モンハン世界にINしたアルトリアさん   作:エドレア

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エタッテ無いデスヨ(白目)


暗迅蠢動

 昔の話だ。

 覚えの無い場所で、既視感を感じたというだけの。

 何故か私は、そこで雪と黒を幻視した。

 形なんて覚えていない。

 だってその場所に行って連想したのがその二つだけという話。

 そんな曖昧な話を、彼は笑って聞いてくれた。

 …笑っていたはずだと思う。

 まだ、織がいた頃。

 家に繋がる林道で、血飛沫を上げる死体を見た彼はそれでも普通でいてくれた。

 でも。

 織を失ってから起きるようになった疑問が頭の中で蠢く。

 

 

 

 

 

 …あの時、本当に笑っていたのは果たしてどちらだったんだろう…?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そろそろ、かな」

 

 朝に依頼を受けた私は、けれども相手を探す事も無く夜になるまで適当に彷徨いていた。

 相手の話を聞くに昼に動く事は無いだろう。だったら探したところで無駄だ。夜になるのを待ってあちらから仕掛けてくるのを待つ。

 既に日は落ち宵闇が世界を包む時刻。私は地図からも離れた月明かりも届かない山林で相手が来るのを待っていた。

 木々が月明かりを遮るそこは本当に暗闇だ。そこそこ夜目が利く私でも草一つ見るのにすら目を凝らさなきゃいけない。

 どう考えても不利にしかならないような要素しかないけど、私は一切気負う事は無かった。

 と───。

 

「…っ!」

 

 殺気。

 それと同時に何かが飛んできた。その場から飛び退いてそれを躱す。

 

「へぇ、良い苦無じゃないか。暗器も仕込んでるんだ。いよいよもって忍だな、こりゃ」

 

 飛んできたのは人一人なら余裕で貫通するであろう大きさの苦無…に見える何かだった。挨拶代わりなのだろうか、これで仕留めるつもりは無いらしい。殺気は私から離れていった。

 誘われている。ここではないどこかに私を連れ出してそこで仕留めるつもりのようだ。

 

「随分と殺したくて仕方がないみたいじゃないか」

 

 ただの殺気じゃない。人が人を殺したい時にある殺気。野に生きるはずの存在がどうしてそんな人に近いそれを持ってしまっているのか分からないけど。

 ああ、心地良い。思わず笑みがこぼれてしまう。

 

「良いよ、おまえは最高だ───」

 

 私は木々を駆け抜け、踊るようにその誘いに乗った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『やぁ、式。おはよう。今日も気怠げだね』

 

 そいつとは四年前に知り合った。

 家が近所で、私と前に会った事があるからそれを覚えていたらしい。当の本人である私はそんなこと知らないから見知らぬ他人に話しかけられただけに過ぎなかった。

 

『今日は枯れ葉色の着物なんだね。どの色も良く似合っているけれど、今日のは織が好みそうな色だ』

 

 私の家は古い退魔の家系だ。魔を退けるもの。人に仇なす化け物を狩るのが両儀一族の生業。彼らは世の表には出てこない存在であり、それらと同様、退魔である事も社会に隠された闇だ。だからこそ社会から隔絶された家だというのにそいつは容易に私の居場所を当ててきた。曰く、一目惚れだと。

 

『式、君はずっと同じような着物を着ているけれど冬でもそうなのかい?…へぇ、厚着するんだ。ジャケットでも着るのかな』

 

 …普通、関わりの無い人間を相手にする事はない。さっさとお帰り願うかしつこいなら消してしまうのが妥当だろうに、父はあろうことか彼の存在を認めた。何の力も無い、ただの堅気の少年を、だ。そこにどんな意図があったのか知る由は無いけど、正直あいつが家を出入りするのは堪らなく鬱陶しかった。

 

「今日も、ついてくるのね」

「うん。女の子の夜の一人歩きなんて危ないし、言って聞かないならついて行くしかないじゃないか」

「黒桐君、あなた毎回ついてくるけど親御さんには何て言っているのかしら」

「意外だね。式が僕の事を心配してくれるなんて」

「…どこをどう勘違いしたらそうなるのか聞きたくもないけど、あなたはいつも私と親の関係に口出ししているでしょう。私にいつもついていって何も言われないの?」

「そりゃ最初こそこっぴどく叱られたさ。朝帰りだなんて僕のすることじゃないって。ただ秋隆さんが挨拶しに来てくれたり、式のお母さんがうちの母さんと仲良くなったりで今じゃそんなに言われないんだ。むしろ式のお母さんに式の事をよろしくって頼まれる始末だよ」

「…父は?」

「式のお父さんは…何だろう。今でも上手く話せた事は無いしどう思われてるのか分からないけど、嫌われてはいないと思うんだ。じゃなかったら家に出入りするのを許してはくれないだろうし」

「…ふーん」

 

 こんな他愛の無い日常。

 フラフラと、彼と意味の無い会話をしながら適当なところを散歩する。

 両儀の家は、表向きにはこの一帯の大地主ということになっている。当主を継ぐためにさせられた勉強の一つにはここの地理を把握するものがあった。おかげで地元の人間でも知り得ないような脇道や抜け道、裏道を使って夜の散歩を謳歌している…はずだった。

 彼と一緒に散歩をするようになってからはなるべく人目に付きやすい大通りなんかを道に選ぶことが多くなった。彼を守るためだ。ただ、私の意思じゃない。父から下された数少ない取り決めの一つに彼を蔑ろにするな、というものがあるからだ。人目につかないようなところで彼と一緒に『魔』と遭遇してしまえば彼は巻き込まれてしまう。四年前の私に人を守りながら戦えるだけの実力は当時無かった。

