「エルザ、鍵を持ってきたというのは真か!?」
大扉の先には既に数多くの兵と、作戦最終実行者の国王が今か今かと待ち構えていた。
「ええ、ここにいる魔導師どもに破壊されたようですがご安心を。この者が作れるそうです」
「そうか。ならばすぐに準備だ」
「立て、氷の魔導師よ。従わねばこいつの首をはねるぞ。竜鎖砲を起動させろ」
グレイを縛った紐を切り落とし、ナツに剣を突きつけて鍵を作るように脅しをかける。逆らえば命はない。
「早くしないか…」
「(チャンスは一度きり、失敗は許されねぇ。起動したら照準を変えて、ラクリマに直接ぶつければいい!)」
鍵の造形をして、一気に差し込んで捻ると重厚な音とともにあちこちの液晶に映像が流れる。
「(くそっ!どこだ、どこで操作するんだ!時間がねえのにっ!)」
「準備完了しました!!」
「よし、いいぞ!」
王の号令1つでいつでも砲撃を放てる状況だ。それなのに未だに操作盤が見つからない。
「撃てぇ!」
「茶番もここまでだ…ナツ!」
「おうよ!!火竜の…翼撃!」
「な、何事じゃ!?」
ファウストがまさに号令をかけた瞬間、突然の攻撃に襲われた王国軍は大いに混乱した。その隙をついてエルザが王の首に剣を突きつける。
「作戦変更だー!!」
「エルザ…貴様!なんのマネだ!離さぬか!」
いきなりの行動に動揺が走った。直後にエドエルザを光が包んだと思えば姿を現したのはアースランドのエルザだった。見た目が同じであることを活かした不意打ちである。
「私はエルザ・スカーレット。アースランドのエルザだ」
「なっ、此奴…謀りおったな!」
「悪いなエルザ。機転を利かせてくれて助かったぜ」
「カッカッカッ!これぞ作戦D、騙し討ちのDだ!!」
王を人質に取り、照準をラクリマに変えるように迫る。汚いだの卑怯だのと反発的な声も聞こえたが、仲間を取り戻すためならなんでもするという固い意志の表れだ。
「照準をラクリマに合わせろ。逆らえば…分かるな?」
「ワシに構うな!作戦通りにやれ!!永遠の魔力に比べれば我が命など!」
「うぬぬ…照準をラクリマに変更だ!急げ!」
「永遠の魔力を棒にふるつもりか馬鹿者!」
ファウストのそんな叫び声をかき消すような爆音がドアの方から響き渡る。煙の中では顔をしかめたジンヤが脇腹を抑えていた。
「ぐぅ…2対1とか普通に無しだろぉが」
「ジンヤ!?大丈夫か!」
「テメェらこそ…おい、上だ!」
「その首、貰ったぁ!」
「な!?こいつは…!」
ジェニファーの奇襲でエルザは思わず人質から手を離して距離を取ってしまった。
「よし、陛下が解放されたぞ!照準を島に戻せ!」
「しまった!」
「撃てぇ!」
躊躇う必要が無くなり、島に再度照準を向けた。そして阻む隙もなくファウストの号令で鎖が無慈悲にも放たれてしまった。轟音が鳴り響き、ガコンとくい込む音で止まった。
「接続確認しました!」
「よし、そのままぶつけてやれい!」
「やめろぉ!」
ナツの悲痛な叫びが響き渡る中、ドラゴンのような奇妙な生き物が乱入して来た。
「みんな、この子に乗って!」
「ルーシィ、お前いつの間にそれ手懐けたんだ!?」
「私のレギオンです。とりあえず乗ってください、急ぎますよ!」
「止められるか分からんが、行くしかねえ」
大きな翼をはためかせながら、徐々に近づく2つの島へと急ぐ。
「あいつらぁ…全員、急ぎレギオンの準備を!1人残らず殲滅せよ!」
「「「はっ!」」」
「ワシも行こう。ドロマアニムを用意せい」
国王直々に戦場に立とうという。しかし彼の言うドロマアニムはその危険さと性質故に王国憲章23条で禁式扱いになっている。そのようなものを使っていいのかと兵たちは狼狽えるしかない。
「今は緊急だ、用意しろ」
「エルザ隊長…」
怒り故か、自戒故か、髪を短く切り揃えたナイトウォーカーが布を体に巻いて現れた。有無を言わせぬ目つきに兵たちも折れた。
