「提督さん、お風呂沸いたっぽい」
「あー、これ終わったら入るわ」
あれから細々とした仕事を終わらせて、既に外は暗くなっていた。着替えを持って風呂場に向かうと脱衣場方から物音が聞こえてきた。ここに居るのは自分と夕立だけだから中に誰がいるかは分からないはずがない。バレないように中を覗いてみると
「おっふろー、おっふろー♪」
夕立が中にいた。
「おい、俺が入るんじゃねえのか?」
「提督さんも夕立と一緒に入るっぽい!」
「ぽいじゃねえよ、入らねえよ」
「何でっぽい?提督さんも夕立と入れて嬉しいっぽい?」
「何が悲しくてお前と入らなきゃいけねぇんだよ。お前の裸見たところで何も嬉しくねえよ」
「それは女の子に失礼っぽい!」
「事実だ」
とにかく中に夕立が入っているなら暫く待つしかない。戻ろうとして後ろを向く。
「隙ありっぽい!」
その瞬間、扉の隙間からバスタオル一枚の夕立が手を伸ばして脱衣場の中に招き入れた。突然のことだったため抵抗できずにそのまま中に入ってしまった。
「…………」
「ふっふっふっ、これで提督さんも夕立の魅力に気がつくっぽい」
「……おい」
「ぽい?」
「ぽいじゃねぇぇぇぇえ!!」
夕立の頭を掴み、左右に振り回す。夕立が何か叫んでいるが無視して続けた。
「あんまりぽいぽいうるせえと口にガムテープ貼って一週間ぽい禁止にすっぞ!」
「て、提督さん!それ以上揺らされると……」
そこまで言ったところで夕立が身につけていたバスタオルが揺さぶりの衝撃で落ちた。夕立は顔を真っ赤にして恥ずかしがっていたが、大したことじゃないだろう。バスタオルを拾い上げて夕立に渡すと脱衣場から出た。
「終わったらこっちに一言来てくれよ」
そう一言だけ告げて執務室に戻った。
「…………提督さん、鈍感すぎっぽいぃぃぃぃいい!」
一人しかいない脱衣場に渾身の叫びが響き渡った。
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「うるせえな、静かに風呂も入れねえのか?」
遠くからぽいぃぃぃぃいい……と叫びの様なものが聞こえてきた。夕立が叫んでいるんだろう。意味が分からないが、どうせこの辺りには自分達しかいないからどうでもいい。俺がうるさいと感じたら説教(物理)するが。
「しっかし、やる事ねぇな」
必要な物資は輸送船が送ってくるし、資材は駆逐艦一隻なので遠征数回で黒字に持っていける。要するに殆どやることはない状態だ。
「結局やることは食う寝る殺すだけか……たまにはどっかに出掛けてえな」
それを決めているのも大本営な辺りやはり殴り込みは必要だと考えていた。
「…………夕立遅せえな」
この鎮守府で出来ることは結局少なかった。