モンハン世界にINしたアルトリアさん   作:エドレア

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与太話
ドスイーオス「…畜生。ここまで群れに被害が出るとは」
ババコンガ「全くだ。おいらのとこも大分やられた」
レイア「どうかしたの?二人して深刻な顔してるけど」
ドスイーオス「あんたは知らないだろうけどよ、また余所者が現れて森を荒らしてるのさ」
ババコンガ「そいつが前の紫野郎よりずっと強くてな。見境無しにみんな襲っちまうのさ。おかげで子分の数がすっかり減っちまってよぉ」
ドスイーオス「うちのところも同じような被害が出てて辟易してる。俺らだけじゃなくて他のやつらもかなり参ってるて話だ」
レイア「あ、それなら知ってる。食い荒らすとかじゃなくてただひたすら戦う大猿でしょ?だったら朗報あるわよ」
二人「なにィ!?」
レイア「なんか夫から聞いたんだけどバチバチ光る白い獣追っかけて南へ向かったって」
ババコンガ「あっ…(察し)」
ドスイーオス「…骨、残ってるといいな」

本編始まるよ~


act-6 青天の霹靂

 青天の霹靂、という諺がある。

 意味としては突拍子も無いさま、偶発的な事象を表す際に使われる。青天とは文字通り青く晴れた空を指し霹靂は古語で雷を意味する。雲一つ無い青空から雷が降るのは突発的でなんの脈絡も無い出来事だろう。

 アルトリアは文字通りに青天の霹靂を目撃した。

 

 

 

 

 ある日の昼下がり。

 この日は角竜を相手にする日でもなく午前中に採集も終わらせたアルトリアはアイルー達が作った櫓で森を見渡していた。セレットはいない。増え続ける避難アイルー達のために相談役の老アイルーと打ち合わせをしているのだ。当初の予定よりもずっと数が増えたここはまだまだ開拓の余地がある。仕事が無いアルトリアはこうして村の警戒に当たる他無かった。いつ襲撃があっても対応できるように凛々しく佇むその様子は避難してくるアイルー達にとって希望そのものだが要はただ警備員である。自宅ではなく集落全体を警備しているので何も問題は無い。

 

「アルトリアさん終わったニャ。やっぱりどこもかしこも資材が足りないニャ」

「やはり、と言ったところでしょうか。せめて良質な鉱石が手に入ればいいのですがね。聞くに、北の山脈には良質な鉱脈があるのでしょう?」

「でも集落から遠すぎるのが頭の痛いところだニャ。鉱石そのものも重いし何か手軽に運べる手段があればニャァ…」

「私なら重量を意識する事はあまり無いですが距離の問題はどうしようも無いですね。皆さんより早く行動できますがそれでも行きと帰り、採掘する時間も考えると六日ばかりかかってしまいます」

 

 会議が終わったセレットが報告に来る。

 六日も集落を空けるのはあまりにも危険だ。この集落で戦える力を持つのはアルトリアしかいない。もしアルトリアが集落を離れている間にモンスターが襲えばその時点で詰みだ。長期間アルトリアが集落を離れる事はできない。

 と───。

 

 突如として青天に光が迸る。遅れて轟音も聞こえてきた。一回二回ではなく何度もその現象は起きている。轟く不自然な雷鳴に集落は一時パニックになった。アルトリアの表情も強張っていく。

 

「セレット、皆に落ち着くよう指示を出して下さい。私が出向くので心配はいらないと」

「わ、分かったニャ。アルトリアさんはどうするのニャ?」

「現場に急行し調査します。マタタビを持って行くのでセレットは指示が終わり次第匂いを追って私の方まで来て下さい」

「了解だニャ。くれぐれも無理はしないで下さいニャ」

 

 アルトリアは現場に疾駆する。北側から聞こえてきたそれは集落からさほど離れてはいない。仮にモンスターの仕業なら集落に危険が及ばないよう排除する必要がある。アルトリアは自身の警戒レベルを引き上げて調査に赴いた。

 

「確かこの辺りだったと思うのですが…」

 

 火災の影響で高木が倒れ草原になった場所。周囲は火災を免れた木々で囲まれており時折モンスター達が一時的に身を休める場所として活用している。その地面にいくつかの不自然な焦げ跡があった。この場所で間違いは無いようである。

 アルトリアが聖剣を構える。茂みに何者かの気配を感じたからだ。やがてそれは茂みの奥からゆっくりと姿を現した。

 

(ユニコーン…!?)

