昔からオカルトチックなことは信じていなかったが実際に体験してみると信じざる得ない。そう、俺は転生したようだ。
ー小さい頃は魔法少女に憧れていた。
男の俺がこう考えたのは小さかったからだ。小さな俺はテレビに映る魔法を使う少女が幾たびの障害を乗り越えて日々人助をする姿にお焦がれを抱いた。なぜ、男の子なのにヒーローじゃないのかは今の俺には分からない。恐らく、偶々テレビに映っていたからだとは思うのだが……
おもちゃ屋に行けば母に魔法少女グッズを買って欲しいと強請る。買ってもらった魔法少女ステッキを振り回し悪人(父)を懲らしめる。そんな両親はもういない。
俺が中学1年の時だった。
その日は俺の誕生日で夕飯を一緒に食べるから早く帰って来いと言われていた。しかし、俺は寄り道をしてしまった。今を思えばこの行動が運命の分かれ道だったのかもしれない。漫画の最新刊が発売だった事を思い出し家とは反対方向の本屋に寄って帰ったのだ。家が近くなると何故だか人だかりができていた。
『残念ね……。火事ですって……。』
まさかと俺は人だかりを掻き分けて進む。優しく俺が悪い事をしたら、ちゃんと叱ってくれる母。いつも忙しくしているが話をする時は目線を合わせて真剣に聞いてくれる父。
そこには何もなかった。
あるものは自身の後悔だけだった。
1人になってから10年。
俺は無気力に生きてきた。好きだった魔法少女もあれ以来見るのも辞め、唯々無気力に生きてきた。でも……
「もう、疲れたよ。」
俺がいるのは駅のホーム。
あと、2分で次の電車が到着する。俺は何のために生きてきたんだろうか。自分に問いかけても答えは出てこない。昔は魔法少女に憧れて否、魔法少女みたいに誰かの救いになりたくて、今の俺みたいな奴を助けたかったから、こんな人に将来なりたいと思っていたから見てたのかもしれない。
「救って欲しいな……」
『まもなく、1番線に電車が参ります。黄色い線までお下がりください。』
俺はオカルトチックな事は信じていない。
でも、生まれ変われたら今度は人の助けになるように生きていこう。ゆっくりと体を前に倒し目を閉じた。
っ!
突然の音に目を覚ます。あのマイクの音には未だになれない。今後も慣れるつもりはないが……
しかし、此処は何処だ?
俺はホームから……
「えーと、大丈夫?甘崎くん?」
真横から声が聞こえる。
「具合悪いなら先生呼ぶよ?」
直ぐに問題ないと答えるが、未だに混乱している。まず周りを見渡して見ると此処は学校の体育館であることに気づく。舞台の横にはご丁寧に入学式と書いた幕が吊るしてある。さらにこの場所は来賓席でも保護者席でもない、生徒席だった。
「ほんと、さっきからどうしたのよ。頭でも可笑しくなったの?」
先程とは別の女の子が話しかけてくる。
綺麗な金髪だ。ハーフだろうか?
「なによ!さっきも自己紹介したじゃない。私はアリサ、アリサ・バニングス。その歳でボケたんじゃないの?」
自己紹介したのか?ひとまず頷いておく。
「アリサちゃん、さっき知り合ったのにもうちょっとね?私のことは覚えてるかな?ずずか、月村ずずか。ずずかって呼んでくれると嬉しいな。」
「よろしく、月村さん。」
「名前」
「ずずかさん?これで勘弁してください。」
横ではアリサがムスッとしている。触らぬ神に祟りなしだ。
「私には挨拶はないの?」
「……よろしく、アリサ。」
「///」
「アリサちゃんてば顔赤くしちゃって!」
「もう、ずずかってば!」
『そこー、校長の話がつまらんからって話し声がデカいぞ!もう少し考えて喋れ!』
少しおかしいが注意されたので体勢だけを整えて今の状況を考える。まず、俺は10歳ほど若返っているようだ。鏡を見るまで確証はないが古傷が無くなっている。そして、10年前と言えば……
俺は保護者席の方に目を向ける。俺にそんな資格があるのか分からないが出来るのなら。もし、この世界にもまだ生きているのなら。俺は決意を胸に、つまらない校長の話に耳を傾けた。
ー俺は転生したようだ。
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