 

「式、見てこれ。また、みたい。これで四件目だよ」

「そうみたいね。興味なんて無いけれど」

 

 ふと視界に入った瓦版。そこには最近になって巷を騒がせる事件の内容が書かれていた。私は散歩していて特に周りへの興味を持たないからこういうのは素通りするものだけど彼はそうじゃない。私が俗世の話に疎い分積極的にこうした話題を振ってくる。

 

「うわ…今度は手足切り落として達磨状態だってさ。なんていうか、手慣れてきた感じだよね。殺人鬼だなんて、凄い見出しだ」

「そう。殺人鬼、ね…」

「どうかしたのかい、式?」

「ねぇ、黒桐君───」

 

 

 

 

 

 ───人が人を殺す理由って知ってる?

 

 

 

 

 

 …彼の答えは聞いてない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 着いた場所は森の中にあって木々が無く開けているところだった。ここなら月明かりもちゃんと届く。けど、それは、暗がりにいるやつにとって私を捕捉しやすいという危険要素を示す事案でもあった。

 殺気はここを包んでいる。だというのに、私はその気配を察する事さえ出来なかった。両儀の家で育てられているのならそこそこ腕の良い暗殺者相手でも対応できるはずなのにそれが出来ない。流石と言うべきか、気配を隠す事にあってはあちらの方が数段上の実力を持っているようだった。

 

 私はわざと、奴が狙い易いように中央に立つ。

 左手は鞘に。右手は柄に。

 居合の構え。自己流のそれに柳生のような型なんて無いけれど。

 目を閉じ、静謐に身を委ねる。

 …それは永遠か、一瞬か───。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 刹那に、

 ───蒼の目と紅の目が交錯した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───な、ぜ

 

 血を撒き散らし倒れこんだのは暗殺者の方だった。月下に初めてその姿が晒される。黒に紅の目。ちょうど、今の私と相克するような姿をしていた。右の刃翼から胸にかけて、私が入れた斬撃が走っている。

 

───なぜって、何がさ?

 

───姿を隠していただろうに、おまえは私の動きを関知できた。気配を察したわけでも、匂いを嗅ぎ付けたわけでもなく。どのような手段で私を見たのだ、人間

 

───別に。何となく、識っていただけだよ。それより、もう帰っていい?おまえ一瞬で終わったし。期待外れとはまた少し違うんだけど流石に萎えた。今の一撃くらい、躱してくれれば良かったのに

 

───識っていたとは。ああ、人間とはまた違う者なのだな。貴様の期待など知った事ではないが、結果が事実だ。せめてこの身を看取っていけ

 

 そうして暗殺者は沈黙した。私は何もせずただ月を眺めるだけ。

 こんな終わりだなんて。

 なんて───無様なの。

 せっかく出会えた良い相手だったのに。

 

「ホント、嫌になる。何が嫌かってそりゃ───」

 

 私は虚空に向けて刀を一閃した。嫌な視線を感じたからだ。なら断ってしまえばいい。

 

「覗き見とか、悪趣味。誰だか知らないけど、舐めた真似するのならその目を潰しに行くぞ」

 

 聞こえているであろう警告に恐れをなしたのか視線を飛ばすような気配は無くなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うーん、ばれるようなヘマはやらかしてないんだけどなぁ。何の前提も無しに勘で僕の事を察知していたのかな」

 

 花が咲き乱れる妖精郷。その中央にある荘厳な塔。

 覗き見の犯人である花の魔術師───マーリンは式に対して考察を重ねていた。

 

「それっぽい気配があるからなぁ。一応、見ておくべきだと思ったんだけどまさかたった一回でご破算になるなんて。こりゃ一刻も早く、アルトリアには彼女に会ってもらわないとね」

「再三申したはずだ。不要だと。花の魔術師よ、そこまで急く事では無いだろう」

「まぁキング君の言う通りではあるんだろうけどね」

「同じ境界(くに)の目を持つ者である。単なる理屈は通用せぬ。あの者はいずれ収まるべきところに収まるものだ」

「あー、失敗しちゃったなぁ。ブログを更新しても一番の相手がいないからなぁ。最近は何だか退屈だよ」

 

 …暗殺者と魔術師の一幕である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「戻ったぞ」

「式様!?モンスターは討伐になられたのですね…」

「疲れた。飯、風呂、寝る」

「え、ちょ、式様ー!?」

 

 普段は大人しいくせになんでこういう時だけ五月蝿いんだ。疲れてるんだからせめてもう少し静かな受付を相手にしたい。

 

「ひょっひょっひょっ。ホントは酒でも飲みながらクエストの報告とか聞きたいんだけどね、チミの今の様子じゃ無理そうだね」

「おまえはさっさとくたばれ、酒飲みじじい」

 

 余人どもの五月蝿い声を無視して部屋に帰りベッドに突っ伏す。さっきから苛々が止まらなくてうんざりしている。

 覗き見された件も嫌だがあの暗殺者の殺気が私の心の琴線に触れてくる。あんな殺気を浴びてしまったらモンスターじゃなくて人を───。

 ああ、ダメだ。この思考はかなりいけない。いずれ手にかけるかもしれないけどそれはきっと今じゃない。

 まだ、きっとまだだ。せめてもう一度、彼に会って話せるまで。




えっとですね。遊んでたっていうのがまぁ皆さんお察しだろうと。今後もこんな感じで遊んでいる間にやる感じなので本当私のやる気次第です。次話は勿論書くけどいつ上がるのか全くの不明です
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