 

 刺激しないために大声を張り上げる事は無かったが内心は驚愕で一杯だった。異世界に降り立ち全てが未知に溢れたこの世界で初めて出会えた既知の存在がまさかの幻想種である。何が起こってもおかしくはない。アルトリアは最大限の警戒をし───直後に様子がおかしい事に気付いた。

 幻獣キリン。個体数が少なく広範囲を移動するが故に幻の異名が付いている。古龍種に属し雷を操るその力は一般的なモンスターと比べて天災と恐れられるに相応しい物だが今アルトリアの目の前にいるキリンからはそのような重圧を感じない。生半可な武器では傷すら付けられない強固な皮膚には何者かに殴打されたのか鬱血し血を流している。アルトリアに向けて威嚇の意を示しているのだろう。角に雷光を溜めそれを彼女に向けているがあまりにも弱々しい光で危険を感じさせるような状態ではなかった。むしろキリンの方が危篤にある状態である。

 威嚇のために使った力で最後だったようだ。ふらふらと体を揺らしたかと思うとそのまま地面に倒れこんでしまった。まだ息はあるようだがこのままだと遠からず、黄泉の国にその魂を渡す事になるだろう。

 

「アルトリアさ~ん、指示終わらせてきたニャ…ってそいつは!?」

「説明は後です。このユニコーンをなんとか連れて早く撤退してください。可能な限り治療もお願いします」

「え、えええ!?」

「早く!大きいのが来ます!」

「な、なんとかしてみるニャー!」

 

 アルトリアは察知していた。茂みの奥より気配を隠す事無く近付いてくるそれ。あまりに強力なその気配にアルトリアは閃光を使う目的ではなく純粋に攻撃する手段として風の鞘を解放した。気配が向かってくるのに合わせて全力の魔力放出も込めた、黄金の一撃を前方に向かって繰り出す。気配の主はアルトリアの事を把握していなかったのだろう。完全な不意討ちとなったそれは彼の者の左角を一撃で粉砕してみせた。その姿が明確になる。左の目がアルトリアの斬撃で使い物にならなくなっていた。キリンとの戦闘で既に興奮状態へと達していたのか勇壮たる黄金の毛がその身を染め上げている。特に目に付くのは筋骨隆々としたその剛腕。

 金獅子ラージャン。

 キリンと同様、目撃数が少ないモンスター。ただしその所以は金獅子自身の超攻撃的性質による。姿を見て無事生き延びる事自体が極めて稀でその戦闘能力は一般的なモンスターを大きく上回り古龍種とも肩を並べるとされる。古の文献にもその名を残すなどあらゆる意味で規格外な存在。この金獅子はキリンを捕食するために追いかけまわしていたようだが戦えれば何でもいいのだろう。自身の角を砕いたアルトリアを標的にしたようだ。そのまま馬鹿正直にアルトリアへ殴りかかる。

 

(なんという膂力…!)

 

 金獅子の殴打を聖剣の腹で受け止めたのだが尋常ではない力をみせる。あの狂える大英雄にも迫りかねない。今まで散々角竜の突進を受け止めてきたアルトリアだったがこれ受け止め続けるのは正直酷だった。たまらずアルトリアは受け流し横に回避する。すると今度は近くの木を引っこ抜いてそれを得物にぶん回し始めた。リーチが伸び攻撃範囲が更に広くなる。アルトリアからしたら厄介極まりない。膂力もそうなのだが攻撃速度が速すぎて反撃する活路が見出だせないのだ。最初の一撃こそ上手くいったがその後の主導権は金獅子に握られていた。

 

「くっ…!」

 

 このまま防戦一方では埒が開かない。小柄な体格を活かし腹に潜り込む。潜り込んだ勢いで腹を切りつけるが───。

 

「なんだというのだ、これは…!」

 

 聖剣の一撃があまり効いていない。先程の会心の一撃は弱点に当たったためあまり気にしてはいなかったが今の黄金の刀身からは火と雷が吹き上がっている。それが金獅子の肌を焼く事無く散っていた。

 

(もしや、風王結界を纏っている時とそうでない時で差があるのか…?)

 

 一か八か、試してみる価値はある。風を刀身に戻し再び殴打を受け流し、その隙に切りつけてみる。今度は聖剣がより深く金獅子に食い込んだ。氷が傷口を侵食している。その感触を嫌った金獅子がアルトリアから距離を取る。ここにきてようやくアルトリアは今の聖剣の特性を把握する事となった。

 

(ならば…これはどうか…!)