「かしこまりました。失礼しました、陛下」
「我々第二魔戦部隊も急ぐぞ。コードETDは継続中だ」
=====
速度を上げつつエクスタリアへと接近するラクリマ。それを止めようとドゴンと大きな音を立ててナツたちの乗るレギオンが体当たりを仕掛けていたが、一向に減速する様子が見えない。
「くそ、全然止まる気がしねえぞ!」
「私たちも押すぞ!魔力を解放するんだ!」
「うおおおおー!」
動く島を押し返そうとレギオンの頭のうえであろうことか素手で押し始めた。
「無茶しおって…力を貸せ、悟空!」
『正気か!?あれが人力でどうにかなると思っとるのか!』
「だからこそお前の力を貸してほしいんだよ!」
『ぬう…ええい、後で動けなくなっても知らんぞ!』
他の皆も必死に押すが、島の縁を削りながら徐々にエクスタリアに近づきつつあった。それを見ているパンサーリリーは無謀ともいえる行動に怒りすら覚えていた。
「無駄なことを!この島はぶつかって何もかも消える!止まりはしないし、人がどうこうできるものじゃない!それが運命だ!」
「止めてやる!たとえ魂だけになろうと絶対に止めてやらあ!」
「俺たちが諦めると思うなよ!絶望的な運命だろうと、変えてみせる!」
島の縁をさらに削りながら進む島を押していると、騒ぎを聞きつけたのかエクシードが団結して押し寄せていた。人を嫌い、見下してきた彼らでは今までには考えられないような行動だ。
「何故だ!?あれほどのエクシ-ドがそう簡単に動くはずがない!」
「これも抗ったから、進もうとしたからだ。今のお前には分からねえだろうな!」
想いは、意志は時には思わぬ形で叶うものだ。皆で押していると、何かに引き寄せられるようにだんだんと押し返され始めていく。
「ラクリマが…押し返されてるのか?」
エクスタリアから離れたその島をいきなり眩い光が包んだ。
「うあっ!」
「なに!?」
「これは!?」
「まさか…うおっ!」
光の柱が収まると、島からラクリマが姿を消し、大きな穴が開いているだけとなっていた。ラクリマがどこに行ったのか皆が疑問に思っていると思わぬ声が聞こえてきた。ジンヤたちを送り込んだミストガンだ。
「アースランドに、元の世界に帰ったのだ。すべてを元に戻すのに時間がかかっていたことは詫びよう、そして皆の協力のおかげで間に合ったのだ。感謝する」
「間に合ったって…それじゃあよ」
「ああ、ラクリマはアニマを通って時間とともに元通りになるはずだ。すべて無事に解決できたということだ」
大きな損害もなく、自分の国も仲間も守れた。無事に解決できた安堵と喜びから歓喜の声があちこちから聞こえる。涙を浮かべるものもいたが、皆の顔はどことなく晴れ晴れとしている。
「リリー、君に助けられた命だ。故郷を守って恩返しができてよかった」
「ええ…ありがとうございます、王子」
「王子が帰ってきたよぅ」
リリーがかつて助けた人間の子、ジェラールことミストガン。彼を助けたゆえに堕天として人間の国で過ごしていたリリーに少しでも恩を返そうと動いていたのだ。
「王子なの!?」
「話でしか聞いてねえが、嘘をつくタイプじゃないよアイツは」
「知ってたんだ…いつの間に」
「ジンヤ、君が背中を押してくれたおかげだ。ありがとう」
「いっただろ、家族の為なら力は貸すと」
「そうだったな」
そういって握手を交わそうとした瞬間、後ろにいたリリーの腹部を砲撃が貫いていった。
「リリー!!」
「だれか助けに言って!」
「俺のネコを!誰だ!?」
「まだ終わらん。終わらせんぞぉー!!」
エドエルザ率いる王国軍が最後の猛攻を仕掛けに来た。
後数話でこの章も終わると思います。
あと、活動報告で皆さんに質問とアンケートがあります。よろしかったらどうぞご協力いただければです。