第1話 出会い
フィオーレ王国。そこは魔法と呼ばれる力が溢れていて、市民生活にまで浸透するほど根ざしている。この世界では魔法を仕事や生業にするものもいて、彼らは集まってギルドをなし、生活を送っている。これより始まるは、そんなギルドにいる不思議な力を持つ獣人の少年とギルドの仲間たちが織り成す物語
784年、ハルジオン港の近くの駅では、乗り物酔いを起こした青年ナツの近くには青いネコ、ハッピーと大柄の青年ジンヤが降り立っていた。
「あの、そちらのお客様は大丈夫ですか?」
「あい、いつものことですから」
「お、おお…」
「すまない、こいつは担いで行くから」
あまりにナツの酔い方が酷いからか駅員が心配そうに見つめていたが、いつものことなのでジンヤが担いで駅から出て街中に繰り出した。
「もう、やだ…まだ揺れてる」
「それヤバイね」
「ここにイグニールがいるかもしんないだろ?しっかりしねえか」
「イグニール以外に火の竜なんていないもんね」
ふらふらと歩くナツに呆れながらも目的の相手を探しにここまでやってきたのだ。人混みを歩いていると、あちこちから女性たちが広場に向かって走っていくのが見受けられた。
「サラマンダー様が来てるわ!」「サラマンダー様ー!」
「噂をすれば影だな」
「待ってろイグニール!」
「早いよナツ〜!」
会いたいと思っていた相手かもしれないと、ナツが急に復活し、人混みを掻き分けるように突っ込んでいった。
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「あんた、いい加減にしなさいよ!」「「そーだそーだ!!」」
「そう怒らないでくれ。特別にパーティに呼ぶからみんな来てくれ」
集まった人々を遠くから眺めていると何か失礼なことでもしたのだろうか、ナツが吹き飛んできてジンヤの目の前で倒れた。もう一度集団の中央を見るとキザな男が火の魔法を使って離れていくところを見かける。
「だめだったね?」
「完全にニセモンだったし、なんかムカつくヤローだったなー」
「何やってんだ、お前」
「まったくいけすかないよね、ああいうの。ありがとう、助けてくれて」
「「「???」」」
振り返るとそこには綺麗な金髪を持つ少女が笑顔でお礼を言っていた。
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場所は変わって近くの食堂に来ていた4人は大量の食事を挟んで自己紹介を兼ねて話し合っていた。この少女、ルーシィは魔導師らしく、魔導師ギルドなどの話をしていく。
「へぇ、
「
「あはは、ナツにジンヤだっけ?2人とも落ち着いて食べていいから、ね」
腹が減っているのかただの大食漢なのか、目の前にある食料がどんどん減っていき、流石にルーシィも苦笑いで見つめているしか出来ない。
「それにしても、あの男。今は発禁になってる
「むぅ」
「私も早くギルドに入って仕事したいなぁ。なんたってギルドは魔導士の憧れの場所でみんなから頼られてる様なすごい人たちでね…」
「よく喋るね」
「こんな喋る子久し振りにみたよ」
どうもギルドに入ってあちこち冒険したい様子で、3人とも口を挟む余裕がないほどに熱弁してくる。一通り話し終えて冷静になったのか、何故この街にナツたちが来たのかについて質問してきた。
「あ、イグニールか?この町に来たって話だったんだけどなあ」
「あい、完全にはずれだったね」
「人探し?」
「「いや、ドラゴン」」
「そ、そ、そ、そんなの街中にいるわけないでしょ、あんた達全員バカなの?!ちょっと、今気づいたって顔揃ってするな!」
すっかり失念していたと言わんばかりに驚いた顔をしたのを見て思わず突っ込んでしまった。こうして楽しいひと時を過ごした少年少女たちはここで別れることとなった。
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「そういえば、あの船でパーティやってるみたいだね」
「うぷっ、想像しただけで吐きっ…」
「しっかりしてくれ」
外に出てみるとすっかり日が暮れ、夜の帳が下り始めている。街の高台から海を見下ろすと、昼間に会ったサラマンダーとやらが乗っている船が少し沖合に浮いているのが見えた。
「ねぇねぇ。知ってた?あの船で有名なサラマンダーがパーティやってるんだって」
「サラマンダー?」
「知らないの?なんでもあのフェアリーテイルの魔導士なんだって」
「そんなに有名なら私も行けば良かったかも」
近くを通った女性たちのその言葉に反応するように、肩が動く。
「フェアリーテイルの魔導士、あいつが?」
