モンハン世界にINしたアルトリアさん   作:エドレア

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プロローグ


アルトリア編 第一部
act-0


 最初に視界に入ったのは神秘が溢れる世界だった。召喚されたのだから自身の内に用意していたお決まりの言葉を言うために目を開いてみれば、いるはずのマスターはおらず代わりに広がるは圧倒的大自然。

 

 これには歴戦の騎士王と言えど、戸惑いを隠さずにはいられない。感覚だけでここが尋常の内に入らない場所だと理解し確認のために聖杯から与えられるはずの情報を頭の中で探すが目の前の光景を納得させてくれるだけの情報は何一つ思い浮かばない。というか聖杯からの情報が何も無い。どうやら聖杯による召喚では無いようである。情報のバックアップが無い、聖杯戦争とは無関係なイレギュラーな召喚であるようだった。

 

 アルトリアが今いる場所は高所にある遺跡と思われるような建物だ。高台である故、外の景色が良く見える。どうやら森の中にいるようだが一つ一つの木の高さが普通では無い。30mや40mではきかないような高さの大木ばかりである。アルトリアが見下ろせる位置にあるこの遺跡は100m近くはあろうかという巨大さを誇っていた。

 

 アルトリアからすれば堪った物ではない。植物に侵食され風化した祭壇から辺りを見回すがやはりこの奇異な召喚に答えを出させてくれるような物は何も無かった。

 

「呼ぶ、というよりは誘うような気配に寄って行ったのが悪手だったのでしょうが…まさか前情報も無いばかりか異界と思われるような場所に放逐される羽目になるとは」

 

 一人、ぽつりとそう漏らす。これが単なる森であるならば森の出口を探し人の集まる街か何かへ出れば情報収集の余地もあったものを、見渡す限りどこまでも樹海が広がっていくばかりである。とてもでは無いが出口など探せた物では無い。更に良く森を見てみれば見たことも無いような生物が時折彷徨いていてアルトリアが異界認定するのも仕方の無い環境が目に見えていた。召喚早々、愚痴の一つもこぼしたくなる。

 

「とりあえず、まずはここから降りて現状を把握しなければいけませんね」

 

 案ずるより産むが易し。英霊たるその能力を遺憾無く発揮しアルトリアは高所から地上へその身を踊らせた。

 

 

 

 

 

 

 地上に降りたアルトリアを最初に出迎えてくれたのは暢気に草を食んでいた草食竜アプトノスの群れだった。突然上空から勢いを付けて降ってきたアルトリアに恐慌の声を挙げ群れはパニックになる。おおよそ30頭程の群れは、遺跡の手前にいるアルトリアから逃げるように森へ駆け込んだ。悪い事をしたな、と思いつつもアルトリアは周囲の環境を観察する。遺跡の高所から見た通り随分と草木が生い茂っていたが意外にも陽の光を遮るような事は無かった。アルトリアがいた遺跡のおかげだろうか、かなり開けていて燦々と太陽の光がアルトリアと遺跡に射し込んでいた。

 

指標になる物も無いためアルトリアはとりあえずアプトノスの群れが逃げて行った方向に足を進めようとした時だった。

 

(見られている)

 

 殺気とも違うが友好的な気配など一切感じない視線が森の奥からアルトリアを取り囲んでいた。睨め付くような視線の数は大体15~20程度だろうか。先程、アプトノス達を怖がらせてしまった騒ぎがこの者達を呼び寄せてしまったようである。自身が招かれざる客だという事もあるのか、その視線は殊の外きつくアルトリアには感じられた。

 

 確かに部外者ではあるがだからと言って黙ってやられる案山子では無い。襲撃者達に対抗するために今は風の鞘に納められた相棒たるその聖剣を静かに構える。ここでようやくアルトリアは自身がどのような現界を果たしているか自覚するに至った。まず、受肉している。これはアルトリアの末路が他のどの英霊とも違う特殊な経緯による物であることは明白だったが本来ならそれでもマスターの魔力による補助が必要なはずである。しかし、どこからもパスは通っていなかった。かつて、征服王が宴の問答の際に語った一個の命としてアルトリアは存在していた。他者の補助を必要としない完全な受肉である。この世界に来て二度目の大きな驚愕だった。因みに一度目は召喚直後の世界の様子である。次に魔力と宝具であるが魔力保有量に関してマスターの差で比べるのなら士郎以上凛以下といったところだろうか。宝具の真名解放は2回くらいなら問題無く戦場で振る舞えるところ、その後の消耗を考えないのであれば3回、消滅覚悟で放って4回が限界という具合だった。宝具そのものの欠損も無い。英霊そのものであるアルトリアに自身のステータスを知る権利は無いため正確には測れないが少なくとも士郎がマスター時のポテンシャルは超えていると思われた。

 

 逡巡している内に向こうの攻撃体制が整ったようである。甲高い鳴き声と共に、青色の影が森の中からアルトリア目掛けて3匹が大きく跳躍してきた。ランポスと呼ばれるこの小型の肉食竜の攻撃は、先程のアプトノスの群れであれば1頭程度仕留めるのに何の支障も無い攻撃だろう。しかし、相対するは常勝の王アルトリア・ペンドラゴンその人である。事も無げに不可視の聖剣を振るってみせれば跳んできた3匹はすぐさまただの肉塊に変わった。そこから断続的にランポス達がアルトリアに襲いかかるが策も何も無いただの飛び掛かりがアルトリアに傷を付けるなど有り得る事象ではなく、程無くしてアルトリアの周りにはランポス達の死体が散らばった。

(先程の草食動物やこの青蜥蜴といい…ここが地球であるかさえ怪しくなってきましたね)

 

 全てが未知である。偶発的な事故のような何かでこの地に放り出されたが不思議と嫌な感じはしなかった。未知への探求心とでも言おうか、征服王はきっとこの思いを持て余していたに違い無い。己がこの地に呼ばれた意味を確かめるべく、アルトリアは森の中へとその歩を進めるのであった。




察している方は多いと思いますがアルトリアがいるのは未知の樹海です
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