 

 金獅子がアルトリアの様子が違う事を察知したのか先程のように突っ込んできたりはせずに光弾を吐いてきた。それに合わせて撃ち出す。

 

風王鉄槌(ストライク・エア)ッ!!!」

 

 刀身を隠すために存在していた風の鞘が一挙に集約し撃ち出される。風の砲弾は光弾を突き抜けそのまま金獅子に直撃した。アルトリアに遠距離攻撃があるとは思っていなかったのだろう。金獅子はまともに喰らい、風が生み出す氷の刃に襲われた。

 

(雷が効果を成さないところを見ると氷が有効なようですね。何らかの属性が聖剣に宿った…?)

 

 この一撃で勝負の主導権はアルトリアに移された。二度も弱点に攻撃を入れられた金獅子はその憤怒を隠す事はしなかったが勇壮さは衰えている。まだ勝負の行方は決まっていないが誰が見てもアルトリアが優勢なのは明らかだった。

 金獅子の進退如何に、という具合である。ここで逃げるのなら追いはしない。また襲ってくるかもしれないが深追いしたところでもし集落を別の脅威が襲っていたら対応できないからだ。

 

 え、と声をあげるアルトリア。知った気配がこっちに近付いてきている。何故、という疑問は湧くものの、直感で意図を察し金獅子の注意をこちらに引き付ける事にした。満身創痍である金獅子は別の存在が近付いている事など知らないのでアルトリアの動きに対応する他無い。金獅子がアルトリアに向かって飛び出そうとした瞬間、角竜が横から突然現れ突進で金獅子を空の彼方へ突き飛ばしていった。分かっていた事だったがとんでもない絵面である。角竜はアルトリアに一つ貸しを作れたのが嬉しいのか所謂ドヤ顔を彼女に晒している。ハンターやギルドの職員が見れば卒倒物の図だろう。本来ならいくら強いといっても通常の枠に収まる角竜が古龍級モンスターの筆頭である金獅子を不意討ちとはいえ突き飛ばす様子は驚きを通り越して滑稽ともいえた。

 

「アルトリアさん無事かニャー?」

「え、ええ。とりあえず危難は脱しましたが角竜は一体どうしたのですか?」

「集落まであの白いモンスターを運んでる時にすれ違っていきなり角を突き付けられたニャ。角竜も雷の出所を探してたみたいで身振り手振り頑張ってアルトリアさんのいる方示したらそっちに突っ走っていったニャ」

「なるほど…」

「耳が良いっていうのが角竜だし集落まで聞こえてきた雷鳴をこいつが聞いてないはず無いニャ」

「ふむ…。ところで、あのユニコーンの容態はどうですか?無理を言った私が言うのもなんですがよく運べた物ですね」

「(ユニコーン…?)運ぶというか地面を引きずっていく形になっちゃったニャ。あれくらいなら何とかできるニャ。なんかジジ様が古龍ニャー!とか言って大騒ぎしてたけど集落のアイルー達に看てもらってるニャ」

「は、はぁ。それはまぁありがたいというか…」

 

 時に大タル爆弾Gを抱えてモンスターに特攻するのが彼らだ。可愛らしい外見とは裏腹にその小さな体には秘めたる力が隠されている。

 

「ところで角竜は…あ、向こう行っちゃったニャ」

「私と戦うのが目的ではなく雷が煩いだけのようでしたからね。雷鳴の犯人は大猿ではないのですが…そこはまぁ良しとしましょう」

「もうあの大猿は来ないのかニャ?」

「私との戦闘で大分疲弊してましたしそこに角竜の突進も加わったのですから早々に復帰するのは難しいでしょう。しばらくは問題無いかと」

 

 集落に戻りキリンの様子を確認する。キリンはアルトリアの家の前で全身に塗りたくられたネムリ草のエキスで暴れださないよう眠らされており薬師の技術を持つアイルー達に看病されていた。回復薬も使われたのか独特の薬品臭が辺りに漂っている。そんなアルトリアに切迫した様子で詰め寄る者がいた。集落を纏める老アイルーのジジ様だ。他に名前があるはずなのだが最高齢なのもあって集落ではこれで通っている。

 

