わけるのはまだ先でございますm(__)m
「ムォッホン!よく来た、勇壮なる騎士よ。ムウロメツより此度の鋼龍討伐の顛末、しかと聞いておる。主のその、大きな力の話もな。改めて儂からも御礼申し上げよう」
ドンドルマ。
アルトリアはイリヤに連れられた先、大老殿にて大長老との面会に臨んでいた。
「大長老殿。私からも御礼を。イリヤを派遣してくださった次第が無ければ私がこの場にいる事は叶いませんでした。改めてありがとうございます」
「はいはい。お二方、挨拶代わりの御礼はそのへんで。もっと話し合う事、ありますからねー」
「うむ。その通りだな、ムウロメツ。ではペンドラゴン殿。貴殿の処遇についてだが、確かハンターになりたいと?」
「ええ。モンスターとの生に触れつつ世界を回ってみたいと考えております」
「ふむ…。ムウロメツ、ハンターの事についてどれだけ教えた?」
「えっと、自然との調和を目指しつつ害になるモンスターを狩るってとこですかねー。基本は依頼を受けてそれをクリアするとかその依頼にも等級があってランクに合った依頼じゃないと受けられないとか」
「うむ。聞いての通り、ハンターには階級制度がある。
「何か不都合でも?」
「貴殿がHR1で収まるような器では無いというところだ。自前の武器防具を所有し鋼龍を討伐してみせるその実力。普通ならHR1からコツコツ修練を積みモンスターを狩り、その素材で武器防具を新しく作り…と一通りハンターをやる中で流れが決まっているのだが貴殿にはその必要が無い。貴殿をそのままHR1に入れてもあっと言う間にG級に辿り着いてしまう。それでは力の釣り合いが取れんし周囲の者達も貴殿を怪しむ事になるだろう。例外を認めた事も無いしな」
「ではどうしろと?」
「…時に、貴殿は人を教導した経験はあるか?」
「一応、経験が無いわけでもありませんが…?」
「良し。であるならば貴殿の処遇は決まった。貴殿には───」
大長老から告げられるアルトリアの試練。それはアルトリア一人の実力では到底成せるものではなくアルトリアがハンターとしての道を歩むのに適した試練だった。
「あれ…?もしかしてここで私とアルトリアちゃんってお別れ?」
「当たり前じゃ!ムウロメツ、さっさと次の仕事場へ行かんか!」
「そんなー!後生ですよー、大長老様ー!」
「イリヤ。別に一生会えないというわけでも無いのです。大人しく仕事へ行ってきてください」
「うわーん!アルトリアちゃんもひどいー!」
駄々をこねるイリヤを後にアルトリアは示された目的地へ向かったのだった。
七日後。
アルトリアは砂上を走る船───砂上船の上で風を浴びていた。
「お客さん、ハンターかい?物珍しく船を見るあたり、随分と遠くから来たみたいだな」
「ええ。見るもの全てが新鮮です。砂の上を走る船とはこういうものなのですか」
「ああ。このあたりの砂はあまりにもきめ細かいんで普通に進もうとすると底無し沼ならぬ底無し砂の中へ引き摺りこまれちまう。それでこういう移動方法になったわけさ」
「なるほど…」
風を浴びるアルトリアにこの商船の船長が声をかける。防具を着込んでいるからか、ただの少女とは見ずにハンターとして声をかけた。
「実質海みたいなもんだからな。砂の中を泳ぎ回るモンスターもいるのさ。今の時期には見かけないがバカでけぇ超大型古龍もいるんだぜ」
「ほう…。それは是非とも相手にしてみたいものです」
船長と楽しく談話するアルトリア。しかし───。
「船長!前方右手にデルクスの群れです!この群れって…!」
「んだとぉ!?左に舵を傾けろ!やつに気付かれたら終わりだ!」
船員の一人から普段では有り得ない一報が舞い込んでくる。やつがこの時期にこのあたりで活動するなど聞いた事が無い。
「船長…?一体どうしたので?」
「ああ、ハンターさんよ、さっき話してたデカブツが何故か近くにいるんだよ。迎撃設備の一つもねぇこの船が見付かったら終わりだ…!」
「なんと…!」
逼迫する船内。必死に
デルクスの群れが姿を消す。その次には地鳴りまで聞こえてきた。デルクスの群れがいた下から砂をその巨大な質量で持ち上げ姿を現す巨躯がある。赤く山のようなその姿。ドリルのようなその角。
豪山龍ダレン・モーラン。
悠々と砂の海を泳ぐ豪なる山はアルトリアのいる商船目掛けて突進する。
