モンハン世界にINしたアルトリアさん   作:エドレア

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GRAND BATTLE


act-12 騎士王は天晴の夢を成す

 アルトリアがウェールズを避難させるまで場を受け持つ事になったイリヤ。足止めなどと言わず、討ち取るつもりで戦うイリヤであるが───。

 

「こいつ…!」

 

 空を舞う鋼龍に対し弓という遠距離武器で攻撃するイリヤだが傷は与えられていない。風の鎧にも阻まれない剛弓を放っているのだが鋼龍はそれらをほとんど躱してみせた。普通のモンスターでは有り得ない動きである。モンスターはハンターの攻撃を気にせずハンターへ向かい、ハンターはその隙を突いて着実に傷を負わせるものだ。モンスターは普通、ハンターの攻撃を回避するという思考は持たない。攻撃の一つ一つはモンスターにとってみれば大した事ないからだ。だがこの鋼龍は違った。それが自分にとって害になる事を理解している。また、閃光玉を投げて動きを封じようにも墜落せず矢の届かない高度まで飛び効果が切れるまで降りてこないのである。閃光玉について知っていなければできない動きができるあたり、この鋼龍は人間の事を深く理解している。アルトリアが与えた右目の傷以外に鋼龍は傷を負っていなかった。

 しかし鋼龍もまた苛立っていた。地上に降りずに上空からブレスを連発、隙を見せれば爪で急襲という戦法は変わらないがイリヤの敏捷性に追い付けずブレスは全て空振りする。この暴風の中、平時と変わらぬ速度で回避するイリヤは鋼龍にとって想定外の敵だった。元々はアルトリアを仕留めるための布陣である。イリヤ相手に同じ戦法は通用しないのだ。

 

「矢が(あた)らないなんてね。貫通矢しか放てないからそりゃ軌道は読みやすいだろうけどこれじゃあ矢が尽きちゃうよ」

 

 ここで鋼龍がブレスの形態を変える。黒い竜巻をいくつか作りだし場に走らせる。イリヤの動きを制限する方向に変えたようだ。

 

「はいはい、当たんないよ~」

 

 勿論余裕で避けるイリヤ。しかしここで鋼龍が新たな動きに出る。地上に降りたかと思うと後ろ足で立ちながら翼を羽ばたかせ、前方全てに突風を巻き起こしたのだ。面制圧を狙った攻撃である。物理的な被害は無いものの、今までとは段違いの強風に流石のイリヤも足を止めてしまう。

 

「しまっ…!」

 

 そうして動きが止まったところを鋼龍は狙い撃ちにした。イリヤに風のブレスが着弾する。大きく吹っ飛ばされたイリヤの後ろにあるのは崖だった。

 

「ゲホッ…!あ、ちょ、まずいかなこれ…」

 

 血反吐を吐きながら蹲るイリヤの視界には二撃目のブレスがある。直撃すればまた吹き飛ばされ今度は崖の底へ真っ逆さま、イリヤの人生はそこで終了する。回復薬を飲む暇も無い痛みに呻くイリヤの体では先程のような回避は望めなかった。

 

(あ、死んだ)

 

 死が迫るとはこういう事なのだろうとイリヤは実感する。走馬灯がイリヤの脳内を駆け巡る。アルトリアと語り合えなかった事が一番の心残り───。

 

「ハァァァッ!」

 

 その致死となるブレスを切り裂く光があった。光の方を見れば美しい少女騎士が眩い聖剣を構えている。

 アルトリアが復帰した。

 

 

 

 

 

 

「何を惚けているのですか!立ちなさい!」

 

 アルトリアは復帰直後の開幕一番、聖剣から魔力放出による光を放った。何とか間に合ったアルトリアの攻撃はイリヤを助けられたのだ。

 

「ギリギリでしたね…。大口を叩いた割りには窮地に立たされていたように見えましたよ?イリヤ」

「あははは…。返す言葉が無いね。面目無い。助けてくれてありがとう、アルトリアちゃん」

 

 立ち上がり回復薬Gを二本、一気飲みしながらアルトリアに礼を送るイリヤ。その美しさに一瞬見惚れてしまっていた。

 

「で、二人になったのは良いんだけど何かアテはある?あいつこっちの矢が全く中らなくてさ。閃光が特異個体みたいに浮き上がって意味を成さないし角も折れないから風の封じようが無いんだよね」