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その船ではサラマンダーことボラがルーシィを騙し、奴隷として隣国に売り捌こうとしているところだった。
「もはや君は私からは逃れられない。ボスコまで来てもらう。勿論フェアリーテイルの話もなしだよ」
「(こんな…こんなこと...)」
「さあ、奴隷の烙印を…」
「最低じゃない…」
憧れのギルドに入れると思っていた彼女は悔しさと己の無知さに涙を流した。ボラが奴隷の烙印を押そうと熱した焼き鏝を持ち上げた瞬間、船の天井が壊れ、そこから1人の男と大きな獣が現れた。
「昼間のガキか!?それになんだあの白い虎みてぇのは!」
「ナツ!なんでここに?…ええ!?あんたこんなの飼ってたの?!」
『虎じゃねえよ俺。あ、虎か』
「えっ、ジンヤ⁉︎」
突然現れた侵入者に驚く声が響く。なにせ虎のような風貌の獣が言葉を喋り、その背にはナツが乗っていたからだ。ボラもルーシィも2人に面識があるから余計に戸惑ってしまう。
「あ、ルーシィ発見!とりあえずつれてくね」
「飛んでる!?しかもなんで羽が!?」
「これも魔法ですから」
上空には羽の生えたハッピーがおり、一瞬にして驚くルーシィを連れ去っていった。
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「ふー、ふー。ようやく落ち着いた」
「(岸まで流れたか。ルーシィ何やったし…)」
「2人ともまだ無事!?」
「あー、ナツが酔ったこと以外は大丈夫だ」
気づけば何かに押されるように船が岸まで戻され、揺れもかなり収まっていた。その原因を作ったルーシィとハッピーは2人の無事を確認するためにわざわざ部屋まで戻ってきたのだ。そんな彼らに怒りを覚えながらもボラは挑発するように悪どい笑みを浮かべている。
「ふむ、勝手に侵入してくるとは感心しないよ?」
「お前か、例のサラマンダーてのは」
「フェアリーテイルの魔導士なんだってな?よぉく面みせてみろよ」
「だから何度言えば良いんだ?俺がサラマンダーだよ」
肩を竦めるボラを睨みつける両者は上着を脱ぎ捨てた。そして向かってくるゴロツキどもを思いっきり殴りつけ、声を張り上げた。
「俺はフェアリーテイルのナツだ、テメェなんて見たことねぇ!」
「同じくジンヤだ。この通り、ナツと同じギルドのもんだ!この紋章を見て、文句は言わせねぇぞ!」
「えっ、2人ともフェアリーテイルの魔導士なの⁉︎」
「腕と脇腹のあの紋章、まちがいない!」「やばいよ、ボラさん!」「そ、その名で呼ぶな!」
各ギルドごとに刻まれる紋章がナツの肩に、ジンヤの脇腹に堂々と妖精の紋章が付いていた。
「ほぉ、紅天のボラか」
「確かタイタンノーズを追い出されてたね」
「あぁ、あいつか」
かつて犯罪紛いの行為に手を出し、ギルドを破門されたこの男は金儲けのために人身売買にまで手を出していたのだ。そんな言外に侮蔑の言葉を受けたボラは激昂し、炎をナツめがけて放った。
「くそ、テメェらのせいで全て台無しだ!これでもくらえ!」
「ナツ!」
「あれくらいなら、大丈夫だルーシィ」
「ナツの魔法は特別なんだ」
「ど、どういうこと?2人は何であれを見て平然としてられるの?!」
「本人が平然と炎食ってんのにこっちが何を慌てる」
「えっ?えええええ!?」
慌てたルーシィを宥め、炎をみると徐々に小さくなり、ナツが食らっているのを見て再び驚いていた。ボラは慌てるあまりにその場でへたり込んでしまう。
「炎食ったら力が出た。行くぞぉ!」
「ハッピー、ルーシィ、離れるぞ。あいつの魔法は強くて危険だ」
「炎食べたり、炎で殴ったり。本当に何なのあれ」
「あれは竜を倒すための力だよ」
「イグニールが教えてくれたんだってよ、滅竜魔法」
「なんで竜が自分を倒すための魔法を教えたんだろう」
「さあな、今となってはわからない」
ゴロツキどもを相手に一騎当千の暴れっぷりを見せるナツをよそに、先に離れて街に戻っていく。そして数分後にはなぜか港がナツのせいで壊滅しており、犯罪者どもが全員のされていた。
「ナツあんた暴れすぎ!なんで町が壊滅すんのよ!」
「こりゃやべえな、軍隊が来てやがる。追いつかれる前に逃げるぞ」
「ルーシィ、お前も来いよ!俺たちのギルドに来たかったんだろ?」
「…うん!」
こうして1人の少女との出会いがギルドを大きく変えていくのだった。
はじめまして。《ぽおくそてえ》です。
案外小説って難しいなと実感した1話目です。なんか地の文が難しくて今回は冒頭除きほぼ無しにしました。もしかしたらまたこういう形式になるかもしれないです。
これからも当作者《ぽおくそてえ》をよろしくお願いします。