「うわぁぁぁ!もうダメだぁ!」
「いえ、諦めないでください。私が何とかします…!」
「いくらハンターさんでも無茶があるんじゃ…」
「私の合図に合わせて船体を左に向けてください。それでどうにかしてみせます!」
「えっ、ちょ、おい!?」
船の先端に立ち聖剣を構えるアルトリア。最初から全力のため風の鞘は解放している。そして───。
「今です!」
「お、おう!」
アルトリアと豪山龍が激突する。豪山龍はその巨大な掘削機と化した角で全てを穿たんとするが───。
「オオオッ!!!」
全力の魔力放出。その龍の因子からなる人外の膂力で以て角を受け止めるアルトリア。船体が左へ大きく進路を変えていたのも手伝ってアルトリアは豪山龍の突進を
船の後方へ流れるように消えていく豪山龍。アルトリアの反撃のおかげかその後の追撃は難しいと悟り豪山龍は砂の中へ消えていった。
「すげぇぞハンターさん!いやぁハンターってのは力持ちなんだなぁ!本当に助かった、ありがとう!」
「あ、いえ、その、こう見えても腕っぷしには自信があるので…」
船長からの礼に苦い顔で応対するアルトリア。実は大長老から魔力放出などの異能を思わせる力の使用を控えるように言われているのだ。理由は目立つからである。良い意味でも、悪い意味でも。
船員達はアルトリアがハンターだという事で納得しているようだ。下手な説明がいらないのでこういう意味では楽である。
不意のアクシデントがあったがむしろこれくらいの困難が無ければつまらない。アルトリアはそう思いこの先の進む道に思いを馳せた。
「ここが…私の新天地…」
大砂漠と遺跡平原の境にある市場、バルバレ。
ギルドの集会所を中心とした市場でその最大の特徴は移動するという事。集会所を含む市場全体がキャラバンでありその性質から地図に載らない市場だという事で有名。世界中から情報が集まるために名を上げようと集まるハンターも少なくない、情報の中心地である。
「確か五番宿の4号室でしたっけ…」
バルバレへ着き商船から降りた後。アルトリアは案内の紙を手にバルバレを歩いていた。もう片方の手には多く荷物がある。渡された資料以外に身一つで来たつもりなのだが商船の船長からお礼として様々な食べ物や物品をいただいたのだ。押し付けられるように貰ったアルトリアは断る事も出来ずにこうして荷物を持ちながらバルバレ市場を練り歩いている。
「…と、ここでしょうか…?」
宿に着き受け付けで店員に確認するアルトリア。どうやらここが大長老より示された場所で間違いないようだ。そのまま店員に部屋へ案内される。
部屋の前に立ち深呼吸するアルトリア。いざドアを開けようとノックしようとしたその時───。
「てめぇのそのスカした面が気に入らねぇんだよ!」
中から怒号が響いてきた。ノックも忘れ慌ててアルトリアがドアを開けるとそこには怯える一人の少女と一触即発といった様子の二人の男性がいた。
部屋はそこまで広くない。部屋の両脇にそれぞれ二段ベッドが設置されており申し訳程度にスペースが中央にあるだけである。定員四人がただ寝るためだけの部屋。そんな部屋の中心で今にも暴力沙汰を起こしそうな雰囲気が漂っている。
一人はハンターシリーズにボーンブレイドを背負った男性だ。身長はおおよそ170cm台、年の頃十代後半だろうか。平時の今では邪魔になるのか頭装備を外している。浅黒い肌に短い黒髪、現実世界で言えばインド系を思わせる顔をしている。その金色の瞳は隣の大男を睨み付けていた。
もう一人も同年代に見える。身長は190cm程の長身。アロイシリーズを着込んでいて同じように邪魔なのか頭装備を外し脇に抱えていて背にはウォーハンマーが確認できる。金髪碧眼とアルトリアと似たような、現実世界では欧米人を思わせるその顔には感情の無い冷たい笑みが貼り付けられていた。
そしてその奥。一つだけ取り付けられた窓の下にウルクシリーズに荒縄鼓砲を抱えた少女が蹲っている。背はアルトリアとほぼ同じ、その幼い外見から十代前半に見える。黄色人といった肌にショートの黒髪は現実世界において日本人を思わせる。その表情は場の雰囲気に飲まれたのか怯えていて目には涙が溜まっていた。
「あ?…なんだよ、部屋間違えてんじゃねぇぞ。こっちは取り込み中なんだ」
「いいえ。間違えてはいませんよ、ヴォルグ・ティーガー。もう片方がプレテオ・ロッツェル、奥にいるのが