「かなり慌てている様子ですが…何を言っているのでしょうか?」

「えーと、こいつは古龍のキリンっていうモンスターで雷を呼んだりしてとても危険なやつらしいニャ」

「古龍?これが竜種なのですか?」

「アルトリアさんの言うリュウシュってのが何を指してるのか分からニャいけど古龍ってのは総じて危険でいるだけでその地域の環境も変えてしまう天災そのものみたいニャ奴らの事を言うニャ。あと生物的によく分からニャいのも共通した奴らの特徴だニャ」

「えっと…。危険…なのですか?」

「う~ん。様子を見る限りだとそんな感じじゃないのニャ…。アルトリアさんは何か考えでもあるのかニャ?」

「ええ。飼い慣らしてみます」

「ニャ!?」

「上手くいけば高速で移動する手段になりますし集落の事を認識してくれるのなら私がいない間の自衛手段にもなります。出たとこ勝負になりそうですがやる価値はありそうです」

「えぇ…。古龍を飼い慣らすって…」

 

 とんでもない構想を平然と言うアルトリアに呆れるセレット。見た目はほとんど馬なので馬具を付けて躾が出来れば有用性はあるだろうがドゥン・スタリオンやラムレイのような躾が果たして出来るだろうか。アルトリアの構想をセレットがジジ様に通訳しているが今一つ反応は良くない。古龍はそもそも自然そのもので飼い慣らすという発想は異世界人であるアルトリアだからこそ思い付く物だ。暴れだしたらそれはそれで力で抑えつければいいし最悪切り捨てれば集落に被害が及ぶ事は無いだろう。

 

「まずは特製の馬具を用意しないといけませんね。全身に電気が流れているようですし絶縁性質を持つ素材が欲しいです」

「それなら森にゲリョスがいるからそいつを狩って皮を集めればいいニャ。光る物に目が無い習性だから鉱石だったりピカピカ光る物を使えば上手く誘き寄せられると思うニャ」

「了解しました。日が暮れる前には戻ってきます」

(アルトリアさん、ニャんかウキウキしてる…?)

 

 毒怪鳥ゲリョス。全身がゴム質の皮で包まれた鳥竜種のモンスター。体格の割に臆病で毒を吐いて外敵を撃退する特徴を持つ。ハンターからアイテムを盗んだり死に真似をしたり閃光を放ったりと、強くは無いが厄介というような動きをするのでハンターからは嫌われている。スタミナがほぼ無尽蔵というのも特徴の一つでその身から採取できる特殊な体液は薬の材料になる。

 アルトリアは実際、キリンを飼い慣らす事を楽しみに思っていた。馬に乗り地を駆ける。特別な目的が無くても爽快感を味わえる物だろう。ましてやアルトリアは経験者。並の者より乗馬の楽しさを知っている。

 言葉通り、アルトリアは日暮れ前に帰ってきたがその両手には過剰とも思える程ゴム質の皮があった。気合いを入れすぎたようである。

 

 

 

 夜。

 篝火を焚いてアルトリアが付きっきりで看病する。怪我が余程酷かったのか薬がよく効いているのかキリンはまだ目を覚まさない。いつ起きるとも知れないのでこうしてアルトリアが寝ずの番をしているのだ。

 

(貴方にとっては勝手な話でしょうが貴方を見て郷愁の念を覚えたのです。嬉しくて、でも、ほんのちょっと悲しくなるような何かを。だから貴方の名前は───)

 

 今日はこの世界に来て一番精神を使った日だとアルトリアは思う。根拠は無いはずなのに今の内から共に地を駆け回れるものだと楽しみで仕方がないのだ。

 

(貴方の名前は、ウェールズ)




与太話
レイア「なんか森の上をぶっ飛んでった奴がいるわね~」
ドスイーオス「ハッ!ざまぁ見ろってんだ!この森で調子に乗るようなアホはみんな南のあの二人にシメられる事になるんだぜ!」
ババコンガ「なんにせよ、森が平和になってくれて良かったよ…。これでオイラもゆっくりできる」
レイア「そういやさっきあの青い人間が毒鳥野郎を狩りまくってたけど何かするのかしら?」
ババコンガ「さぁねぇ。人間のやることなんて考えても分かるもんじゃないしなぁ。噂じゃあの大猿が追っかけてた白い獣を捕まえたみたいだしまたなんか企んでるんだろうねぇ」

私がこの小説を始めてやってみたかった事の一つが達成…されようとしてます。
あとラージャン弱くね?って思うかもしれませんがそりゃ弱いです。激昂も極限化もしてなければ赤いオーラ出してるわけでもないノーマルなラージャンなのでディアの助太刀が無くてもいけました。
次回は…予告するまでも無いですかね
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