それではゆっくりしていってね。
第53話 気持ちを伝えに その1
あれからギルドを離れ、船に乗ってハルジオンに向かっていた。一緒に戦った他のギルドはそれぞれのあるべき場所へ帰っていった。
「漸く帰れんのか、長かったな。2日前に出たばっかなのに1週間も戦ってた気分だよ」
「確かにきつかったな。よく生きてたな、俺たち」
「体ボロクソだがな。やれやれ、ポーリュシカにどやされそうだ」
途中でナツにかけていた酔い止めが効かなくなったりとトラブルがあったものの、なんとか新しい仲間を連れてくることができた。
「おい、マカロフ。帰ったぞ」
「おお、無事じゃったか!心配したぞ!」
「お帰りなさい。あら?可愛らしい子たちね」
「今日からここに入るウェンディとシャルルだ」
「わぁ、本物のミラジェーンさんだ!綺麗だね、シャルル!」
「まぁね」
「うふふ、褒めても何も出ないわよ」
今回の任務の報告をマカロフにしているうちに2人を紹介してもらうためにミラに預けた。
「仕事はどうじゃった?」
「大怪我したり、ケットシェルターがなくなったりドタバタしたが、連中は全員捕まったよ。まあ及第点かな」
「すまんな、危険な仕事を任せて。とにかく2人は歓迎しよう。新たな風が吹くと信じてな」
「そうだな」
皆に話しかけられて楽しそうにしている少女を2人は暖かく見守っていた。
「私、天空魔法が使えるんです。天空のドラゴンスレイヤーです…」
「「「…」」」
「(信じて…もらえないかな?)」
「「「うおおお!すげぇ!」」」
「え?」
「ドラゴンスレイヤーか!」「これでギルドに3人もいるぞ!」「珍しい魔法なのにな」
「(良かった。受け入れてもらえた)」
「皆の者ぉ、今日は宴じゃぁ!仕事は無しにして飲みまくるぞぉ!」
「「「「おぉおー!!!」」」」
普段より元気のいい掛け声が上がり、どんちゃん騒ぎになっていく。
「どうだ?気に入ったか?」
「はい!楽しそうなとこで良かったです!」
「それは重畳。酒は飲めないだろうけど楽しんでね」
「ありがとうございます」
他のメンバーに話しかけられた2人から離れて二階に上がると珍しくミストガンが黄昏ていた。
「今空いてるかな?」
「…彼女が来るなんて思わなかった」
「あ?ああそういうことか。声かけても良いんじゃないのか?」
「時期尚早だ」
ローバウルが言っていた男の隣で酒を飲み、下の騒ぎを聞きながら話しはじめた。
「…例の仕事、まだ続いてんのか?」
「そういうことだ。最近は頻度も規模も上昇している」
「あの子待ってるぜ、話したら喜ぶぞ。力がいるなら貸すよ、『家族』としてな」
「……ありがとう。ではな」
そう呟き、霧のように消えていった。宴の喧騒はまだまだ続く。
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そして次の日。
「ねぇジンヤ。あなたの誕生日いつだったかしら?」
「んー、去年も聞いてなかったかミラ?今日だよ今日。ああそうだ、何もせんでいいよ。どうせ祝う物好きな奴なんていやしねえさ」
「どうかしらね?意外と近くにいるかも?」
「どういうこった、そりゃ?」
「教えてあげない。それよりやることがあるんじゃないの?」
「はぁー、分かったよ。仕事行ってくる」
渋々引き下がり、目の前の昼飯をかきこんで10年クエストを抱えてそそくさと席から離れていった。その席にそわそわしながらやってきたルーシィに先程のことを耳打ちする。
「うまく聞き出せたわよ、今日だって」
「ごめんなさいミラさん、勝手なこと頼んじゃって」
「別にいいわよぉ。それにしても誕生日プレゼント渡したいなんて…ふふ、そこまで行ってたのね」
「ミラさんまで…やっぱりそんな風に見えるんですか?」
「まあねぇ。あんなに目で追ってたりしたら誰でもそう思うわよ。それにデートまでしてるなら、尚更ね?」
そこまでバレているのかと顔を真っ赤になってしまい、湯気が出るかと思うほど熱くなるのが分かる。
「気になってるんでしょ?彼、結構堅いから、どんどんアタックしなきゃ落とせないわよ」
「あい、頑張ります」
「その意気よ。聞きたいことあったら何でも言ってね?」
「あの、プレゼントって何を渡せば…」
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町の喧騒も鳴りを潜めはじめ、そろそろ雀色時になろうかとしていた。そんな時にジンヤは1人、仕事を終えて街をあてもなくぶらついていた。
「(少し風が冷たくなってきたな…)酒買って帰るか…」
「こんなところで何やってるんですか?」
後ろから聞き覚えのある声がして、振り返るとウェンディが買い物袋を持って歩いてきていた。
「お、ウェンディか。仕事終わりにちょっとな。で、仕事はうまくいったか?」
「はい、グレイさんがいたからどうにか。そういえばジンヤさんあの後、怪我の方はどうですか?」
「おかげさまでどうにか仕事に行けるくらいにはなったさ。ありがとよ」
「無理しないでくださいね」
「…善処するよ」
ギルドに2人で帰るとミラが慌てた顔でこちらを呼ぶのが見えた。いつものほほんとしている彼女にしては珍しい。カウンターの近くまで行き、とりあえず落ち着かせることにした。
「どうした、緊急クエストか」
「それが、ルーシィが…」
「あ?あいつ、なんかしたの…ぐぇっ!」
「ちょっとぉ、なんでこんな遅いのぉ?」
いきなり背中が重く感じ、無理やり首を回してみるとヤケ酒でもしてたのか、顔を真っ赤にして睨みつけているルーシィが絡んできていた。
「いて、いてて!とりあえず離してくれってばよ」
「うっさい。せっかく色々やってたのに遅いのが悪いのよ」
「なんだこりゃ、なんだこりゃ、なんだこりゃ。ヤケ酒かこりゃ、馬鹿力かこりゃ、カナ…お前のせいかこりゃ」
「あたしゃ、一杯しか飲ませてないわよ。勝手にガバガバ飲んだのよ、ルーシィが」
「おいおいおいおい、どうすんだよこれ!」
いくら怪我をしていたとはいえ、指一本外すのに苦労するとは思えない。しかもしがみついたまま眠ってる。
「あかん、外れねえ。変身しようにも体力が…」
「ふにゅう…」
「あらまぁ…(アタックしろ、って言ったけどここまでするんだ。意外と攻め好きね)」
「ったく面倒起こしやがってからに…ルーシィ送ってくらあ。仕事は成功したってマカロフに伝えといて」
背中に抱えてふらつきながら出て行った。しかし、試練はまだ続く。
「ルーシィも攻め好きですね、分かります」
こんな感じのをやりたかっただけです、はい。途中のネタがわかったかたがいらしたら踊らざるを得ない!