「…一つだけ、全てを覆すような一撃ならありますよ」

「へぇ、隠し玉があるんだぁ。それって確実にあいつを殺れるの?」

「ええ。当たれば絶対に勝利できる、そう断言できる一撃です」

 

 鋼龍は作戦を思案している二人にブレスを乱発して阻害する。しかし持ち直したイリヤは難なく避け、アルトリアは聖剣を振るう事でブレスをかき消していた。

 

「しかし溜める時間が必要になります。やつの動きを止めなければ使えません」

「動きを止める…か。乗る事が出来ればやれるんだけどな」

「乗る、とは?」

「あいつの背に乗っかって背中からザクザクナイフで突き刺すの。そうすりゃ叩き落とせる。だけどここ高い段差がどこにも無いから乗りを狙えないんだよね」

 

 どうしたものかと苦い顔になるイリヤ。イリヤはエリアルスタイルを習得していないため乗りは基本段差頼りとなる。今この場では狙う事ができない。

 

「要は乗る事が出来れば良いのですね?」

「そうだけど、何?そっちでも秘策があるの?」

 

 コクりと頷くアルトリア。そうしてかつて第四次聖杯戦争の折にランサーの直感を信じて言ったその言葉。

 

───風を踏んで走れるか?

 

「…詳しく聞かせてほしいな」

「簡単です。私がやつに向かって風の砲弾を放ちます。貴方はそれに乗ってやつに飛んでいけばいい」

「あーもう、つくづく君は面白い事言ってくれるねぇ。良いよ。それ乗った。ただ闇雲に放ってもダメだと思うからさ、合図は私に任せてくれない?私があいつに閃光を投げて一瞬だけ目眩ましするからその隙に」

「了解です。任せましたよ、イリヤ」

 

 アルトリアの策に楽しそうな表情で快諾するイリヤ。事実楽しいのだろう。瞬時に散開し閃光玉の準備をする。アルトリアは聖剣に風を纏わせいつでも放てるように構えていた。

 アルトリア達の様子が違う事を察したのか鋼龍は竜巻を走らせる事で対処する。だが余裕のある今の二人なら避けられない事は無かった。

 

 竜巻を躱し前にイリヤ、後ろにアルトリアという布陣を組む。準備は整った。

 

「そらっ!」

 

 鋼龍はまたそれかと呆れた顔でイリヤを見ていた。閃光玉を見る必要は無い。見たところで害にしかならないし何より喰らい過ぎてもう目が慣れているのだ。何番煎じだという話、一瞬しか効果を示さない。

 はずだった。

 

風王鉄槌(ストライク・エア)ッ!」

 

 閃光がやんでみればイリヤが自身に向かって飛んできている。長く生きてきた経験を活かしそれで対処してきた鋼龍だがこれは初めて見るものだった。アルトリアがウェールズに騎乗して戦ってくるのも今までに無い経験だったがそちらはごり押しで制圧してみせた。けれどこれは違う。人が飛んでくるなどどう対処するのが正解か。鋼龍は二人の突飛な行動に驚き動きが大きく鈍る。

 

「せいやっ!」

 

 イリヤは鋼龍に飛び乗り剥ぎ取りナイフで突き刺していく。この暴風の中でただ一つの無風地帯が鋼龍の背だ。自身を中心にして円を描くように風を起こす関係上自身の背には風を展開できない。慌てて鋼龍はイリヤを振り落とそうと身をよじり体を大きく揺らす。

 イリヤと鋼龍の攻防は鋼龍の方に軍配が上がった。並の鋼龍とはまた違う暴れっぷりにイリヤは大きく放り出されてしまう。

 

「ごめん!落とせなかっ───」

「いえ、今ので十分です。既に準備は整った。急いで退避して下さい」

「え…?」

 

 鋼龍は予期せぬ攻撃に心を乱したが相手の目論見は退けたのだと、そう思いアルトリアに向き直る。何をしていたのか知らないがまずは貴様を粉砕してみせよう。そのつもりで見れば───。

 鋼龍の眼前には眩い光を上段に振りかぶるアルトリアがいた。

 

 

 

 

 

 

『あれは何かニャ…?山のてっぺんが光ってるニャ』

 

 豪雨の最中に感じた異変。ふと北を見れば雲に覆われて見えなくなった太陽とは全く違う光が山頂より森を照らしていた。森全てに届くような極光に集落のアイルー達は雨に濡れるのも構わず家から出てくる。

 一体あれは何だと議論するアイルー達だがただ一人、セレットだけは知っていた。あの山にいるからという根拠しかない。それでもこの綺麗で、暖かで、そして勇気付けてくれるような光は紛れもなく彼女そのものだと頭ではなく心で理解している。