「これはこれは。レディに自己紹介する前から名を知られるとは。レディ、こうして会ったのも何かの縁、どこか別の場所で共にお茶をしませんか?」
「その必要はありません。そのような些事をするために来たわけではありませんので」
「えっと、じゃあ、貴方があたし達の待ち人の…?」
「ええ、そうです。私が貴方達三人の教導をする者。ギルドより派遣されました、アルトリア・ペンドラゴンです」
粗雑な印象を漂わせ常に不機嫌な様子のボーンブレイドの男───ヴォルグ・ティーガー。
どこか胡散臭い似非紳士を思わせるウォーハンマーの男───プレテオ・ロッツェル。
とてもじゃないが狩場に出向く事など叶わない、そんな
アルトリアが大長老より受けたハンターとしての特別試練。それはこの三人の
「ちっ…アンタが俺らの面倒を見るために来たハンターかよ。女じゃねえか。ギルドも人材不足かよ」
「これだから平民は能の無い事を平気で垂れ流す。レディに対して失礼じゃないか。何か事情があると思うがね。貴族であるこの僕を見習いたまえよ平民君。いや、君のような頭の出来が悪い者に僕の高貴さを真似出来るとは思えないね、ハハッ」
「てめぇ…さっきから口開きゃ人の神経逆撫でするような事しか言わねぇなぁ…!」
「事実を言ったまでだよ平民君。そのように僕を睨んだところで事実は変わらない。まぁ男として、殴り合いなら受けて立つがね」
「ひいぃ。二人が怖いです…」
今にも喧嘩を起こしそうな二人に溜め息を吐くアルトリア。割って入ってきたかと思うと───。
「あ?なにすん…おわぁ!?」
「レディ、なに…ぐほぁ!?」
「わぁ、ペンドラゴンさん強いです…」
二人の手首を握りそのまま床へと叩きつけた。思わぬ衝撃に二人は痛みに呻く事になる。
「てんめぇ…何しやがる」
「レディ、一体何を…」
「ヴォルグ・ティーガー、18歳。周囲との協調性が無く事ある度に悪態を吐く事から暴力沙汰に発展する事多数あり。プレテオ・ロッツェル、19歳。新興貴族の三男で同じく協調性が無く特に女性問題でギルドに多数の苦情あり。両方ともギルドの観察処分者。そして17歳、御陵香奈は…」
チラリと香奈に目をやるアルトリア。改めて資料を確認するとそこにはさる御方の侍女だったという情報がある。ある意味こちらの方が根っ子の深い問題のようだとアルトリアは嘆息した。
「…東方の国より来たのですか。貴方もまた孕むものがあるようですね。私は貴方達を問題の無いように育て上げるために来ました。喧嘩を諌めたり下らない口上を聞きに来たのではありません。そのあたり、よく耳に刻んでおきなさい」
「くっ…」
「………」
「わぁ…」
悔しげな顔のヴォルグ。苦い表情のプレテオ。そして羨望の眼差しでアルトリアを見る香奈。
アルトリアの前途多難な道筋はまず喧嘩を止めるところから始まった。
(超おまけの与太話。ホントにこれで一旦打ち止め)
ウェールズ「角竜殿。主が行ってしまわれたが貴方はそれで良かったのか」
角竜「良かねぇに決まってるだろ。だが俺は負けたんだ。敗者に出来る事なんざ一つもねぇ」
ウェールズ「貴方としてはそれで納得しているのか…」
角竜「そう言うてめぇはどうなんだよ。あいつ一人を出向かせててめぇはそれで満足なのか」
ウェールズ「本音を言えば我も主に付き添いたい。だが主は我がこの場に残る事を所望した。であれば我はそれに従うのみ」
角竜「ハッ…。脅されたって聞く割りには随分とあいつに信奉してるじゃねえか。古龍がそれで良いのかよ」
ウェールズ「確かに初めはそうだったが…今では主を背に駆ける事が何よりの至福の時だ。あの威光、角竜殿も知らんわけではあるまい。あれが次に放たれる時、その時こそ我の出番だ。我はここで力を付ける」
角竜「ふん…。そりゃあ生きにくい事この上無いぜ」
今回の与太話は執筆途中で思い付いたからこういう突発的な形で載せました。ホントにこれで一旦打ち止めです。
アルトリアがこの世界で普通に字を読んでる描写でしたが基本英語、東方関連で日本語が使われるような世界だと思ってください。なんかここだけご都合主義…。
御陵香奈ちゃんだけ何故か装備が他の二人より良いですがちゃんと理由はありますよ。
次回からはこの三人を相手にアルトリアが奮闘します。