんとか、ほぼ全ての住人達が見ている前で儀式をやり終えた一夏だが、
胸のなかでは全くといっていいほどやり終えた感動や安心感等はなく、ただただ明日クラスメイトから何を言われるのか(りんちゃんやダンは何事もなかったかのように接してくれそうだが)と言う不安でいっぱいだった。
おばあちゃんと共に、全ての後片付けを終えて家に帰っている時もその感情は消えることはなく、
むしろ少しづつ増しているような気さえした。
「なんや一夏、元気なかなぁ?」
「…………何でもない」
おばあちゃんも心配するくらい顔に出ていたらしく、つい否定してしまった。
明日が不安で仕方ないが、織斑神社の巫女としてかくあらなければと自分自身に言い聞かせる。
男が巫女はおかしくないかと随分昔にダンにからかわれたが、物心ついた頃からやっているので問題はない。
巫女の儀式も不満はない…………と言えば嘘になるが。
「別に無理せんでよか。
一夏が口噛み酒を恥ずかしがっとるのは知っとる。」
おばあちゃんが優しく頭を撫でた。
時を過ごし萎れた手は、それでもいつも以上に温かく感じた。
「たまには、お前の思いをぶちまけてみたらえぇ、
今はおばあちゃん以外おらんけん。
そしたら、少しは楽になるたい。」
当たりは暗く、既に町の住人達は各々の我が家に帰っている。
明日への不安と日頃の不満全部を別のベクトルへ変換するために、思いっきり叫んですっきりしてもバチは当たらない状況だった。
つい、私は鳥居の隣まで階段をかけ降りて思いっきり叫んだ。
「もう、こんな町嫌やぁぁぁぁぁあああ!!
口噛み酒なんてやりたくないわぁぁぁぁ!!
来世は東京の!
イケメンか美少女にしてくださぁぁぁい!!」
とりあえず、おばあちゃんが心配なのでこの人生は我慢します。
来世は本当に東京に行かせてください。
いるならお願いします神様。
この後、おばあちゃんに笑われたのは言うまでもない。
お久しぶりです。
お仕事で海の上、夜間の見張りが荒れ大半のミヤフジです。
最近やっと快晴の夜は最高だと思いました。
回りに明かりがないと、あんなに星達は輝いているのですね。
流れ星やウミホタル?による船の白波が淡く光る様子は幻想的でした。