 

『あ、アルトリアさんの光だニャ…』

 

 角竜も気配を察知したのかじっと山の方を見詰めている。自分の宿敵が今まさに一つの極みを体現せんと示している瞬間なのだ。現場に居合わせなかった事が残念だがそれでもこの一瞬を脳裏に焼き付けようと食い入るように見詰めている。

 

 森のモンスター達も異変に気が付いた。最初はこの雨に混じる古龍の気配に怯えて各々の巣に引き込もっていた彼らだがその気配を吹き飛ばしかねない巨大な何かを北から感じて巣から出てくる。火竜、雌火竜、桃毛獣、ドスイーオス、砕竜など他様々なモンスター達が北から伸びる光を見ていた。

 

 洞穴で身を休めていたウェールズにもその光は届いた。それが主によるものだと気配で分かる。叶うならばこの光を間近で見たかった。けれど自身の力が足りないばかりに離れたところで見なければならないでいる。ウェールズにとってこれは自身への戒めにもなる光だった。もし次があるのなら、その時にこそお役に立てるようにと。

 

 

 

 

 

 

 それは希望だった。この雨を晴らしてくれというこの森に生きる全ての者達の。けれど相手は自然そのもの。やむまでただ耐えるしかないとそう思っていた。

 それは理想だった。夢ばかりでしかないそれを。ただ耐えるだけしかないのだと。そう思う者達に示される掛け値無しの理想を背負う者がいる。

 見るがいい、風を司る龍よ。

 (これ)こそは星の息吹きを束ねるもの、輝ける命の奔流を示すもの。この光こそ理想の証。弱き者達の彼方にあって彼の者こそありと讃えられた《最強の幻想(ラスト・ファンタズム)》。

 過去において騎士達の、今において森に生ける者達の意思を乗せた一撃を常勝の王は高らかに謳う。

 其の名は───。

 

約束された勝利の剣(エクスカリバー)ァァァァァッ!!!!!」

 

 鋼龍はその輝きに茫然とするしか無かった。ただ成す術も無く受け入れるだけ。

 曇天貫くは黄金の極光。

 黄金の光は鋼龍ごと雲を飲み込み天晴の光を呼び込む。

 

「綺麗…」

 

 唯一の観客となったイリヤが思わずそう呟いた。

 

 

 

 

 

 鋼龍は跡形も無く消し飛んだ。

 一仕事終え息つくアルトリアと惚けるばかりのイリヤ。その二人を祝福するかの如く空は青く陽の光が二人を包んでいる。

 ハッと我に返るイリヤ。そうしてアルトリアに向かって突貫し抱き付く。

 

「ねぇねぇ、今の何なの!?凄い綺麗だよ素晴らしいよ!私、頑張ったからご褒美欲しいなチューして良い?チューして良いよね!?」

「いきなり何をするのですか!というか女同士で接吻など貴方まさか…!」

「ムサい男と一緒になるくらいなら綺麗な女の子の方が良いなって思う程度にそっちの気はあるよ!ということでほっぺたくらいなら問題無いよね!」

「ちょ…!とにかく離れなさい!こら!」

「やだもーん、アルトリアちゃんとイチャイチャしたいもーん!」

「子供ですか貴方は…!ああ、もう!」

 

 じゃれあう二人は背の高さも相まって姉妹のようにも見えた。




(久しぶりの)与太話
三人「…(゜ロ゜)」
ババコンガ「ね、ねぇ。あのさ…」
ドスイーオス「今とんでも無いの見たぞ…」
レイア「貴方、今散ってる光の気配があの人間の物に感じるんだけど…」
レウス「この森にいる全員がそう感じてるだろうな。前に手出ししちまった事はあったがあの時の私は運が良かっただけか」
ドスイーオス「やっぱ人間じゃねぇんじゃ…」
レウス「竜、いや龍の気配はしたがこれはそういうのじゃないだろう。もっと別の何か…私には息吹きのように思えた」
ババコンガ「へぇ~息吹きかぁ…って夫さん!?」
ドスイーオス「!?」
レウス「なんだ。今気付いたのか。妻が世話になってるっていうから私も一度顔を合わせたかったんだ。妻共々よろしくな」

 背についてはイリヤはアチ〇子だからイリヤの方がおっきいよ!そして地味に与太話初登場のレウス。
 これで一つの区切りになりますね
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